<大項目> バックエンド対策
<中項目> 原子力施設の廃止措置
<小項目> 技術開発
<タイトル>
原子炉解体技術に関する最近の動向 (05-02-02-09)

<概要>
 発電用原子炉は、1990年から2014年1月までにパイロットプラントを含め、世界で147基閉鎖された。そのうち75基が軽水炉、34基がガス炉であった。米国、ドイツ、フランス等では原子炉閉鎖後に解体を開始する時期を早める傾向にある。これは、除染技術の向上、解体技術の向上により作業者の被ばくの低減、コスト低減が可能になったことが寄与している。ここでは、廃止措置にかかわる施設特性、機器・系統除染、原子炉本体解体、生体遮へい体解体、汚染コンクリート除去及び遠隔解体技術について述べる。
<更新年月>
2014年02月   

<本文>
 発電用原子炉の閉鎖炉は、2006年3月までにパイロットプラントを含め世界で147基である。その主な内訳は軽水炉75基、ガス炉(GCR)36基、重水減速炉12基、黒鉛減速沸騰水冷却型炉(RBMK)9基、高速増殖炉(FBR)8基である。2000年以降で約56基が閉鎖された。
1.施設特性
 原子炉の廃止措置にかかわる主要な施設特性として放射能インベントリが挙げられるが、これは炉型、運転履歴などに応じて施設ごとに大きく異なっている。対象施設の特性を正しく知ることは、(1)作業者の被ばく及び公衆への影響評価、(2)廃止措置(デコミッショニング)方式の選択、(3)具体的な解体工法及び時期の選択を行う上で重要である。
1.1 軽水炉の施設特性と解体時期の選択
 大型(100万kWe級)の発電炉を40年間運転した場合、放射能の強さは、原子炉停止後1017ベクレル(Bq)程度になる。その放射能インベントリは、原子炉停止後、中性子束レベルの高い炉内構造物に集中し、原子炉圧力容器、生体遮へい体などで99.9%以上を占める。また、機器、配管には、腐食生成物などの汚染物が付着し、その量は0.1%程度である。
 BWR炉内構造物における残留放射能と線量率の時間的変化の評価例を図1に示す。残留放射能の核種は、炉停止10年後まで55Fe、続いて60Coが支配的であり、それ以後は63Niである。炉内線量率は、半減期約5年の60Coが支配的であり、停止40年後で1/100、90年後まで続く。その後は、半減期が約2万年の94Nbが支配的になる。
 軽水炉の場合、かつては放射能の減衰を待って20〜30年間安全貯蔵した後に本格解体を開始し、作業者の被ばくを低減させる方式が採られていたが、原子炉冷却系の系統除染技術の向上、遠隔解体技術の進展により即時解体が可能となった。米国では、原子炉圧力容器等を一括撤去する方式で、即時解体を実施している。また、ドイツも即時解体を実施しており、炉内構造物、原子炉圧力容器を水中切断により解体撤去する方法、あるいは原子炉圧力容器等を一括撤去する方法を採用している。
1.2 ガス炉の施設特性と原子炉本体解体時期の選択
 商業用炭酸ガス冷却炉(マグノックス型:GCR)の場合、原子炉停止後の炉内線量率は時間経過とともに図2に示すように変化する。この図から、60Co、108mAg、94Nbの3核種が炉内線量率に寄与し、約135年後は108mAgと94Nbが支配的になることが分かる。
 イギリスではガス炉の廃止措置において、原子炉本体のみ長期安全貯蔵し、原子炉本体部分を残した形でのサイト解放に向けて解体撤去作業が進んでいる。ガス炉は軽水炉に比べて、物量が多く、炉内線量率が極めて低く、その低下速度も緩やかである。そこで、原子炉本体を長期安全貯蔵後に解体する方式を採用している。最近の評価では、原子炉本体の解体時期は、作業者の被ばく線量を2mSv/年、作業者が遠隔装置を用いないで作業できる時間(40時/人/週)と仮定して、停止後85年である(詳細はATOMICAデータ「英国における原子力発電所廃止措置計画(05-02-03-05)」を参照)。
 フランス、スペイン等では、まず原子炉周辺機器を撤去し、原子炉本体のみ隔離遮へいし、原子炉本体は約40年間安全貯蔵後に解体する戦略を採っていた。しかし、フランスでは、規制当局から長期保管に伴い当該原子炉に関する情報喪失のリスクが指摘され、さらに将来のサイト再利用も考慮し、早期解体の方針に転換しつつある。フランス電力公社(EDF)は、GCR型原子炉6基を含む第1世代の発電炉(8基)を2025年までに解体撤去を完了させる計画を2001年に公表した。軽水炉(ショウ-A)の解体は、2009年から開始され、2014年頃から炉内構造物、原子炉圧力容器を機械的切断方法で解体する準備が進められている。
2.機器、系統除染技術
