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<概要>
 原子力委員会は、使用済燃料再処理により回収されるプルトニウムおよびウランの利用の進め方について、総合的かつ具体的に調査審議を進めてきた。1989年12月には、英仏への再処理委託により回収されるプルトニウムの動燃事業団(現・日本原子力研究開発機構)での利用がさしせまった政策課題となったことから、動燃事業団が利用するプルトニウムの返還輸送について「プルトニウム返還輸送の当面の進め方」を示した。その後、1997年1月には、軽水炉でのプルサーマル計画が具体化してきたことから「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」を決定し、この中で海外で再処理されたプルトニウムの利用について考え方を示した。また、2003年8月には、六ヶ所再処理工場の操業開始に伴い相当量のプルトニウムが回収されることになるため、プルトニウム利用の目的を明確に示すことが必要と考え「我が国のプルトニウム利用の基本的な考え方について」を示した。この中では海外で保管されるプルトニウム利用についての考え方も示されている。
<更新年月>
2007年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.プルトニウム返還輸送の当面の進め方(原子力委員会:1989年12月)について
 プルトニウムの返還輸送としては、動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃(現・日本原子力研究開発機構)」という。)が利用するプルトニウムに係るものと、電気事業者(電源開発株式会社を含む。)が利用するプルトニウムに係るものがあるが、当面の数年間に限ってみた場合、我が国における主たるプルトニウムの利用者は「動燃」であることから、本考え方は動燃が利用するプルトニウムの返還輸送の当面の進め方についてとりまとめたものである。本考え方においては、返還輸送の開始時期、返還輸送の方法、返還輸送の推進方策について示されている。
(1)返還輸送の開始時期
 動燃は、現在運転中の高速増殖炉実験炉「常陽」および新型転換炉の原型炉ふげん」でプルトニウムを使っており、さらに、現在建設中の高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」の運転のためのプルトニウムを必要としている。「もんじゅ」の初装荷燃料の製造は1992年春には終了する計画であるが、その後、引き続き、「もんじゅ」の取替燃料および「常陽」の取替燃料の製造において東海再処理工場でのプルトニウムでは不足が生ずることは避けられない見通しであるため、1992年秋頃までにはプルトニウムの返還輸送を実施するものとする。
(2)返還輸送の方法
 我が国としては、動燃が利用するプルトニウムについては、航空輸送を基本に「返還輸送」の準備を進め航空輸送容器の開発に取り組んできたが、1987年12月に米国会議で成立したいわゆる「マコウスキー修正条項」を新たに満足する必要が生じたことなどから、1992年までの実用化は不可能と判断されることから、当面の返還輸送は海上輸送により行うものとする。
(3)返還輸送の推進方策
 1992年のプルトニウムの返還輸送は、新日米原子力協定の下での第1回目の輸送であり、その後引き続き行われることになる返還輸送を円滑に実施していくためにも極めて重要なものとなるため、原子力政策上の重要な課題であることから、国としては、関係省庁の密接な協力の下に、新日米原子力協定の実施取極附属書5のガイドラインに沿った海上輸送が実施できるよう、万全を期す必要がある。このような国の支援体制の下に、1992年の返還輸送は、電気事業者等関係者の協力を得つつ、動燃が実施主体となって行うこととする。

2.当面の核燃料サイクルの具体的な施策について(原子力委員会:1997年1月)について
 本考え方は、我が国がおかれている資源的な制約や環境保護の観点から、原子力発電を長期に安定的に進めていく上で、核燃料サイクルの円滑な展開が不可欠であるとの認識から決定されたもので、軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)、使用済み燃料の管理、バックエンド対策などについて言及している。
 この中で、海外再処理で回収されたプルトニウムについては、2000年までには3〜4基での利用が、2010年頃までには国内での回収プルトニウムの利用を含めて十数基程度まで拡大するのが適当としている。

3.我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について(原子力委員会:2003年8月)について
 本考え方は、六ヶ所再処理工場の操業開始に伴い相当量のプルトニウムが回収されることになるため、プルトニウム利用の目的を明確に示すことが必要と考え「我が国のプルトニウム利用の基本的な考え方について」を示したものである。
 本考え方においては、プルトニウムの平和利用に対する考え方、プルトニウムの利用目的の明確化のための措置、海外で保管されるプルトニウムおよび研究開発に利用されるプルトニウムに関して原子力委員会の基本的な考え方が示されている。
 この中で、海外で保管されるプルトニウムについては、以下のとおり示されている。
 「海外で保管されているプルトニウムは、プルサーマルに使用されるものについては、海外でMOX燃料に加工された上で我が国に持ち込まれることになる。そのため、その利用について平和利用の面から懸念が示されることはないと考えられるが、透明性の一層の向上の観点から、燃料加工される段階において国内プルトニウムに準じた措置を行うものとする」。
 なお、プルトニウム利用目的の明確化のための措置として、電気事業者などは、プルトニウム所有者、所有量および利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとしている。
<関連タイトル>
イギリス返還プルトニウム輸送 (11-02-06-06)
世界の核物質輸送の動向 (11-02-06-07)
プルトニウムの空輸 (11-02-06-09)
日米原子力協定 (13-04-02-01)
輸送中の核物質を対象とする保障措置 (13-05-02-15)
核物質の船舶運送 (13-05-03-08)
核物質の航空機輸送 (13-05-03-09)

<参考文献>
(1)原子力委員会:プルトニウム返還輸送の当面の進め方(1989年12月決定)
(2)原子力委員会:当面の核燃料サイクルの具体的な施策について(1997年1月決定)
(3)原子力委員会:我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について(2003年8月決定)
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