<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 海外の重水炉開発状況
<タイトル>
重水冷却圧力管型炉(CANDU)の開発 (03-02-05-03)

<概要>
 重水減速材として使用する発電用原子炉中性子経済がよいので、原子力開発の初期にはかなりの数の国がその開発に取り組んだ。特に天然ウラン燃料が使用できるという特徴から、重水減速・重水冷却型の炉の開発が主力となった。各国の競争を勝ちぬいて世界の原子力発電の中で一定のシェアを築くのに成功したのは、カナダが開発した圧力管型・重水減速・重水冷却炉だけと云ってもよく、CANDUと呼ばれている。このカナダ型重水炉CANDUの開発の歴史、技術、性能、カナダおよび他国における同炉の発電所としての建設、燃料サイクルに係わる話題等について紹介する。また21世代炉ACR(Advanced CANDU Reactor)の開発についても触れる。
<更新年月>
2004年10月   

<本文>
1.重水減速・重水冷却発電炉
 重水を減速材として使用する発電用原子炉(発電炉)を一般に重水炉(Heavy Water Reactor:略称HWR)と呼んでいる。原子炉冷却材としては重水と軽水とがある。原子炉冷却材にも重水を使用する重水減速・重水冷却発電炉は現状技術の下で最も中性子経済の良い発電炉であり、その最大の特徴は天然ウラン酸化物を燃料として用いることができる点にある。重水減速・重水冷却発電炉は圧力容器型として重水を減速材兼冷却材の型で使用する炉型と、圧力管型として減速材重水と冷却材重水を分離した型で重水を使用する炉型とがある。いずれにおいても沸騰重水冷却という設計は稀であり、殆どの場合非沸騰の加圧重水冷却という設計になる。この場合、Pressurized Heavy Water Reactor:略称PHWRと呼ばれることが多い。PHWRのうち圧力管型のものはカナダが最も古くからその開発に力を入れ実用化に成功しており、2003年末現在でカナダにおいて計25基、1648.5万kWeが建設され(表1参照)、他国への輸出等により建設したもの(597万kW、11基;表3参照)を含めると、世界の全原子力発電設備容量の約6%を占めるに至っている(文献4)。このカナダ開発の圧力管型PHWRを、Canadian Deuterium and Uranium Reactor:略称CANDU(型炉)と呼ぶが、PHWR中のCANDUのシェアが大きいのでPHWRが即CANDUを指す語として用いられることがあり、またCANDU−PHWR(R)という表現が用いられることもある。
2.カナダにおけるCANDUの開発
 カナダは原子力開発の初期から重水を用いた臨界実験装置や研究炉を建設し、原子炉の世界をリードする面がいくつも見られた。それに加えて国内に豊富なウラン資源を有することから、天然ウランを使用できる発電炉として重水減速・重水冷却炉であるPHWRに開発の目標を置いたのは自然の成行きであった。また当初から国の原子力技術の幅をむやみに広くせず、濃縮プラントも再処理プラントも(少なくとも今日迄は)持たずに来ている。したがって天然ウラン燃料の重水炉の開発はカナダのアイデンティティの主張と自立のためにも必須のものとなった。1956〜1957年頃、カナダは最初の発電実証用のPHWRとして、圧力容器型の炉NPD(Nuclear Power Demonstration)を設計したが、その建設に進むことなく、圧力管型炉NPD−2に変更した経緯がある(文献1)。またその背景には当時の英国とカナダとの技術交換会議において圧力管型の大型炉の可能性がその頃見出だされてきたということがあると伝えられる。NPD−2は電気出力2万5000kWeの発電実証炉として1962年に営業運転を開始(運開)した。特徴はその後のCANDU型炉に共通的に用いられる技術となった水平設置した圧力管群と、その管内に挿入される短尺形・複数個の燃料棒クラスターの集合という設計が挙げられる。この燃料棒クラスターは圧力管の一方の端から燃料の燃焼の進行に従って次々と新しいクラスターを挿入し、他端から使用済燃料クラスターを取出していく。すなわち運転中の燃料交換である。この技術にも初期の英国の(黒鉛減速型)研究炉・試験炉の設計・建設における類似経験が影響したらしい(文献1)が、出力運転中の連続的燃料交換は、最適に近い形での燃料利用が達成できるという利点がある。
