<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> カナダ
<タイトル>
カナダの原子力発電開発 (14-04-02-02)

<概要>
 カナダは、北アメリカの五大湖に隣接するオンタリオ州をはじめ、河川等の水資源に恵まれているため、水力発電が総発電設備の約60%を占めている。しかし、第2次世界大戦後、カナダでは独自開発によるカナダ型重水炉(CANDU)の建設が進められた。現在、発電用原子炉は全てカナダ型重水炉である。
 原子力発電所の9割が集中するオンタリオ州では、1995年以降、経済性の低下を理由に原子炉8基の運転を休止した。しかし、1998年10月に電気事業の再編を目指したエネルギー競争法が成立したことで、電力自由化の流れから、原子炉の改修工事と寿命延長プログラムが進み、2013年1月現在、18基の原子炉が運転され、新たに2基の原子炉の導入を計画している。オンタリオ州以外では、ニューブラウンズウィック州で1基が改修工事を終え、運転中である。なお、ケベック州唯一の原子炉ジェンティリー2号機は改修工事を行わず、2012年12月末で運転を終了し、廃止措置へ移行することになった。
<更新年月>
2013年02月   

<本文>
1.カナダの原子力発電開発の現状
 カナダではオンタリオ州、ケベック州及びニューブラウンズウィック州の3州に、運転中19基、計画中2基、閉鎖した発電炉用原子炉6基が立地している。運転中19基の内ニューブラウンズウィック州のポイントルプロー発電所(POINT LEPREAU)を除く18基がオンタリオ州に集中している(表1及び図1参照)。原子炉は全てカナダの豊富な天然ウランを利用して独自開発したカナダ型重水炉(CANDU)である(図2参照)。
 カナダ経済の中心地で、人口が集中するオンタリオ州では原子力が基幹電源であり、州営電力会社であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)が所有している。オンタリオ州では2014年までに州内の石炭火力発電所を全て閉鎖する石炭火力全廃目標を2007年に掲げたことから、再生可能エネルギーの拡大とダーリントン発電所の5、6号機増設計画が進行している。しかし、ニューブラウンズウィック州の基幹電源は火力であり、ケベック州では水力となっている。このように、原子力発電のおかれている状況は州により大きく異なる(表2参照)。なお、ケベック州政府は2012年9月、原子力の使用及びシェールガスの開発を行わないと決定した。州唯一の1983年より稼働していたジェンティリー2号機(GENTILLY)は2012年12月28日に運転を終了し、廃止措置へ移行することになった。発電所を所有するハイドロ・ケベック社(HYDRO QUEBEC)はライセンス更新手続きを行っていたが、ジェンティリー2号機は2012年7月末には故障を起こして運転を停止した。再稼働を行うには改修工事が必要となっていた。なお、運転寿命延長には2008年の段階で18億カナダドル(以後、Cドル、(約2040億円))と見積もられていた。
 2011年のカナダの原子力による発電電力量は883億kWhで、前年の885億kWhより3.27%減少した。総発電電力量に占める原子力発電の割合は15.3%(前年15.1%)で、この10年間で1.72%と僅かに上昇している。
1.1 古い原子炉の運転休止とバックフィットプログラム
 現在カナダ国内では、1993年6月に運転を開始したダーリントン4号機(DARLINGTON-4:CANDU、93万5,000kW)以降、新規の建設はない。なお、1970年代に営業運転を開始したPickering(A)発電所4基及びBruce(A)発電所4基は管理費の増大や設備利用率の低下から経済性が失われ、1995年〜1998年までに8基全てを休止状態にした。そのうえ、Pickering(A)発電所は、原子力管理委員会(AECB)により原子炉停止系の性能を強化しない限り1997年末以降の運転を認めない決定が行われていた。同発電所が所在するオンタリオ州では、電力自由化が進み、1998年10月にエネルギー競争法が成立した。そのため、休止された原子力発電所は競争力のある電源として見直されることになった。
 Pickering(A)発電所に関しては、1999年8月、所有者であるオンタリオ発電会社(OPG)が総額11億Cドルの予算でバックフィットを行い、運転を開始することを決定した。4号機は2003年9月に、1号機は2005年8月に運転を再開したが、改修工事費は22.5億Cドルを要したため、OPG社は2005年8月に2号機と3号機の閉鎖を決定した。なお、1983年にPickering(A)2号機は圧力管破断事故を起こしたため、1993年までにPickering(A)の全ての燃料チャンネル(圧力管とその延長管)は交換されていた。
 Bruce(A)発電所に関しては、3、4号機は7.2億Cドルかけて改修工事を行い、4号機を2003年10月に、3号機を2004年1月に運転を再開した。運転を行うブルース・パワー社とオンタリオ州政府は2005年10月にBruce(A)発電所の全面改修工事を行うことで合意した。1、2号機は、改修工事に48億Cドルをかけて、全ての燃料チャンネル(480体/基)、カランドリア管(480本/基)、約半数の出入口管(約500本/基)及び全ての蒸気発生器(8台/基)を取替え、寿命を25年延長する工事を行った。2号機は2012年9月に、1号機は2012年10月に原子力安全委員会(CNSC)から運転を再開する許可を得た。
 また、CANDU-6型(600MW級標準設計CANDU炉)のポイント・ルプロー(Point Lepreau)は2008年4月から全ての燃料チャンネル(380体)、カランドリア管(380本)及び出入口管(760本)の交換を行い、25MW出力増強と、寿命延長改修工事を行った。改修工事費用は当初の14億Cドルから24億Cドルへ増加し、改修期間も3倍の54ヶ月を要した。2012年10月から送電を再開している。このほか、ダーリントン(Darlington)発電所でも寿命延長のための改修工事を2016年から順次行う計画であるが、Bruce(B)とPickering(B)に関しては検討を重ねる方針である。なお、ダーリントン発電所では新たに2基(計200万kW)の増設計画も進めている(ATOMICAタイトル・カナダの原子力政策・計画 <14-04-02-01>参照)。
