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<概要>
 各国が独自に進めているデコミッショニングには共通する問題点が多く、得られた技術情報と経験を相互に交換しあい、デコミッショニング技術の向上や計画の円滑化に役立てることを目的として、OECD/NEA 国際協力協定が1985年9月に5年間の期限で締結された。日本からは、JPDR、東海1号炉、ふげん、再処理特別研究棟解体計画、プルトニウム燃料加工施設が参加プロジェクトとして登録されている。その後、5年ごとに協力協定が延長され、最近では2009年1月に協定が更新されている。2010年7月現在、43のプロジェクト(12ケ国)が参加し、広範囲に情報交換が行われている。
 この間、廃炉費用評価、廃棄物再利用、除染技術に関する作業部会が設けられ、各国の専門家による技術的な検討が進められている。
<更新年月>
2010年08月   

<本文>
1.廃止措置の協力計画
 原子力開発の初期に建設された施設を中心に世界各国で廃止措置プロジェクトが進められており、原子力施設の廃止は世界的な課題となっている。そして各国が行っている種々の原子力施設廃止計画から得られた技術情報と経験を相互に交換し合うことは、今後の技術開発や廃止措置計画の円滑な実施に極めて重要である。
 OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)は、1985年9月に「原子力施設廃止措置プロジェクトに関する科学技術情報交換協力計画」(Co-operative Programme for the Exchange of Scientific and Technical Information Concerning Nuclear Installation Decommissioning Projects(略称 Co-operative Programme on Decommissioning): CPD)を5年間の期限で締結し、開始した。当初、参加メンバーは8ケ国で、10の主に試験研究段階の原子力発電所や再処理施設の廃止措置プロジェクトが参加した。その後、5年ごとに協力協定が延長され、2010年7月現在、43のプロジェクト(12ケ国)が参加し、広範囲に情報交換が行われている。 これらの参加プロジェクトには、研究用原子力施設、商業用原子力発電所、事故により早期に廃止措置に着手した施設、旧ソ連製の原子力施設等、種々のプロジェクトが含まれている。43のプロジェクトのうち、原子炉に関わるものが27、燃料サイクル施設等のプロジェクトが16である。
 日本からはJPDR、東海1号炉、ふげん、再処理特別研究棟(JRTF)解体計画、プルトニウム燃料加工施設が参加プロジェクトとして登録されている。協力計画の各国プロジェクトを 表1-1表1-2表2および表3に示す。表中に出てくる原子炉廃止方式のステージ1、2、3は、IAEAが定義したものであり、それぞれ「密閉管理」、「遮蔽隔離」および「解体撤去」に相当する。廃止措置方式の概要を図1に示す。
 また、具体的な技術課題について議論を深めるために、廃炉費用評価、廃棄物再利用、除染技術に関する作業部会が設けられ、各国の専門家により技術的な検討が進められた(参考文献5〜7)。以下に活動の概要を記す。
(1)廃炉費用評価作業部会
 原子力施設の廃止措置に必要な費用項目のリストを作成し、CPD参加プロジェクトに費用評価を依頼した。また、その結果を比較するとともに、IAEAおよびECと協力して廃止措置費用の評価が相違する原因等を検討した。費用項目は、10の主要項目から構成され、さらに細目に分類された(総数は約100項目)。 表4に廃止措置費用の主要項目を示す。また、CPD参加プロジェクトを対象にした調査結果から、各費用項目の占める割合を算出した一例(原子炉施設を対象)を図2に示す。なお、各費用は、資産・装置・資材費、作業者費用、経費等に分類し、詳細な評価方法が提案されている。しかし、費用のデータを十分に整理統合することができず、2002年4月に一時中断することが合意された。(参考文献9)
(2)廃棄物再利用作業部会
 原子力施設の廃止措置で発生した廃棄物を再生するための規制上の問題点、廃棄物の再生・処分による社会経済的影響、環境、公衆の健康への影響等に関する調査、最適な処理方法について検討を行った。特に、25のCPD参加プロジェクトに対して廃棄物の再利用、規制状況等の調査を行い、この結果、約362,000トンの廃棄物が各種規制の下でスクラップ市場へ放出されていること、これらは廃棄物の貯蔵や処分量の低減に効果的であったことなどが明らかにされた。しかし、廃棄物の放出・再利用には各種規制が関係しており、その方法は各国で異なっていること、また、国境を越えた廃棄物の輸送やスクラップの有効活用が限定されていることが明らかになった。
 他方、 図3に示す多様な再利用ケースを想定した放出システムの概念図をもとに、適切な再利用方法が作業部会で議論された。廃棄物の再利用には統一化した国際基準が重要になると結論づけられた。
(3)除染技術作業部会
 汚染された機器および装置の除染作業では、洗浄、加熱、化学または電気化学的、機械的方法等が用いられる。その目的は、作業者の被ばく線量の低減、装置や材料の回収、処分装置・材料の減容、無拘束使用条件での施設やサイトの返還、最終処分または一時貯蔵を実施する上で必要な汚染の固定化および非固定汚染の除去、貯蔵期間の短縮化、残存放射能量の低減等である。除染技術を以下のように分類し、その実績等が調査された。
 化学除染:化学除染は50−70℃の溶媒を用いる。 低濃度化学除染、徹底化学除染、電気化学除染等があり、表面の除染に適用される。除染方法により対象機器の寸法や表面形状が制限される。
 溶融:溶融により放射性核種を均質化することが可能である。また、複雑形状物の残存放射能の測定の容易化や特性評価に役立つ。
 機械除染:洗浄、拭き取り、研磨材の吹き付けによる表面研磨、表面処理等が含まれる。研磨材による表面研磨は効率性に優れている。
(4)放出測定作業部会
 廃棄物再利用作業部会の勧告により1996年12月に設立された作業部会で、極低レベルの放射能に関連した問題に取り組んでいる。具体的にはCPDのプロジェクトから関連するデータを集積し、装置、方法について全体像を示すとともに、特定のプロジェクトについてケーススタディを行っている。

