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<概要>
 再処理施設、燃料加工6施設など原子炉以外の原子力施設廃止措置に際しては、基本的には、原子炉施設の解体撤去技術が適用でき、放射化についてはほとんど考慮する必要がない。ただし、TRU核種および核分裂生成物による汚染に対応するため、解体撤去にあたっては、放射性物質の閉じ込め、防護具の着用、遠隔操作化等により、作業者の内部被ばく防止など原子炉の廃止措置とは異なった観点から技術開発が必要である。
 再処理施設の解体計画の策定や実解体は既に欧米各国で進められおり、OECD/NEAの国際協力「原子力施設デコミッショニングに関する科学情報交換協力計画」の締結によって、解体撤去技術や経験等の情報が収集されている。日本では、1990年度から再処理特別研究棟JRTFが除染技術、遠隔操作による大型槽類の解体技術等研究開発を進め、1996年から解体実地試験を開始した。2014年に施設全体の解体を終了する計画である。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 再処理施設、燃料加工施設など原子炉以外の原子力施設の廃止措置に際しては、基本的に、原子炉施設の解体撤去技術が適用でき、放射化についてはほとんど考慮する必要がない。また、再処理施設は再処理主工程からガラス固化処理まであり、操業の形態により、せん断処理施設、溶解施設等、施設毎に解体することも可能である。ただし、核分裂生成物等による汚染状態は施設毎に放射化の程度を考慮する必要がある。再処理施設を構成する機器の特徴として、 ・構成機器は原子炉と比べると小口径配管や小型機器が多く、系統が複雑多岐にできており、構造物・機器には塔槽類が多い。また、材料は耐硝酸性ステンレス鋼、Ti,Zr合金等が多く使用されている、 ・作業環境は狭隘部が多く、線量の高い設備・機器の解体には、遠隔操作や小型ロボットで行なう必要がある、 ・ウランやα放射性のプルトニウム等の超ウラン元素等をガス状、液状、粉末状等の様々の形態で取り扱っており、これら核種を含む場合には、グリーンハウス等を使用し、包蔵管理下で作業を行なう必要がある、 ・取り扱う核種の半減期が長く、施設の閉鎖から解体開始までの間に、放射能の十分な減衰を期待することができない、などがあげられる。従って、再処理施設の解体撤去に当たっては、放射性物質の閉じ込め、防護具の着用、遠隔操作化等により、作業者の内部被ばく防止など原子炉の廃止措置とは異なった観点からの技術が要求される。
 再処理施設の廃止措置は既に各国で進められている、OECD/NEAの「原子力施設デコミッショニングに関する科学情報交換協力計画」の締結により、国際協力を通じて解体撤去技術や経験等の情報が収集されている(表1参照)。なお、廃止措置は各国の規制当局のもと安全に実施される(表2参照)。解体撤去には、施設の特徴、方針に応じて既存技術と開発技術が使い分けられる。開発技術である遠隔解体技術や小型機器を切断する従来の機械的切断工法が多用化されている。建家解体には、ダイヤモンドソー、コアドリル、ウォータージェット、ワイヤーソー等が使用されている。
 次に主な再処理施設の廃止措置概要を示す。
(1)ウェストバレー再処理施設(米国)
 民間再処理施設としてニュークリア・フューエル・サービス社が建設、運転した施設で、ウラン燃料にピューレックス法を、トリウム燃料にソレックス法を採用している。再処理能力300トン/年であるが、1966年から1972年までの運転で約640トンの使用済燃料を処理した。デコミッショニング実証プロジェクトとして、1982年から2024年の予定で行うこととされ、米国エネルギー省(DOE)に移管された。施設の除染と機器類の解体撤去を行うほか、施設内の高レベル放射性廃液(2,300立方メートル)をガラス固化処理するため、固化処理設備と二次廃棄物処理設備を設置している。
(2)ユーロケミック再処理施設(ベルギー)
 ヨーロッパ13カ国の共同所有で、使用済燃料再処理開発と専門家の養成を目的に建設され、1966年から1974年の間に約210トンの再処理を行った。ピューレックス法が採用され、抽出器にはパルスカラムを用いている。1982年にベルギーに譲渡、再稼動を目指したが、1986年に解体撤去が決定された。1990年にデコミッショニングのパイロットプロジェクトとしてウラン、プルトニウム製品貯蔵設備の解体撤去が行われた。解体には既存技術が活用され、2002年に施設の一部(建屋6A/6B)を解体撤去後、跡地を解放した(図1参照)。2012年終了予定。ATOMICAデータ(05−02−05−07)参照。
(3)AT−1(フランス)
 FBRを対象としたフランス原子力庁(CEA)の再処理技術開発施設で、ラ・アーグ再処理工場のサイト内に設置された処理能力最大2kg/日の施設である。1969年から1979年までにFBR実験炉ラプソディと原型炉フェニックスの使用済燃料MOX燃料約1トンを処理した。解体撤去は1984年に開始され、機器の撤去は1995年に終了している。溶解、抽出サイクルセルは放射線量率が高いため、機器の解体撤去には遠隔操作が要求されたため、大型遠隔操作装置(ATENA)が開発された。セル壁の表面剥離を含めた除染作業が行われ、2001年に廃止措置は完了した。
