<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> 中国
<タイトル>
中国の核燃料サイクル (14-02-03-04)

<概要>
 中国では、急速に原子力発電開発を進展させているため、それに対応する燃料サイクルを中国核工業総公司(CNNC)が中心になって展開している。ロシア、フランスなど海外からの技術支援で導入した核燃料サイクル技術の国産化を目指し、バックエンド戦略として再処理路線(クローズド・サイクル路線)を進めている。ウランの確保にあたっては国内生産の拡大と外国での開発を積極的に進めているが、現在のウランの需給量は所要量の約半分で、残りを輸入に頼っている。1962年末に完成した蘭州のウラン濃縮プラントでは、将来に備えて設備容量の拡張やロシアの遠心分離法技術の導入が行われている。
 燃料加工については、各種の原子炉用の燃料要素が加工されてきた。PWR用の燃料集合体の生産ラインを四川省の宜賓に外国の援助で建設し、1984年末に秦山1号炉の試験用燃料を完成したが、このプラントは設備を拡充して、現在、大亜湾原子力発電所のPWR燃料集合体を製造している。包頭では、ウェスチングハウス社のAP1000用燃料製造に向けた燃料製造施設の建設を進めている。再処理に関しては軍事目的のプラントを甘粛省に建設し、1970年初めから運転している。2006年には、甘粛省の蘭州で再処理パイロットプラントが完成した。低・中レベル放射性廃棄物についてはアスファルト固化及びセメント固化を実施し、浅地層処分する。高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化し、深地層処分場に埋設する方針である。
<更新年月>
2011年01月   

<本文>
 急速に原子力発電開発を進展させている中国の核燃料サイクルは、海外から導入した技術の国産化を目指し、バックエンド戦略として再処理路線(クローズド・サイクル路線)を進めている。中国は1970年代初頭から、プルトニウム生産炉の照射済燃料再処理や回収ウランのリサイクルを含め、軍事目的の燃料サイクル確立に力を注いできた。1979年以降、中国の原子力産業は国家経済への寄与の観点から民需転換が始まり、1981年の原子力発電開発計画で原子力発電をエネルギー、経済、科学技術、国防を併せ持つ総合力として位置づけ、核燃料サイクル事業の目的が変更された。また、1998年3月から原子力関係行政組織を改組して、原子力規制当局の分離、政府機構と企業組織の分離(政企分離)を行い、原子力開発を企業体制化した(図1参照)。その結果、中国の原子燃料サイクル全般の行政及び実際の事業の責任を有していた中国核工業集団公司(CNNC)の行政管理部門は、国防科学工業委員会(COSTIND)の中国国家原子能機構(CAEA)へ移管され、科学技術委員会にあった核安全局(NNSA)は、環境保護局(NEPA)の核安全管理司(国家核安全局)に組織変更された。集団公司は出資者としての義務、権利を行使する一方、国に対しては国有資産である公司及び各企業の価値維持とその価値増加の責任を負うことになった。2008年3月から、エネルギー環境管理部門の強化、市場経済の促進、エネルギー安全保障政策の強化へと、更なる行政改革が加えられている。
 なお、2011年1月時点での原子力発電設備容量は、13基、約10.8GWeであり、全発電設備容量に占める割合は約1%(2010年末の全設備容量は962GWe)である。炉型の内訳は、加圧水型軽水炉(PWR)が11基(国産5基、フランスFramatome(現在はAREVAの原子炉部門)2基、ロシアVVER-1000が2基、加圧型重水炉(PHWR=カナダ式CANDU6)が2基である。建設中は26基、約28.7GWeで全て2015年中には商業運転を開始する予定であり、2015年末までに原子力発電設備容量は約39.4GWeに達する。さらに、計画中のものは、51基、約58.9GWeあり、運転中及び建設中のものを加えると98.4GWeとなる見通しである。
1.ウラン資源の確保と探査
 2007年11月の「原子力発電中長期発展計画」では、2020年時点で40GWeの原子力発電所の運転を見込んでいたが、現在では2015年までに達成される見通しである。そのウラン需要は年間10,000tUと予測されている。2009年現在、中国のウラン生産量は年間推定750tUで国内の需要約1400tUを賄えず、所要量の半分程度が輸入によって賄われている。今後、さらに原子力発電設備容量の急激な拡大に備え、国内生産量の拡大、ウラン備蓄及び海外ウラン資源権益の買収など、中国は積極的なウラン確保政策を展開している。
