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<概要>
 わが国では、原子力発電で使い終えた燃料(使用済燃料)からウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料として使います(これを再処理といいます)。この過程で残る、放射能が高く再利用できない廃液を高温で溶融したガラスと混合し、ステンレス製容器に流し込んで固めたものを高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)といいます。高レベル放射性廃棄物は、製造直後の放射能が高く、その元となったウラン鉱石がもつ放射能と同程度に低くなるまでには数万年以上という長い期間を要します。このような長期間にわたって危険性を有する高レベル放射性廃棄物を安全に処分することは、原子力のエネルギーを利用してきた現世代で解決の道筋をつける必要のある重要な課題の一つです。高レベル放射性廃棄物の処分方法については、地層処分を行うことが2000年に制定された法律(「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下、最終処分法という))で定められており、図1に示すように、地下300m以深の安定した地層(天然バリア)に、複数の人工障壁(人工バリア)を組み合わせた「多重バリアシステム」を構築し、埋設します。このようなシステムによって、モニタリングなどの人為的な管理を行わなくても長期間にわたって安全を確保できるようにします。
 わが国では、この最終処分の事業を担う実施主体として2000年に「原子力発電環境整備機構(以下、NUMOという)」が設立されています。NUMOは、2002年に全国の自治体を対象として最終処分施設の設置可能性を調査する区域の公募を開始しています。
 2015年には最終処分法に基づいて制定される最終処分に関する基本方針の改定が行われ、国民や地域の理解と協力を得ていくために、国が科学的により適性が高いと考えられる地域を提示すること等が新たに定められました。この方針のもと、全国を対象とした既存のデータに基づき、地層処分を行う場所を選ぶ際に考慮すべき地球科学的特性や技術的な要件に基づいて地域の適性を区分し、全国地図の形で示した「科学的特性マップ」が経済産業省から2017年に公表されました。
 2019年1月現在、経済産業省とNUMOは、自治体による処分地選定調査の受入れを目指して、地層処分に関する国民理解を得るための対話活動等を進めています。

<更新年月>
2023年04月   

<本文>
1.高レベル放射性廃棄物の地層処分の基本的考え方
(1)地層処分の基本原理
 わが国においては、原子力発電で使われた燃料(使用済燃料)を再処理した後に残る高レベル放射性廃液をガラス原料とともに高温で溶かし、安定な形態に固化したもの(ガラス固化体)を高レベル放射性廃棄物としている。諸外国では、使用済燃料を再処理せずに直接処分する方針を採っている国もあり、その場合には使用済燃料が高レベル放射性廃棄物となる。高レベル放射性廃棄物は、発生直後には高い放射能を有し、放射性崩壊により減衰しつつも長期間にわたって放射能が続くことから、この間人間の生活環境から安全に隔離する必要がある。その方法については、各国および国際機関において様々な可能性が検討されてきた結果、地層処分が技術的にも、倫理的にも、最も適切な方策であるということが国際的に共通の考え方になっている(例えば、OECD/NEA 1977年[2](2)OECD/NEA:Objectives, Concepts and Strategies for The Management of Radioactive Waste Arising from Nuclear Power Programmes(1977年)、OECD/NEA 1995年[3](3)OECD/NEA:The Environmental and Ethical Basis of Geological Disposal of Long-Lived Radioactive Wastes(1995年))。地層処分に関するこうした国際的共通認識は繰り返し確認され、今日に至っている。
 一般に地下深部は、人間の活動や、洪水や地すべりといった地上で遭遇するさまざまな自然現象の影響を受けにくい。また、動水勾配が小さいことや岩盤が緻密であるため透水性が小さいことなどにより、地表付近に比べて地下水の流れは極めて緩慢であり、地下水中に溶解している物質は岩盤に含まれる鉱物などに収着(「吸収」と「吸着」を合わせたプロセス)されることによって地下水の移動に比して移動速度は小さい。さらに、地下深部の地下水は、岩石との反応や微生物の活動などにより酸素が消費されているために一般に還元性となっていることから、地下水との接触による腐食や溶解といった物質の変化が起こりにくい。このように、地下深部の地質環境は、本来的に放射性廃棄物を人間の生活環境から物理的に隔離し、そこに埋設された廃棄物から地下水中への放射性物質の溶出とその移行を抑制し、地下深部に閉じ込める機能を有する。地層処分では、このような地下深部の地質環境が有する天然のバリア機能に工学的な対策(人工バリア)を組み合わせ、これらが相互補完的に働くことで、放射性廃棄物が長期にわたって処分場周辺に閉じ込められるような多重バリアシステムを構築する(図1参照)。これにより、最終的に放射性物質が生活環境に到達するまでに非常に長い時間がかかり、その間に放射能の大部分が減衰して、遠い将来にいたるまでの長期間にわたり放射線学的なリスクを受け入れ可能な低いレベルに抑える。このような地層処分による安全確保の基本的考え方に基づき、各国においては、それぞれの地質学的状況などを考慮して天然バリアとして利用する地層の種類や場所を選定するとともに、それに応じた人工バリアの設計を行うことによって、様々な多重バリアシステムの構成が提案されている。