2.カナダ型重水炉(CANDU炉)の開発
2.1 CANDU炉開発の経緯
 現在カナダで運転されている発電用原子炉の炉型は、全て独自開発された加圧重水型炉(PHWR:Pressurized Heavy Water Moderated and Cooled Reactor)であり、「カナダ型重水炉(CANDU:Canada Deuterium Uranium Reactor)」と呼ばれている。CANDU炉は燃料に天然ウラン、減速材及び冷却材に重水を使用する。カナダ国内に豊富に産出する天然ウランを燃料として使用できるため、濃縮施設等が不要である。また、原子炉を停止しないで、運転中のままで燃料交換が可能なため、設備の稼働率を高めることができる。そのほか、CANDU炉は発電だけでなく、蒸気供給やRI製造にも利用されている。
 カナダは第二次世界大戦中に米英と共同で原爆開発計画(マンハッタン計画)に参加していたがやがてこれを離脱し、原子力の平和利用を目指した。1942年には原子炉研究のため、カナダ国家研究評議会(National Research Council of Canada)のもと、英国とカナダの共同研究所をケベック州モントリオールに設置した。終戦を迎えた1945年にオンタリオ州のチョークリバーにパイロットスケールの重水試験炉ZEEP(Zero Energy Experimental Pile)を完成させたことで、モントリオール研究所は翌1946年に閉鎖され、原子力研究はチョークリバー研究所に引き継がれた。1947年には、チョークリバー研究所で天然ウラン燃料のフルスケール重水研究炉NRX(National Research eXperimental)が運転を開始した。1952年、開発・設計を目的とした政府出資によるカナダ原子力公社(AECL:Atomic Energy of Canada Ltd.)が設立され、チョークリバー研究所を引き継いで本格的なCANDU商用炉の開発が進められた。1962年にオンタリオ州ロルフトンに2万kWのCANDU実証炉NPD(Nuclear Power Demonstration)が完成した。1971年には商業用CANDU炉の第1号となるピッカリングA発電所1号機(Pickering-1-(A)、54.2万kW)が営業運転を開始した。なお、開発段階では、ジェンティリー1号機(Gentilly:カナダ型重水炉−沸騰軽水冷却重水減速型炉:CANDU-B、26万kW、1972〜1978年)の様な炉型も誕生したが、最終的に現在のPHWRに絞られ、1970年代から1980年代にかけて次々とオンタリオ州を中心にCANDU炉の営業運転を開始した(図3参照)。
 一方、CANDU炉は海外にも輸出されており、アルゼンチン1基、ルーマニア2基、韓国4基、中国2基、インド2基、パキスタン1基、計12基が運転中である(表3参照)。韓国のWolsong発電所、ルーマニアのCernavoda発電所、アルゼンチンのEmbalse発電所では高稼働率を続け、AECLは、設計、交換部品の調達、特殊定検の分野でサービスを提供している。なお、韓国のWolsong発電所1号機は1983年に営業運転を開始したCANDU-6型であり、所有者である韓国水力原子力発電(株)(KHNP)は2006年からバックフィット作業を開始した。燃料チャンネル(380体)、カランドリア管(380本)及び出入口管(760本)の交換を行い、2011年7月に再稼動している。
2.2 改良型CANDU炉の開発
 AECLは新たな市場開拓を目指し、1990年代に中小型CANDU炉である出力450MWe級のCANDU-3型とCANDU-6型の大型機で、安全性と経済性をより高めた出力900MWe級のCANDU-9型及び中国QINSHANの改良型EC6の設計を行ったが、全て建設実績はない。このようななか、2002年6月24日、AECLは改良型CANDU炉ACR-700が完成したと発表した。次世代型CANDU炉ACR-700は70万kW級のモジュール型原子炉で、蒸気発生器やタービン、発電機等、多くのシステムでPWRと類似したものが採用されている。また、CANDU炉の特徴である2つの独立した原子炉緊急停止系を持ち、減速材が熱を逃がす固有の受動的燃料冷却特性及び過酷事故時の限定的な熱放出など、安定性の高い炉心設計と大きな運転裕度、受動的安全性を高めた設計安全概念になっている。さらに同炉の特徴として、(1)冷却材に軽水を使用し、重水使用量の低減と取扱いコストの削減、(2)天然ウラン燃料から約2%の微濃縮燃料を使用することで、燃料寿命を3倍化させて使用済燃料発生量を低減、(3)炉心設計のコンパクト化で炉心サイズを約半分にし、高圧蒸気タービンによる熱効率の向上、(4)モジュール化、プレハブ工法、その他先進的工法の導入、などがある。ACR-700の2号機以降は建設期間が36ヵ月、契約から48ヵ月で営業運転可能と見込まれ、約40%減の1,000USドル/kW、運転コストでは3セント/kWh程度の経費節減が期待されており、他の炉型と比較しても高い価格競争力を持つとしている。AECLでは更に出力の高い100万kW級のACR-1000の開発も進め、ACR-1000を設計寿命60年、受動的安全性と経済性を改善し、運転・保守に優れた第3世代原子炉の改良型(Generation III+)と位置づけている。図4に改良型CANDU炉ACR-1000の概念図を示す。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 カナダにおける原子力発電所一覧表
表2 カナダにおける原子力発電所立地3州の電源別発電設備容量と発電電力量
表3 国外にあるカナダ型重水炉(CANDU炉)
図1 カナダの原子力発電所分布地図
図2 CANDU炉概念図
図3 カナダ型重水炉(CANDU炉)の開発の歴史
図4 改良型CANDU炉ACR-1000の概念図