 中国におけるウラン採鉱は、核工業部(中国核工業集団公司:CNNC)地質局(BOG)の指導のもとに1955年に開始された。40年間の探鉱活動は、中国全土の31%に相当する約300万km2ガンマ線による地表調査が行われ、250万km2について航空機によるエアボーン調査と一部の坑道掘進を実施して、12のウラン鉱床区と8つの有望なウラン地域を確認した。中国における既知のウラン鉱床は地理的に広く分布しているが、そのうちの大半は中国の北西部と東部に集中している。ウラン鉱床は群をなして存在する傾向があり、代表的な鉱床は、江西省相山の29,000tUや新疆ウイグル自治区伊梨の26,000tUのほか、2010年12月には内モンゴル自治区オルドス盆地で30,000tUのウラン資源の発見が報じられている。Uranium 2009(OECD/NEA・IAEA)によれば、これまでの中国の発見資源量は<130ドル/KgUのコスト範囲で171,400tU。ウラン資源探査は現在もまだ進んでおり、全埋蔵量は未知である(図2参照)。
 また、海外でのウラン鉱山開発は、2011年からモンゴル(生産量:700tU)と、37.2%の権益を持つニジェールのAzelik鉱山(生産量:700tU)で生産を開始するほか、ロシア、ジンバブエ、オーストラリア、カザフスタン、タンザニア、ザンビアにおいてウラン鉱山開発を目指している。現在、ウランのスポット市場を利用して2009年には3,000tU、2010年には5,000tUを調達する予定であるが、中・長期的なウランの安定供給確保を目指して、2010年6月には、CNNCの子会社China Nuclear Energy Industry Corporation(CNEIC)がカナダのCAMECOと2020年まで8,846tU、2010年11月には中国広東核電集団有限公司(CGNPC)がフランスAREVAと10年間で20,000tU、カザフスタンのKazatompromと2020年までに24,200tU、カナダCAMECOと2025年までに11,153tUの長期購入契約を結んだことが公表されている。
2.採鉱、製錬
 採鉱・製錬に関しては、衡陽(湖南省のホンヤン、Hengyang、1963年操業開始、1996年から停止・待機)、撫州(江西省のフーチョウ、Fuzhou)、崇義(江西省のチォンイ、Chongyi、)、伊寧(新彊省のイニン、Yining)、藍天(陜西省のランティエン、Lantian)、本渓(遼寧省のベンシー、Benxi)など7ヵ所に生産センターがある。2009年にはこれらのセンターで合計750tUを生産したと推定される。図3にウラン生産センターを、図4に中国の原子力関連施設を示す。
3.六フッ化ウランへの転換
 ウラン精鉱の六フッ化ウランへの転換プラントは、甘粛省(カンスー、Gansu)蘭州(ランチョウ、Lanzhou)近郊に建設され、1980年に操業を開始した。年間生産能力は400tHMである。CNEIC(China Nuclear Energy Industry Corp.、CNNCの子会社)により運転されている。
4.ウラン濃縮
 中国のウラン濃縮プラント(ガス拡散法)は、蘭州の中心部から西約40kmに位置し、1958年初期に旧ソ連の援助を得て建設、1964年から操業を開始した。年間濃縮能力は200tSWUと評価されており、運転・管理の経験を蓄積すると共に、研究及び技術開発が行われ、軽水型原子力発電所で使用する濃縮ウラン及び原爆用の高濃縮ウランが製造されたが、1999年6月に解体・撤去が決定された。
 一方、商業用ウラン濃縮プラントは全てロシアの遠心分離法技術が導入されている。ロシアと中国は1992年12月に協定を結び、ロシアの協力支援を得て、遠心分離濃縮施設(年間濃縮容量500tSWU)を陜西省(シェンシー、Sheanxi)漢中(ハンチョン、Hanzhong)に建設、1996年から運転を開始した。操業当初は200tSWU/年で運転を開始したが、1998年に300tSWUが増設され、最終設備容量は1,500tSWUとなる予定である。
 また、中国とロシアは2008年5月、第4期目のウラン濃縮工場建設と濃縮ウランの供給に関する協力の大枠について調印した。調印内容は、濃縮ウランの供給を2010年より11年間実施すること、甘粛省蘭州にウラン濃縮工場(設備容量:500tSWU/年)を建設することで、2008年8月にはロシアの輸出窓口TENEX(Technabexport)と中国側の実施企業CNEICで建設契約が結ばれ、2012年の操業開始を目指している。建設契約は2001年から1期500tSWU/年で開始され、現在3基1,500tSWU/年が完成している。
