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<概要>
 原子力委員会は6月、原子力開発利用長期計画を決定した。今後の原子力開発の基本戦略として、従来からの「使用済み燃料再処理・Puサイクル」「軽水炉から高速増殖炉へ」の基本路線を再確認する一方、新材料、レーザー、人工知能などの基盤技術開発にも重点をおいた。「包括事前同意方式」を盛り込んだ新日米原子力協力協定が、11月正式署名された。核燃料サイクルの事業化でも大きな進展があり、4月に日本原燃サービスが仏SGN社と、六ヶ所再処理工場建設のための技術移転及び基本設計のエンジニアリング契約に調印し、本格的な設計段階に入った。他方、日本原燃産業も5月、科技庁(文科省)に六ヶ所ウラン濃縮工場に関する許可申請を提出し、着工の準備に入った。ハイテク研究も盛んで、10月に原研(現日本原子力研究開発機構)JT-60が臨界プラズマ条件を達成した.次世代濃縮技術として注目のレーザー濃縮法の本格的な研究開発のため、1月に「レーザー濃縮技術研究組合」が発足した。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1987年
(昭和62年)
1/8 遠心法ウラン濃縮技術開発推進委が初会合  
1/15   ソ連、建設中RBMK型炉(事故炉と同型)の完成意向を示唆
1/22 安全委放射性廃棄物安全規制専門部会、「低レベル廃棄物の基準値、米より一桁低い水準」と報告  
1/28   西独シーメンス社、KWU社吸収を公表
1/30 レーザー濃縮技術研究組合発足(理事長豊田正敏東京電力副社長) 米エネ省、超大型加速器建設計画を公表
2/3 動燃(現日本原子力研究開発機構)、FBR燃料照射で仏と協力へ  
2/5 科技庁(文科省)、放射性廃棄物対策推進室設置、廃棄物行政強化へ  
2/6   米原子力規制委、ソ連チェルノブイリ事故の分析結果公表
2/10 通産省(現経産省)、関西電力大飯3、4号機に設置許可  
2/16 関西電力大飯2号機、連続運転427日の日本記録達成  
2/17 原電敦賀2号機が営業運転 米原子力規制委、事故リスク評価草案を提出
2/24   イタリア、エネルギー会議で原発存続を確認
2/26 IAEA「原子力事故における早期通報及び相互援助」の2条約発効  
3/9 安全委、低レベル放射性廃棄物の濃度上限値政令案を答申  
3/10   米財務省、反アパルトヘイト法に基づく南ア産ウラン輸入禁止で施行規則を公表
3/12 通産省、米サリー原発事故について報告、「日本では起こり得ない」と指摘 英エネルギー相、サイズウェルB建設を承認、軽水炉(PWR)をベースにエネルギー源の多様化
3/15   IAEA、国際トカマク炉で協議
3/18 動燃、ガラス固化パイロットプラントの設置許可申請  
3/19 通産省セイフティ21推進委が初会合、安全性高度化を推進ヘ  
電調審(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)、女川2号機の着手決定  
4/1 1986年度原発設備利用率76%  
4/10 通産省、電力施設計画を発表。10年後、原子力発電シェア37%に 米原子力規制委、クリントン原発に全出力運転認可
4/15   米エネ省、TMI2号の炉心分析結果公表、40%以上溶融を明らかに
4/20 理研、分子法ウラン濃縮で見通し  
4/27 原研(現日本原子力研究開発機構)、JT−60加熱試験で1億3000万℃を達成  
通産省、軽水炉高度化推進委員会発足  
4/30 日本原燃サービス、仏SGN社と再処理技術で調印  
5/1   英政府、低レベル廃棄物の浅層処分計画中止を公表
5/14   カナダ下院委、食品照射に否定的見解
5/18 関西電力、美浜1号機へのMOX燃料装荷で福井県と美浜町に申し入れ  
5/21 安全委、放射性廃棄物安全基準専門部会新設を決定  
5/22 原研、OECDと高温ガス炉研究で付属書に調印 IAEA−WHO専門家会議、ソ連事故の大量被爆者は21世紀まで追跡調査必要
5/26 日本原燃産業、六ヶ所村ウラン濃縮施設(濃縮能力、1500トン SWU/年)で事業許可申請  
5/28 安全委ソ連事故調査特別委、「早急に改善すべき点ない」と最終報告  
6/16 通産省、原発の事故・故障と被曝状況を発表、3年連続で最少記録  
6/17   OECD加盟国の原子力シェア22%に
6/22 原子力委、原子力開発利用長期計画を決定。原子力は基軸エネルギーと位置付け  
6/25   米ベクテルと西独KWU、原発サービス業務で提携
7/2   米エネ省、共産圏への原子力輸出で指針
7/15   中国、IAEAの核融合研究受託
7/17 動燃、ベルギー原子力研究センターと地層処分の共同研究契約を締結  
7/29 電調審、1987年度電源開発基本計画を決定  
8/5   米下院本会議、原子力規制委関連法案を通過
8/11 政府、米に原子力協定早期署名を要請ヘ  
8/13   米WH社、N炉の検討終了
8/24   口ーザンヌで中小型炉国際会議開幕
8/25 東電福島第二・4号機が営業運転  
8/27 安全委、高レベル廃棄物安全研究計調査会電気事業分科会)需給部会、長画にナチュラル・アナログ研究等を追加 英中央電力庁、第2PWR建設を申請
8/28 中部電力浜岡3号機が営業運転  
9/8   中国の重イオン加速器完成
9/11 原子力委、基盤技術推進専門部会設置を決定  
9/16 動燃、東海再処理工場の運転再開  
9/18 原研、DOEとモジュール型高温ガス炉設計協力協定を締結  
9/23 科技庁、「廃棄物対策が重要」とする未来技術予測をまとめる ブラジル・ゴイアス洲、Cs−137による放射線被曝汚染事件、放射線管理が極めてずさん
9/28 政府、ICRP ICRP勧告を取り入れた法令基準を放射線審議会に諮問  
9/30   ソ連原子力利用国家委員会議長、原発拡大政策を再確認
10/1 通産省電気事業審議会(現総合資源エネルギー期電力需要見通しまとめる、2000年の原子力シェア40%に  
10/14 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会、長期エネルギー需給見通しを改定  
10/15   米国原発世論好転(ケンブリッジリポート社の調査で支持率80%に
10/19 動燃FBR用Pu燃料製造ライン、施設検査に合格 国際熱核融合実験炉(ITER)概念設計実施に日米欧ソが合意
10/20 原子力安全委、1987年度原子力安全白書まとめる  
10/26   米技術評価局、核融合の将来を展望
10/29   米原子力規制委、緊急時計画規則を改定
10/30 原研JT−60、臨界プラズマ条件達成(重水素換算)に成功  
11/3   米州民投票で原発賛成派が勝利
11/4 政府、新日米原子力協力協定に署名、「包括事前同意方式」盛り込み、1988/7/17発効  
11/8   イタリアの国民投票で原子力関連組織と業務権限廃止が支持される(事実上原子力発電から撤退)
11/13 通産省、原子力発電所緊急時対策検討会を設置  
11/18 三菱重工、レーザー法でウラン濃縮に成功  
11/19   米放射線審議会、国民線量算出
11/27 原子力委、放射性廃棄物対策専門部会設置を決定  
12/1 原子力委、1987年度原子力白書まとめる  
12/7 原研、マレーシア原子力庁と放射線加工で協力取決めを締結  
12/8 安全委が原子力安全国際シンポジウムを開催  
12/15   米エネ省、オークリッジ・ガス拡散工場建屋閉鎖を公表
12/17   米上院外交委、日米新原子力協定再交渉を要請
12/25 福井地裁、「もんじゅ」訴訟の請求却下  
通産省、原子力が最も経済的とする発電原価試算を発表  
12/30   米原子力規制委、核物質盗難防止を強化
12月   欧州高速炉電力会社グループ、FBRの統一設計発注で合意