2.放射性廃棄物管理委員会(PWMC)とCPD活動
 廃止措置の政策、規制、技術等に関して総合的な検討を行うことを目的に、NEAはメンバー国があらゆる型の放射性廃棄物管理について、安全で持続可能であり、社会的に受容可能な戦略を策定することを支援している。この活動の中心になっているのはRWMC(Radioactive Waste Management Committee)である。現在、RWMCはステークホールダー信頼性フォーラム(FSC)、セーフティケース統合グループ(IGSC)およびデコミッショニング及び解体による材料についての作業パーティ(WPDD)の活動によって支えられている。WPDDはRWMCの傘下でデコミッショニング政策、戦略、規制について検討するとともに、物質管理、建物やサイトの規制からの解放等についても情報と経験を交換している。2010年7月現在、参加国は17ヶ国で作業グループとしては、費用評価、大型コンポーネント、R&W必要性の各グループがある。CPDの活動はRWMCに報告され、特に、WPDDとCPDとは密接に協力している。

 終わりに、原子力発電所の廃止措置において、費用の評価は大きな課題である。1990年〜1992年にかけて、原子力発電所の廃止措置費用を調査し、廃止措置費用に及ぼす各種要因が検討された(参考文献8)ことを付記する。
<図/表>
表1-1 OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(原子炉施設)(1/2)
表1-1  OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(原子炉施設)(1/2)
表1-2 OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(原子炉施設)(2/2)
表1-2  OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(原子炉施設)(2/2)
表2 OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(再処理施設)
表2  OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(再処理施設)
表3 OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(核燃料・放射性物質取扱施設)
表3  OECD/NEA廃止措置協力に参加している各国プロジェクト(核燃料・放射性物質取扱施設)
表4 廃止措置費用の主要項目
表4  廃止措置費用の主要項目
図1 原子炉廃止措置方式の概要
図1  原子炉廃止措置方式の概要
図2 原子炉施設の廃止措置費用の主要項目別の割合(例)
図2  原子炉施設の廃止措置費用の主要項目別の割合(例)
図3 多様の再利用ケースを想定した放出システムの概念図
図3  多様の再利用ケースを想定した放出システムの概念図

<関連タイトル>
原子力発電所の廃止措置費用評価 (05-02-01-02)
原子力発電所の廃止措置費用評価 (05-02-01-02)
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廃止措置に関するIAEA国際協力 (05-02-01-09)
廃止措置に関するIAEA国際協力 (05-02-01-09)
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東海発電所(GCR)の廃止措置計画 (05-02-03-14)
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新型転換炉「ふげん」の廃止措置計画 (05-02-03-15)
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JPDRの解体 (05-02-04-09)
JPDRの解体 (05-02-04-09)
JPDRの解体 (05-02-04-09)
JPDRの解体(1992年度以降) (05-02-04-10)
JPDRの解体(1992年度以降) (05-02-04-10)
JPDRの解体(1992年度以降) (05-02-04-10)

<参考文献>
(1)OECD/NEA:The NEA Co-operative Programme on Decommissioning, The First Ten Years 1985-95,(1996)
(2)日本原子力研究所バックエンド技術部:OECD/NEA廃止措置協力に関する活動状況と参加プロジェクトの現状、JAERI-Review 2000-013(2000年9月)
(3)柳原 敏:原子力施設の廃止措置に関する国際協力の現状−OECD/NEAにおける最近の活動状況−、デコミッショニング技報 No.25、p.2(2002年3月)
(4)柳原 敏:欧米諸国における除染・デコミッショニング活動の現状、デコミッショニング技報 No.11、p.2(1994年11月)
(5)OECD/NEA:EC, IAEA, A Proposed Standardized List of Items for Costing Purposes in the Decommissioning of Nuclear Installations, (1999)
(6)OECD/NEA:Recycling and Reuse of Scrap Metals, A Report by a Task Group of the Co-operative Programme on Decommissioning, (1996)
(7)OECD/NEA:Decontamination Techniques Used in Decommissioning Activities, A report by the NEA Task Group on Decontamination, (1999)
(8)OECD/NEA:Decommissioning of Nuclear Facilities An Analysis of the Variability of Decommissioning Cost Estimates, (1991)
(9) The NEA Co-operative Programme on Decommissioning, A Decade of Progress, OECD/NEA No. 6185(2006)
(10)OECD/NEAホームページ:http://www.nea.fr/jointproj/decom.html
(11)スペイン原子力安全委員会ホームページ:http://www.csn.es/
(12)OECD/NEAホームページ:http://www.nea.fr/rwm/profiles/Italy_report_web.pdf#search='Latina Decommissioning'
(13)原子力発電便覧 1995年版、通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編)、電力新報社(1995年2月)
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