<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 原子力施設の安全規制
<小項目> 再処理施設の安全規制
<タイトル>
再処理プロセスと安全性についての基本的考え方 (11-02-04-01)

<概要>
 再処理施設は他の原子力施設に比べて多量の放射能、異なる化学プロセス、各種の可燃性物質、厳重な臨界管理を必要とするプルトニウムなどを取り扱うので、その安全性確保が最優先とされている。したがって、通常の化学工場と共通する火災・爆発、有毒ガス漏洩等に対する防止対策は勿論、高放射線下の作業及び施設管理に対しても高度の安全規制が適用されている。再処理施設のプロセス概要、安全上の特徴および安全対策の基本的考え方を示す。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 再処理の方法には種々のものがあるが、現在実用化されている方法は溶媒(リン酸トリブチル:TBP)を利用する湿式法(ピューレックス法:PUREX)である。
  図1 に六ヶ所再処理施設で採用されているピューレックス法のプロセス概要説明図を示す。ピューレックス法は米国サバンナ・リバー工場で採用されて以来40年の長期にわたり世界各国の工場で用いられ、改良されてきた安全性および信頼性の高い技術である。発電用燃料再処理の実績も豊富である。ガス冷却炉から取り出された金属燃料については、英、仏において40,000t以上が、軽水炉の酸化物燃料については、仏、日等において5,000t以上が再処理されており、確立された商用技術となっている。

1.ピューレックス法のプロセス
 発電用軽水炉から取り出した後4年以上冷却した使用済燃料集合体をせん断機によりせん断し、この燃料片を溶解槽に投入して硝酸により溶解する。ウラン、プルトニウム、核分裂生成物は硝酸塩溶液となって次の分離・分配設備に送られる。分離設備の抽出塔(パルスカラム)で溶解液(水相)は30%TBP/n-ドデカン(有機相)と接触する。TBP(tri-butylphosphate)は抽出溶媒であり、n-ドデカンは希釈剤である。TBPとの親和性が高いウランおよびプルトニウムは有機相に抽出されるが、親和性の低い核分裂生成物等は水相に残って高レベル廃液となる。有機相は次に還元剤が供給されている分配設備の分配塔(パルスカラム)に入る。ここでプルトニウムは還元剤と反応してTBPとの親和性が低い酸化数に変化するので、有機相に留まることができず水相に移行する。ウランは還元剤と反応せず有機相に留まる。このようにして、ウランとプルトニウムが相互に分離される。有機相中のウランは逆抽出機(ミキサ・セトラ)で希硝酸と接触させると、抽出平衡反応が水相側に移行して水相に逆抽出される。
 分配設備より出るウランおよびプルトニウム溶液はそれぞれの精製設備に入り、同伴している微量の不純物を同様の抽出・逆抽出操作により除去する。抽出に先立ち、プルトニウムは主として酸化反応により、ウランは硝酸濃度を上げることにより、TBPに抽出されやすい状態に調整する。
 精製設備から出た硝酸ウラニル溶液および硝酸プルトニウム溶液はそれぞれ加熱により蒸発乾固を経て硝酸根を分解する脱硝設備に入り、三酸化ウラン製品および二酸化ウラン・二酸化プルトニウム混合酸化物(MOX)製品となる。
 一方、高レベル廃液は濃縮後、高レベル廃液貯蔵施設を経由してガラス固化設備に送られる。濃縮廃液はガラス原料とともにガラス溶融炉に投入され、高温に加熱分解されて酸化物となり、溶融ガラスに同化する。溶融ガラスはステンレス鋼製の容器に流下させて冷却固化した後、ふたを溶接して密封する。