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1987年
(昭和62年)
2/12 新日鉄、室蘭・釜石・八幡などの高炉5基を1990年度末までに休止の合理化案提示  
3/6   エクアドルでM6.5級地震が多発、死者約300人
3/19   レーガン米大統領、イラン秘密工作問題で釈明
3/21 中曽根内閣発足以来1576日となり、佐藤内閣、吉田内閣につぐ戦後第3位に  
4/30 東芝機械、ココム規制品目の船舶工作機械をソ連に不正輸出した疑いで、警視庁の捜査をうける  
6/19 運輸省(現国土交通省)航空事故調査委、日航ジャンボ機墜落の最終報告書提出。ボーイング社の圧力隔壁修理ミスと断定  
7/29   ソ連最高裁、チェルノブイリ原発事故で、所長ら6人に10〜2年の自由剥奪刑判決
9/4 第二電電、日本テレコム、日本高速通信の新電電3社が市街通話サービス開始、通信自由化時代に  
10/12 1987年度のノーベル医学・生理学賞が米MIT教授利根川進博士に決定  
11/16 伊豆大島の三原山が1年ぶりに再噴火  
11/29   大韓航空機、ビルマ沖合で消息絶つ(乗員、乗客115人)


<関連タイトル>
原子力開発利用長期計画(昭和62年策定)総論 (10-01-05-01)
原子力開発利用長期計画(昭和62年策定)各論 (10-01-05-02)
原子力基盤技術開発の新たな展開について (10-02-02-03)
レーザー法によるウラン濃縮 (04-05-01-06)
六ヶ所ウラン濃縮工場 (04-05-02-03)
六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)
核融合研究開発の経過 (07-05-01-03)
核融合炉工学の研究開発課題(1)プラズマ加熱工学 (07-05-02-01)
日米原子力協定 (13-04-02-01)

<参考文献>
1.(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 昭和63年版(昭和63年10月1日)
2.原子力委員会編:原子力白書 昭和62年版、大蔵省印刷局(昭和62年12月21日)
3.原子力委員会編:原子力白書 昭和63年版、大蔵省印刷局(平成元年12月25日)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産
  業会議(1996年4月26日)
5.読売新聞社(編集発行):読売年鑑 1988年版(1988年3月1日)
6.(財)科学技術広報財団(編集発行):科学技術ジャーナル 平成8年3月号(通巻48号)(平成8年3月1日)
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