 カナダはNPD−2に続く最初の本格的な炉として、21万8000kWeのダグラス・ポイント発電所を1968年に営業運転開始し、この型の炉の評価を確立した。このダグラス・ポイント炉においてCANDUの名が初めて用いられ、当初しばらくはCANDUはダグラス・ポイントの炉を指す固有名詞として世に知られた(後に一般名詞的なものに次第に変わっていった)。図1にCANDU型発電炉のプラント概念図を示す。カナダはこれに続いて54万2000kWe炉4基からなるピッカリングA発電所を1971〜1973年に完成(営業運転)させた。これによってCANDU型炉の原子力界における地位は不動のものとなり、その技術や炉の輸入を図る国も出始めた。日本の新型転換炉ATR計画において、その前身である日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)における国産動力炉計画(1963〜1965年頃)において重水減速炉と定められた背景にも以上のようなカナダでの圧力管型重水炉の開発成功があったことは確かである。ただし日本はカナダと同一炉型になっては自主開発の意義が薄れるとして、検討の末結局沸騰軽水冷却を選び、加圧重水冷却は採らなかった。日本の沸騰軽水冷却重水減速炉(ふげん)は英国が開発した炉型(SGHWR)と同じである。
3.カナダのCANDU型炉の発展と技術
 カナダ国内のCANDU炉一覧を表1に示す。カナダは上述のピッカリングA発電所の完成以前に更に大型のCANDU型炉の発電所の建設を始めていた。90万4000kWe炉4基から成るブルースA発電所がそれで、4基は1977〜1979年に順次運転を開始した。それ以来90万kWe級がCANDUの標準型となり、ブルースB発電所(91万5000kWe、4基、1985〜1987年営業運転開始)、ダーリントン発電所(93万5000kWe、4基、1990〜1993年営業運転開始)と少しずつ増力しながら今日に至っている。この間ピッカリングA発電所を補う形でピッカリングB発電所(54万kWe、4基)が1983〜1986年に営業運転を開始している。
 このほか、60万kWe級炉を輸出用等のための標準設計炉とする考えがあり、ジェンティリー2号炉(67万5000kWe)とポイント・ルブロー炉(68万kWe)が、それぞれ今のところ1敷地に1基ずつの形で、共に1983年に営業運転を開始している。こうした継続的・計画的な事業が成功裡に進捗しているのは、殆どの炉の運転者であるオンタリオ・ハイドロ電力会社と研究開発を担当するカナダ原子力会社AECL、および安全規制当局であるカナダ原子力規制機構AECBとの間の密接な協調関係による国家的プロジェクトの成果であり、ここ数年間の全炉の平均設備利用率は70%前後を維持している(文献2)。
 近年運転を開始したダーリントン4号炉を例にその主要な技術仕様を表2(文献3)に示す。燃料は二酸化天然ウランのペレットが外径13.1mmのジルカロイ−4合金(内面に黒鉛コーティング)の被覆管に収納された燃料ピン37本をクラスターとして長さ49.5cmの燃料集合体を形成させる。この燃料棒クラスターが水平方向に設置されたジルコニウムZr・ニオブNb合金製の圧力管内に横向きに12体装荷される。出力運転中に連続的に燃料交換できる設計である。被覆管内面の黒鉛コーティングは、この燃料取替えおよびプラントの急速起動(出力急昇)に対処するための設計である。圧力管の外には熱絶縁のための炭酸ガス層を介して二重管の形でジルカロイ−2製のカランドリヤ管があり、その外側に減速材の重水がある。減速材の重水はカランドリヤ・タンクと呼ばれる横置き円筒形タンクの中にあり、このタンクを上記の二重管が計520本貫通した形状となっている。圧力管型炉の特徴は、燃料や圧力管の設計を変えることなく、燃料チャンネルの数によってプラントの出力規模を決めることができることにある。カナダでは110万kWe炉の設計も行なわれている。図2に燃料集合体を、図3に原子炉本体構造を示す。
