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<概要>
新型転換炉は圧力管型重水炉であるため燃料集合体が同心円状クラスタ型である。新型転換炉(ATR)の原型炉の「ふげん」には微濃縮ウラン燃料集合体(二酸化ウラン燃料)と、プルトニウム富化天然ウラン燃料集合体(MOX燃料)と、照射監視試験片を収めた特殊燃料集合体の3種類の燃料集合体とがある。ATRの炉心特性よりMOX燃料も二酸化ウラン燃料も核分裂物質量をほぼ同じにすることにより同様の燃焼度が得られる。また全炉心にMOX燃料を装荷でき、多量のプルトニウムを燃やすことができるので、ウラン資源を有効に利用することができる。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 新型転換炉(ATR)原型炉「ふげん」は、熱中性子炉としてMOX燃料を本格的に使用した世界で最初の動力炉であり、昭和53年 3月最小臨界達成後、約1年間にわたる起動試験を行い、炉心特性および性能を確認し昭和54年 3月20日、本格運転を開始した。
初装荷炉心では、224体のうち96体のMOX燃料を炉心中心部に装荷した。その後の燃料取替えにおいては約半数以上のMOX燃料を使用している。平成6年7月末までのMOX燃料装荷体数は 579体に達している。これらの燃料の破損および異常な変形は1体も発生していない。
1.燃料集合体の構造( 図1 および 図2 参照)
 「ふげん」の燃料集合体(略して燃料体、燃料ともいう)は28本の燃料要素燃料棒燃料ピンともいう)より構成された3層同心円状クラスタ燃料(内層 4本、中間層 8本、外層16本)であり、全長約4.4m(燃料有効長3.7m)の一体型燃料である。燃料集合体の主要仕様を 表1 に示す。
 「ふげん」では、MOX燃料を使用していることが特徴であり、天然ウランまたは回収ウランに 0.8〜1.4%の核分裂性プルトニウムを富化したMOX燃料を使用している。MOX燃料は、燃料体の出力ピーキングを低くするため、外層燃料棒のプルトニウム富化度を中間層および内層燃料棒より低くしている。
 この他に 4体の特殊燃料集合体がある。これは図2に示すように、圧力管材料および圧力管延長管材料の照射監視試験片を収めた9個のカプセルを中心部に配置したもので、二層同心円状クラスタ構造二酸化ウラン燃料である。
 第3回燃料取替時からは、燃料の経済性向上の観点から燃焼度を上げるため、核分裂物質量を初期の約1.5%(タイプA燃料集合体)から約2.0%(タイプB燃料集合体)に増加した燃料集合体の装荷を始め、現在の炉心はほとんどタイプB燃料集合体で構成されている。
 これ以外の照射試験用燃料として、実証炉用燃料とほぼ同一構造の照射用36本燃料体と、高性能燃料開発試験のための短尺試験用燃料棒を組み込んだ照射用セグメント燃料体が昭和60年および昭和62年から「ふげん」の炉心に装荷されている。 図3 に第13サイクルの炉心配置図を示した。 表2 に「ふげん」を用いた燃料照射試験計画を示す。
2.MOX燃料
 MOX燃料集合体は、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)の東海事業所プルトニウム燃料製造技術開発施設で製作している。MOX燃料のプルトニウムは、初期には海外において再処理し回収されたプルトニウム粉末を使用していたが、第3回取替用MOX燃料からは、東海事業所の再処理工場で軽水炉の使用済燃料より抽出したプルトニウムを、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)が開発したマイクロ波加熱直接脱硝法により混合転換して使用している。
 さらに第12回取替燃料集合体の一部には「ふげん」使用済MOX燃料集合体を再処理して抽出したプルトニウムを再使用している。
 MOX燃料に使用するウランには、初期には天然ウランのみを使用していたが、第7回取替用MOX燃料集合体からは軽水炉の使用済燃料集合体から再処理して得られた回収ウランも使用している。
3.二酸化ウラン燃料
 二酸化ウラン燃料に使用する微濃縮ウランは初期には輸入していたが、第5回取替用燃料からは動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)の濃縮プラントで製造された濃縮ウランも使用している。
<図/表>
表1 燃料集合体の主要仕様
表1  燃料集合体の主要仕様
表2 燃料照射試験計画
表2  燃料照射試験計画
図1 標準燃料集合体および燃料要素概念図
図1  標準燃料集合体および燃料要素概念図
図2 特殊燃料集合体とキャプセル概念図
図2  特殊燃料集合体とキャプセル概念図
図3 炉心配置図(第13サイクル)
図3  炉心配置図(第13サイクル)

<関連タイトル>
新型転換炉の特徴 (03-02-02-02)
新型転換炉と軽水炉の相違 (03-02-02-03)
新型転換炉の原子炉本体 (03-02-02-05)
新型転換炉の燃料交換システム (03-02-02-09)
新型転換炉の制御特性 (03-02-03-01)
新型転換炉の工学的安全防護システム (03-02-03-02)
新型転換炉想定事故の安全評価 (03-02-03-03)
新型転換炉開発の経緯 (03-02-06-01)
新型転換炉の研究開発 (03-02-06-04)

<参考文献>
(1)動燃十年史 昭和53年12月25日 動力炉・核燃料開発事業団
(2)動燃二十年史  1988.10. 2 動力炉・核燃料開発事業団
(3)動燃技報 No.69  1989. 3  「ふげん」特集  動力炉・核燃料開発事業団
(4)動燃技報 No.73  1990. 3  大洗工学センター特集 動力炉・核燃料開発事業団
(5)動力炉・核燃料開発事業団:平成3年度新型転換炉技術成果報告会予稿集、平成3年12月18日
(6)動力炉・核燃料開発事業団:新型転換炉「ふげん」技術成果の概要、 1991年8月
(7)原子力安全委員会:平成6年版原子力安全白書、大蔵省印刷局(平成7年2月)、 日本原子力産業会議(編):原子力年鑑1994年版、平成6年11月
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