<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 新型転換炉
<小項目> 新型転換炉の安全性
<タイトル>
新型転換炉想定事故の安全評価 (03-02-03-03)

<概要>
 新型転換炉に係る各種の事故解析、工学的安全防護システムの機能評価が行われ、万一苛酷な事故の発生を想定しても、原子炉施設の安全性は確保されることが確認された。さらに、施設周辺地区への放射性物質の放出を2段階に大きく仮定した重大事故、仮想事故の解析評価においても放射性物質の多量の放出を防止できることを明らかにした。
 以上の安全性評価のため、実規模安全性試験結果にもとずく信頼性の高い破断事故解析コードシステムを開発した。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 原子炉施設としては、技術的に起こると考えられるあらゆる事故を想定し、その発生防止、抑制対策および解析により、施設およびその周辺地域の安全性がいかに確保されるかを明らかにすることが要求されている。

1.安全解析コードの開発
 新型転換炉は圧力管型原子炉構造のため、炉心冷却系の保有水量は比較的少ないので、配管破断事故時の冷却材の喪失は速やかで、冷却材、燃料の熱水力挙動、非常用炉心冷却系の効果を精度よく評価する必要がある。
 動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)は早期(1970年)に安全性解析手法の開発に着手し、新規に建設された実規模の安全性試験施設による圧力管、入口管、大口径の下降管、主蒸気管などの破断試験および非常用炉心冷却系の注水試験を行い、解析結果と試験結果の対比検討により、高い信頼性が確認された冷却材喪失事故解析コードシステムを開発した。これは配管大破断時の急激な熱流動変化を解析する大破断 LOCA(冷却材喪失事故)解析コード、中小破断解析コード、2相流時の逆止弁閉鎖解析コード、燃料棒毎の温度変化を詳細に計算できる燃料温度解析コードなど一連のコード群よりなっている。
 解析コードの検証例として、下降管(150mmФ) 破断時の熱水力挙動についての試験と解析の比較を 図1 に示す。

2.事故解析
 ほとんど考えられないが、炉心冷却系配管の1本が原子炉運転中に破損すると想定した場合、炉心半分の圧力管から冷却材が喪失する。このときに燃料被覆管の溶融を起こさない範囲に抑えるため、非常用炉心冷却系が設けられている。事故解析では各種の事故を対象にして、炉心の熱流動および非常用炉心冷却系の効果を評価し、燃料被覆管の健全性を確認する。なお事故解析においては安全の裕度を高めるため、事故と同時に停電となり、安全系の機器は非常用電源の起動を待って作動することを仮定している。以下主要な事故解析例を示す。
(1)再循環ループ破断
 原子炉冷却系は配管破断事故の範囲を半減するため炉心を2分割した独立2ループの構成となっている。また破断時の冷却材のブローダウン(噴出)を緩和し、非常用炉心冷却系の注水効果を高めるため、下降管部分に流量制限器と逆止弁が設けられている。再循環部の最大口径(360mmΦ)が瞬時に完全破断した場合、破断口よりブローダウンが始まり、
原子炉圧力、水位が急激に減少する。 図2 に事故後の原子炉圧力および炉心流量変化を示す。
 非常用炉心冷却系の急速注水系は、蒸気ドラムの水位および圧力低下の信号を受けると、蓄圧タンク内の12m3の冷却水の注水を始め、低圧注水系の作動以前に炉心を冷却する。さらに低圧注水系は蒸気ドラム圧力低下(55kg/cm2g)の信号を受けてから多量の注水を開始し、事故後約25秒で炉心頂部まで再冠水するに至る。
  図3 に破断後の燃料被覆管最高温度および水−ジルコニウム(被覆管材料成分)反応量変化を示す。燃料被覆管の最高温度は約 990℃であり、水-ジルコニウム反応割合も全被覆材の0.05% 以下であり、被覆管の劣化も極めて一部(1/2炉心内の燃料棒の13%)に限定される。
(2)圧力管破断
 カランドリアタンク内で圧力管が破断した場合、冷却材の放出によりタンク内圧は上昇する。しかしタンクは逃し弁が設けられているので、設計圧力を超えることはない。
(3)主蒸気管破断
 蒸気タービンに通ずる主蒸気管が格納容器外で破断した場合は、蒸気は直接大気に放出される。蒸気取り出し管部に設けられた流量制限器により、蒸気流量は定格の200%に制限され、また各主蒸気管の格納容器貫通部の両側に設けられた主蒸気隔離弁は、破断を示す主蒸気流量大で閉鎖を開始、5.5 秒以内に閉鎖を完了する。破断と同時に外部電源が喪失し、給水流量、再循環流量が漸減すると仮定した場合でも放出蒸気量は少なく、炉心が露出することはない。 図4 に主蒸気管破断時の解析結果を示す。

