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<概要>
 プラズマ加熱工学とは、中性粒子入射あるいは高周波加熱装置を用いてプラズマの加熱およびプラズマの電流駆動を行うものである。中性粒子入射加熱では、1MeV級の負イオン源を用いた高出力化のための技術開発が、また高周波加熱では、1MW高周波源ジャイロトロン等の高周波化、長パルス化技術開発が主な課題である。
<更新年月>
2005年04月   

<本文>
1.中性粒子入射加熱
 中性粒子入射(NBI)は、図1に示すように水素イオンから高エネルギの中性粒子のビームを引き出し、それをプラズマに入射することによって加熱を行うものである。これまでに、JT−60(原研(現日本原子力研究開発機構))用に正イオンを用いた数10MW級中性粒子入射加熱技術の確立が図られるとともに、出力効率及びビーム発散角の観点から次期大型核融合装置に適した負イオン・ビームNBI技術に関しても、350keVで0.5Aを達成するなど、世界に先駆けた開発が進展している。
2.高周波加熱
 高周波(RF)加熱は、種々の共鳴現象を利用してプラズマを加熱するものであり、その原理は図2に示すとおりである。高周波加熱技術においては、電子サイクロトロン共鳴加熱装置(EC)、イオン・サイクロトロン波共鳴加熱(IC)及び低域混成波共鳴加熱(LH)と種々の追加熱法に対し、さまざまな磁場配位やプラズマ・パラメータを対象とした研究が行われている。電子サイクロトロン加熱装置では、170GHz、高効率ジャイロトロンで500kw、0.6秒出力を達成する等世界的な成果を得るとともに、個々の加熱法の適切な利用条件に関するデータの蓄積がなされている。
3.核融合実験炉における加熱法と研究開発課題
 次期大型核融合装置(核融合実験炉:ITER及びFER)では、加熱・電流駆動装置として、負イオン・ビームを用いた中性粒子入射装置、低域混成波共鳴加熱、電子サイクロトロン共鳴加熱、イオン・サイクロトロン共鳴加熱装置を用いる計画である。これらの装置に要求される性能は、表1に示すとおりである。
 核融合実験炉では、加熱・電流駆動の観点から1 MeV級の中性粒子入射技術が要求され、高エネルギー化に付随した技術開発が必要であると同時に、遠隔保守を考慮した構造設計が要求される。また、高周波加熱においては、高周波源の高周波化、長パルス化及び耐放射線性窓材等の機能材の開発が技術的課題として挙げられる。
<図/表>
表1 核融合実験炉(ITER及びFER)用加熱電流駆動装置諸元
表1  核融合実験炉(ITER及びFER)用加熱電流駆動装置諸元
図1 中性粒子入射加熱の原理
図1  中性粒子入射加熱の原理
図2 高周波加熱の原理
図2  高周波加熱の原理

<関連タイトル>
核融合炉工学の研究開発課題(2)超伝導コイル (07-05-02-02)
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核融合炉工学の研究開発課題(11)計測制御技術 (07-05-02-11)

<参考文献>
(1) 狐崎 晶雄・吉川 庄一:「新・核融合への挑戦」講談社ブルーバックス(2003)
(2) 小原祥裕、今井剛:核融合の研究開発と国際協力−加熱・電流駆動−、機械の研究、47(1),125−129(1995)
(3) 日本原子力研究所・那珂研究所・炉心プラズマ研究部:核融合炉をめざして−核融合研究開発の現状1996年、日本原子力研究所(1996年11月)
(4)関 晶弘(編):「核融合炉工学概論−未来エネルギーへの挑戦」日刊工業新聞社(2002)
(5)近藤 育朗、栗原 研一、宮 健三:「核融合エネルギーのはなし」日刊工業新聞社(1996)
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