<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高温ガス炉
<小項目> 高温ガス炉の概要
<タイトル>
高温ガス炉概念の特徴 (03-03-01-02)

<概要>
 原子炉出口冷却材温度が700℃〜950℃の黒鉛減速ヘリウム冷却型炉を高温ガス炉(HTGR)という。また、HTGRのうち、原子炉出口冷却材温度が950℃以上となるHTGRを超高温ガス炉(VHTR)とも呼ぶこともある。わが国では日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)開発機構の高温工学試験研究炉(HTTR)が2004年4月には原子炉出口冷却材温度950℃での全出力運転に成功している。HTGRシステムは、炉心構成、(炉心)出力密度原子炉圧力容器および一次系主要機器に特徴がある。炉心は耐熱性に優れる被覆燃料粒子と黒鉛材料で構成され、ヘリウムガスで冷却され、低出力密度炉心と相まって高度の固有安全性を達成できる。燃料としてウランの他トリウムも実用化されており、平均燃焼度10万MWd/t以上が得られる。また、原子炉から得られる高温のヘリウムガス用いた高効率発電のみならず、水素製造等の核熱利用を可能にする唯一の炉型である。
<更新年月>
2006年09月   

<本文>
1.燃料
 黒鉛減速ヘリウム冷却型熱中性子炉を高温ガス炉(HTGR又はHTR)という。表1各種ガス冷却型発電用原子炉の主要目を表1に示す。高温ガス炉のヘリウムガス温度と熱出力の関係を図1に示す。炉心温度が高いため金属材料の代わりにセラミックス材料で炉心が構成されることが他の炉型と比較した時の最大の特徴である。高温ガス炉システムの特徴を他のわが国での在来炉と比較しながら、その炉心構成、炉心出力密度、一次系機器等のFP(核分裂生成物)障壁等について述べ、さらに将来の工業的利用の可能性について説明する。
 図2に高温ガス炉用の球状燃料とピンインブロック型(ブロック型)燃料を示す。燃料は、ウラン酸化物等の微小粒子を熱分解炭素(PyC)、炭化珪素(SiC)で多重に被覆した直径1mm以下の粒子(被覆燃料粒子)である。初期の炉ではPyCで2重に被覆したBISO型被覆燃料粒子を用いたが、最近では、セシウム137やストロンチウム90等の金属核分裂生成物をも効果的に閉じ込めるため、SiC層を有する4重被覆のTRISO型粒子が用いられている。この燃料粒子を集合し燃料要素とする方式に、球状燃料とブロック型燃料の2種類があり、いずれも黒鉛粉と混合焼結成形したものである。球状燃料は直径6cmの球に成形加工したものでドイツで開発された。また、ブロック型燃料には、細棒に成形し六角黒鉛ブロックの多数の穴に装填し封入するアメリカ型のマルチホール型(ブロック型)燃料要素と、環状ペレットに成形したものを黒鉛スリーブに挿入し燃料棒とし、これを多数本六角黒鉛ブロックに装着する日本原子力研究開発機構所の高温工学試験研究炉(HTTR)で採用しているピンインブロック型燃料要素がある。球状燃料は原子炉運転中に連続燃料交換を、ブロック型燃料は原子炉停止時に燃料交換を行う。
 HTGR燃料サイクルについては、開発当初はトリウムの利用が積極的に追求され、ドイツやアメリカで導入された発電用原型炉では高濃縮ウラン、トリウムサイクルが採用された。しかし、核不拡散条約の成立以後は低濃縮ウラン(ドイツ、日本)または低濃縮ウラン/トリウム燃料に変更されている。近年、南アフリカで建設準備中のPBMR(文献3、4)および米国ゼネラル・アトミック(GA)社で開発中のGT−MHR(文献3、5)については、使用済み燃料を直接処分するワンススルーサイクルが採用されている。一方、日本原子力研究開発機構で開発中のGTHTR300(文献6、7)では、使用済み燃料を有効利用する再処理サイクル採用されている。いずれの方式にも、実用化にあたり大きな障害となるような技術的な問題はない。
2.出力密度
 炉心の出力密度は原子炉本体の大きさを決定するため経済性(建設費)の観点から重要であるが、原子炉の用途(原子炉冷却材温度の高低)、燃料要素形式、固有安全性の程度(特に受動的崩壊熱除去)との関連があり、様々な設計が実用化され、または検討中である。ドイツのTHTR−300および米国のフォートセントブレイン炉の出力密度は、それぞれ6.0および6.3MW/m3であり、プレストレストコンクリート製原子炉圧力容器(PCRV)を用い一次系主要機器を一体構造とすることにより経済性向上を図ったものであった(これらは政策的、経済的理由から廃止されている)。一方、現在では、固有の安全性、特に、受動的崩壊熱除去を可能とさせるモジュール型高温ガス炉が一般的である。ドイツの技術を基礎として南アフリカで建設準備中のPBMRで4.3MW/m3である。一方、GA社のGT−MHR、日本原子力研究開発機構のGTHTR300では、それぞれ6.5MW/m3、5.4MW/m3である。いずれのシステムも発生が想定される最も厳しい事故において燃料最高温度を1600℃以下に維持してFP放出をが抑制する苛酷事故のない設計(シビアアクシデントフリー)を基本としている。