3.事故時の放射線被曝安全評価
 事故時の原子炉施設周辺住民の安全を確保するため、原子炉特性、工学的安全防護システム(非常用炉心冷却系,格納容器など)、周辺の気象条件などを考慮し、想定した各種の事故のうちから、放射性物質の外部放出が最大となる可能性を持つ事故として、原子炉冷却系の最大口径配管1本の完全破断時の冷却材喪失および主蒸気管破断を取上げ、安全性の裕度を高めるため、2.の事故解析よりも酷しい解析条件を2段階に課した。これがいわゆる重大事故および仮想事故とされるものである。
(1)重大事故解析
 (a) 冷却材喪失事故
  冷却材の放出に伴い格納容器の圧力は上昇し、破断後約20秒後最大0.85kg/cm2gに達し、以後格納容器スプレイ系作動により下降する( 図5 参照)。本解析では燃料被覆管は100%劣化し、燃料要素内の空隙に蓄積されている放射性の核分裂生成ガスのすべてが圧力管内に放出すると仮定し、フィルタによるガスの除去効率、格納容器の漏洩率も保守的な値を用いて解析した結果、居住可能区域境界での小児甲状腺被ばく線量は2.9mSv(シーベルト)、全身被ばく線量0.4mSvとなり、「原子炉立地審査指針」に記載されている目安として線量(小児甲状腺被ばく線量1.5Sv、全身被ばく線量0.25Sv)を十分下まわるものである。
 (b) 主蒸気管破断事故
  主蒸気管破断の場合、主蒸気隔離弁が閉鎖するまで5.5 秒間に放出される蒸気重量は全炉水の約6%である。冷却材中の核分裂生成物は原子炉運転中許される最大濃度を仮定し、2本の主蒸気管に設けられた4個の隔離弁のうち1個は閉まらないものとし、原子炉圧力が減圧されるまでは蒸気の漏洩が続くものと仮定した解析によると、敷地境界での被ばく線量は、小児甲状腺被ばく線量約0.11Sv, 全身被ばく線量0.15mSvと評価され、目安としての線量を十分下まわるものである。
(2)仮想事故
 (a) 冷却材喪失事故
  仮想事故としては1ループの再循環系配管の完全破断が生じた際に、1/2 炉心の全燃料が溶融すると言う極端な場合を仮想する。ただし事故後の非常用炉心冷却系を不作動としたのではなく、炉心に内蔵される核分裂生成物のほとんど全量が燃料より放出されると仮定する。さらに被覆材の水−ジルコニウム反応、格納容器の漏洩率、フィルタ効率を保守的な値と仮定し、敷地での気象条件を考慮して評価した全身被ばく線量は居住可能区域境界でさえ0.02Svであり、目安線量(0.25Sv)を下まわる。
 (b) 主蒸気管破断事故
  主蒸気隔離弁閉鎖後の原子炉圧力は隔離冷却系などにより減圧されるが、仮想事故では大きな漏洩率で無制限時間漏洩が続くものと仮想し、その他の条件は重大事故の場合と同じとする。仮想事故時の敷地境界の全身被ばく線量を評価すると、成人甲状腺被ばく線量約0.09Sv,全身被ばく線量0.17Svとなり、目安としての線量を十分下まわるものである。
<図/表>
図1 下降管破断時熱水力挙動(150mmΦ破断)に係る試験と解析の比較
図2 下降管破断事故時過渡変化(解析)
図3 下降管破断時燃料被覆管最高温度および水−Zr反応量の時間的変化(解析)
図4 主蒸気管破断時のプラント挙動(解析)
図5 格納容器スプレーの効果(解析)

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<関連タイトル>
新型転換炉のプラント構成 (03-02-02-04)
新型転換炉の冷却システム (03-02-02-07)
新型転換炉の制御特性 (03-02-03-01)
新型転換炉の工学的安全防護システム (03-02-03-02)

<参考文献>
(1)動燃技報 N0.1 1971年
(2)動燃技報 N0.15 1975年
(3)新型転換炉ふげん発電所原子炉設置変更許可申請書 昭和54年
(4)「ふげん」の開発実績と「実証炉」の設計 1979年 動燃事業団
(5)動燃技報 No.69 1989年
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