 軽水炉等の解体では、まず、解体を容易にするために原位置での機器、系統除染を行うのが一般的である。これまでに各種除染方法が開発され、最近、有効性が示されているものにCORD法、DFD法がある。諸外国の最近の廃止措置に即時解体が多くなった技術的な背景の一つにこの除染技術の確立があげられる(詳細はATOMICAデータ「解体関連除染技術(05-02-02-04)を参照)。
 HP/CORD D UV法(酸化/還元溶解除染法の一つ)は、ステンレス鋼等のクロム(Cr)を含む材料のCr系酸化膜を過マンガン酸(HMnO4)により酸化反応で溶解し、また、Fe系酸化皮膜をシュウ酸により還元反応で溶解する化学除染法であり、高い除染効果が得られる。この除染法では、過酸化水素及び紫外線照射により添加したシュウ酸を炭酸ガスと水に分解し、2次廃棄物の発生量を少なくする工夫がなされている。
 DFD法は、Fe系酸化物、母材をフッ化ホウ素酸(HBF4)で溶解し、過マンガン酸カリウム(KMnO4)でCr系酸化物を溶解する化学除染法であり、高い除染効果が得られる。これは英国のBradtec社と米国電力研究所が開発した方法である。これまでにメイン・ヤンキー炉(DF:31)、ビックロックポイント(DF:27)で実施し、良い結果を得ている。(DFは除染係数で「除染前の線量率/除染後の線量率」と定義される。例えば、DF=31の場合には除染後の線量率が除染前と比べて31分の1まで減少したことを意味する。)
 3.大型機器の解体撤去、リサイクルまたは一括処分
 原子炉施設の汚染機器である蒸気発生器、加熱器、主冷却用ポンプは、密閉し、機器ごと撤去・処分する場合と切断する場合がある。汚染レベルが低い機器については、除染してその解体材料をリサイクルに回すことも行われている。これらの例を表1に示す。米国のメイン・ヤンキー炉、フランスのG2及びG3炉、ドイツのグンドレミンゲン炉では、細断後に溶融し、遮へいブロック等にリサイクルされている。また、米国のトロージャン炉、イギリスのWAGR炉は、密閉後に軽量コンクリート・モルタルを充填、固化し、処分場に運搬し、一括処分されている。
 4.原子炉本体解体方法
 原子炉本体の解体で考慮することは、第1に炉内構造物、厚肉の構造物である原子炉圧力容器の順に放射能レベルが高く、特に炉内構造物に放射能が集中していることである。第2にその周囲にある極めて堅牢な鉄筋コンクリートの生体遮へい体が放射化していることである。炉心部の解体方法は、細かく切断する解体と一括撤去に区分される(表2)。
4.1 原子炉一括撤去工法
 米国、ドイツでの原子炉圧力容器等の一括撤去工法の実績を表3に示す。研究用原子炉旧JRR-3炉体(重量2200トン)の一括撤去工事は、世界初であり、1986年に行われた。この撤去工事での作業者の被ばく線量は、無視できる程度であった。
 その後、米国のシッピングポート炉では、1989年、原子炉圧力容器の周りにコンクリート製の遮へい体を取り付け、その容器と炉内構造物を一体化し、処分場に輸送し処分した。この工事での作業者の被ばく線量は、0.18人・Sv、コスト10.3百万ドルであった。
 トロージャン炉では、炉内構造物を含む原子炉圧力容器の一括撤去工事が1999年に行われ、原子炉圧力容器パッケージを廃棄物処分場まで輸送し、処分された。このプロジェクトに対し、2000年、世界のプロジェクト管理協会からプロジェクト管理賞が与えられた。これは、既存の技術を用い、被ばく線量が0.67人・Svと低く、コストも22百万ドルと低く、廃棄物量も少ない点が評価された(ATOMICAデータ「トロージャン原子炉の廃止措置(05-02-03-16)」を参照)。
 また、メイン・ヤンキー、サンオノフレ1号機、ビック・ロック・ポイント、コネチカット・ヤンキーの4基では、処分場の要求から高βγ廃棄物(GTCC:米国の廃棄物処分基準クラスC以上)を除く条件で原子炉圧力容器を一括撤去工法によって2001年から2004年の間に撤去処分した(図3参照)。メイン・ヤンキー炉では、バーンウェル処分場の受け入れ基準5万Ci以下を満たすため、炉内構造物を2/3(127トン)に制限し、断熱材(3トン)を含む原子炉圧力容器パッケージ917トンの撤去、輸送・処分を2003年5月に実施した。
 ドイツのグライフスバルト原子力発電所(5基)では原子炉圧力容器一括撤去方式が採用され、現在、中間貯蔵施設に保管されている。
4.2 炉内構造物及び原子炉圧力容器の切断工法
 炉内構造物の切断工法とその実施例を表4に示す。放射能レベルの最も高い炉内構造物を、熱的切断工法により細かく解体し、撤去した例として米国のエリク・リバー(ERR)、日本のJPDR等の実績がある。JPDRでは、遠隔技術による水中プラズマアーク切断が用いられた。また、ベルギーのBR-3では、二次廃棄物の処理等が有利であるとして主に機械的切断工法を用いて行われた。
