<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> プルトニウム燃料
<小項目> プルトニウム燃料の利用
<タイトル>
高速増殖炉燃料の実例(原型炉「もんじゅ」用燃料) (04-09-02-05)

<概要>
 高速増殖炉「もんじゅ」の燃料には、厳しい使用条件に対応して、スペーサワイヤで間隔を保った細径のステンレス鋼被覆管の燃料棒を束ね、六角形状のラッパ管に収納して燃料集合体とする簡便な構造が採用されている。燃料棒には、破損時の位置特定のためのタグガスが導入されており、ハンドリングヘッドにはセルフオリエンテーション機能のための斜面形状が、さらに、エントランスノズルには集合体毎の原子炉冷却材流路配分のためのオリフィスが設けられている。
 燃料ペレットの製造では、プルトニウムを多量に扱うことから、臨界制限量を上げるために乾式工程とし、従業員の被ばくを低減するための遠隔自動化した装置をグローブボックス内に設置する方法が採用されている。また、燃料棒加工、集合体加工工程においても遠隔自動化が図られている。
<更新年月>
2010年09月   

<本文>
1. 高速増殖炉とその燃料の特徴
 高速増殖炉(FBR)は、高エネルギー中性子による核分裂の際に放出される余剰の中性子を238Uに吸収させて239Pu等の核分裂性物質に変換させることにより核分裂性物質量を燃焼した量以上に増殖する原子炉であり、ウラン資源を有効に且つ長期に亘って利用できる可能性を有している。
 将来の実用化を目指して、FBR開発には規模の観点から幾つかのステップが設けてられている。日本国内では、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)の実験炉「常陽」が茨城県大洗町で稼働中であり、また、福井県敦賀市には原型炉「もんじゅ」が建設された。
 FBRの燃料は軽水炉の燃料に比べ、出力密度が大きい、高速中性子照射量が大きい、燃焼度が大きい、原子炉冷却材温度が高い(ただし、原子炉冷却材圧力は低い)等、使用条件が厳しいため、それに耐える材料、構造が選定されている。具体的には、炉心燃料を構成する被覆管及びラッパ管の材料には、原子炉冷却材のナトリウムとの両立性、高温での機械的強度、高速中性子照射に対する耐スエリング特性等の観点で特別に開発されたステンレス鋼を使用している。なお、軽水炉においては熱中性子吸収が少ないことが必要であるため被覆管材としてジルカロイが使用されているが、FBRでは核分裂を主に高速中性子によっているため、この制約は重要でなくなる。また、燃料集合体は、燃料棒間の接触を防止し冷却材流路を確保するため燃料棒にワイヤを螺旋状に巻き付け、この燃料棒を正三角稠密格子配列した燃料棒束にし、六角断面形状を有するラッパ管に収納したシンプルな構造となっている。なお、FBRの炉心はプルトニウム等の核分裂性物質濃度を高めた炉心燃料領域と、その周囲に位置し増殖を目的として炉心燃料領域から漏れ出る中性子を劣化ウラン(減損ウラン)に吸収させるブランケット燃料領域からなる。
 以下、原型炉「もんじゅ」に使用されている燃料を例にとりFBR燃料の構造、製造プロセス等の概要を紹介する。
2. 「もんじゅ」燃料の構造及び仕様
 「もんじゅ」の炉心構成を図1に示す。「もんじゅ」では、プルトニウム富化度の異なる2種類の炉心燃料集合体198体(内側108体、外側90体)が六角形状に配置され、その外側を囲むようにブランケット燃料集合体172体が配置される。「もんじゅ」用の炉心燃料集合体の構造図を図2に、ブランケット燃料集合体のそれを図3に示す。ここでは、殆どの出力を分担する炉心燃料を中心に紹介する。「もんじゅ」用炉心燃料の主要仕様を表1に示す。
 「もんじゅ」では、炉心燃料としてUO2粉末とPuO2粉末を混合した混合酸化物燃料(MOX燃料)ペレットを用いている。このプルトニウム富化度は、炉内径方向の出力分布の平坦化のために内側炉心に比べて外側炉心の方が高く設定されるが、FBRでは中性子の拡散距離が長く、局所的な出力ピーキングが生じ難い特徴を有することから、燃料集合体内では同一であり、軽水炉に比べて核分裂性物質の富化度種類は格段に少ない。また、「もんじゅ」では核分裂に伴うFPの蓄積によるペレットの体積的な膨れ(スエリング)を吸収するためにペレット内にポア(微小な空隙)を導入して密度を理論密度比85%と低く設定している。
 燃料棒は、約93cmの長さのMOX燃料ペレット部、この上部に約30cm、下部に約35cmの軸方向のブランケット燃料ペレット部を被覆管内に密封した構成となっている。ここで、ペレットと被覆管内面とのギャップは160μm(直径相当)とこの間の熱伝達を良好に保つため、狭く設定されている。また、燃料棒には、核分裂に伴い発生するFPガスを収納し内圧の上昇を抑制するために、空間(プレナム)が上部側に約1.2mの長さで設置されている。さらに、万一燃料棒の破損が起こった場合にその位置を特定するための特殊なガス(多種類のKr、Xe同位体組成構成を持つガス)が入ったタグガスカプセルが封入されている。また、燃料棒間隙を保つために約310mmピッチで1.3mm径のスペーサワイヤが燃料棒に螺旋状に巻き付けられており、このワイヤは上下端栓部で固定される。ペレットを内包する被覆管には、高温での機械的強度、耐スエリング特性に優れた材料として動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)において開発されたSUS316相当ステンレス鋼(PNC316鋼)が使用されている。燃料棒外径(被覆管外径)は、燃料中心温度制限の中で高い出力密度を採るために、約6.5mmと軽水炉に比べかなり細く設定されている。
