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<概要>
 この時代、我が国では一次エネルギー供給の76%を石油に依存し、その過半は中東石油によって占められていた。第4次中東戦争及びアラブ石油輸出国機構による石油生産削減と輸出禁止の処置は、第1次石油危機をもたらした。このような状況下では原子力への要請は高まるはずであったが、原子力発電所の立地問題は、ますます難しくなってきた。伊方原発及び東海第二原発でそれぞれ1月、2月に建設取消しの行政訴訟が起こる。9月には、福島第二原発設置に関わる初の公聴会が開かれた。このようななか、原子力開発に対する国民の合意形成をめざして、日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)の将来体制が検討され、「中立性」「公共性」の運営方針が10月に打出された。新会長に有澤廣巳が就任した。3月に美浜1号炉で、10月に美浜2号炉で燃料棒の曲りなどの欠陥が見つかった。海外では、ソ連の高速増殖炉BN-350が運転開始、また仏の高速増殖原型炉フェニックスが臨界に達した。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1973年
(昭和48年)
1/3   ラルフ・ネーダー(米)、原子力発電所の出力削減・建設停止などを米AECに勧告
1/17 原子力委原子炉安全専門審査会、原研のNSRR(原子炉安全性研究炉)の安全性認める  
1/22   米GE社、遠心分離法によるウラン濃縮研究に乗り出すと発表
1/23 日米安保協議会で水戸射爆場の3月末返還決まる。3/15返還  
1/24 原産、原子力関発地域整備促進法(仮称)制定を関係省庁に要望  
1/27 伊方原発建設反対八西連絡協議会、伊方原発設置に伴う安全審査に対して異議申し立てる  
2/14   米AEC、ウラン濃縮サービス料金を1kgSWU当たり38.5ドルに引上げると告示
2/19 核燃料再処理工場建設反対派、原電東海第二発電所の設置許可取消しを求めて総理大臣に異議申し立てる  
2/27 全国原子力発電所所在市町村協議会、緊急総会で発電所周辺地域整備法案の早期立法化を要望  
3/5   米AEC、原子炉熱出力の最大規模を380万kW(電気出力130万kW)にするとの標準化政策打出す
3/7   米議会両院合同原子力委、ウラン濃縮サービス基準と契約方式改定に関する公聴会開く
3/12 住友金属鉱山の東海核燃料工場完成(転換加工能力年産、240トン)  
3/15 原研(現日本原子力研究開発機構)JFT−2が高密度、超高温プラズマの生成、閉じ込めに成功(立方センチメートル当たり約10億個、摂氏700万度、0.02秒間)  
3/22   英通産相、下院で原子力産業を再編成し、新原子炉会社を設立すると声明
3/29 日米原子力協定改定議定書に調印(濃縮ウラン供給枠を1978年度までに着工の6000万kW分に拡大)  
3月 定検中の関西電力美浜1号炉で燃料棒の曲り・ピンホール・蒸気発生器の伝熱管もれ見つかる URENCO、1967年に年産400トンSWUの濃縮能力をもつ設備の建設を発表
4/3 閣議、発電用施設周辺地域整備法案を決定  
4/5   ユーラトム、IAEAと核拡散防止
4/14 三菱原子燃料東海製作所、転換・加工両ライン完成(転換能力日産1.5トンUO2、加工能力年産420トンU)  
4/16   米AEC、ECCS基準草案を公表
4/17 原研と荏原製作所、排煙処理(亜硫酸ガス、窒化物の除去)技術を共同開発  
4/18   ニクソン米大統領、エネルギー教書を議会に提出(高速炉の開発促進などを強調)
4/19 神戸女子薬大、高松塚古墳の彩色顔料に対する初の中性子放化分析実施  
5/9 衆院科学技術特別委、原子力安全問題で専門家を呼び聴聞会を開く  
5/10 東京電力福島第一原発2号臨界  
5/15   米AEC、機構改革(安全体制を整備)
5/16 原子力製鉄技術研究組合発足  
5/17   米、地下天然ガス田刺激のため核爆発実施(Rio Blanco実験)
5/31 伊方原発及び東海第二原発に関する異議申立てを棄却 米でラルフ・ネーダーら、ワシントン特別区地裁に稼働中の原子炉20基の運転停止を提訴
6/1 中国電力島根原発1号炉臨界  
6/4 通産省(経産省)、高温還元ガス利用による直接製鉄技術研究開発基本計画を決定 IAEA専門家会議、放射性廃棄物の海洋投棄基準勧告案を作成
6/5 原産、初の訪ソ原子力視察団派遣(団長土光敏夫原産副会長)  
6/28   米連邦地裁、ラルフ・ネーダーらの原発停止訴訟を却下
7/16   ソ連の高速増殖炉BN‐350運転開始
7/29 原子力船「むつ」の出力上昇試験、地元漁民の反対で延期  
7/31 原研、大型高温ヘリウムガス・ルー度、40気圧) 米議会両院合同委、濃縮事業の将来
7月   米ガルフ・オイル社と佛CEAが高温ガス炉燃料分野での協力協定に調印
8/14   米AECの新濃縮サービス料金1kgSWU当たり38.5ドルに