 原子炉圧力容器の切断工法とその実施及び計画例を表5に示す。110万kW級原子炉の圧力容器は、重量400トン(PWR型)から800トン(BWR型)、それぞれの胴部の厚さは230mm、170mmもあり、最も解体が困難な構造物の一つである。JPDRでは、回転ブレードを有するアークソーで切断している(文献2)。表5は、1991年に米国のアルゴンヌ研究所が評価したもので、その当時は、熱的切断工法が上位にランクされていた。ベルギーのBR-3では、図4に示す回転ソーでリング状に切断、さらにバンドソーを用いて細断作業が2000年に行われた。ドイツの多目的原子炉MZFRでは、図5に示すように原子炉圧力容器下部をリング状にガス切断し、そのリングの細断にはジグソー(Jig saw)を用いる。水中での各種機械的及び熱的切断方法での比較データを表6に示す。
 グライフスバルト原子力発電所サイトでは、5基(旧ソ連型PWR、44万kWe/基)を順次、解体する世界最大のプロジェクトが進められている。その解体のための用推奨工法を表7に示す。この表にみられるように、熱的切断工法をできるだけ減らし、機械的切断(バンドソー等)が多く用いられる方針が採られている。最近の技術開発により、二次廃棄物の回収、処理等のしやすさから機械的切断工法が鋼構造物の解体に多く用いられる傾向にある。
5.生体遮へい体の解体工法
 原子炉施設のコンクリート構造物の解体技術は、破砕工法(制御爆破、ブレーカ等)、ブロック切断工法(ダイヤモンドブレード、ワイヤーソー等)及び表面除染を目的とする表面剥離工法(スキャブラ法**、ブラスト法、シェーバ法等)に区分される。
 鉄筋コンクリート構造物である生体遮へい体の解体工法は、表8に示すように各種の工法が開発され用いられている。
 破砕する工法は、衝撃力を利用するジャイアント・ブレーカなどで能率が高いが、騒音、振動、粉塵が発生する。この工法は、汚染レベルの低い部分での使用が一般的である。また、JPDRでは、解体効率の高い制御爆破工法を生体遮へい体の放射能レベルの低い部分の解体に用い、効率的であることを実証した。
 放射能レベルの高い部分の解体等には、大きなブロック状に解体する工法が合理的である。米国の高温ガス炉では、生体遮へいの内側をダイヤモンド・ワイヤーソーによりブロック状にして撤去した実施例がある(図6参照)。
 **スキャブラ法とは、タングステン炭化物(WC)チップを先端につけたビットを圧縮空気で上下に往復運動させて、コンクリート面を打撃し汚染した表層部を削りとる方法。
6.汚染コンクリートの除去
 コンクリート表面剥離技術は、汚染コンクリートの表面を剥離し、コンクリート躯体を非放射性解体物して取扱うことができるようにするための重要な技術である。JPDRの場合、汚染水によるコンクリートへの浸透深さは、60Coで数ミリ、137Csで10数ミリ以内である。このような施設ごとの特性を考慮して剥離すれば効率的に汚染コンクリートを分離できる。
 コンクリートの床除染について、米国DOEはスキャブラ法、ブラスト法及びドライアイス・ブラスト法を比較試験して評価している。現状ではスキャブラ法が総合的に優れていると評価されたが、ドライアイス・ブラスト法も効率的で二次廃棄物の発生量が少なく、遠隔作業が可能であり、コスト低減の課題を克服すれば有望であるとしている。
 また、汚染コンクリート、セラミックタイル及び各種塗装の除去にドライアイス・レーザビーム剥離法(Dryice Laserbeam Stripping)がドイツで開発された。その除去効率は、コンクリート開削深さ5mm、セラミックタイル3mm対して、それぞれ1600cm3/hr、650cm3/hrである。ハンド・スキャブラー等との比較を表9に示す。
7.遠隔解体技術
 原子炉本体部分を解体するには、放射能レベルが高いのでマスト型またはマニピュレータ型の遠隔装置が用いられる。これらの装置には、4.2で述べたように対象物に適合した切断冶具が取り付けられる。WAGRの解体作業では、原子炉上部に遠隔解体装置を設置し、対象物に合わせて各種の切断冶具を取替え、作業が進められている。各原子炉施設の遠隔解体技術を表10に示す。
 JPDRのマスト型遠隔解体システムを図7に、また、ランチョ・セコの研磨剤入り超高圧水ジェットによる原子炉圧力容器の解体工法を図8に示す。わが国では、現在、東海発電所の解体に備えて解体装置の開発が進められている(詳細はATOMICAデータ「ロボットによる遠隔解体(05-02-02-03)」を参照)。
 また、大事故を起こしたチェルノブイリ4号炉の石棺の改修及び溶融物の除去が検討されている。この作業に米国のモービル除染/解体作業システム(Rosie)などが用いられる。
(前回更新:2007年2月)
<図/表>
表1 汚染している大型機器の撤去、処分及びリサイクル
表2 原子炉本体等の解体撤去工法の適用例等
表3 米国及びドイツにおける原子炉圧力容器等の一括撤去実績