 この燃料棒169本を束ねたバンドルは内対面距離104.6mm、肉厚3mmのPNC316鋼製の六角形状のラッパ管に収納され、また、この上下に燃料交換機と嵌合するハンドリングヘッド、炉心支持板の連結管に挿入されて冷却材を導入するエントランスノズルが配置され、これらとラッパ管が溶接されることにより燃料集合体が構成される。ハンドリングヘッド外面には、燃料交換の際に周方向にずれが生じた場合に自律的に修正する機能(セルフオリエンテーション)を持つように螺旋状の斜面が設けられている。また、エントランスノズルには、炉内出力分布に対応して集合体毎に適切な冷却材流量配分が行えるようにオリフィス(圧力損失を調整するために大きさを変えた孔)が6方向に設けられている。燃料棒はエントランスに設置された板状のノックバーのフック部を下部端栓の孔に挿入することにより下部側で固定・支持され、一方、上部側については照射中の燃料棒の伸びを吸収するために無拘束としている。
3. 「もんじゅ」燃料の製造
 燃料ペレットの製造方法は、原料粉末を混合、成型、焼結して製品に仕上げていく点では軽水炉用のウラン燃料と同様であるが、プルトニウム富化度が高いMOXを用いる点、低密度である点等が異なっている。プルトニウムを多量に扱うことから、臨界制限量を上げるために乾式工程とし、従業員の被ばくを低減するための遠隔自動化した装置をグローブボックス内に設置する方法が採用されている。さらに、厳密な計量管理が要求されるために粉末の飛散防止、集塵機の導入等を行い工程内残留量を低減する必要がある。
 図4に「もんじゅ」用燃料ペレットの製造工程フローを示す。UO2粉末とPuO2粉末をボールミルで十分に摩砕混合して混合酸化物粉末を作り、これと密度降下剤(ポアフォーマー)等を混合して成形に適した粒度に造粒した後、プレスで金型成形してグリーンペレットとする。これを予備焼結してポアフォーマー等を蒸発・分解除去し、さらに、脱ガス処理を行った後に焼結する。焼結したペレットのうち、外径が大きめのものは乾式無心研削機で円筒側面を研削する。ここで、局所的にプルトニウムが高濃度となる部分が発生しないように混合工程での管理が、また、ポアフォーマーが適切に除去できるように焼結条件(雰囲気ガス、温度等)の設定が重要となる。各種の検査に適合したロットのペレットのみが製品ペレットとして燃料棒加工工程に送られる。また、研削工程等で捕集された乾式回収粉末は原料粉末と共に混合されて再利用が図られる。
 「もんじゅ」用の燃料棒加工と集合体組立の工程フローを図5に示す。下部端栓が溶接された被覆管にペレットが充填され、プレナムスプリング等の部材が挿入された後、Heガス雰囲気で上部端栓をTIG溶接して燃料棒として加工される。なお、ペレットの充填の際には、溶接部に固着汚染が生じないように薄い箔状の管口マスクが使用される。さらに、端栓溶接の自動化に対応するため、冷し金が不要となるように嵌合(はめあい)形状の工夫が行われ、また、電極位置決めのために画像処理、マイコン制御技術が採用されている。この後、燃料棒は表面が除染された後、グローブボックスから取り出され、これにスペーサワイヤが自動化された装置により巻き付けられる。
 この燃料棒に対して、表面汚染、外観、曲がり、溶接部のX線透過試験等の各種非破壊検査が実施される。適合した燃料棒は一層ずつ並べられて下端をエントランスノズル組み枠に溶接されたノックバーのフック部に架けられ、燃料棒バンドルを形成する。なお、このフック型の支持構造は自動組立に対応して採用されている。この燃料棒バンドルにハンドリングヘッドが溶接されたラッパ管が被され、エントランスノズルとラッパ管とが溶接される。組み立てられた燃料集合体は曲がりや捩じれ等の検査が行われ、最終的に原子炉サイトに出荷される。
 なお、「もんじゅ」用炉心燃料集合体は動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)東海事業所(現東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所)のプルトニウム燃料第三開発室で製造されている。
<図/表>
表1 「もんじゅ」用炉心燃料の仕様
図1 「もんじゅ」の炉心構成図
図2 「もんじゅ」用炉心燃料集合体の構造図
図3 「もんじゅ」用ブランケット燃料集合体の構造図
図4 「もんじゅ」用燃料ペレットの製造工程フロー
図5 「もんじゅ」用燃料棒の加工・集合体組立工程フロー

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<関連タイトル>
プルトニウム混合転換技術 (04-09-01-03)
混合酸化物(MOX)燃料の製造加工工程 (04-09-01-07)
重水炉(新型転換炉)燃料の実例(原型炉「ふげん」用燃料) (04-09-02-06)

<参考文献>
(1)堀雅夫(監修):基礎高速炉工学、日刊工業新聞社(1993)
(2)動力炉・核燃料開発事業団:高速増殖炉もんじゅ発電所原子炉設置許可申請書(1980年申請、1990年変更)
(3)動力炉・核燃料開発事業団:新型炉核燃料サイクル特集−MOX燃料の開発、動燃技報、No.59(1986年9月)
(4)木村雅彦ら:FBR用MOX燃料の製造技術開発、動燃技報、No.95(1995年9月)
(5)中江延男ほか:高速炉燃料の研究開発状況と今後の展望、核燃料工学−現状と展望−日本原子力学会(1993年11月)、p.195-240
(6)日本原子力研究開発機構ホームページ: http://www.jaea.go.jp/
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