<概要>
TRU(
超ウラン元素)含有廃棄物は殆どが使用済み燃料の
再処理、
MOX燃料の加工の過程で発生する
低レベル放射性廃棄物に含まれているものである。これらの廃棄物は一般的に
半減期が長く、
アルファ線を放出する等の特徴を有するので、特にTRU
核種を含む
放射性廃棄物として区分されている。これらの安全対策については、全アルファ核種の
放射能濃度の区分目安値以下、かつベータ・ガンマ核種の放射能濃度の比較的低いものについては
浅地中処分が可能等と考えられているが、これより高いものについては地下埋設処分が適当と考えられ、
高レベル放射性廃棄物の処分方策との整合性をはかりつつ技術開発を進められている。
2000年3月、原子力委員会バックエンド対策専門部会は「超
ウラン核種を含む放射性廃棄物の処理処分の基本的考え方について」の報告書を出した。
(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として
原子力規制委員会が2012年9月19日に発足したため、本データに記載されているTRU(超ウラン元素)含有廃棄物の安全対策についても見直しが行われる可能性がある。
<更新年月>
2002年11月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
ウランが
核分裂を起こす時に核分裂しないウラン原子(
238U)に
中性子が捕獲されてできる原子即ちネプツニウム、プルトニウム等、ウラン原子以上の原子番号を持つ元素のことをTRU(超ウラン元素)と言う。これらの核種を有意に含む低レベル放射性廃棄物をTRU(超ウラン元素)含有放射性廃棄物と称している。
1.TRUを含む放射性廃棄物の発生の現状(
表1、
表2およ
図1、
図2参照)
使用済み燃料の再処理、MOX燃料の加工の過程で発生する低レベル放射性廃棄物は、TRU核種を含んでおり、これらの核種は一般的にアルファ線を放出し、半減期が長い特徴を有するため、特にTRU核種を含む放射性廃棄物として区分している。
これらの廃棄物は、わが国では主に核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)において発生しているが、1998年3月末の同機構における累積発生量を
表3 に示す。これらについては、貯蔵庫に安全に保管されている。
2.処分の基本方針(安全対策)
1)責任の分担
TRU核種を含む放射性廃棄物については、廃棄物を直接の発生者(再処理事業者、MOX加工事業者)とその発生に密接に関連する電気事業者が、廃棄物の帰属や処分に関する責任を当時者間で明確にした上で、処分の責任を有する者が、実施スケジュール、実施体制、資金の確保等について検討することとしている。
2)処分の考え方
2000年3月、原子力委員会バックエンド対策専門部会は「超ウラン核種を含む放射性廃棄物の処理処分の基本的考え方について」の報告書を出し、これらの廃棄物の一部は、含まれる
放射性核種の濃度が低いことから低レベル廃棄物として浅地中処分することが考えられる。さらに一定以上の放射能濃度を有する放射性廃棄物の処分方策としては、主に含まれるアルファ核種の濃度によって、高βγ廃棄物と同様な余裕深度処分あるいは
高レベル廃棄物と同様な
地層処分が適切とされた。これらの各処分概念に対応した濃度上限値の設定は
原子力安全委員会で検討されている。(注:原子力安全委員会は
原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
[用語解説]
TRU:超ウラン元素。ウランより元素番号の大きい元素の総称(Transuranic)
<図/表>
<関連タイトル>
放射性廃棄物の処理処分についての総括的シナリオ (05-01-01-02)
高レベル放射性廃棄物と処分対策の安全問題 (05-01-01-03)
TRU(超ウラン元素)含有廃棄物の処分方針と基準 (11-03-04-03)
<参考文献>
(1) 原子力委員会(編):平成7年版 原子力白書、大蔵省印刷局(1996年1月)
(2) 原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会:超ウラン核種を含む放射性廃棄物処理処分の基本的考え方について、参考資料−2(2000年3月23日)