<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> 中国
<タイトル>
中国のエネルギー資源、エネルギー需給、エネルギー政策 (14-02-03-01)

<概要>
 中国はエネルギー資源に比較的恵まれており、2013年時点の石炭の採掘可能確認埋蔵量は1,145億トンで、米国、ロシアについで世界第3位である。また、石油の確認埋蔵量は約25億トン、天然ガスの確認埋蔵量は約3.27兆m3で、全包蔵水力は4億4,600万kW(2010年)、世界最大の水力資源を有している。しかし、石炭の約81%は北部の山西省、新疆、内蒙古と陝西地区に、石油と天然ガスの約52%は西部に、水力の潜在量の約70%は南西部にと偏在しているため、華東、華中、華南の都市部や工業地帯はエネルギー不足に悩まされている。
 中国の2013年の経済成長率は7.8%に達した。近年、経済の高成長が継続する一方で、都市と農村の経済格差の拡大、エネルギー資源の確保、環境汚染、社会保障の拡充等の課題を抱えている。2011年3月に採択された第12次5カ年計画(2011年〜2015年)では、経済改革を継続する考えが示されるとともに、輸出依存度を低減するため、国内消費を拡大する必要性が強調された。また、総エネルギー消費の約75%を占める石炭から、非化石エネルギーやクリーンエネルギーへのエネルギー転換を進めている。
<更新年月>
2015年02月   