(2)わが国における地層処分の技術的信頼性
 わが国では、高レベル放射性廃棄物の処分対策としての地層処分の研究開発が1976年より進められた。これらの研究開発成果などを基に、核燃料サイクル開発機構(現在の日本原子力研究開発機構)が「わが国の高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」(以下、第2次取りまとめという)を1999年に公表し、以下のことを示した。
・地層処分概念の成立に必要な条件をみたす地質環境がわが国に広く存在し、特定の地質環境がそのような条件を備えているか否かを評価する方法が開発されたこと
・幅広い地質環境条件に対して人工バリアや処分施設を適切に設計・施工する技術が開発されたこと
・地層処分の長期にわたる安全性を予測的に評価する方法が開発され、それを用いて安全性が確認されたこと
この内容は経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)による国際レビューや国の審議会におけるレビューを通じて確認され、わが国において十分な技術的信頼性をもって地層処分が実施できるとの技術的な拠り所が示されているとされた。これを踏まえ、2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下、最終処分法という)が制定され、実施主体である「原子力発電環境整備機構」(NUMO)が設立されることとなり、高レベル放射性廃棄物の処分対策としての地層処分が事業化された(わが国における高レベル放射性廃棄物処分にかかわる事業化までの検討経緯については付録参照)。

2.わが国における地層処分事業の計画
(1)地層処分事業の概要
 最終処分法では、高レベル放射性廃棄物を地下300m以上の深い地層に処分すること、最終処分施設建設地の選定にあたっては、文献調査による「概要調査地区の選定」、概要調査による「精密調査地区の選定」、精密調査による「最終処分施設建設地の選定」という三段階の調査を行うことを規定している。最終処分法に基づく段階的な立地選定プロセスを図2に示す。原子力発電環境整備機構NUMOは、2002年に全国の市町村を対象として最終処分施設の設定可能性を調査する区域の公募を開始しており、全国の市町村から応募があった場合、約20年かけて三段階の調査を実施して、火山活動や断層活動等の著しい自然事象の影響が及ばない、処分施設の設置に適した場所を選定することとしている。また、処分事業の推進には地元自治体の理解が不可欠であるとの考えから、概要調査地等の選定において、市町村長や都道府県知事が反対の意見を示した場合は次の調査段階に進まないこととしている。2007年1月に高知県安芸郡東洋町から全国で初めて文献調査への応募がなされたが、その後の町長選挙の結果を受けて応募が取り下げられた。これを踏まえ、2007年11月に公表された「放射性廃棄物小委員会報告書 中間とりまとめ」(総合資源エネルギー調査会)に示された提言に基づき、市町村自らの意思で応募を行うことと併せ、国が市町村に対して文献調査の実施の申し入れを行うという方法が採られることとなった。
 なお、2007年の最終処分法の改正によって、使用済燃料の再処理などによって発生する半減期の長い核種を一定量以上含む低レベル放射性廃棄物(TRU廃棄物)の一部が地層処分の対象廃棄物として加わり、高レベル放射性廃棄物は第一種特定放射性廃棄物、地層処分対象の低レベル放射性廃棄物は第二種特定放射性廃棄物として定義されている。
 最終処分法に基づき、経済産業大臣は「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(以下,最終処分基本方針という)および「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」(以下,最終処分計画という)を定めることとなっている。2015年に改定された最終処分基本方針では、次のようなことが示されている。
