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<概要>
 高レベル放射性廃棄物の最終処分を計画的かつ確実に実施するための最終処分費用の拠出制度、最終処分を実施する主体の設立、拠出金の管理を行う法人の指定等について規定した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が2000年5月31日に成立した。この法律の施行を受け、同年10月、通商産業大臣の認可を得て原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。
 高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)は、長期間にわたって高い放射能が持続するため、生活環境に影響を及ぼさないよう、地下の深い安定した地層に安全に隔離しなければならない。当機構は、最終処分の実施を目的に処分場の選定、処分施設の建設・管理、最終処分、処分場の閉鎖及び閉鎖後の管理等の業務を行う。今後の事業は、法律に定められた段階にしたがい進められる。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
1.はじめに
 原子力発電に伴い発生した使用済燃料の再処理後に残る高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原子力発電を利用していく上での最重要課題の一つである。この課題を解決するため、特定放射性廃棄物(*:特定放射性廃棄物とは、法律における定義であり、当初、高レベル放射性廃棄物のみであったが、2008年の法改正により、海外からの返還高レベル放射性廃棄物およびTRU廃棄物の一部が追加された)の最終処分を計画的かつ確実に実施するための最終処分費用の拠出制度、最終処分を実施する主体の設立、拠出金の管理を行う法人の指定等について規定した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が2000年5月31日に成立した。この法律の施行を受け、同年10月、通商産業大臣の認可を得て原子力発電環境整備機構(略称:原環機構、NUMO: Nuclear Waste Management Organization of Japan)が設立された。
 最終処分施設の建設にあたっては、概要調査地区の選定、精密調査地区の選定、最終処分建設地の選定の各段階で、地域の意向を十分に尊重して選定することとなっており、先般改定された国の最終処分計画においては、平成40年前後を目途に最終処分建設地を選定することとしている。この事業は公共性が高く、長期にわたる事業であること、受け入れには地域住民の自主的な判断が優先することから、受け入れ可能な区域を全国から、現在、公募している。
 2008年4月の、改正最終処分法が施行され、地層処分の対象となる特定放射性廃棄物として、従来の高レベル放射性廃棄物に、海外から代替取得により返還される高レベル放射性廃棄物と、低レベル放射性廃棄物で発熱量が小さく半減期が長い長半減期低発熱放射性廃棄物(TRU廃棄物)のうちの一部が加わった。新たに加わった特定放射性廃棄物についても、処分事業の実施主体としての認可を取得している。
2.目的と組織
 発電に関する原子力の適正な利用に資するため、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分実施等の業務を行うことにより、原子力発電に係る環境の整備を図ることを目的とする。
 図1に組織図を示す。
3.事業内容
 原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)は、長期間にわたって高い放射能が持続するため、生活環境に影響を及ぼさないよう、地下の深い安定した地層に安全に隔離しなければならない。原環機構は、最終処分の実施を目的に処分場の選定、処分施設の建設・管理、最終処分、処分場の閉鎖及び閉鎖後の管理等の業務を行う。業務遂行にあたっては、積極的な情報公開により透明性のある活動を行うことを通じて、国民に安心感を与えるように努める。
 最終処分の取組体制を図2に示す。
3.1 実施スケジュール
 本事業においては、まず、概要調査地区、精密調査地区及び最終処分施設建設地の選定がある。最初にして最大の課題は、概要調査地区等の選定である。最終処分スケジュールを図3に示す。
 その選定にあたっては、上記の最終処分法等に従って、安全の確保を前提に、適切な情報の公開により透明性を確保するとともに、国民及び地域住民の理解と協力を得るように努める。原環機構は、積極的に、正確で、かつ分かりやすく、情報の公開を行い、また、求められる情報の提供に対応して行く。主要な情報は、インターネット上のホームページでも公表する。一方、国は高レベル放射性廃棄物の最終処分施設建設地の選定過程や選定の理由等について外部から確認するために、総合資源エネルギー調査会原子力部会の下に「高レベル放射性廃棄物処分専門委員会」をすでに設置した。同専門委員会は、平成13年(2001年)4月から活動を開始している。また、平成17年(2005年)7月には、同じ原子力部会の下に「放射性廃棄物小委員会」が設置され、平成19年11月に中間取りまとめ「最終処分事業を推進するための取組の強化策について」が報告されている。
 特定放射性廃棄物を地層処分し、長期間の安全を確保する方法及び技術については、図4に示すような手順が考えられており、核燃料サイクル機構(現、日本原子力研究開発機構)をはじめ関連機関において多くの研究成果が積み重ねられている。
 また、原環機構が最終処分を行う場合については、安全の確保のため、今後、別に法律が制定され、安全規制が行われることが「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に定められている。原子力安全委員会では、そのための検討が開始されている。すでに放射性廃棄物安全規制専門部会は、「高レベル廃棄物の処分に係る安全規制の基本的考え方」を平成13年(2001年)10月にまとめている。同委員会の下に、同年11月には、基本的考え方のフォローアップとして、特定放射性廃棄物安全調査会が設置されている。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
 今後、原環機構の事業の進展にあわせて安全基準、安全審査基本指針等が定められる。原環機構は、平成30年代後半(2025年頃)から、これらの蓄積された研究成果及び新たに制定される安全規制に基づいて、施設の建設、改良、維持等の事業を展開し、順を追って最終処分の開始(平成40年代後半)、施設の閉鎖、閉鎖後の管理を行う。
(前回更新:2004年6月)
<図/表>
図1 組織図
図1  組織図
図2 最終処分の取組体制
図2  最終処分の取組体制
図3 最終処分スケジュール
図3  最終処分スケジュール
図4 原子燃料サイクルと高レベル放射性廃棄物
図4  原子燃料サイクルと高レベル放射性廃棄物

<関連タイトル>
核燃料リサイクルの概要 (04-01-01-01)
高レベル廃液ガラス固化処理の研究開発 (05-01-02-04)
わが国における高レベル放射性廃棄物の処分についてのシナリオ (05-01-03-06)
高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方 (05-01-03-15)
幌延深地層研究計画 (06-01-05-12)
原子力環境整備促進・資金管理センター (13-02-01-08)

<参考文献>
(1)原子力発電環境整備機構:http://www.numo.or.jp/
(2)原子力発電環境整備機構:原子力発電環境整備機構定款、http://www.numo.or.jp/about_numo/outline/teikan/index.html
(3)放射性廃棄物のホームページ:
(4)原子力安全委員会・特定放射性廃棄物安全調査会の資料:
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