2.安全性についての基本的考え
 2.1 安全上の特徴
   再処理施設は通常の化学操作によりウラン、プルトニウム、核分裂生成物等の元素(核種ではない)を分離・精製する原子力化学工場である。大量の非密封放射性物質を取り扱うことから、平常時はもとより異常時においても環境に影響を及ぼさないように万全の安全設計を行うことが必要となる。原子力施設に特徴的な臨界安全設計のほか、有機溶媒等を用いるので化学工場に特徴的な火災、爆発防止設計も重要となる。
  火災、爆発により放射性物質に対する閉込め機能が損なわれるおそれがあるからである。
 2.2 安全対策
   再処理工場の安全性についての基本的考えは、放射線防護と放射性物質の閉込めにより、一般公衆はもとより従業員に対しても、その安全を確保することである。このため、放射線の遮蔽構造物と放射性物質の多重閉込め機能を設ける( 図2 参照)とともに、異常事象対策として、その発生防止・早期検知および拡大防止のため、何重もの防御機能を設ける多重防護の考え方( 図3 参照)が採られる。
   この基本的考え方に基づき、以下のような安全対策が講じられている。
 2.2.1 平常時対策
  (a) 放射線の遮蔽
    1) 放射性物質を内蔵する工程機器は、十分な遮蔽を施した構造物の内部に設置する。
    2) 工場内においては、放射線レベル、汚染発生の可能性などを考慮して、区域区分の設定を行い作業の安全をはかる。
  (b) 放射性物質の閉込め
    1) 塔槽類・セル・建屋などの多重構造とし、万一漏洩が生じても外部に漏出ない構造とする。
    2) 空気の流れは清浄域から放射性物質濃度の高いレベルの域へとする。
    3) 廃棄物処理系において、放射性物質の除去処理を行う。
    4) 除去した放射性物質は、安定な固化体中へ閉込める。
 2.2.2 異常および事故防止対策
    再処理工場において、これまでに種々のトラブルを経験してきたが、いずれも周辺環境に重大な影響を及ぼしたことはなく、これらの経験を踏まえ、安全技術の確立に努力がなされてきた。その結果、周辺環境に影響を及ぼすほどの事故が発生する確率は極めて小さいと考えられている。
    再処理施設で採られる異常対象は、以下のとおりである。
  (a) 放射性物質の漏洩および拡大防止対策
    1) 漏洩の発生を防止するための設計・製作・運転上の対策
    2) 漏洩の早期検知
3) 漏洩液の回収処理による拡大防止
(b) 火災等の発生および拡大防止対策
1) 発生原因の除去
2) 発生環境の監視・制御
3) 発生の早期検知
4) 防火・防護構造あるいは消火設備による拡大防止対策
(c) 臨界防止対策
1) 臨界安全設計
2) 臨界安全管理
3) 発生時の閉込め機能の確保
4) 予め退避経路を考慮した建屋設計
(d) 地震対策
1) 建屋・構築物の十分な強度・剛性・靱性の確保
2) 重要度分類に応じた設計
3) 適切な設計地震選定と解析などによる設計事前評価
<図/表>
図1 六ヶ所再処理施設で採用のピューレックス法のプロセス概要説明図
図2 再処理工程における放射性物質の多重閉込め機能
図3 多重防護の考え方

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<関連タイトル>
再処理の概要 (04-07-01-01)
再処理プロセスにおける放射性廃棄物の発生源 (11-02-04-02)
高レベル放射性廃棄物の処理対策の概要 (11-02-04-03)
再処理施設の安全規制の概要 (11-02-04-05)

<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成6年版、大蔵省印刷局(1995年3月)
(2) 原子力委員会(編):原子力白書 平成7年版、大蔵省印刷局(1995年2月)
(3) 科学技術庁 原子力安全局 原子力安全調査室(監修):原子力安全委員会安全審査 指針集改訂8版、大成出版(1994年10月)
(4) 松岡伸吾:六ヶ所再処理施設の安全設計と安全評価、日本原子力学会誌、Vol.35、No.10、1993
(5) 火力原子力発電協会(編):やさしい原子力発電、1990年2月
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