・第一種特定放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物)は、固型化した当初は放射能が非常に高く発熱量も高い状態にあることから、30年間から50年間程度貯蔵を行った後、最終処分する。
・国は、科学的により適性が高いと考えられる地域(科学的有望地)を示すこと等を通じ、国民及び関係住民の理解と協力を得ることに努める。
・原子力発電環境整備機構、国及び発電用原子炉設置者等は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する情報の積極的な公開に努める。
・最終処分は、特定放射性廃棄物のまわりに人工的に設けられる複数の障壁(人工バリア)と、特定放射性廃棄物に含まれる放射性物質を長期にわたって固定する天然の働きを備えた地層(天然バリア)とを組み合わせることによって、特定放射性廃棄物を人間環境から隔離する「多重バリアシステム」により実施する。
・原子力発電環境整備機構は、最終処分事業の安全な実施、経済性及び効率性の向上等を目的とする技術開発を担当し、国及び関係研究機関は、最終処分の安全規制・安全評価のために必要な研究開発、深地層の科学的研究等の基盤的な研究開発及び地層処分技術の信頼性の向上に関する技術開発等を積極的に進める。
 上記の「国が科学的有望地を示す」との方針のもと、2013年に総合資源エネルギー調査会に設置された地層処分技術ワーキンググループにおいて、地球科学的観点や技術的な観点から処分場を立地するうえで考慮すべき要件・基準が議論された。この検討結果に基づいて、2017年7月、日本全国を対象として、地層処分を行う場所を選ぶ際に考慮すべき要件や基準に基づく科学的特性の分布を示した「科学的特性マップ」が経済産業省から公表された(図3[11](11)経済産業省:科学的特性マップ公表用サイト、http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/
 最終処分計画は、5年ごとに10年を一期として公表することが最終処分法に示されており、2008年に示された最終処分計画では、以下のように記されている。なお、上述のように2015年に最終処分基本方針が改定されているが、2019年1月現在、最終処分計画の新たな公表は行われていない。
・特定放射性廃棄物の最終処分は平成40年代後半を目途として開始する。
・最終処分施設の能力は、第一種特定放射性廃棄物(高レベル放射性廃棄物)についてはガラス固化体4万本以上、第二種特定放射性廃棄物(TRU廃棄物)については19,000m3以上を最終処分することができる規模とする。
・原子力発電環境整備機構は、文献調査を実施した後、概要調査を実施し、平成20年代中頃を目途に精密調査地区を選定し、平成40年前後を目途に最終処分施設建設地を選定する。
・原子力発電環境整備機構は、最終処分施設建設地において、別に法律で定める安全の確保のための規制に従い、最終処分施設を建設し、平成40年代後半を目途に最終処分を開始するものとする。
 以上に述べた最終処分基本方針や最終処分計画に沿って、経済産業省と原子力発電環境整備機構は、自治体による処分地の選定調査の受入れを目指し、2019年1月現在、地層処分に関する国民理解を得るための対話活動等を進めている。
 地層処分事業に係る総費用は約3.8兆円(第一種特定放射性廃棄物の最終処分費用約3.0兆円;第二種特定放射性廃棄物の最終処分費用は約8,000億円)が見込まれている(資源エネルギー庁、2017年)。最終処分事業の資金確保に係る制度化のあり方について審議した結果を取りまとめた総合エネルギー調査会原子力部会中間報告(1999年)では、ガラス固化体4万本程度以上であれば、ガラス固化体1本当たりの処分費用(処分単価)は処分施設の規模にほとんど依存しないとの試算が示されている。

