<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 軽水炉の改良標準化
<タイトル>
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)

<概要>
 改良型BWR(ABWR)の開発は、日本における軽水炉技術の定着化を図るために実施してきた第3次改良標準化の一環として、次世代軽水炉の確立を目指して実施されたものであり、電気出力を135.6万kWにするとともに、国内外で実証済のすぐれた技術を集大成しており、従来型のBWRに比して種々の改良設計を採用している。改良設計された主要設備は、(1)インターナルポンプ、(2)改良型制御棒駆動機構(改良型CRD)、(3)鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)、(4)独立3区分の非常用炉心冷却設備(ECCS)、(5)デジタル技術および新型中央制御盤、などに及んでいる。
<更新年月>
2007年09月   

<本文>
 改良型BWR(ABWR:Advanced BWR)は、電気出力を135.6万kWにするとともに、国内外で実証済のすぐれた技術を集大成しており、従来型のBWRに比して種々の改良設計を採用している。ABWRと在来型BWRの主要設計諸元を表1に示す。
 これらの改良設計のうち、主要設備について以下概説する。
1.インターナルポンプ(図1および図2参照)
 ABWRは、従来の外部再循環方式に代えて、原子炉圧力容器底部に直接再循環ポンプとしてインターナルポンプ方式を取り付けている。インターナルポンプ採用の特徴は以下の通りである。
 (1)大口径の再循環配管を有しないため、いかなる配管の破断を想定しても、非常用炉心冷却系(ECCS)の作動により炉心は常に冠水維持できる。
 (2)再循環系の配管、弁、外部ポンプ等が無くなるため、原子炉格納容器がコンパクトになり、かつ原子炉建屋を縮小できる。
 (3)定期検査の対象となる原子炉冷却材圧力バウンダリの溶接線が減少し、保守点検作業が減少するとともに、放射線業務従事者被ばく線量の低減が図れる。
 (4)インターナルポンプの型式は、構造が簡単で、軸封部がなく、炉水漏洩の可能性の少ないウェットモータ型を採用している。
 インターナルポンプの採用にあたっては、ポンプ水力特性、振動特性、ポンプ取付部構造設計の妥当性、耐震性等を確認するための電力共通研究を実施して、技術的評価を行い、良好な結果を得ている。なお、昭和56年度〜61年度には、(財)原子力発電技術機構で国による確証試験が行われ、健全性、信頼性が確証されている。また、このウェットモータ型インターナルポンプはフィンランド、スウェーデンなど海外のBWR発電所でも十分な使用実績を有している。
2.改良型CRD(改良型制御棒駆動機構)(図3参照)
 ABWRでは、従来の水圧駆動方式の制御棒駆動機構(CRD)に代え、通常の駆動は電動機で緊急時の挿入(スクラム)は水圧で行う改良型CRDを採用している。この改良型CRDは制御棒の多数本同時操作が可能となり、プラントの起動時間の短縮が図れ、出力分布の調節が、よりきめ細かくできる等の利点を持っている。改良型CRDの採用の特徴は以下のとおりである。
 (1)水圧方式と電動方式の2種類の駆動源を有し、また電動機はスクラムと同時に制御棒挿入方向に作動して水圧スクラムをバックアップするため、安全性が向上している。
 (2)スクラム時に制御棒駆動装置内の水を排水する系統(スクラム排出系)が不要となり、システムの信頼性が向上した他、保守が容易になる。
 (3)制御棒とのカップリング部を回転禁止する構造(バイオネットカップリング方式)とし、また分離検出機構を設けて制御棒とCRDの結合維持の信頼性を向上させている。安全解析では、改良型CRDの特徴を踏まえて「制御棒落下事故」等の解析を行った結果、評価基準が満足され安全性が確保されていることを確認している。
 またこの改良型CRDの採用にあたっては、電力共通研究を実施して、制御棒駆動特性、耐久性、耐震性等を確認している。
3.鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)(図4参照)
 従来の鋼製格納容器に代え、原子炉建屋と一体化した円筒形の鉄筋コンクリート製格納容器を採用している。この格納容器は、耐圧機能を受け持つ鉄筋コンクリート部と漏洩防止機能を受け持つ鋼製ライナから構成され、以下の特徴を有している。
 (1)鋼製格納容器に比べ、形状選択の自由度が高く、合理的な機器配置ができる。
 (2)機器・配管の支持が直接行えることから、格納容器内のスペースを有効に活用できる。
 (3)原子炉施設の安全性を確認するための安全解析では、原子炉格納容器内圧力が最大となる給水配管破断を想定し評価を行い、原子炉格納容器内圧力、温度が最高使用圧力、最高使用温度を超えないことを確認している。
4.独立3区分の非常用炉心冷却設備(ECCS)(図5参照)
