<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 新型転換炉の安全性
<タイトル>
新型転換炉の工学的安全防護システム (03-02-03-02)

<概要>
 工学的安全防護システムは最も苛酷な事故を想定して設けられており、非常用炉心冷却系および原子炉格納容器施設より構成される。原子炉冷却材喪失事故時に、非常用炉心冷却系は効果的に注水し燃料の著しい損傷を防止する。原子炉格納容器施設は炉外に放出された冷却材および放射性物質を密封の格納容器内に隔離し、付属設備の冷却および放射性物質の除去効果により、外部環境への影響をほとんど無くすことが出来る。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 工学的安全防護システムは、万一原子炉冷却系の大口径配管破断のような最も苛酷な事故が発生した場合を想定して設けられており、燃料の著しい損傷および放射性物質の敷地外への放出を防止する機能を有し、安全性の確保に万全を期するためのものである。
 工学的安全防護システムは非常用炉心冷却系および原子炉格納容器施設より構成されている。
(1) 非常用炉心冷却系(ECCS
 原子炉冷却系の配管が破断し、燃料集合体が装荷される圧力管内から冷却材が失われる場合は、いわゆる冷却材喪失事故(LOCA)となる。炉心が露出すると原子炉停止後でも燃料の崩壊熱発生により燃料および被覆管は過熱、遂に溶融するに至る。
 非常用炉心冷却系は、このような事故時に早期に炉心部に冷却水を送り、燃料被覆材の破損をある限度内に抑えるために設けられている。
 本系統は急速注水系、高圧注水系、低圧注水系の3系統より構成され、大口径配管の破断(大破断)を含むいかなる破断に対しても有効に作動できるよう設計されている。
 非常用炉心冷却系の主な仕様、系統図をそれぞれ 表1図1 に示す。
 各系統を構成する機器類はいずれもその機能上高い信頼性を有するよう考慮されているが、さらに各系統とも、1系統でも充分な冷却能力を有する独立した2系統構成とし、原子炉運転中定期的にその作動の確認ができるなど安全裕度の向上が図られている。
 なお新型転換炉の原子炉冷却系は、炉心を2分割し互いに独立した2ループ構成となっており、それぞれの圧力管群は別個の蒸気ドラム、下降管、再循環ポンプ、下部ヘッダーに接続されており、冷却材喪失事故の範囲は半分に限定される。また下部ヘッダー入口の大口径配管接続部に逆止弁を設け、事故時の冷却材喪失を遅延させ、冷却水注入効果の向上を図っている。
 (a)急速注水系
 急速注水系は大破断事故時に原子炉圧力の急低下に即応、高圧注水系または低圧注水系の作動以前に、蓄圧器内の保有水を圧力差により下部ヘッダーに注水、燃料被覆管の著しい損傷を防止するためのものである。本系統は空気作動弁のみを使用するので、停電時、非常用電動起動以前でも作動できる。
 (b)高圧注水系
 高圧注水系は、配管破断のうち原子炉圧力の低下が少なくその水位だけが減少する、いわゆる小破断事故時に蒸気ドラム気相部にスプレー状に注水し原子炉圧力を急低下させ、低圧注水系の作動開始時期を早めるためのものである。
 本系統は復水貯蔵タンクから取水され、電動駆動ポンプにより注水される。停電時でも非常用電源により作動可能となる。
 (c)低圧注水系
 低圧注水系は高圧注水系に引き続き炉心冷却を継続するほか、大破断事故時には急速注水系に引き続き多量の水を注水、燃料被覆管の損傷を制限することを目的としている。
 本系統は電動機駆動ポンプにより復水貯蔵タンクまたは蒸気放出プールの水を下部ヘッダーに注水するが、蒸気ドラムに注水した方が有効であると判断された場合は、手動操作で蒸気ドラムへの注水に切り替えることが可能である。停電時は非常用電源より受電する。
(2) 原子炉格納容器施設
 原子炉格納容器施設は冷却材喪失事故時に放射性物質が炉外に放出されたとしても、冷却材とともに気密性の格納容器内に隔離して、格納容器内に生じた圧力、温度および放射性物質濃度の低減を図り、仮に格納容器から放射性物質の漏洩があった場合にも、外周のアニュラス部で隔離し、放射性物質を除去し、放射性物質の外部環境への放散を防止するために設けられたものである。
 原子炉格納施設は原子炉格納容器およびアニュラス、格納容器スプレー系、格納容器再循環系、アニュラス排気系などより構成されている。
 (a)原子炉格納容器およびアニュラス
 原子炉格納容器は原子炉施設の主要設備を格納する円筒形の密閉鋼製容器であり、その周囲に設けられた円筒形の遮蔽壁との間はアニュラス部を形成し、二重構造となっている。原子炉格納容器およびアニュラスの主な仕様を 表2 に示す。アニュラス部は排風機により常時負圧に保たれ、配管および配線などの格納容器貫通部に対し、漏洩に対する二重障壁となっている。配管には隔離弁を設け、事故時に外部との隔離機能を持たせている。
 (b)格納容器スプレー系
 格納容器スプレー系は大破断事故時に容器内に配置されたスプレー設備により、最大エネルギー放出によって発生する容器内の圧力及び温度を低下させるに充分な冷却能力を有し、また容器内に浮遊する放射性物質のうち水溶性の成分を除去することが出来る。格納容器スプレー系の系統図を 図2 に示す。
 (c)格納容器再循環系
 格納容器再循環系は、原子炉運転中は容器内の空気を強制循環させながらその冷却および浄化を行うが、冷却材喪失事故時には工学的安全防護システムの一つとして働き、非常用フィルタ・ユニット(活性炭フィルタ内蔵)により空気中に浮遊する沃素などの放射性物質の濃度を減少させる。
 (d)格納容器アニュラス排気系
 格納容器アニュラス排気系は負圧に保たれたアニュラス部に格納容器貫通部およびアニュラス外壁から漏れ込む空気を常用フィルタを通して排気筒に導くが、事故発生により排気の放射能レベルが高くなった場合には、非常用フィルタユニット1基に切り替えて放射性沃素などを除去して排気させる。格納容器空気再循環系およびアニュラス排気系の系統図を 図3 に示す。
<図/表>
表1 新型転換炉の非常用炉心冷却系の主な仕様値
表2 新型転換炉の格納容器およびアニュラス部仕様
図1 新型転換炉の非常用炉心冷却系統図
図2 新型転換炉の格納容器スプレー系統図
図3 新型転換炉の格納容器空気再循環系およびアニュラス排気系の系統図

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<関連タイトル>
新型転換炉の特徴 (03-02-02-02)
新型転換炉の冷却システム (03-02-02-07)
新型転換炉の燃料交換システム (03-02-02-09)
新型転換炉の制御特性 (03-02-03-01)
新型転換炉想定事故の安全評価 (03-02-03-03)

<参考文献>
(1)動燃技報 No.36 1980
(2)「ふげん」の建設 昭和54年 動燃資料
(3)「新型転換炉設備概要」昭和49年 動燃資料
(4)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉ふげん発電所原子炉設置変更許可申請書、 昭和54年
(5)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉原型炉「ふげん」技術成果の概要、 1991年8月
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