(2)安全規制
 高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る安全規制に関しては、2000年に旧原子力安全委員会が基本的な考え方について取りまとめを行い、安全規制に関する規制・基準などは、処分地の選定の進捗、処分地の固有の状況、科学技術の進歩に応じて段階的により詳細なものとしていくことが重要であるとの考え方が示されている。また、2002年には同委員会により、高レベル放射性廃棄物処分の概要調査地区選定段階において考慮すべき環境要件が示された。2007年の「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の改正によって、最終処分事業の実施にかかわる許可、設計および工事の方法の認可、閉鎖措置計画の認可など、事業の段階的進展を踏まえた規制にかかわる法的枠組みが整備されるとともに、廃棄物埋設施設の定期的な評価(安全レビュー)を行うことなどが規定された。その後、2011年の東京電力福島第一原子力発電所における事故の発生によって2012年に同法の大幅な改正が行われ、原子力施設に対して重大事故対策にかかわる規制の追加などが行われた。2017年の同法の改正では、地層処分対象廃棄物の埋設地およびその周辺の土地の掘削を制限する制度が設けられている。今後、原子力規制委員会により、地層処分事業にかかわる安全規制に関する事項が順次整備される予定である。

(3)研究開発
 地層処分の研究開発については、第2次取りまとめ以降、わが国の深地層に対する科学的研究や、地層処分技術の研究開発を目的に2001年に「幌延深地層研究センター」、2002年に「瑞浪超深地層研究所」が核燃料サイクル開発機構により開所された。2005年の原子力政策大綱や最終処分基本方針に基づき、前述の通り、原子力発電環境整備機構は、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業の安全な実施、経済性及び効率性の向上等を目的とする技術開発を、国及び関係研究機関は、深地層の研究施設等を活用して、深地層の科学的研究、地層処分技術の信頼性向上等に向けた基盤的な研究開発、安全規制のための研究開発を引き続き進めている。
 また、2015年に改定された最終処分基本方針に示されたように、高レベル放射性廃棄物の処分対策に関する幅広い選択肢を確保する観点から、使用済燃料の直接処分やその他の処分方法に関する調査研究、および最終処分の負担軽減等を図る観点から、長寿命核種の分離変換技術に係る研究開発について、日本原子力研究開発機構等が基礎的な研究開発を進めている。

3.諸外国の状況
 高レベル放射性廃棄物やTRU廃棄物のような長寿命放射性廃棄物の処分対策は、原子力発電を実施している各国にとって共通の課題であることから、1970年代からOECD/NEA等の国際機関の活動として、国際的な共同研究プロジェクトや各国の専門家間の情報交換等が進められ、国際的な合意を得ながら、地層処分概念の確立や安全な地層処分の実施に向けた研究開発が進められてきた。2000年頃までには、わが国を含めて多くの国で、安全を確保した地層処分が技術的には実施可能との結論が示されている。しかし、地層処分を具体的に実施するうえでは、処分地の選定などにおいて社会の合意が必要であり、地層処分計画を進めている各国ともこうした社会的側面の課題に直面し、多くの時間を要している。
 2019年2月現在、最も事業が進捗しているのはフィンランドであり、実施主体であるPosivaによる2012年の許認可申請を受けて、2015年に政府がオルキルオトにおける処分場の建設許可を発給している。Posivaは2016年より建設を開始し、2020年代の処分開始を予定している。スウェーデンでは、フォルスマルクを処分地として決定し、実施主体であるSKBから申請された建設許可申請を政府機関が審査している段階である。また、フランスはビュールを候補地として特定し、実施主体であるAndraが設置許可申請の準備を進めている。処分施設の建設地が特定されているのは以上の3カ国であり、スイスやカナダなどは複数の候補地から地質調査による絞り込みを進めている段階である。わが国を含め,その他の国では、調査対象となる候補地を広く探している段階、あるいは処分地選定プロセスの検討や見直しを進めているといった状況にある。