8/24   米AEC、燃料稠密化影響の最終結果出るまで、GE社製BWR10基の運転出力を5〜20%引き下げるよう指示
8/27 伊方原発建設反対八西連絡協議会、伊方原発設置許可取り消し、工事中止を求め、松山地裁に行政訴訟起す  
8/31   仏高速増殖原型炉フェニックス臨界
9/2 原子力委、BWR燃料稠密化問題で専門家を米へ派遣  
9/11   米AEC、長期固定量方式によるウラン濃縮契約開始
9/18 原子力委、初の原発公聴会「福島第二原発設置に係る公聴会」を福島市で開く、賛成27名、反対13名が意見陳述。阻止行動、機動隊と衝突  
9/19 松江市議会、島根原発公聴会開く  
9月   ユーロフュエル(仏)、MMN(ベルギー)、WH(米)3社が軽水炉燃料製造会社FBFCの設立を決定
9/27 日仏首脳会談、仏濃縮ウランの購入で合意 ICRP、医療被曝による放射線の危険性を指摘
10/20 国が伊方訴訟に対する答弁書を松山地裁に提出  
10/22 原電東海第2発電所着工  
10/31 原産臨時総会、新会長に有澤廣巳就任。「中立性」「公共性」の運営方針を打出す  
10月 定検中の関西電力美浜2号炉で燃料棒の曲り見つかる  
11/10 九州電力と玄海原発設置反対佐賀県連絡会議が原発問題公開討論会開く  
11月 原研と東京メガネ、放射線重合を利用した耐摩粍性コーティングを開発 ソ連高速増殖炉BN‐350の蒸気発生器6基中3基でナトリウム漏洩事故発生
12/7 中国電力、島根県松江市及び島根町と原発周辺住民の安全確保に関し立入り調査など規定した協定を結ぶ  
12/20 松山地裁で伊方訴訟の第1回口頭弁論  
12月   仏の高速増殖炉フェニックス送電開始
12月 北海道士幌農協、放射線食品照射施設完成。1974/4/4ジャガイモ初出荷  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1973年
(昭和48年)
1/1   国際石油資本(カルテックスを除く)、日本への原油価格を7〜10%値上げ
1/16 日本・ナイジェリア合弁のナイジェリア石油関発試掘に成功と発表  
1/27   ベトナム和平協定調印
2/14 大蔵省、外国為替を変動相場制へ移行。2/15為替相場1ドル=264円に急騰  
3/20 熊本地裁、水俣病訴訟でチッソの過失責任を認定  
6/2   OPECと国際石油資本、原油の公示価格11.9%値上げで合意、調印
6/16   ソ連書記長ブレジネフ訪米、米ソ首脳会談。6/22核戦争防止協定に調印
7/25 資源エネルギー庁発足(長官山形栄治前重工業局長)  
8/16 通産省、太陽・地熱の利用・石炭ガス化などの開発をめざすサンシャイン計画の構想発表  
9/7 通産省、初のエネルギー白書発表  
9/29 筑波大学設置。1974/4/25開学  
10/6   第4次中東戦争起る
10/17   OAPEC10カ国石油担当相会議、米国などイスラエル支持国向けの石油生産を9月比で月5%ずつ削減決定(石油戦略の発動)
10/23   エクソン、シェル両社、原油価格30%引上げを通告。いわゆるオイルショック起る
11/8 東京電力、大口需要家に対して10%節電を要請。11/9電気事業連合会、全国の需要者に10%節電を要請 エクソン、ブリティッシュ・ペトロリアム両社、対日供給量削減を通告
11/16 閣議、石油大口需要産業への10%供給削減など6項目の石油緊急対策要綱を決定。  
11/22 閣議、中東政策転換(アラブ寄りを決める)  
12/22 国民生活安定緊急措置法、石油需給適正化法を公布、施行。臨時閣議、同法でいう「緊急事態」を宣言。エネルギー供給の削減を決める  
12/23   ペルシャ湾岸6か国、1974/1/1から原油公示価格を2倍に引上げると発表


<関連タイトル>
石油危機と世界 (01-06-01-01)
石油危機と日本 (01-02-03-04)
燃料ペレットの照射挙動に関する研究 (06-01-01-01)
フランスの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-05)
世界の高速増殖炉実験炉 (03-01-05-01)
世界の高速増殖炉原型炉 (03-01-05-02)
四国電力伊方1号炉訴訟の経緯 (10-05-02-01)
日本原電東海第二訴訟の経緯 (10-05-02-02)
公開ヒアリング (11-01-01-03)
高速増殖炉BN-350(発電・海水脱塩炉)の建設 (16-03-02-07)


<参考文献>
(1) 森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2)原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3)森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(4)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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