<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高速増殖炉
<小項目> 高速増殖炉の構造と特徴
<タイトル>
高速増殖炉と軽水炉の相違 (03-01-02-03)

<概要>
 高速増殖炉FBR)は高速中性子を利用して、核分裂反応を起こし、同時に核燃料物質を生産している。軽水炉(LWR)は軽水で減速された熱中性子により核分裂反応を起こす。FBRは炉心にプルトニウム燃料を使用し、その周りをブランケット燃料で取り囲み増殖している。LWRはウラン燃料を使用し、エネルギーのみを生産する。
 FBRは高温、高出力密度で熱発生が大きく燃料ピンを細径にしてナトリウムで冷却する。ナトリウムは沸騰点が高いので(883℃)、常圧で運転でき原子炉容器も薄肉構造である。LWRはその構造上内圧が高くなるので原子炉圧力容器は高温高圧に耐えるようなものとなる。FBRとLWRの相違はその核特性に依存するが、冷却材がそれぞれナトリウムと水であることによってプラントは特徴づけられる。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.原子炉の中の核反応−−減速の少ない高速中性子を利用している−−
 軽水炉(LWR)は、ウラン235の核分裂によって生じた高速中性子を水(軽水)によって減速させた熱中性子(平均エネルギー約0.1eV)を用い、核分裂によって生じた熱はこの水によって冷却する。高速増殖炉(FBR)は高速中性子のスピードをあまり減速させない液体金属ナトリウムを冷却材に使用して、平均で約200keV程度のエネルギーの高速中性子によって核分裂の連鎖反応を起こす。
 LWRのウラン燃料の濃縮度は2〜4%程度であるのに対し、FBRでは燃料にLWRの使用済燃料再処理して得られるプルトニウムを使用する。またFBRでは劣化ウラン (天然ウランを濃縮した後のLWRでは不用となった、ウラン235含有量0.2%程度のウラン)にプルトニウムを混ぜた(富化度20〜30%程度)ものを炉心に使用する。その外周に劣化ウランをブランケットとして配置する。
 FBRは核分裂1回当り放出される中性子の数もLWRが2.4に対して2.8と大きく、かつ吸収などによる中性子損失も少ないので全体として余った中性子は減損ウラン中の 238Uに当たってプルトニウムになる割合が大きく、運転しながら燃料が増えるという増殖性をもつ。
 LWRとFBRの原子炉の特徴を核反応に着目して表現すると、LWRは熱中性子・低濃縮ウラン・軽水減速・軽水冷却・転換型原子炉であり、後者は高速中性子・高富化プルトニウム・減速材なし・液体金属ナトリウム冷却・増殖型原子炉といえる( 表1 参照)。
2.原子炉の炉心構造−− 稠密な炉心と少ない制御棒 −−
 LWRに比べると、FBRは炉心が小さいにもかかわらず熱発生量が大きく(表1の出力密度参照)、高温、高出力密度となり熱除去のために熱伝導性の良いナトリウムを使用して冷却する。熱除去面積を増やすために燃料集合体を構成する燃料ピンは細径(直径約6.5mm,ピッチ約7.9mm)で、稠密な炉心となっている。燃料集合体1体当りの燃料ピンの数は「もんじゅ」で 169本、仏国のスーパーフェニックスで271本であるのに対して、沸騰水型BWRでは7×7=49本(新型は8×8=64本;直径12.3mm,ピッチ16.2mm)であり、より稠密なことが分かる。
 高速中性子は炉心の中での平均自由行程が長いので1本の制御棒で約10体の炉心燃料集合体の出力を制御調整できる。今100万kWクラスの大型炉心で約400体の燃料集合体が装荷されている場合、約40本の制御棒ですむが、LWR(沸騰水型)では中性子自由行程が短く十字型の制御棒で4体の燃料集合体をカバーするのみで、400体の炉心の場合には約100本の制御棒を必要とすることになる。
3.構造材の肉厚−−運転圧力が低く原子炉容器は薄肉でよい−−