表4 炉内構造物の切断工法の例
表5 原子炉圧力容器の切断技術
表6 水中での切断技術の比較
表7 グライフスバルト原子力発電所の構造物の推奨切断ツール
表8 生体遮へい(コンクリート)の解体工法
表9 各種機器の汚染コンクリート除去能力
表10 原子炉施設の遠隔解体技術
図1 炉心シュラウドの放射能インベントリと放射線線量率(BWR)
図2 マグノックス型原子炉の炉内放射線量率
図3 サンオノフレ炉の原子炉圧力容器一括撤去
図4 BR-3原子炉圧力容器の回転ソーによる切断
図5 MZFR原子炉圧力容器のガス切断(リング状)及びジグソーによる細断
図6 ダイヤモンド・ワイヤソーによるコンクリート製原子炉容器の解体
図7 JPDR、マスト型遠隔装置によるプラズマアーク切断システム
図8 ランチョ・セコ(Rancho Seco)原子炉圧力容器の超高圧水ジェットによる遠隔解体

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<関連タイトル>
鋼構造物の解体技術 (05-02-02-01)
ロボットによる遠隔解体技術 (05-02-02-03)
解体関連除染技術 (05-02-02-04)
英国WAGRの解体 (05-02-03-10)
トロージャン原子炉の廃止措置 (05-02-03-16)

<参考文献>
(1)宮坂 靖彦:原子炉施設デコミッショニングにおける最近の解体技術動向、デコミッショニング技報 第25号、p.36-51(2002年3月)
(2)日本原子力産業会議(編):原子力ポケットブック、原子力産業会議 2006年版(2006年8月)
(3)宮坂 靖彦ほか:JPDR解体実地試験の概要と成果、原子力学会誌、Vol.38、No.7、p.553-576(1996)
(4)D. Kovan: Windscale - core decommissioning goes active, Nucl. Eng. International,Feb. 2000
(5)Dean M. Wheeler at al., Large Component Removal/Disposal,WM’02 Conf. Tucson,AZ(2002)
(6)原子炉デコミッショニングハンドブック、サイエンスフォーラム、p.99-106
(7)Geoff Holt, John C Lee, Paul B Woollam, Experience in Decommissioning Commercial Nuclear Power Station in the UK, DD&R Nov.10-14 1996,p.72-76
(8)J. Dadoumont, et. al.,Dismantling of the BR-3 Reactor Pressure Vessel,ICEM’01,Sep.30-Oct.4,2001,Bruges,Belgium
(9) Fort St Vrain: the end of the licence,Nuclear Eng. Inter.,Nov. 1997
(10)W. Demant, et. al. Dismantling and Segmentation of RPV and Internals of the Research Reactor MZFR Karlsruhe, Germany, WM’99, Feb. 28-Mar. 4 1999
(11)宮坂 靖彦:米国の発電用原子炉デコミッショニングの最新動向、デコミッショニング技報第21号(2000年3月)
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(13)R.Verseman, F.W.Bach, G.Kremer, P.Bruggeman: Research and Development Results for Dismantling and Decontamination Application, WM’05(2005).
(14)ANS NEWSLETTER 2002, 2003,2004,2005,2006.
(15)Equipment Overview,
(16)Andreas Ehlert,"Best Practice in E.ON Decommissioning Projects”,
http://www.iaea.org/.
(17)Holger Spann “Reactor Reactor Vessel and Reactor Vessel Internals Segmentation at Zion Nuclear Power Station” KONTEC 2013.
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