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<概要>
 世界各国で開発されている11基の高速増殖炉実験炉に関する主要な設計諸元を、比較し易いように表形式にまとめた。このうち、 Rapsodie 、KNK-2、DFR、EBR-2、FermiおよびFFTFは運転を停止し、閉鎖された。また、PECは建設を中止した。一方、最近経済発展が急峻な中国では新たにCEFRの建設を開始した。また、日本の常陽は炉心および冷却系を改造して、出力を今までの1.4倍に増加して照射効率の向上を図った。実験炉の型式は殆どループ型であるが、EBR-2のみタンク型(プール型とも云う)である。燃焼度は、最高17.2万MWd/tを達成している。冷却材のナトリウムの温度は550℃以下である。
<更新年月>
2004年11月   

<本文>
 アメリカが建設し既に閉鎖されているClementine(1946年初臨界,25kWt)、EBR-1(1951年初臨界,0.2MWe)、LAMPRE(1961年初臨界,1MWt)およびSEFOR(1969年初臨界,20MWt)の3つの実験炉を除いて、世界各国で開発された高速増殖炉実験炉は、Rapsodie(フランス)、KNK-2(ドイツ)、FBTR(インド)、PEC(イタリア)、常陽(日本)、DFR(イギリス)、BOR-60(ロシア)、およびEBR-2、Fermi、FFTF(アメリカ)の10基である。また中国のCEFRは2007年の初臨界を目指して、現在建設中である。
 イタリアのPECは建設途中で中止した。またRapsodie、KNK-2、DFRおよびFermiは閉鎖または解体された。また、EBR-2及びFFTFも閉鎖されることになり、現在運転中のものはFBTR(42.5MWt,15MWe)、常陽(140MWt)およびBOR-60(55MWt,12MWe)の3基である。常陽は、炉心および冷却系を改造し、2003年10月に定格140MWt運転を達成した。
これら実験炉の型式、燃料および冷却材の種類、現状などを表1に示す。殆どはループ型で、混合酸化物燃料(PuO2−UO2)、ナトリウム冷却の炉であるが、閉鎖されたEBR-2はタンク型(プール型とも呼ぶ)で金属ウラン燃料を使用していた。また、DFRの冷却材はNaKを用いていた。
 表2は濃縮度、核物質量、出力密度、燃焼度および増殖比の数値である。全般的に、燃焼度は軽水炉よりも大きく、最大17万2千MWd/tや15万5千MWd/tを達成したものもある。
 冷却系の流量、温度などの数値を表3に示した。冷却材のナトリウムの沸騰点は約883℃であり、可成り高温で使用できるが、原子炉の構造材などに使用しているステンレス鋼の高温での物性値データが少ないことなどの理由で、高温側でも550℃以下のナトリウム温度で運転されている。
 高速増殖炉の主要機器である炉容器、中間熱交換器および蒸気発生器に関するパラメータを表4に、制御棒原子炉格納容器、非常用冷却系および工学的安全設備に関する設計諸元を表5に示した。ロシアのBOR-60のみ原子炉格納容器がコンクリート製の一般建築級である。高速炉では冷却材にナトリウムを使用しているため、工学的安全設備として軽水炉のような冷却水を使う非常用炉心冷却設備(ECCS)を使用しないで、炉容器や配管に保護容器(ガードベッセル)を設けるよう設計されている。
<図/表>
表1 世界の高速増殖炉実験炉の一般設計諸元
表1  世界の高速増殖炉実験炉の一般設計諸元
表2 世界の高速増殖炉実験炉の炉心設計諸元
表2  世界の高速増殖炉実験炉の炉心設計諸元
表3 世界の高速増殖炉実験炉の冷却系設計諸元
表3  世界の高速増殖炉実験炉の冷却系設計諸元
表4 世界の高速増殖炉実験炉の主要機器設計諸元
表4  世界の高速増殖炉実験炉の主要機器設計諸元
表5 世界の高速増殖炉実験炉の主な安全設備設計諸元
表5  世界の高速増殖炉実験炉の主な安全設備設計諸元

<関連タイトル>
世界の高速増殖炉原型炉 (03-01-05-02)
世界の高速増殖炉実証炉 (03-01-05-03)
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)
高速実験炉「常陽」における研究開発 (03-01-06-03)

<参考文献>
(1)IAEA:LMFBR Plant Parameters 1991,IWGFR/80(1991)
(2)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑2003年版,(平成15年10月)
(3)日本原子力産業会議(編):世界の原子力発電開発の動向 1996年次報告,(平成9年4月30日)
(4)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック2003年版、日本原子力産業会議(2003年8月)
(5)動力炉・核燃料開発事業団:第30回IAEA/IWGFR定例年会報告(1997年5月、北京)、PNC−TN1410−97−024
(6)L. U. Daogang and X. U. Mi :The Status of Fast Reactor Technology Development in China, IAEA TWG−FR, 37th Annual Meeting, May (2004)
(7)サイクル機構技報:「高速実験炉「常陽」の高度化計画(MK−III計画)と今後の展望」、No21 別冊、2003.12
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