 水は沸騰点(常圧)が100℃に対して、ナトリウムは883℃であり、FBRの運転は常圧で行えるので、原子炉容器の肉厚を薄く(2.5〜6cm)できる。LWRでは沸騰水型(BWR)で約70気圧、加圧水型(PWR)で約157気圧と運転圧力が高いので肉厚が約 15〜26cmと耐圧容器となっている。FBRは原子炉冷却系の運転温度が 500℃以上となり、原子炉の入口と出口温度差もLWRの 約30℃に比べて約 150℃と大きい。またナトリウムの熱伝導が水より約 100倍も大きく、比熱も1/5と小さいので原子炉の起動・停止など熱的に大きな過渡変化がある場合、原子炉容器や構造材は熱応力、熱衝撃を受け易い。このため炉容器内側には熱衝撃緩衝板などが設けられ対策が施されている。
4.プラントの熱サイクル−−間接二重熱サイクルを採用−−
  図1−1図1−2 にFBRとLWRのプラント構成の比較を示す。BWRの場合は、原子炉容器で発生した蒸気を直接タービンに送る。これを直接熱サイクルと言う。
 PWRでは、炉心からの高温、高圧水は蒸気発生器の内側(1次側)を通る間に、外側(2次側)の水に熱を伝え、蒸気を作る。この蒸気がタービンを廻している。これを間接熱サイクルと言う。
 一方、FBRの場合、蒸気発生器の一つ手前に中間熱交換器を余分に持ち、炉心から出た1次系ナトリウムは先ず中間熱交換器で、2次系ナトリウムに熱を伝える。この2次系ナトリウムが蒸気発生器を介して、水の蒸気を作っている。これを間接二重熱サイクルと言う。
5.燃料交換−−目視による燃料交換ができない−−
 LWRでは燃料交換時、原子炉容器上蓋を外して目視による交換作業をする。FBRでは、ナトリウムが透視不能で空気中の湿分とも化学反応を起こすため、上蓋を開放できない。このため、燃料交換は密封された原子炉容器の中で上蓋にある回転プラグによって位置決めを行い燃料交換機によって遠隔操作で行う。
6.最新のBWR、PWR、FBRのプラント仕様
  表2−1表2−2 に最新の沸騰水型軽水炉(柏崎3号)と加圧水型軽水炉(大飯3号)およびFBR(スーパーフェニックス)の設計仕様を比較して示す。この表からFBRとLWRでは制御棒スクラム方式が原理的に異なり、FBRはスプリングなどによる加速方式に対し、LWRでは水圧または重力落下で挿入される。また、1次冷却材の量がタンク型FBRでLWRにくらべ1桁多いこと、燃料の燃焼度がFBRの方が約3倍程高いことなどがわかる。
<図/表>
表1 LWRとFBRの主要特性比較
表2−1 最新のBWR、PWR、FBRのプラント仕様
表2−2 最新のBWR、PWR、FBRのプラント仕様
図1−1 LWRとFBRの炉プラント構成の比較
図1−2 LWRとFBRの炉プラント構成の比較

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<関連タイトル>
高速増殖炉 (03-01-01-01)
高速増殖炉のプラント構成 (03-01-02-02)
高速増殖炉の炉心設計 (03-01-02-04)
高速増殖炉の構造設計 (03-01-02-05)
ナトリウムの特性 (03-01-02-08)

<参考文献>
(1)宮本信一、野本昭二、根井弘道: LWRとFBR−その類似と相違−1,概要、原子力工業、Vol.35、No.1(1989)
(2)野本昭二、水野勝之、川上博人: LWRとFBR−その類似と相違−2,プラントシステム、原子力工業、Vol.35、No.2(1989)
(3)堀雅夫(監修)基礎高速炉工学編集委員会(編):基礎高速炉工学、日刊工業新聞社(1993年10月)
(4)動力炉・核燃料開発事業団:高速増殖炉原型炉「もんじゅ」設計・建設・試運転の奇跡、PNCTN241094-023(1994)
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