5.燃料の成型加工
 UO2燃料成型加工プラントの建設は1950年代末に開始され、各種燃料が加工されてきた。原子力発電の開発計画本格化に伴い、1975年にPWR燃料の成型加工プラントが四川省(スーチョアン、Sichuan)の宜賓(イービン、Yibin)で建設され、1987年から運転している。1990年末に秦山1号(PWR、30万kW)炉の初装荷燃料を供給した。1991年にはフランスのFRAGMA社と技術移転契約を結び規模を拡張して、広東大亜湾の100万kW級PWR燃料をも製造している。設備容量は1998年時点200tU/年であったが、2010年に800tU/年に設備拡張が中国政府に承認され、2020年には1000tU/年になる予定である。
 また、1998年に内モンゴル自治区の包頭(Baotou)に第二燃料加工工場が建設され、主に泰山IIIのCANDU6の燃料製造が行われている。CNNCの子会社のChina North Nuclear Fuel Co Ltdが運転を行っていて、山東石島湾1号(高温ガス冷却炉、30万kW)用9%濃縮ウラン燃料の製造も行うことになっている。さらには、燃料製造会社CNNC Baotou Nuclear Fuel Co Ltdを設置し、ウェスチングハウスAP1000用の燃料を包頭燃料工場で製造する予定で、2013年の運転開始を予定している。
 なお、クローズド燃料サイクルを目指す中国は、再処理して回収したプルトニウムを利用してMOX燃料を製造する計画であり、2010年10月にはパイロットプラント建設の大枠がベルギー政府と合意され、CNNCとベルギーのベルゴニュークリア(Belgonucleaire)、SCK-CEN(原子力研究機関)、トラクトベル(Tractebel:フランスのエネルギー企業GDF Suezの子会社)との間で技術指導・技術移転が図られる予定である。
6.燃料棒の被覆管材料であるジルコニウムの製造
 2009年4月にウェスチングハウス社とState Nuclear Baoti Zirconium Industry Co Ltd(SNZ:国家核電技術公司(SNTPC)と中国最大のチタン製造会社Baoti Group Limitedの合弁会社)が出資比率半々の合弁会社S&W Zirconium Metallurgy Co.Ltd(S&W)を設立することで合意した。S&Wは、江蘇省の南通(Nantong)に工場を建設し、原子炉級のジルコニウム管100t/年を製造する予定で、2012年から製造を開始する。また、2010年11月、CNNCとフランスAREVA社は燃料集合体加工用ジルコニウム管の製造販売を行う合弁会社CAST(CNNC AREVA Shanghai Tubing Co.)を立上げ、上海に工場を建設し、2012年の生産開始を予定している。
7.再処理
 酒泉(チワチュアン、Jiuquan)軍事用再処理プラントは、使用済の天然ウラン燃料からプルトニウムを抽出するもので、甘粛省の玉門(ユーメン、Yumen)の北西約45kmにある。また、ピューレックス法を用いた年間50tHMを処理する多目的再処理パイロットプラント(RPP)が甘粛省蘭州(ランチョウ)で2006年から稼動し、2009年から年間100tHMまで拡張されて試運転を開始している。なお、使用済燃料貯蔵プールの受入れ容量は550tHM(1300tHMに拡張予定)である。また、甘粛省嘉峪関(Jiayuguan)では年間800tHMの商業用再処理プラント(MRF)の建設をフランスAREVAの技術支援を得て計画している。使用済燃料プールの受入れ容量は3000tHM〜6000tHMで、2018年から受入れを開始し、2025年頃からホット試験を開始する予定である。
8.放射性廃棄物の処理、処分
 中国では、原子力発電の拡大に伴って増加する放射性廃棄物管理の枠組みを定めるものとして、2003年10月に「放射能汚染防止法」が施行され、中・低レベル放射性廃棄物を「浅地層処分」すること、高レベル放射性廃棄物を「集中的に深地層処分」することが規定されている。