 前述したように、ABWRでは、インターナルポンプを採用しているので、この利点を活かし、炉心より下部に大口径配管のない設計となっている。ABWRのECCSは、高圧炉心注水系と低圧注水系が配置されていて、独立3区分の構成としている。炉心より下部に大口径の配管が無いので、中小の冷却材喪失事故対応を重視している。また低圧注水系も3系統すべてが熱交換器を有する設計であり、高圧注水系と相まって冷却材喪失事故(LOCA)後、短期および長期にわたり、十分な冷却能力を持つ設計としている。この結果、ECCSにいかなる単一故障を仮定しても、LOCA時に炉心の冠水維持が確保される設計となっている。
5.デジタル技術の採用およびマンマシンインターフェイスの充実(図6参照)
 (1)デジタル技術の採用
 原子力発電所では、常用系の計測制御において、従来のアナログ制御に比べ、制御性、信頼性、保守性のすぐれたデジタル制御を用いるようになってきている。ABWRでは、常用系に加えて、原子炉緊急停止系、非常用炉心冷却系等、安全系の計測制御にもデジタル制御を採用した。また、原子炉緊急停止系には、四つのトリップチャンネルを2out of4で作動する論理構成とし、信頼性をより高めている。安全系へのデジタル制御採用については、そのソフトウェア自体に高い信頼性が要求されることから、信頼性確保のための検証および健全性確認手法の検討を行っており、その基本的な考え方は(社)日本電気協会が指針として整備している。
 (2)マンマシンインターフェイスの充実
 ABWRでは、従来の中央制御盤の実績・経験をもとに、より一層安全性・信頼性を高めた中央制御盤を採用している。この中央制御盤は、以下の特徴を有している。
<a> 主盤+大型表示盤の構成:CRT、フラットディスプレイ、モードスイッチ等を採用し、従来のハードスイッチ、メータ類による監視・操作機能を集約化させた主盤および中央制御室内の全員に共通のプラント情報を提供し情報の一元化を図る大型表示盤を設置した。
<b> 自動化範囲の拡大:自動化の拡大により、運転員の負荷の軽減を図っている。
6.その他の設備
 高効率52インチ最終段翼タービン、再熱サイクル方式、ヒータ・ドレン・ポンプアップ方式等を採用する等によって、従来型BWRに比べ約1%の熱効率を向上させた(表2参照)。また、ABWRの炉心設計および燃料設計は、これまで実績のある基本仕様に基づき、常に最新の炉心燃料設計を適用できるBWR炉心燃料の特徴を踏襲する設計とした(図7参照)。すなわち、ABWRの燃料集合体は、既存燃料と同一の寸法とし、炉心出力密度は在来型BWRと同程度とした。また、炉心内の燃料集合体数は熱出力の増加に伴って872体とした。連続運転サイクルは18か月から24か月で、燃料交換期間は43日である。
7.わが国におけるABWRを採用した原子力発電所
 ABWRの建設・営業運転は日本が世界で初めてである。現在、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6、7号(1996年、1997年)、中部電力(株)浜岡原子力発電所5号(2005年)および北陸電力(株)志賀原子力発電所2号(2006年)が営業運転を行っている。
(前回更新:1996年3月)
<図/表>
表1 ABWRと従来型BWRの主要仕様比較
表2 従来型BWRとABWRの熱効率の比較
図1 原子炉冷却系ポンプの従来型BWRとABWRとの比較
図2 原子炉容器とインターナルポンプの構造
図3 制御棒駆動装置の従来型BWRとABWRとの比較
図4 鉄筋コンクリート製格納容器
図5 非常用炉心冷却システムの最適化
図6 マンマシーンインターフェイスが高度化された中央制御盤
図7 最新設計の炉心と燃料

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<関連タイトル>
原子力発電技術の開発経緯(BWR) (02-03-01-01)
第三次改良標準化 (02-08-02-02)
ABWR燃料 (04-06-03-03)
原子力発電拡大を目指す米国の動き (14-04-01-36)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):原子力発電所−全体計画と設備−(改訂版)(2002年6月)
(2)日本電気協会新聞部(編):原子力ポケットブック2006年版(2006年7月)
(3)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(平成4年10月)
(4)東京電力:改良型BWRの概要(1993年8月)
(5)東京電力:特集「動き出したABWR」、原子力工業、43(4)、p.2−30(1997)
(6)GE Enery-Advanced Boiling Water Reactor (ABWR),
(as of Aug.2007)
(7)Advanced Boiling Water Reactors(ABWR),(as of Aug.2007)
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