3.一次系機器等のFP障壁構造
 次に、実用高温ガス炉の原子炉本体の構造形式の特徴として、FP障壁となる原子炉と一次系機器の収納および配置方式を挙げることができる。すなわち、単基の熱出力が1000MWt程度以上の中型炉では、プレストレストコンクリート製原子炉圧力容器(PCRV)が採用されてきた。PCRVは圧力容器として安全性が高く、また、一次系機器をその内部に収納することができ、他形式に比べ鋼製一次系配管を必要としないという利点を有している。しかし、近年では、経済的な理由により鋼製の原子炉圧力容器を用いたシステムが一般的である。この場合、原子炉出力は最大600MW程度に抑えられ、配管破断事故時においても燃料最高温度が許容温度を超えないように設計されている。さらに、被覆燃料粒子の高温に至るまでのFP保持性能および低出力密度大熱容量炉心の崩壊熱除去の確実性を考慮して、原子炉格納形式として、耐圧、密封機能を要しない形式(コンファインメント型式)を採用している。
4.将来の工業利用の可能性
 高温ガス炉の工業利用の多用性について述べる。高温ガス炉の多目的利用を図3に示す。前述のように、本炉では、原子炉冷却材温度が700〜950℃と高温であるため、その熱利用を効率的に行うと、他の炉型にみられない応用が期待できる。これまでに諸外国を含めて検討されてきている多目的熱利用方法を以下に示す。
 1)水蒸気発電または熱電併給
 2)ヘリウムガスタービン発電または複合サイクル発電
 3)石炭ガス化、重質油改質、天然ガス改質、メタノール製造
 4)熱化学ヒートパイプ、熱化学水素製造、水蒸気電解水素製造
 5)原子力直接製鉄
 近年、日本を含む世界10か国と1機関が参加する第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)において、VHTRは優先度の高い原子炉システムとして位置づけられており、これを利用した水素製造等の開発は、米国、欧州においても活発な研究開発が進められている。とりわけ、日本原子力研究開発機構ではISプロセス(熱化学法)による連続水素製造試験を世界で初めて成功しており、現在実用材料を用いたパイロット試験の準備を行っている。図4にHTTRをベースとした原子力水素製造システム概念例を示す。
 以上の核熱利用は、実際は特定プラントにおいて複合的にモジュール型原子炉と結合されるものと一般的に考えられている。日本原子力研究開発機構では、水素製造システムの実用化に関する研究開発と並行して、GTHTR300をベースとした電力水素併産の実用炉の設計研究が進められている。それぞれの具体例については別項の関連タイトルを参照されたい。
(前回更新:2001年9月)
<図/表>
表1 各種ガス冷却型発電用原子炉の主要目
図1 高温ガス炉のヘリウムガス温度と熱出力の関係
図2 高温ガス炉用の球状燃料とピンインブロック型(ブロック型)燃料
図3 高温ガス炉の多目的利用
図4 HTTRを用いた原子炉水素製造システム概念例

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
ガス冷却型原子炉の技術的進展 (03-03-01-01)
高温ガス炉と軽水炉の相違 (03-03-01-03)
高温ガス炉燃料の安全性 (03-03-03-01)
高温ガス炉の安全性 (03-03-03-02)
高温ガス炉による核熱エネルギー利用の拡大 (03-03-05-01)
日本における高温ガス炉技術の開発と国際協力 (03-03-06-01)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:平成16年度日本原子力研究所年報(2005年)
(2)日本原子力研究所:‘Present Status of HTGR Research & Development’(2004)
(3)IAEA:‘Current status and future development of modular high temperature gas cooled reactor technology’,IAEA−TECDOC−1198(2002)
(4)Pieter J Venter,et al.:PBMR Reactor Design and Development’,SMiRT18,Beijing,China,Aug. 7−12,2005,SMiRT18−S02−2(2005)
(5)M.P.LaBar,et al.:‘Status of GT−MHR for Electricity Production’,World Nuclear Association Annual Symposium 3−5 Sep.,London(2003)
(6)K.Kunitomi,et al.:‘Japan’s future HTR−the GTHTR300’,Nuclear Engineering and Desigin 233,309−327(2004)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