<大項目> 原子力資料集(年表など)
<中項目> 原子力年表
<小項目> 黎明期(1895年〜1952年)
<タイトル>
1926年〜1939年(昭和元年〜昭和14年) (17-01-01-02)

<概要>
 1920年代後半に入ると、量子力学を中心に原子核に関する研究の大きな発展があった。シュレーディンガー(独)による量子力学(波動力学)の構築(1926)、フェルミ(伊)によるフェルミ統計の構築(1926)、ハイゼンベルク(独)による不確定性原理の提唱(1927)、デヴィソン(米)らによる電子線の回折実験(1927)、ボーア(デンマーク)による相補性原理の構築(1927)、マラー(米)のX線 照射による人為的突然変異の創出実験(1927)など、その後の原子力発展の基礎となる発見、実験が続いた。
 1930年代に入ると、ローレンス(米)らによるサイクロトロン(1930)、ヴァンデグラフ(米)(1931)およびコッククロフト(英)・ウォルトン(アイルランド)(1932)による粒子加速器が発明された。またチャドウィック(英)による中性子の発見(1932)、アンダーソン(米)による宇宙線中の陽電子の発見(1932)、フェルミ(伊)によるベータ崩壊理論の提唱(1933)、ジョリオ・キュリー夫妻(仏)による人工放射能の発見(1934)、チェレンコフ(ソ連)によるチェレンコフ効果(放射)の発見(1934)、湯川秀樹(日)による中間子論の提唱(1935)、アンダーソン(米)による宇宙線中間子の発見(1937)、ハーン・シュトラスマン(独)による核分裂の発見(1938)など、現代の原子力利用の基礎となる発明、発見が続いた。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>

1.内外の原子力関係の出来事(1926年〜1939年)(昭和元年〜昭和14年)
   国 内                     海 外
1926年(昭和元年)
                      − シュレーディンガー(独)、量子力
                        学(波動力学)の構築
                      − フェルミ(伊)、フェルミ統計の構
                        築
1927年(昭和2年)
                      − ハイゼンベルク(独)、不確定性原
                        理を提唱
                      − マラー(米)、X線による遺伝子
                        の人為的突然変異創出の実験
                      −デヴィソン(米)ら電子線の回折
                      −ハイトラー(独)、ロンドン(米)、
                       水素共有結合の量子論
                      −ボーア(デンマーク)、相補性原理
1928年(昭和3年)
                      − ガモフ(ソ連)、α崩壊の量子力学
                        的理論(トンネル効果)を発表
                      − クライン(独)、仁科(日)、コン
                        プトン散乱に関するクライン−仁科
                        の式を提出
                      − ガイガー、ミュラー(独)、Geiger
                        −Mueller計数管を考案
1929年(昭和4年)
                      − ハイゼンベルク(独)、パウリ(オ
                        ーストリア)、相対論的場の量子論
                        を提唱
                      − アインシュタイン(独)、統一場の
                        理論を発表
                      − コッククロフト、ウォルトン(英)
                        、粒子加速器を発明
1930年(昭和5年)
                      − ローレンス、リビングストン(米)
                        、サイクロトロンを発明
1931年(昭和6年)
                      − ヴァン・デ・グラーフ(米)、静電
                        高圧発生装置の発明
                       − ユーリー、マーフィ、ブリックウェ
                        ッド(米)、重水素のスペクトル線
                        を発見(32年にテーラーらが分離
                        に成功)
1932年(昭和7年)
                      − アンダーソン(米)、宇宙線中に陽
                        電子発見
                      − コッククロフト、ウォルトン(英)
                        、高電圧加速装置でLi原子核の人
                        工的変換に成功
                      − チャドウィック(英)、中性子の発
                        見。この直後、ハイゼンベルグが原
                        子核は陽子と中性子から構成される
                        と指摘
1933年(昭和8年)
                      − フェルミ(伊)、ベータ崩壊の理論
                        発表
1934年(昭和9年)
                      − 人工放射能の発見(ジョリオ・キュ
                        リー夫妻(仏))
                      − ローレンス(米)、サイクロトロン
                        により人工放射性核種を作る
                      − フェルミら(伊)、ウランの熱中性
                        子照射による超ウラン元素の生成を
                        試みる
                      − 三重水素(トリチウム)発見(ロジ
                        ャース(米)ら)
                      − チェレンコフ(ソ連)、チェレンコ
                        フ効果の発見
1935年(昭和10年)
2. 2 湯川秀樹、中間子論を発表
  − 理研でコッククロフト・ウォルトン   − ヘベシー(ハンガリー)、初めて
   型加速器完成               放射性核種トレーサーに応用(P
                        −32、物質代謝の研究)
1936年(昭和11年)
                      − 米で、サイクロトロンを用いた中性
                        子による治療の研究はじまる
                      − 中性子の回折現象実証(ミッチェル
                        、バワーズ(米))
                      − 米X線ラジウム防護諮問委員会、全
                        身許容線量率を1日当り0.1レント
                        ゲンにすることを勧告
1937年(昭和12年)
3.30 大阪帝大でサイクロトロン完成(重   −アンダーソン・ネッダマイヤー(米)
   陽子、4.5 MeV)          宇宙線に中間子発見
4.  理研でサイクロトロン完成(重陽子
   、3MeV)
4.15 N.ボーア(デ)来日
1938年(昭和13年)
  − 菊池正士著『原子核及び元素の人工
   変換』(上巻)
                     12.22 ウランの核分裂現象発見(ハーン
                        、シュトラスマン(独))
1939年(昭和14年)
  − 理研、高速中性子によるウラン、ト   − 世界各大学および研究機関でウラン
   リウムの核分裂現象追試          に関する研究が盛況
  − 理研でサイクロトロン製Na‐24   − 核分裂によるエネルギーの解放
   を動物実験に使用             実証される(フリッシュ(英))
  − 京大で核分裂中性子数の追試
                     2. 2 ウラン研究の成果を非公開にする動
                        き出る(シラード(米)による)。
                        独側の利用を防ぐため仏の研究者に
                        要請
                     2.  核分裂中性子発見(米およびポーラ
                        ンドで)
                     2.  遅発中性子発見(ロバート(米)ら)
                        (核分裂の制御可能に)
                     2.  N.ボーア(デ)、ウランの天然同
                        位体のうちU‐235のみが核分裂
                        性であると発表
                     2.〜4.ジョリオ(仏)ら、ウランの核分裂
                        中性子が複数個であることを確認
                        (核分裂連鎖反応の可能性確立)
                     3.16 フェルミ、米海軍に核分裂の軍事利
                        用を急ぐよう要請
                     4.24 独、ハルテヒ書簡により原爆に関心
                        を示す
                     4.25 ボーア(デ)およびウイラ−(米)
                        、米物理学会で核分裂の理論発表
                     5. 1 原子炉に関する世界最初の特許発効
                        (ジョリオ(仏)ら出願、スイス特
                        許233011号)
                     5.13 仏、ベルギーのユニオン・ミニエー
                        ル社とウラン50トンの購入契約結
                        ぶ(第二次世界大戦ぼっ発のため、
                        仏入手できず)
                     8. 3 アインシュタイン、ルーズベルト米
                        大統領宛書簡で「原爆製造の早期着
                        手」を勧告
                      8.  ジョリオ(仏)ら、減速材中での
                        中性子増殖実験を行う
                      9.26 独、ウラン委員会発足
                     10.21 米、ウラン問題大統領諮問委発足
                     11. 1 米ウラン諮問委報告書を提出(原爆
                        と原子力の工業利用の可能性を強調
                        。黒鉛の断面積測定に黒鉛4トンと
                        酸化ウラン50トンの入手を勧告)

