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<概要>
 WAKはカールスルーエ原子力研究所に設置されたピューレックス法を用いた再処理施設で、抽出器にミキサーセトラを用いており、年間処理能力35トン/年であった。1971年から1990年まで運転され、約200トンの使用済燃料が再処理された。
 解体撤去は遠隔操作機器を用いて行うため、機器の開発を進めながら、モックアップ試験を実施する方針である。解体は1994年から本格開始し、サイト緑地化を2010年目標に計画を進めている。
<更新年月>
2005年09月   

<本文>
1. WAKの概要と解体工程
 WAK再処理プラントは、ドイツ(旧西ドイツ)の再処理パイロットプラントとして1967年にKfK(カールスルーエ原子力研究センター、現FZK)内に建設された。図1にカールスルーエ原子力研究センターの配置図を、図2にWAK再処理工程の概略を示す。本施設は20,000MWd/tUまでの照射燃料を年間35トン処理するように設計され、施設の運転は1971年から始まり、軽水冷却型研究炉および発電炉6基(MZFR、FR2、VAK、KWO、KRB、HDR)の平均燃焼量26,000MWd/tUの使用済燃料を約200t処理した(表1参照)。しかし、1989年に、商用規模で再処理を行わないというドイツ政策に従って決まった”Wackersdorf計画”の凍結により1991年6月に操業を停止した。
 1991年10月にWAK−BG(WAK運転会社)とFZKがDWK社(ドイツ電力会社の子会社で再処理会社)との間で結んだ契約書によれば、このデコミッショニングに対しては連邦政府とバーデンヴュルテンブルグ州が電力会社の協力のもと財政支援を行い、WAK−BGが責任をもってプラント運転と解体を行うと同時に、FZKはデコミッショニング計画の総括的責任を負うことになっている。
 WAKの廃止措置は、2005年目標に緑地化する計画であったが、サイト内で高レベル放射性廃液(HAWC)のガラス固化を実施することになり、大幅に遅れている。2基のHAWCタンクに残っている60m3(放射能インベントリ:2.5×1015Bq)のHAWCは、WAK−BG社の当初の計画では、ベルギーモル研究所ベルゴプロセス再処理施設(Belgoprocess)のガラス固化設備PAMERAまで貨車輸送して処理する予定であった。1996年政府の方針変更によりWAK敷地内にガラス固化施設(VEK)を2000年から建設開始した。VEK建設には、米国DOEとUKAEAが技術協力した。ガラス固化処理計画では固化作業は2003年に始まり2005年中旬に終了する予定である。
 その後、残る再処理プラント施設、中高レベル廃液貯蔵建物(LAVA及びHWL)、VEK施設および建屋を解体し、2010年頃にプロジェクト完了する。図3にWAKで発生する解体廃棄物の概要を示す。WAK廃止措置計画は、最終停止処置の後に解体プロセスを6ステップに区分して段階的に進めている(表2参照)。図4に2001年現在でのWAK再処理施設の解体スケジュールを示す。また、WAK廃止措置の総コストは、1998年の参考文献(4)によると約 3,300MDMである。
2. 解体技術の選択、技術開発等
 WAK解体には、遠隔、半遠隔、手動の3方法で行っており、手動と遠隔との放射線量率の分岐点は0.5mSv/hとしている。また、ドイツの職業人の許容線量率は20mSv/yとなっているが、WAKの作業ではその作業の5分の1、4mSv/yを制限値としている。
 金属部品の解体は、主に機械的切断法により、鋸、せん断機、金属板切断機が用いられた。熱的方法は、機械的切断方法が利用できない場合に限定された。直径80mmまでの配管は、油圧せん断機が用いられた。高レベル放射性廃液貯蔵タンクを除いて全ての容器は、そのままFZK廃棄物管理施設に運び、除染、裁断、保管される。
 ステップ3の解体ではプロセス建屋が高線量であるため、解体に際しては遠隔解体が避けられない。このため、セル内にある機器等を解体に天井から設置できる垂直型遠隔装置(図5参照)、即ち、セルホール内床から3m上のクレーンに固定し使用する50/5kgホイスト付き自由度8の双腕型マニュプレータ(EMSM3)が開発された。この解体には、切断工具として油圧せん断、ダイアモンデスク付きグラインダ又はハックソー(hack saw)をアーム先端に取り付けて行う。セル解体には、床面から接近できる水平型遠隔解体装置(図6参照)、即ち、一般用クロラー型掘削機(Brokk150)をアームに7自由度を持たせように改良された。これらの装置開発には、FZKセンターで解体中のMZFR炉のタービン建屋でモックアップ試験が行われた。
 また、ステップ4で行う中レベル及び高レベル廃液タンク(HLWC)の解体撤去には、セル解体の経験に基づき遠隔操作できる、3つの関節とアームで移動起重量8トンの中型のトラック・マニュプレータシステムの開発が進められている(図7参照)。その解体冶具の交換も簡単に遠隔操作で行う。このHLWC解体準備には、モックアップ試験に代えて3CADシミュレーションによる検討が行われている。
3.最終停止処置
 主要プロセス建屋からすべての燃料、再処理生産物が撤去された。また、化学処理系統の容器内を空にし、密閉処置、さらに換気系の運転維持が継続された。また、解体作業の基盤設備の準備が行われた。
4.解体活動等
 ステップ1は、運転保守クルー削減によるコスト低減を図るために、先行して旧プロセス施設解体撤去を行い、1995年に完了した。また、施設維持のためにオフガス浄化系統の主要機器(洗浄槽、凝縮器、加熱器、ポンプ、その他)の撤去、更新による系統の改修をしている。オフガススクラバーセル(OGSC)および同フィルターセル内の線量は最大20−100mSv/hに及ぶため、接近作業が不可能であり、遠隔解体法を取らざるを得ず、遠隔解体装置の開発と作業習熟に向けた作業訓練が行われた。OGSCの遠隔解体での総被ばく線量は、30mSvであり、これは計画値の20%弱と良い結果を得た。
 ステップ2では、プロセス建屋の主要工程の解体を1996年半ばから開始し、1997年末完了した。主要プロセスの15システム、燃料貯蔵プール内のラック、燃料貯蔵プールの水浄化設備などの解体が行われた。ステップ2では主として運転時に使っていた遠隔機器を用いるとともに、また、手動により放射性廃棄物244トンが解体され、被ばく線量は6.35×10Svであった。図8に燃料プール解体撤去の状況を示す。
 ステップ3では、管理区域の解除を目標に、第1段階では高レベル廃液貯蔵施設等の施設をプロセス建屋から分離する作業を行った。第2段階では化学処理系のセルの本格的遠隔解体作業を開始し、プロセス建屋にまだ残っている機器を全部解体撤去している。ミキサセトラの遠隔解体とセルからの取出、容器への運搬と収納および廃棄物貯蔵施設への搬送も完了した。ステップ3の解体により高レベル廃液の分析系を除いて全ての試験施設はFZK内の廃棄物処理施設(HDB)から切り離され、プロセス建屋内の機器は解体され、室内は除染された後、管理区域が解除される。
5. 今後の予定
 ステップ4として、高レベル廃液が処理された後、廃棄物貯蔵施設とガラス固化施設の規制解除が行われ、ステップ5ではこれらの施設の機器解体と全室の除染が行われ、管理区域が解除される。そして、最終的にステップ6としてサイトの緑地化に先立ち全施設と建物を解体する予定である。
<図/表>
表1 WAK再処理工場で処理した使用済燃料リスト
表1  WAK再処理工場で処理した使用済燃料リスト
表2 WAK再処理施設の解体撤去概要
表2  WAK再処理施設の解体撤去概要
図1 カールスルーエ原子力研究センターの配置図
図1  カールスルーエ原子力研究センターの配置図
図2 WAK再処理工程の概略
図2  WAK再処理工程の概略
図3 WAK解体廃棄物の概要
図3  WAK解体廃棄物の概要
図4 WAK再処理施設の解体スケジュール
図4  WAK再処理施設の解体スケジュール
図5 天井から設置できる垂直型遠隔解体装置(双腕型マニュプレータ(EMSM3))
図5  天井から設置できる垂直型遠隔解体装置(双腕型マニュプレータ(EMSM3))
図6 床面から接近できる水平型遠隔解体装置(Brokk150の改良型)と制御パネル
図6  床面から接近できる水平型遠隔解体装置(Brokk150の改良型)と制御パネル
図7 トラック・マニュプレータキャリヤー・システム(MCS:移動起重量8トン)
図7  トラック・マニュプレータキャリヤー・システム(MCS:移動起重量8トン)
図8 WAK再処理工場使用済燃料貯蔵プールの解体撤去
図8  WAK再処理工場使用済燃料貯蔵プールの解体撤去