<本文>
1.中国の国情
 中国は、国土面積959.7万km2(日本の約26倍、世界の陸地面積の6.5%)、人口約13億6,076万人(日本の約10倍、世界第1位)を有し、首都を北京におく人民民主共和制の社会主義国家である。人口の約92%は漢民族であるが、チワン族、回族、ウイグル族、イ族、モンゴル族、チベット族などの55の少数民族が集まる多民族国家であり、漢語を中心に各民族固有の言語が使用され、仏教、イスラム教、キリスト教等の様々な宗教が存在する。また、1997年7月1日に英国から香港が返還されたことにより、行政区画は4つの直轄市と台湾を含む23の省、5つの自治区と2つの特別行政区を持つことになった(図1参照)。表1に中国の国土概要(2013年)を示す。
2.中国のエネルギー資源
 中国はエネルギー資源に比較的恵まれており、2013年の石炭の採掘可能確認埋蔵量は1,145億トンで、米国、ロシアについで世界第3位である。また、石油の確認埋蔵量は25億トン、天然ガスの確認埋蔵量は約3.27兆m3である。
 水力資源も豊かで全包蔵水力は4億4,600万kW(2010年)、このうち経済的に開発可能なものは約66%で、世界最大の包蔵水力を有している。中華人民共和国が誕生した1949年には水力発電設備容量は16万3,000kW、年間発電量7億1,000万kWhであったが、2011年には発電設備容量は2億4,900万kW(全設備容量の20%)、年間発電量6,870億kWh(全発電電力量の15%)に達した。2012年7月には三峡ダムプロジェクト(発電設備容量2,250万KW、年平均発電電力量847億kWh)が完成し、水力による発電量は世界第1位となっている。中国政府は2015年末までに、水力発電所を3億2,500万kW増設する目標を掲げている。なお、三峡ダムプロジェクトとは中国湖北省、長江(揚子江)中流域における洪水防御、発電、航路整備を目的とした、世界最大級のダムプロジェクトである。1993年に着工、2006年にダム本体が完成、32発電機(1基あたり70kW)を設置して、2012年からフル稼働となった。
 中国は以上のようにエネルギー資源に恵まれているが、急激な経済成長によって慢性的なエネルギー不足に悩まされている。その主たる原因としては、エネルギー資源の偏在、産地と需要地の距離の大きさ、輸送力の整備不足などが挙げられる。石炭資源の約81%は北部の新彊、内蒙古、山西及び陝西の2省と2自治区にある。また、石油、天然ガス資源の約52%は西部にあり、水力発電の潜在量の約70%は南西部(四川、貴州、雲南、チベット)にある。これらエネルギーの生産地はエネルギーの消費地から余りにも遠く、需要の多い華東(山東、江蘇、安徽、浙江の各省と上海市)、華中(湖北、湖南、江西、河南の各省)及び華南(福建、広東の各省)へ電力を供給する手段の確保が急務となっているほか、火力または原子力による発電設備の拡充が急がれている。
3.エネルギー需要とエネルギー政策
 中国のエネルギー政策は、エネルギー需給目標として政府が中期的な重点事業や経済運営のあり方を5年ごとに示す5カ年計画の中で定められる。5カ年計画は旧ソビエト連邦に倣い、中国社会主義経済の工業化を目指して導入されたもので、第1次計画は1953年〜1957年に実施された。1966年には文化大革命により計画の延期や中断もあったが、1981年〜1985年の第6次計画以降は制度として定着した。計画に際しては国家発展改革委員会(NDRC)を中心に2年ほど検討され、開始前年の秋に、共産党の中央委員会総会が「政府への提案」の形で基本方針を確認。1年目の3月に開く全国人民代表大会(立法権を有する国家の最高権力機関)で政府提案を採択し、決定される。
 1996年3月17日に開かれた第8期全国人民代表大会第4回会議では、「国民経済・社会発展のための第9次5カ年計画と2010年までの長期目標」が採択された。第9次5カ年計画における2000年の目標は一次エネルギー総生産量13億5,000万トン標準炭、うち原炭14億トン、原油1億5,500万トン、天然ガス250億m3、水力発電2,190億kWh、及び原子力発電130億kWhであった。総発電電力量は1兆4,000億kWh、うち火力発電1兆1,675億kWhで、年平均伸び率は約7%と想定した。中国はこれらの目標を達成し、2013年には一次エネルギー総生産量は34億万トン標準炭に増大し、エネルギー構成比は原炭75.6%、原油8.9%、天然ガス4.6%、水力・原子力・風力10.9%となった。なお、2012年の発電電力量は水力発電が8,721億kWh、原子力発電が973.9億kWhである(表2及び表3参照)。
 現在、第12次5カ年計画(2011年〜2015年)が進行中で、2014年1月には国家能源局(NEA)により、計画最終年度に向けた行動指針「2014年のエネルギー産業の指導意見に関する通知」が公表された。第12次計画は石油・天然ガスのエネルギー発展期と位置付けられ、環境改善と非化石エネルギーやクリーンエネルギーへのエネルギー転換政策の強化が目標となっている。具体化した活動方針は下記の10項目である。
 (1)エネルギー消費方式の変革による消費総量を抑制する。
 (2)大気汚染問題の解決措置を実施しエネルギー構造を改革する。
 (3)クリーンエネルギーの開発によりエネルギーのグリーン化を進める。
 (4)石油・天然ガスの開発によりエネルギー安全保障能力を向上させる。
 (5)大規模石炭火力発電基地の適切な配備と大容量の送電網の整備を行う。
 (6)エネルギー関連の技術革新を進める。
 (7)エネルギー分野の国際協力を深化させる。
 (8)エネルギーの民生部門への供給インフラ整備を加速する。
 (9)エネルギー産業の改革や民間資本の導入拡大を進める。
 (10)エネルギー業界の管理を強化し規制緩和(行政審査項目の削減他)を進める。
 また、毎年1月に国家能源局が開催するエネルギー工作会議(党・中央政府関係機関ならびに各地方(省、自治区、直轄市)の発展改革委員会等関係機関、そしてエネルギー企業の幹部、業界団体の代表など幅広い関係者が参加する)のなかで、エネルギー需給、エネルギー効率向上、エネルギー消費総量の抑制という「三つの安定」と、消費構造、技術革新と技術改革の「三つの進展」を図る方針が示された。図2にエネルギーに関わる管理体制を示す。
 なお、2013年時点の総発電設備容量は12億5,768万kW、発電設備の内訳は火力8億7,009万kW、水力約2億8,044万kW、原子力1,466万kW、風力7,652万kW、太陽光1,589万kW、その他8万kWで、対前年比は9.67%の増加である。中国では2000年以降、設備投資が積極的に行われ、2006年には対前年比20.6%、1億652万kWの増加であった。2000年〜2013年までの年成長率を電源別に比較すると、火力・水力の10%程度に比べ、原子力の年成長率は16%、また風力、太陽光などの再生可能エネルギーの利用は2009年以降急激に増加している。表4に電源別発電設備容量の推移を示す。