2.社会一般の出来事(1926年〜1939年)(昭和元年〜昭和14年)
1927.12.30 上野−浅草間2.2kmに日本初の地下鉄開業
1928. 3.10 高柳健次郎が世界で初めてブラウン管を用いたテレビ実験に成功
1929.10.24 ニューヨークウォール街の証券取引所で株価大暴落。世界恐慌の発端となる
1931. 9. 1 上越線清水トンネルが開通。全長9,702m
   9.18 満州事変勃発
1933. 1.30 ナチス政権成立
   2.24 日本、国際連盟を脱退
1934. 9.21 室戸台風が関西に記録的な被害もたらす
   12.29 日本、ワシントン海軍軍縮条約を破棄
1936.12. 5 スターリンの独裁的地位が確立
1937. 7. 7 日中戦争はじまる
1938. 4. 1 国家総動員法公布。政府は勅令によって無制限に人的、物的資源を統制、運用することが可能になる
1939. 3.− 東洋レーヨン、ナイロン66の合成に成功
   9. 3 英仏、独に対して宣戦。第2次世界大戦起る

<関連タイトル>
トリウムの放射能分析から放射能壊変の法則を導いたラザフォードとソデイの実験 (16-03-03-01)
ユーレイによる重水素の発見 (16-03-03-05)
原子核の発見となったラザフォード、ガイガー、マースデンのアルファ線散乱実験と解析 (16-03-03-06)
人工放射性核種を初めて生成したジョリオ・キュリー夫妻のアルファ線衝撃実験 (16-03-03-08)
チャドウィックによる中性子の発見 (16-03-03-09)
ハーン、シュトラスマン、マイトナー、フリッシュによる核分裂現象の発見 (16-03-03-11)

<参考文献>
(1) 日本原子力産業会議(編):原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月)
(2) 伊東俊太郎ほか(編):科学史技術史事典、弘文堂(1983年3月)
(3) 国立天文台(編):理科年表 2001、丸善(2000年11月)、p.630-631,p.1031
(4) 樺山紘一ほか(編):クロニック 世界全史、講談社(1994年11月)
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