(4)マルクールUP1(フランス)
 UP−1再処理施設は、1958年からプルトニウム生産炉G1、G2、G3の照射済燃料の再処理を行い、1976年からフランス電力公社(EDF)のGCR再処理施設として運転されたが、GCR炉閉鎖に伴い1997年12月に運転を終了した。総再処理量は18,600トンである。廃止措置プロジェクトは、施設の除染と核物質の回収、放射性廃棄物の処理および解体の3つの主要プログラムに区分され、約30年以上を要する。放射能汚染レベルを下げるための再処理プロセス除染作業は、1998年から進められ、2004年に完了した。高レベル放射性廃棄物のガラス固化施設等の除染を3〜4年間で行う。解体撤去は、2001年に着手し、生産施設の解体を2020年までに、補助施設の除染および解体撤去を2040年までに終了させる予定である。ATOMICAデータ(05−02−05−10)参照。
(5)WAK(ドイツ)
 カールスルーエ原子力研究所に設置されたピューレックス法を用いた再処理施設で、抽出器はミキサーセトラを用いており、処理能力35トン/年である。1971年から1990年まで運転され、約210トンの使用済燃料が再処理された。遠隔・半遠隔・手動装置で解体撤去後、最後は緑地化する計画である。ATOMICAデータ(05−02−05−06)参照。
(6)再処理特別研究棟JRTF(日本)
 原子力開発機構の再処理特別研究棟(JRTF)は、わが国最初の工学規模の再処理試験施設として1966年に建設され、JRR−3の使用済燃料を用いた再処理試験に成功した。その後、運転要員訓練施設、核燃料物質使用研究施設を経て、1990年から再処理施設解体技術の確立を図る研究が進められている。第1段階:解体技術調査、第2段階:解体技術開発、第3段階:解体実地試験(1996年〜)に区分される。2009年までに廃液長期貯蔵施設の管理区域を解除し、2014年までに廃止措置を完了する計画である。表3にJRTF廃止措置の概要を、表4に開発された解体技術を示す。
(前回更新2001年2月)
<図/表>
表1 OECD/NEAデコミッショニングプロジェクトに参加している再処理施設
表1  OECD/NEAデコミッショニングプロジェクトに参加している再処理施設
表2 各国の核燃料サイクル施設の廃止措置規制の比較
表2  各国の核燃料サイクル施設の廃止措置規制の比較
表3 再処理特別研究棟(JRTF)の廃止措置
表3  再処理特別研究棟(JRTF)の廃止措置
表4 再処理施設解体時に開発されたデコミッショニング技術の概要
表4  再処理施設解体時に開発されたデコミッショニング技術の概要
図1 ユーロケミック再処理施設の解体撤去
図1  ユーロケミック再処理施設の解体撤去

<関連タイトル>
再処理の概要 (04-07-01-01)
原子力施設廃止措置に関するOECD/NEA国際協力 (05-02-01-08)
コンクリート構造物の解体技術 (05-02-02-02)
ロボットによる遠隔解体技術 (05-02-02-03)
解体関連除染技術 (05-02-02-04)
ドイツWAK再処理施設の解体 (05-02-05-06)
ユーロケミック再処理施設の解体 (05-02-05-07)
フランスUP-1再処理施設の廃止措置 (05-02-05-10)

<参考文献>
(1)三森武男、宮島和俊:再処理施設解体技術開発の現状−再処理特別研究棟の解体計画について、デコミッショニング技報、原子力施設デコミッショニング協会、No.6(1992年11月)
(2)谷本健一、照沼誠一:核燃料サイクル施設のデコミッショニング技術に関する研究開発−動燃大洗工学センターの開発技術−、デコミッショニング技報、原子力施設デコミッショニング協会、No.11(1994年11月)
(3)三森武男、宮島和俊:原研再処理特別研究棟の解体計画、デコミッショニング技報、原子力施設デコミッショニング協会、No.12(1995年7月)
(4)日本原子力研究所バックエンド技術部:OECD/NEA廃止措置協力に関する活動状況と参加プロジェクトの現状、JAERI−Review 2000−013(2000年9月)
(5)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2008年版(2008年7月)、p.275−276
(6)経済産業省:海外の廃止措置規制制度について、5/5
(7)OECD/NEA:Decommissioning of Nuclear Facilities Other Than Reactors(原子炉以外の原子力施設の廃止措置)、IAEA発行(財)原子力施設デコミッショニング研究協会(訳)(2000年11月)
(8)NEA:The NEA Co−operative Programme on Decommissioning (ISBN 92−64−02332−1 ),
(9)欧州原子力デコミッショニングWebサイト:Belgoprocess
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