付録.わが国における高レベル放射性廃棄物処分の検討経緯 -研究開発から事業化まで-
(1)わが国における高レベル放射性廃棄物の処分対策については、1962年の原子力委員会廃棄物処理専門部会中間報告および1973年の原子力委員会環境・安全専門部会放射性固体廃棄物分科会報告書において、管理を要しない最終処分方式の必要性等の検討が行われた。
(2)1976年に原子力委員会は「放射性廃棄物対策について」を取りまとめ、再処理施設から発生する高レベル放射性廃棄物の処分方法については、当面地層処分に重点をおいて研究開発を進めるという基本的な方針を示した。これを受けて動力炉・核燃料開発事業団(後に核燃料サイクル開発機構、現在日本原子力研究開発機構)を中核とする地層処分研究開発が開始された。
(3)1980年に原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会は、地層処分研究開発の5段階の手順(可能性ある地層の調査/有効な地層の調査/模擬固化体現地試験/実固化体現地試験/試験的処分)を示し、これを受けて動力炉・核燃料開発事業団は、その第1段階の「可能性ある地層の調査」を進め、1984年に同部会に報告した。同専門部会は、この結果を踏まえて、有効な地層としては、未固結岩等を除いて広く考え得るとの評価結果を取りまとめた。
(4)1987年の原子力開発利用長期計画において、高レベル放射性廃棄物は、安定な形態に固化した後、30年間から50年間程度冷却のための貯蔵を行い、地下数百メートルより深い地層中に処分することを基本的な方針とすること、処分が適切かつ確実に行われることに関しては、国が責任を負うこととし、処分事業の実施主体を適切な時期に具体的に決定することとされた。
(5)1991年、動力炉・核燃料開発事業団はそれまでに得られた研究開発の成果を「高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書-平成3年度-」(通称「第1次取りまとめ」)として中間的に取りまとめ、わが国における地層処分の安全確保を図っていくうえでの技術的可能性が明らかにされた。
(6)1994年の原子力開発利用長期計画において、高レベル放射性廃棄物の処分の実施主体は2000年を目処に設立し、処分事業は2030年から40年代半ば頃に開始するとの方針が示された。
(7)1995年、原子力委員会は、原子力バックエンド対策専門部会および高レベル放射性廃棄物処分懇談会を設置して地層処分の技術的な側面と社会的な側面に関する検討を開始し、「高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方」(1997年:原子力バックエンド対策専門部会報告書)および「高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的な考え方について」(1998年:高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書)を取りまとめ、わが国の処分事業計画および研究開発計画の指針を与えた。
(8)これを受け、1999年11月に核燃料サイクル開発機構(現在、日本原子力研究開発機構)によりこれまでの地層処分研究開発の成果を基に「わが国の高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ-」が取りまとめられ、地層処分の事業化や安全規制の策定に向けた技術的拠り所が示された。
(9)2000年6月、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(以下、最終処分法という)が制定され、実施主体である「原子力発電環境整備機構」(NUMO)が設立されるとともに、最終処分積立金が制度化された。これにより、高レベル放射性廃棄物の処分対策として地層処分が事業化された。
(10)原子力発電環境整備機構は、2002年より全国の市町村を対象として最終処分施設の設定可能性を調査する区域の公募を開始した。
(前回更新:2009年1月)

この記事は内閣府事業の成果です。

<図/表>
図1 高レベル放射性廃棄物の地層処分の仕組み
図1  高レベル放射性廃棄物の地層処分の仕組み
図2 「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づく段階的な立地選定プロセス
図2  「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づく段階的な立地選定プロセス
図3 科学的特性マップ
図3  科学的特性マップ

図3の詳細版はこちら
<関連タイトル>
放射性廃棄物の処理処分についての総括的シナリオ (05-01-01-02)
高レベル放射性廃棄物と処分対策の安全問題 (05-01-01-03)
わが国の放射性廃棄物の種類と区分 (05-01-01-04)
日本における放射性廃棄物の発生の現状と将来の見通し (05-01-01-05)
わが国における放射性廃棄物処理処分の規制と責任 (05-01-01-06)
TRU(超ウラン元素)含有廃棄物の発生源と安全対策 (05-01-01-09)
高レベル放射性廃棄物の特性と処分の概念 (05-01-01-14)
再処理施設からの放射性廃棄物の処理 (05-01-02-03)
放射性廃棄物の処分の基本的考え方 (05-01-03-01)
高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方 (05-01-03-15)
深地層処分 (05-01-04-04)
再処理プロセスと安全性についての基本的考え方 (11-02-04-01)
再処理プロセスにおける放射性廃棄物の発生源 (11-02-04-02)
高レベル放射性廃棄物の処理対策の概要 (11-02-04-03)
原子力発電環境整備機構 (13-02-01-10)