 蒸発減容された中・低レベル液体放射性廃棄物の処理方法については、アスファルト(ビチューメン)固化、セメント固化技術が、1994年からCEAの技術協力を得て実証されている。中・低レベル廃棄物は処理後5年程度発電所内に貯蔵して浅地層処分する。1999年には「西北廃棄物処分場」(甘粛省北山地区)の工事が終了し、試験操業段階に入った(処分容量:6万m3)。また、中低レベル廃棄物処分用の水圧注入インシチューグラウト処分施設(液体廃棄物を水圧で直接地層に注入・セメント固化する)も建設されている。2000年には稼動中の広東嶺澳・大亜湾原子力発電所から5km離れた北龍サイトに低・中レベル放射性廃棄物処理場が試験操業を開始している(処分容量:8万m3)。両処理場に関しては2011年1月、中国国家核安全局が操業許可を発給し、本格操業を開始している。
 なお、軽水炉より発生する使用済燃料は再処理され、高レベル放射性廃液はガラス固化、カナダ型重水炉(CANDU炉)から発生する使用済燃料はそのまま地層処分される。ガラス固化の実物大試験施設のシステムと施設の大部分をドイツから輸入して宣賓核燃料工場(Yibin)に完成している。現在、深地層処分場の立地候補サイトは北西部甘粛省のゴビ砂漠に位置する北山(Beishan)だけで、予備的サイト特性調査は1989年から開始された。2020年まで実験室レベルの研究開発とサイト選定を行い、2040年まで地下研究所の建設及び試験、プロトタイプ処分場の設計・建設、2050年頃までプロトタイプ処分場での実証試験を予定している。なお、高レベル放射性廃棄物処分は中国核工業集団公司(CNNC)が行い、原子力施設安全全般に関わる規制機関として国家環境保護部(MEP)が、放射性廃棄物の管理、処理・処分の長期計画等の政策の立案、研究開発資金の確保等の実務管理を国家原子能機構(CAEA)が行う。
(前回更新:2004年1月)
<図/表>
図1 中国における原子力産業部門組織図
図2 中国における国内ウラン年間生産量の推移
図3 中国の主要ウラン生産センター
図4 中国の原子力関連施設所在地

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
中国の再処理施設 (04-07-03-12)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(5)−アジア・オセアニア編− (05-01-03-18)
中国原子能機構、中国核工業集団公司及び国家核安全局 (13-01-02-03)
中国のエネルギー資源、エネルギー需給、エネルギー政策 (14-02-03-01)
中国の電力事情と発電計画 (14-02-03-02)
中国の原子力発電開発 (14-02-03-03)
中国の原子力国際協力 (14-02-03-05)
中国のエネルギー事情 (14-02-03-06)
中国の原子力開発体制 (14-02-03-07)

<参考文献>
(1)世界原子力協会(WNA):China's Nuclear Fuel Cycle、http://www.world-nuclear.org/info/inf63b_china_nuclearfuelcycle.html
(2)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2011、(2010年10月)、p.125、128-129
(3)公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター:諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について(2010年2月)及び
(4)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2010年版(2010年9月)、第6、12章
(5)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業第1編、(2008年10月)、中国
(6)OECD・NEA/IAEA:Uranium 2009:Resources, Production and Demand、(2010年7月)、China
(7)(社)日本原子力産業協会:ウラン資源量と生産量(レッドブック「ウラニウム 2009」)、http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press-kit20100826-1.pdf
(8)(独)日本原子力研究開発機構:Topics10-6 中国の最近の原子力開発動向(2010年12月)、http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t10-6.pdf
(9)中国核工業総公司(CNNC):CNNC NEWS
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