2.高効率発電への利用
発電への利用では、在来火力発電並の蒸気条件のタービン発電で約40%の熱効率が得られるが、原子炉出口冷却材温度が850℃以上ではガスタービン発電により45〜50%の熱効率が得られる。閉サイクルのヘリウムガスタービンを高温ガス炉と結合させて、大規模な発電を行うための研究開発は、中期的なプログラムとして、ドイツでGHH社が50MW級の閉サイクルガスタービンの開発を行い、またユーリッヒ原子力研究所(KFA:Kernforschungsanlage)、HRB社(Hochtemperatur−Reaktorbau−GmbH)が中心となってHHT計画(HHT:HTR auf Helium−Turbine、発電端出力660MW)を進めてきたが、いずれも経済性の見通しが立たなかったこと、原子力に対する国民の十分な理解が得られなかったことなどにより、計画は中断された。その後、大幅に経済性を改善する概念として、モジュラー型直接サイクルガスタービン発電高温ガス炉システムが構築され、現在では、発電用高温ガス炉の主流になっている。南アフリカ共和国の国営電力会社ESKOM社は、同国ケープタウン市近郊にペブルベッドモジュール型高温ガス炉(PBMR:Pebble Bed Modular Reactor)を設計し、技術開発を進めてきたが、経済的な理由から開発は中止された。わが国では、日本原子力研究開発機構において電気出力274MWのヘリウムガスタービン発電炉GTHTR300、電気/水素のコジェネレーション高温ガス炉GTHTR300Cの設計が行われている。中国では、蒸気タービン発電実証炉HTR-PMが建設され、2022年の全出力運転に向けた準備を進めている。
<関連タイトル> 高温ガス炉の発電炉としての適合性と将来性 (03-03-04-02) 高温ガス炉による核熱エネルギー利用 (03-03-05-01) 高温ガス炉の利用によるコジェネレーション (03-03-05-02) HTTRを用いた熱化学法ISプロセスによる水素製造研究開発計画 (03-03-05-03) <参考文献>
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