<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高温ガス炉
<小項目> 我が国の高温ガス炉開発
<タイトル>
日本における高温ガス炉技術の開発と国際協力 (03-03-06-01)

<概要>
 日本では、1969年以来、特殊法人日本原子力研究所(2005年(平成17年)10月に再編され、現在は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、以下「原子力機構」という。)において、核熱利用を目的とした多目的高温ガス実験炉の設計及び関連要素技術の開発が行われた。また、製鉄分野への応用の検討として、通商産業省(現経済産業省)の大型プロジェクトとして原子力製鉄の研究開発が1973年から1980年まで行われた。原子力機構では、燃料、材料、炉物理、熱流動、高温計測、高温機器実証試験、機器耐震、機器信頼性等の研究開発成果を踏まえ、1991年に、熱出力30MW、原子炉出口冷却材温度950℃の高温工学試験研究炉HTTR)の建設に着手、1998年11月10日に初臨界を達成した。その後、1998年12月に全燃料装荷炉心を完成し、零出力炉物理試験を実施した。1999年9月より出力上昇試験を開始し、2001年12月に原子炉出口温度850℃の全出力運転を達成した。2004年には原子炉出口温度950℃の全出力運転を達成し、使用前検査合格証を取得した。その後、冷却材流量喪失試験、定格長期運転、高温長期運転等に成功した。2011年3月以降、運転を停止しているが、再稼働後は国際共同研究プロジェクトのための試験を行う計画である。
 日本の高温ガス炉技術の研究開発を効率的に進めるため、原子力機構では、政府間協定の下、各国の研究実施機関との間の取決め、覚書を締結し、米国、フランス、中国との研究開発協力を進めるとともに、国際原子力機関(IAEA)及びOECD/NEAとも研究協力・情報交換を行ってきた。これらに加えて、現在、GIF(第4世代原子力システムフォーラム)、カザフスタン、韓国、インドネシアとの間で協力が進められている。
<更新年月>
2016年08月   