 減速材の重水は低温・低圧下にある。圧力管の中を出口で310℃、100気圧の冷却材重水が水平方向に流れて蒸気発生器へ導かれる。一次冷却系は2グループであり、更に両グループ共、隣接する圧力管内の流れが逆向きに流れるよう設計されている。蒸気発生器は4基あり、263℃、49気圧の飽和蒸気が得られ33.7%の熱効率を達成している。
 原子炉格納容器はジェンティリー2号炉の例でみればプレストレスト・コンクリート製で、エポキシ樹脂を内張りとしている。天井部にダウジング・タンクと呼ばれる大型水槽が設けられ、一次冷却材喪失事故に際しては炉心冷却用および格納容器内スプレイ用に水槽の水を使用する。重水炉では重水中に三重水素(トリチウム)を生じるという問題がある。特にCANDUでは加圧重水を原子炉冷却材に用いるので、充分な漏洩防止設計になっているほか、トリチウムの漏洩に備えて重水蒸気回収設備が設けられトリチウムの回収に供せられる。
 低価格、高性能の経済的な原子炉としてCANDUの発展型ACR(Advanced CANDU Reactor)を開発中である(文献9)。ACRとPWRの比較を表4に示す(文献10)。今までのCANDUとは異なり微濃縮燃料を使用するのが大きな特徴である。最初は700MWe級(ACR-700)を予定しており、契約から営業運転まで48ヶ月、建設期間は36ヶ月で供給できるとしている。1000MWe級(ACR−1000)も検討中である。
4.カナダ以外でのCANDU型炉
 カナダ国外のCANDU炉一覧を表3に示す。インドは種々の型の原子炉を持っているが、発電炉の主力は重水炉に置かれており、2003年末現在で12基計245万kWeが運転中である。最初のラジャスタン発電所1号炉(10万kWe)、2号炉(20万kWe)はカナダからの輸入によるもので、1973年と1981年に営業運転を開始している。このうち2号炉は途中でインドが核実験を行なったことからカナダの協力が中止され、インドはその後独力でPHWR型炉として開発・建設を進め、マドラス発電所(17万kWe、22万kWe)、ナローラ発電所(22万kWe、2基)、カクラパール発電所(22万kWe、2基)、カイガー発電所(22万kWe、2基)、ラジャスタン発電所3号炉・4号炉(22万kWe、2基)を完成させている。パキスタンも13.7万kWeとやや小型ながら、カラチ発電所にCANDU型炉を入れ、1972年にカナダの輸出炉としては最初に運転を開始している。アルゼンチンはドイツからの輸入炉である圧力容器型重水炉2基を主力としているが、建設着工の間の1984年にカナダからの輸入炉によるエンバルセ発電所(64.8万kWe)の運転を開始している。
 韓国は加圧水型軽水炉PWRを主力としているが、カナダから輸入した67.9万kWeのCANDU型炉が1基、月城(ウォルスン)1発電所で1983年以来順調な運転を続けており、1996年の設備利用率は約81%であったと伝えられる。このため韓国におけるCANDU型炉の評価は高く、これと同規模のもの3基が1997年7月(月城2)、1998年7月(月城3)、1999年10月(月城4)に営業運転を開始した。ルーマニアで1996年に営業運転を開始した最初のチェルナボーダ発電所も71万kWeのCANDU型炉で、AECLが建設に参加した。工事中の同発電所2号炉も同様な事情下にある。中国では、秦山(クィンシャン)発電所のIII−1号炉が2002年12月に、III−2号炉が2003年7月に営業運転開始した(文献4)。
5.CANDUの燃料サイクル
 CANDUの基本理念は天然ウランの使用にあり、ジルカロイ−4被覆管使用の二酸化天然ウラン燃料で標準的な平均取出燃焼度7500MWd/tを達成している。この使用済燃料中には0.5%程度のプルトニウムが含まれている。その核分裂性比率も高い筈であるが、カナダはワンス・スルー政策をとっており、再処理をせず直接処分をする方針で最終処分場の策定と研究開発を着実に進めている。また、CANDUに1.0〜1.2%程度の微濃縮ウランを使用した方が経済性が高まるのではないかという考えは古くからあり、時々試算や提案等がみられる。21世紀代炉ACRでは微濃縮燃料を予定している(文献9)。
 韓国では、PWRの使用済燃料に簡易な核分裂生成物の可能な範囲の除去程度の処理を施して、燃料棒に大きな加工を施さないままCANDUの燃料に転用し、タンデム的に再利用しようといDUPIC燃料サイクル計画という考えが検討されており、実現の可能性が出ている(文献5)。