4.エネルギー消費
 中国のエネルギー消費の特徴は、圧倒的な割合を石炭に依存していることである(図3参照)。これは石油を輸出に回し、国内ではできるだけ石炭を利用する政策によるものであり、石油火力発電を石炭火力に切り換えるなどしている。このため、近年、石炭依存度が上昇する傾向がある。しかし、エネルギー源としての石炭は、大量輸送が困難な上、環境汚染、エネルギー利用効率の低さなど、いくつもの問題をはらんでいる。そこで、中国のエネルギー政策としてはエネルギー源の開発だけでなく、エネルギー利用効率を高めることが重要な課題となりつつある。また、石炭消費の増大は、大気汚染や酸性雨の問題を深刻化させており、エネルギーの石炭依存度の見直しや脱硫装置の設置等による環境対策が進められている。
 なお、2013年の中国の二酸化炭素排出量は世界全体の排出量の4分の1、約83億トンで世界第1位。中国は、2020年までにGDPあたりの二酸化炭素排出量を2005年に比べて40〜45%削減する(2009年11月、国務院常務会議発表)としていたが、目標達成に向けた具体的な規制措置は講じておらず、京都議定書による削減義務も負っていない。しかし、2020年以降の排出削減目標については「できるだけ早く削減案を提示し努力する」としている。
5.将来のエネルギー計画
 中国では、石炭資源の76%、水力資源の80%、これから整備される大規模な風力発電所、太陽光発電所の大部分は中西部に偏在しているが、エネルギー需要の70%以上は東部の沿岸部や中部地域に集中している。現在のエネルギー供給は専ら石炭の鉄道輸送に頼っているが、輸送力や輸送効率などの問題も多く、広域的な電力ネットワークを構築してエネルギーの総合輸送システムを確立することが求められている(西電東送)。電力輸送インフラの強化、電力供給安定性の確保、効率的な電力供給体制の整備(中国の国家電網公司は「統一、強固、智能電網(スマートグリッド)」の整備を打ち出している)を図るため、2004年末から超高圧送電線(1,000kV交流、800kV直流)送電網の構築に着手している。中国国家エネルギー局が2013年9月に発表した送電網計画「南方送電網発展計画(2013年〜2020年)」では、南方5省の電力消費量は第12次5カ年計画期間中に年平均8.3%増加し、2015年に1兆500億kWh時に達すると予測し、(1)2015年までに西部から東部への送電網「八交八直」を完成して送電規模を3,980万kWにする、(2)2020年までにさらに6〜8の送電網を建設し、雲南省、西蔵(チベット)自治区南東部、周辺国の水力発電所から広東省、広西チワン族自治区への送電需要を満たすとしている。因みに、2020年に中国での各地域間の長距離送電量は4億kWに達すると見込まれている。
 中国政府は新規の供給設備として、クリーンコール技術による発電、水力発電、ガス火力発電、原子力などクリーンエネルギーに重点をおいた開発を実施する予定である。2015年までの電源開発計画を示した「エネルギー発展第12次5カ年計画」では、総設備容量は2015年には14.9億kWで、火力9.6億kW(ガス火力を含まない)、水力2.9億kW、原子力4,000万kW、ガス火力5,600万kW、風力1億kW、太陽光2,100万kWなどとなっている。
 2014年11月、国際エネルギー機関(IEA)はWorld Energy Outlook 2014を発表した。世界の一次エネルギー需要は、2012年末時点で133億6,100万トン(石油換算)であったが、2040年には182億9,300万トンまで拡大するとし、そのうち需要が最も顕著に増加する国として中国、インドなどアジア諸国を挙げている(図4参照)。中国は2040年には世界の一次エネルギー需要量の23%を占めるとともに、今後発電設備の増設を重ね、2040年の発電設備容量は現在の約2.3倍の27.4億kW、発電電力量は約2.2倍の9兆5,600億kWhになると予想している。
(前回更新:2007年9月)
<図/表>
表1 中国の国土概要(2013年)
表2 中国の一次エネルギー生産量と構成
表3 中国における発電電力量の推移
表4 電源別発電設備容量の推移
図1 中華人民共和国地域マップ
図2 中国の国家エネルギー管理体制
図3 中国における一次エネルギー消費量の推移
図4 中国における一次エネルギー需要予測

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<関連タイトル>
中国の電力事情と発電計画 (14-02-03-02)
中国の原子力発電開発 (14-02-03-03)
中国の核燃料サイクル (14-02-03-04)
中国の原子力国際協力 (14-02-03-05)
中国のエネルギー事情 (14-02-03-06)
中国の原子力開発体制 (14-02-03-07)

<参考文献>
(1)外務省ホームページ:中華人民共和国、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/data.html
(2)BP Statistical Review of World Energy 2014:

(3)海外電力調査会(編):海外電気事業統計 1998年版(1998年3月)、中国
(4)中国国家統計局:中国統計年鑑(2014)、
http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2014/indexch.htm
(5)日本原子力産業協会:中国の原子力発電開発、
http://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2014/11/china_data1.pdf
(6)海外電力調査会(編):中国電力工業の発展方針及び「九・五」計画目標、「海外電力」誌、1997年1月号、p.88−90
(7)OECD/NEA/IEA:World Energy Outlook 2014(2014年11月)、

(8)日本原子力産業協会:世界エネルギー展望 2014(WEO2014)概要紹介(2015年1月)、
http://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2015/01/weo2014_summary.pdf
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