<大項目> 開発中の原子炉および研究炉等
<中項目> 高速増殖炉
<小項目> 高速増殖炉の構造と特徴
<タイトル>
高速増殖炉の核燃料サイクル (03-01-02-01)

<概要>
 高速増殖炉(Fast Breeder Reactor:FBR)の最大の特徴は増殖性能であり、運転に伴い消滅する核分裂性物質量にほぼ匹敵する量が生成されるため、長期運転が可能になり、また運転後の使用済燃料中に多量の核分裂性物質が含まれている。プルトニウム(Pu)とウラン(U)の混合酸化物(Mixed oxide:MOX)燃料のFBRの場合、使用済の炉心燃料やブランケット燃料中に核分裂性核種239Pu、241Pu)が多量に蓄積されている。そのためFBRの核燃料サイクルは、使用済燃料を再処理してPuおよび未燃焼のUを回収し、それらを用いて新燃料を製造するという、燃料のリサイクル型システムになる。従ってFBRによる発電は、MOX燃料の成形加工、FBRでの燃焼、再処理というサイクルを繰り返す循環過程になる。その結果、ウラン利用率は60%程度と飛躍的に高まり、限られた量のウラン資源を有効利用することができる。FBRの核燃料サイクル・システムは、核分裂炉で達成できる最終的なものと考えられる。
<更新年月>
2007年12月   

<本文>
 核分裂炉の原子燃料サイクルの説明図として公表されているものには幾つかの例があるが、その概要は同じである。図1に原子燃料サイクル(FBRを含む)の一例を示す。
 微濃縮U燃料を用いる軽水炉の核燃料サイクルは本来、Uの濃縮、成形加工、軽水炉での燃焼、使用済軽水炉燃料の再処理という循環過程になる。Uの濃縮のためには、転換(UをUF6に変化させる)、再転換(UF6をUO2に変化させる)の工程が入ってくる。ワンススルーの核燃料サイクル(使用済燃料は再利用せず、廃棄物として処分する)の場合、U利用率(或いはU利用効率)は約0.5%に過ぎない。そして1回リサイクルのプルサーマルの場合U利用率は0.75%程度、多数回リサイクルの場合でも高々約1.0%である。
 一方FBRの場合は燃料が軽水炉燃料と異なるため、核燃料サイクルも両者で大きく異なる。FBRの核燃料サイクルは、燃料(現状はMOX)の成形加工、FBRでの燃焼、使用済燃料の再処理という循環過程になる。使用済燃料は再処理されて不用の核分裂生成物が除かれ、Puおよび未燃焼のUが分離・回収される。それらは再加工され、新燃料が製造される。そのためFBRの核燃料サイクルにとって再処理は、必要不可欠な工程である。使用済燃料の再処理、回収されたPu・Uの再加工、その燃料のFBRへの再装荷という循環過程を繰り返すことにより、U利用率は60%程度まで飛躍的に高められる。これは、限られた量のU資源をそれだけ多く有効利用できることを意味する。FBRはU利用率が軽水炉に比べて約2桁高いので、一定量のU資源からそれだけ多くのエネルギーを引き出せることになる。
 FBRの核燃料サイクルを核種核反応の素過程で見てみる。天然Uの同位体存在度(Isotopic abundance)は、核分裂性核種の235Uが0.72%とごく少なく、99.27%が親物質核種の238Uである。しかしFBRでは、炉心とブランケトの238Uの一部が中性子を捕獲して核分裂性核種の239Puに転換され、また親物質核種の240Puも中性子を捕獲して核分裂性核種の241Puに転換される。しかも増殖性能により消滅した核分裂性物質量以上の量が生成される。すなわち、炉心の核分裂性物質量は核分裂反応を起した分だけ減少するが、それにほぼ匹敵する量が自動的に補給され、炉心の臨界量が維持される。そのため核分裂連鎖反応が続き、運転が長期間継続され、多量の重核種が燃焼することになる。また使用済燃料中に残されたU、Puも分離・回収されて再利用され、再び核分裂反応に供される。その結果U資源の大部分が核分裂反応を起すことになり、U利用率が飛躍的に高められる。
 高速炉の炉心に滞在するU、Pu核種の一部は中性子捕獲反応などにより、種々の超ウラン元素(Transuranium elements:TRU)核種になる。重元素核種は何であれ核分裂させることが最終的な処理である。特にTRU核種の中には長半減期のマイナー・アクチナイド(Minor actinide:MA)が含まれている。長半減期MAは長期に亘って強い放射能を有するので、その滞積は管理するにしても廃棄するにしても問題であり、核分裂させることが望まれる。TRUの中の親物質核種は熱中性子の衝突ではほとんど核分裂しないが、高速中性子の衝突ではある程度核分裂(高速核分裂)する。そのため軽水炉およびFBRの使用済燃料からMAを分離し、それを混入したFBR燃料を製造することにより、MAを燃焼させる、すなわち消滅処理できる可能性がある。FBRの核燃料サイクルは、MA燃焼の機能も備えていると言える。
 最後に、わが国における核燃料サイクル技術の現在の開発状況を概観し、その将来を展望する。軽水炉の核燃料サイクルは、軽水炉燃料の再処理が六ヶ所再処理工場で始められているが、まだ本格的に実施される段階には至っておらず、サイクルはまだ完全には閉じていない。FBRの核燃料サイクルは、FBR自体がまだ実用化されておらず、また使用済FBR燃料の再処理技術は研究開発もまだ本格的には始められていない。原子力発電の状況は、現在は軽水炉の時代と言えるが、将来軽水炉とFBRが共存する時代が予想される。その場合軽水炉の核燃料サイクルで発生する、Puを含むTRUがFBRの核燃料サイクルへ供給されることになるだろう。そして遠い将来のFBRの時代には、その核燃料サイクルが単独で維持されることになるだろう。FBRの核燃料サイクルでは濃縮という工程はなく、したがって転換、再転換も不要になる。FBRは核分裂炉の完成型と位置付けられ、現行の軽水炉に比べてエネルギー量の大きさ、濃縮不要、TRU燃焼性能などエネルギー生産技術体系としての優位性を有しており、核分裂炉の完成型と考えられる。FBRの核燃料サイクルは、その原子力発電を支えるものである、と考えられる。
<図/表>
図1 原子燃料サイクル(FBRを含む)

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<関連タイトル>
高速増殖炉 (03-01-01-01)
高速増殖炉の必要性 (03-01-01-02)
核燃料増殖のしくみ (03-01-01-04)
日本における高速増殖炉開発の経緯 (03-01-06-01)

<参考文献>
(1)鈴木篤之・清瀬量平共著:核燃料サイクル工学、日本工業新聞社
(2)安成弘著:高速増殖炉、同文書院
(3)青木成文・能澤正雄(監修):高速増殖炉(FBR)開発実用化データ集、(株)テクノプロジェクト
(4)科学技術庁(編):FBR広報素材資料集(第2版)
(5)堀雅夫(監修)、基礎高速炉工学編集委員会(編):基礎高速炉工学、日刊工業新聞社(1993年10月)
(6)日本原子力学会(編):新型炉燃料サイクル(1992年3月)
(7)経済産業省資源エネルギー庁(編)、(財)日本原子力文化振興財団:原子力2005(2005年10月)
(8)原子力委員会新計画策定会議:原子力政策大綱(2005年9月)
(9)(財)日本原子力文化振興財団:「原子力・エネルギー」図面集 2007、7-5(2007年2月)、p.149、電気事業連合会HP:、5/29
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