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<関連タイトル>
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)
重水冷却圧力管型炉(CANDU)の開発 (03-02-05-03)
カナダの原子力政策・計画 (14-04-02-01)
カナダの原子力開発体制 (14-04-02-03)
カナダの核燃料サイクル (14-04-02-05)
カナダの電気事業および原子力産業 (14-04-02-06)
カナダの放射性廃棄物管理 (14-04-02-07)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2012年版(2012年5月)、p.102-151
(2)(一社)日本原子力産業協会:原子力年鑑2013年版(2012年10月)、カナダ
(3)カナダ統計局(Statistics Canada):Table 127-0009(Installed generating capacity,
by class of electricity producer)、
及びTable 127-00021(Electric power generation, by class of electricity producer annual)
(4)世界原子力協会(WNA):Nuclear Power in Canada、
http://www.world-nuclear.org/info/inf49a_Nuclear_Power_in_Canada.html
(5)国際原子力機関(IAEA):動力炉情報システム(PRIS)カナダ、

(6)Candu Energy Inc.:Enhanced CANDU 6 Technical Summary、

(7)Atomic Energy of Canada(AECL):LimitedACR-1000 Technical Description Summary、https://canteach.candu.org/Content%20Library/20100100.pdf(2010年1月)
(8)第2回国際原子力シンポジウューム(ISNE-09):AECL/Vuono氏及びLee氏発表、
Fuel Cycle for Enhanced CANDU 6(2009年10月)、

(9)IAEA原子炉プラントシミュレータワークショップ:CANDUシステム・運転の入門
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