 核軍縮の進展に伴う解体核兵器からのプルトニウムを混合酸化物(MOX)燃料化して原子炉で燃焼させようという計画があり、その専焼炉の候補にカナダの炉も挙げられている。カナダはCANDU炉でのMOX燃料使用に関してロシア政府と共同研究に係わる覚書を締結したほか、米国エネルギー省からの委託研究も受けて調査中といわれ、AECLはブルースA発電所を検討対象にしていると云われている。
6.圧力管の交換
 カナダでは圧力管の破損事故が、1974年−1975年にピッカリングA3号機および4号機で、1982年にブルースA2号機で、また1983年にピッカリングA2号機で、1990年にダーリントン2号機で発生した。圧力管の材料(Zry−2)に原因があったので、ピッカリングAとブルースAの圧力管は材料Zr2.5Nb製に交換された。アルゼンチンのエンバルセ発電所でも1995年に圧力管が破損し交換された。
<図/表>
表1 カナダ国内のCANDU炉一覧
表2 ダーリントン4号炉の主要諸元
表3 カナダ国外のCANDU炉一覧
表4 ACRとPWRの比較
図1 CANDU型発電炉のプラント全体概念図
図2 CANDU(重水減速圧力管型炉)の燃料集合体
図3 CANDU型発電炉原子炉本体構造図

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<関連タイトル>
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)
海外の重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉 (03-02-05-01)
重水冷却圧力容器型炉 (03-02-05-02)
原子炉型別ウラン燃料 (04-06-01-03)
インドの原子力開発と原子力施設 (14-02-11-02)
パキスタンの原子力開発と原子力施設 (14-02-12-01)
カナダの原子力発電開発 (14-04-02-02)
ルーマニアの原子力発電開発 (14-06-11-01)
アルゼンチンの原子力発電開発 (14-08-02-02)

<参考文献>
(1)W.マーシャル(編)、住田 健二(監訳):原子炉技術の発展[下]、筑摩書房(1986年10月)、p.484−512
(2)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック1997年版、日本原子力産業会議(1997年5月)、p.129−131,p137−138,p192−194
(3)藤井 晴雄、森島 淳好(編):原子力発電プラントデータブック1994年版、日本原子力情報センター、(1994年8月)、p.266
(4)日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向2003年次報告、日本原子力産業会議(2004年5月)
(5)J.S.Lee,P.Boczarほか:The DUPIC Alternative for Backend Fuel Cycle、IAEA主催「核燃料と炉型戦略に関する国際シンポジウム」(於.ウイーン、1997年6月)提出論文、IAEA−SM−346/26 (1997年6月)
(6)IAEA:Directory of Nuclear Power Reactors Vol.7,p235−236(1968)
(7)Morison W.G.:Large Scale fuel channel replacement program,Proc.Annu.Conf.Can.Nuc.Assoc.,Vol.26,198−227(1986)
(8)Talbot K.et al.:How the Pickering−1 and−2 reactors were retubed,Nucl.Eng.Int.,33(408),36−38(1988)
(9)Atomic Energy of Canada Limited:ACR(Advanced CANDU reactor),
(10)Atomic Energy of Canada Limited:ACR vs PWR,
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