<本文>
 1969年(昭和44年)、新たな原子炉プロジェクトとして、発電用のみならず製鉄化学工業分野等の熱源として、原子炉で発生する熱、すなわち、核熱のプロセス利用を目指した高温ガス炉(HTGR:High Temperature Gas−cooled Reactor)の開発が特殊法人日本原子力研究所(2005年(平成17年)10月に再編され、現在は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、以下「原子力機構」という。)のテーマとして取り上げられた。このプロジェクトでは実験炉の設計及び関連要素技術の開発が行われてきた。関連要素技術の開発としては、原子力機構において、HENDEL(大型構造機器実証試験ループ)、VHTRC(高温ガス炉臨界実験装置)、OGL−1(大洗ガスループ)等を用いて、大型構造機器の健全性、炉物理、被覆粒子燃料、耐熱材料、高温機器等に関する研究開発を含む、原子炉設計、建設に必要な全ての分野での研究開発が進められた。本開発研究は、その後、以下に述べるHTTR計画に引継がれ、同炉の設計、建設に反映された。主要分野の成果を表1−1及び表1−2に示す。
 他方、通商産業省工業技術院(現国立研究開発法人産業技術総合研究所)による実験炉に接続する直接製鉄パイロットプラントの完成を目指した大型プロジェクト「高温還元ガス利用による直接製鉄技術開発」の第1段階が、1973年から6年計画で開始され、1980年(昭和55年)に所期の目的を達成し第一期計画を終了した。この時点までの技術的成果は原子力機構に移転され、HTTRに接続する熱利用試験の研究開発等に反映された。得られた主要な成果を表2−1及び表2−2に示す。
 1986年(昭和61年)、核熱プロセス利用の需要の動向など高温ガス炉を取りまく社会情勢の変化に鑑み、高温ガス炉研究開発の意義、現状及びそれを取りまく状況並びに今後の研究開発の進め方について、原子力委員会高温ガス炉研究開発計画専門部会が開催され、審議、検討が行われた。その結果、従来の原子力開発利用長期計画のもとに進められてきた実験炉建設計画が見直され、高温ガス炉技術の基盤の確立と高度化を図るとともに、高温工学に関する先端的基礎研究ができる試験研究施設として、熱出力30MW、原子炉出口冷却材温度950℃の「高温工学試験研究炉(HTTR:High Temperature engineering Test Reactor)」を建設することが示された。これを受けて、原子力機構は、将来の高温ガス炉技術の進展に備えて、「HTTR」を早期に建設し、それを活用することにより、大学、国立試験研究機関等の協力の下に、将来の技術革新の契機となる各種技術の萌芽の創生に至るような先端的基礎研究を進めることとし、同炉の詳細設計を進めた。そして、1989年2月に国へ設置許可申請を行い、1990年11月に許可を得て、1991年、建設に着手した。その後、1996年に据付工事をほぼ終了させ、同年後半から機能試験を行い、1998年11月10日に初臨界を達成した。1998年12月には全燃料装荷炉心を完成し、零出力炉物理試験を終了した。1999年9月より出力上昇試験を開始し、2001年12月に原子炉出口温度850℃、30日間の全出力運転を達成した。2004年3月には原子炉出口温度950℃、50日間の全出力運転を達成して技術基盤を確立し、水素製造の熱源として利用の可能性を示した。
 2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震後の運転再開の取組として、原子炉施設の点検作業が実施され、健全性確認報告書が監督官庁に提出されている。運転再開の時期は、2016年8月現在未定であるが、再稼働後は国際共同研究プロジェクトのための試験を行うことが予定されている。2014年4月のエネルギー基本計画(閣議決定)では、「固有の安全性を有する高温ガス炉など、安全性の高度化に貢献する原子力技術の研究開発を国際協力の下で推進する」とされ、また、同年6月の成長戦略、骨太の方針(閣議決定)においても、「高温ガス炉など安全性の高度化に貢献する技術開発の国際協力等を行う・・・」とされ、この分野の国際協力の重要性が指摘されている。
 HTTR建設までのわが国における高温ガス炉研究開発の経緯を図1に、2011年3月の東北地方太平洋沖地震以前のHTTRの建設、試験スケジュールを図2に示す。また、諸外国の高温ガス炉計画スケジュールを含めて、これまでの歴史的経緯と2014年現在の研究開発計画スケジュールを図3に示す。また、世界の研究開発状況を図4に示す。
 原子力機構では、研究開発を効果的、効率的に進めるために、政府間協定の下、各国の研究開発実施機関との間の取決め、覚書きを締結し、諸外国との研究開発協力を積極的に進めるとともに、国際原子力機関(IAEA)及びOECD/NEAとも研究協力・情報交換を行っている。2014年10月現在の国際協力の概要を図5に示す。多国間では、IAEA、OECD/NEA、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)と協力を進めている。また、二国間では、中国INET(核能技術研究所)、米国、カザフスタン、韓国、インドネシア等と協力を進めている。以下にその概要を示す
1. 多国間(多機関)協力
1.1 経済協力開発機構(OECD/NEA)
(1)原子力水素情報交換会議:原子力エネルギーを用いた水素製造に関する課題について議論する。
(2)LOFCプロジェクト:HTTRを用いた強制冷却喪失時の革新炉の性能の研究を2010年から実施している。技術検討グループと運営員会が開催されている。
1.2 第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)
 将来的な世界のエネルギー需要に対応するための、持続可能であり革新的な次世代原子力システムの技術の協同研究開発を推進するための多国間枠組(第4世代の原子力システムの研究及び開発に関する国際協力のための枠組協定)である。現在、12か国及びEUが参加している。この協定は2015年2月に10年間延長された。
1.3 IAEAとの協力
(1)ガス冷却炉技術ワーキンググループ(TWGGCR:Technical Working Group on Gas Cooled Reactor 従来のIWGGCR(International Working Group on Gas Cooled Reactors)が改組されたもの)が設置されており、高温ガス炉に関心を持つ日本、米国、フランス、英国、ドイツ、ロシア、中国、南アフリカ、インドネシア、韓国、オランダ、ロシア、スイス、トルコ等の国々が参加している。日本からは原子力機構が参加し、HTTR計画を背景に中心的な役割を果たしている。TWGGCRでは、ガス冷却炉技術に関する各国の研究開発状況とIAEAの活動状況を報告し、IAEAに対して技術開発活動の提案を行っている。第24回会合は2015年2月にIAEA本部において開催された。
(2)IAEA協力研究プロジェクト:原子炉旧黒鉛の照射クリープの理解の向上に向け、2014年6月、IAEA−TECDOCドラフト完成。
(3)IAEA協力プロジェクト:原子力エネルギーのコジェネレーション及び産業利用、技術経済性のベンチマーク解析などの協力研究プロジェクト。
2. 二国間協力
2.1 米国
 1985年9月に原子力機構とエネルギー省との間で締結した研究開発実施取決めの下に、燃料(被覆粒子燃料)、材料(黒鉛材料、金属材料)などの分野において協力活動を実施し、1995年9月に終了した。2003年9月に原子炉規制委員会(NRC)との間に原子炉安全研究の分野における実施取決めを締結し、HTTRでの試験を含む分野での協力を実施した。エネルギー省とのプロジェクト取決めのもとでは、HTTRやDOE所掌実験施設を利用した試験、原子炉シミュレーションコードの検証等の協力を実施している。
2.2 カザフスタン
 カザフスタン原子力委員会、原子力技術安全センター、カザフスタン大学などと原子力機構との間で広範なテーマについて、協力が進められている。
2.3 中国
 精華大学と原子力機構の間で高温ガス炉技術に係る情報交換等について覚書が締結され、研究者の受入れ、情報交換などが行われている。
2.4 韓国
 韓国原子力研究所と原子力機構の間で、原子力平和利用分野における研究協力実施取決めにより、情報交換会合の開催、研究者の相互派遣等を実施している。
2.5 インドネシア
 原子力平和利用分野における、インドネシア原子力庁と原子力機構との間の実施取決めに基づき、高温ガス炉研究開発に関する附属書が2014年8月に追加された。
2.6 ドイツ
 1985年2月に原子力機構とKFA(ユーリッヒ原子力研究所)との間で情報交換協定を締結し、安全性、燃料、熱利用システム設計等について情報交換を行っていたが、2001年2月に取決め期間が終了した。なお、原子力機構はGHT/インターアトム社及びHTR社とも各々1984年、1988年に覚書を取り交わし情報交換を行っていたが、所期の目的を達成し、それぞれ1992年、1993年に終了した。
2.7 英国
 1990年3月に原子力機構と英国原子力公社(UKAEA)との間で、熱中性子炉(高温ガス炉及び軽水炉)に関する情報交換協定を締結している。1996年3月から取決めの相手がAEAテクノロジー社に移管されたため、AEAテクノロジー社とさらに3年間取決めを延長したが、再延長は行わず、1999年3月に協定を終了した。
2.8 フランス
 2002年9月にフランス原子力庁(CEA)との間に、「原子力研究の分野における協力実施の取決め」を新たに締結し、この中で、高温ガス炉の研究開発を相互に協力して実施していくことになった。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1−1 HTTRの設計、建設のためのR&D成果のまとめ(1/2)
表1−2 HTTRの設計、建設のためのR&D成果のまとめ(2/2)
表2−1 高温還元ガス利用による直接製鉄の研究開発における成果(1/2)
表2−2 高温還元ガス利用による直接製鉄の研究開発における成果(2/2)
図1 HTTR建設までのわが国における研究開発の経緯
図2 HTTRの建設、試験スケジュール
図3 高温ガス炉開発の歴史と将来展望
図4 世界の高温ガス炉の研究開発状況
図5 高温ガス炉の研究開発に関する国際協力の概要