<関連タイトル>
ベルギー、ドイツ、その他の国の再処理施設 (04-07-03-19)
ユーロケミック再処理施設の解体 (05-02-05-07)
フランスUP-1再処理施設の廃止措置 (05-02-05-10)

<参考文献>
(1)Wiederaufarbeitungsanlage Karlsruhe Betriebsgesellschaft mbHホームページ(http://www.WAK-Karlsruhe.de/e/index.html
(2)Forschungszentrum Karlsruhe Berich Stillegungホームページ
(3)L.Finsterwalder and H.Wiese: ”Dismantling of the WAK Reprocessing Plant”, Proceedings of ICEM ’99, Sept. 2630 (1999), Nagoya, Japan
(4)K.Komorowski et al.: ”Decommissioning of nuclear facilities in Germany−status at BMBF sites”, Nuclear Decommissioning ’98, 355(1998)
(5)K.Eiben and P.Fritz: ”The WAK Decommissioning and Dismantling Program” Proceedings of ICEM’95, Sept.3−7 (1995), Berlin, Germany
(6)K. J. Birringer et al.: ”First Step of Remote Dismantling at WAK A Green Meadow Project in Progress”, ibid.
(7)(財)原子力研究バックエンド推進センター・デコミッショニング技術本部:第10回原子力施設デコミッショニング技術講座、核燃料施設のデコミッショニング(1998年12月)p.6−14
(8)The NEA Co−Operative Program on Decommissioning, The First Ten Years 1985−1995, OECD (1996)
(9)Decommissioning of Nuclear Facilities Other Than Reactors, Technical Reports Series No.386, OECD / NEA (1998)
(10)] G. Dutzi,L.Finsterwalder, C.R.Jungmann, H.Wiese, Lessons Learned with the Dismantling of the Karlsruhe Reprocessing Plant(WAK), WM’01, (March 2001).
(11)K.J.Birring, G.Katzenmeier, B.Hosemann. G.Hammer, Technical Concept for
Remote Dismantling of the Storage Tank for High−level Liquid Waste at the Karlsruhe
Reprocessing Plant(WAK), KONTEC 2003.
(12)G. Dutzi, H. Prax, Report on Dismantling and Decontamination Activities in the
main Process Building in WAK Plant, KONTEC 2005, (April 2005).
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