<参考文献>
(1)特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律、法律第117号(平成12年6月7日)(最終改正:平成26年6月13日法律第69号)

(2)OECD/NEA:Objectives, Concepts and Strategies for The Management of Radioactive Waste Arising from Nuclear Power Programmes(1977年)

(3)OECD/NEA:The Environmental and Ethical Basis of Geological Disposal of Long-Lived Radioactive Wastes(1995年)

(4)原子力委員会:放射性廃棄物対策について(1976年10月)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V21/N10/197603V21N10.html
(5)核燃料サイクル開発機構:わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性、JNC TN1400-024(1999年11月)
(6)原子力発電環境整備機構:高レベル放射性廃棄物地層処分の技術と安全性、NUMO-TR-04-01(2004年5月)
(7)総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会原子力部会 放射性廃棄物小委員会:放射性廃棄物小委員会報告書 中間とりまとめ ~最終処分事業を推進するための取組の強化策について~(2007年11月)
(8)経済産業省:特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針(平成27年5月22日閣議決定)(2015年5月)
(9)経済産業省:特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画(平成20年3月14日閣議決定)(2008年3月)
(10)総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 地層処分技術WG:地層処分に関する地域の科学的な特性の提示に係る要件・基準の検討結果(地層処分技術WGとりまとめ)(2017年4月)

(11)経済産業省:科学的特性マップ公表用サイト、http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/

(12)資源エネルギー庁:特定放射性廃棄物の最終処分費用及び拠出金単価の改定について(2017年12月)
(13)総合エネルギー調査会:総合エネルギー調査会原子力部会中間報告 -高レベル放射性廃棄物処分事業の制度化のあり方-(1999年3月)
(14)原子力安全委員会:高レベル放射性廃棄物の処分に係る安全規制の基本的考え方について(第1次報告)(2000年11月)
(15)原子力安全委員会:高レベル放射性廃棄物処分の概要調査地区選定段階において考慮すべき環境要件について(2002年9月)
(16)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、法律第166号(昭和32年)(最終改正:平成29年4月14日法律第15号)
(17)原子力委員会:原子力政策大綱(2005年10月)
(18)総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 放射性廃棄物WG:放射性廃棄物WG中間とりまとめ(2014年5月)
(19)経済産業省資源エネルギー庁:諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について(2018年版)(2018年2月)
(20)内閣府:昭和37年原子力委員会月報7(5)、廃棄物処理専門部会中間報告書、(1962年4月)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V07/N05/19620506V07N05.html
(21)内閣府:昭和48年原子力委員会月報18(9)、環境・安全専門部会中間報告書(放射性固体廃棄物分科会)(1973年6月)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V18/N09/197314V18N09.html
(22)原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会:高レベル放射性廃棄物処理に関する研究開発の推進について(1980年12月)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V25/N12/198023V25N12.html
(23)原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会:中間報告書/放射性廃棄物処理処分方策について(1984年8月)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V29/N08/198411V29N08.html
(24)原子力委員会:原子力の研究、開発および利用に関する長期計画(1987年6月)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki1987/chokei.htm
(25)動力炉・核燃料開発事業団:高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書-平成3年度-、PNC TN 1410 92-081(1992年9月)
(26)原子力委員会(編):原子力の研究、開発および利用に関する長期計画(1994年8月)
(27)原子力委員会 原子力バックエンド対策専門部会:高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発等の今後の進め方(1997年)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo97/siryo26/siryo32.htm
(28)原子力委員会 高レベル放射性廃棄物処分懇談会:高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について(1998年5月)

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