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
高温ガス炉概念の特徴 (03-03-01-02)
高温ガス炉による核熱エネルギー利用の拡大 (03-03-05-01)
海外における高温ガス炉の研究開発 (03-03-07-01)
高温工学試験研究炉(HTTR) (03-04-02-07)

<参考文献>
(1)高温工学試験研究炉開発部(編):高温ガス炉研究開発の現状 1998年版、日本原子力研究所(1999年3月)
(2)日本原子力研究所大洗研究所:パンフレット「高温ガス炉 HTTR」
(3)産業技術審議会・大型技術開発部会評価分科会直接製鉄小委員会:高温還元ガス利用による直接製鉄の研究開発(第一期)に関する評価、日本原子力学会誌、Vol.32(No.9)、p.847−871(1990)
(4)日本原子力研究所:Design of High Temperature Engineering Test Reactor(HTTR)、JAERI 1332,September,1994
(5)Executive Committee of 3rd JAERI Symp.on HTGR Technologies:JAERI−Conf 96−010(1996)
(6)日本原子力研究所:Present Status of HTGR Research&Development,March,2004
(7)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑2004年版、p.79−87(2003年11月)
(8)武藤 康ほか:高温ガス炉ガスタービン発電システム開発−我が国における開発の現状、火力原子力発電、516(50)、90−96(1999)
(9)日本原子力研究開発機構ホームページ:http://httr.jaea.go.jp
(10)原子力科学技術委員会 高温ガス炉技術研究開発作業部会:「高温ガス炉技術開発に係る今後の研究開発の進め方について」(2014年9月)、参考資料4−1 高温ガス炉国際協力の現状について
(11)原子力科学技術委員会 高温ガス炉技術研究開発作業部会:「高温ガス炉技術開発に係る今後の研究開発の進め方について」(2014年9月)、参考資料1−2 高温ガス炉技術に関する研究開発の経緯と現状について、

(12)日本原子力研究開発機構 高温ガス炉水素・熱利用研究センター:環境にやさしく安全で炉心溶融を起こさない原子炉の実用化を目指して
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