<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
2005年エネルギー政策法と原子力再生の動き (14-04-01-43)

<概要>
 米国は、13年ぶりに、包括的エネルギー政策法を策定し、経済発展、エネルギー安全保障、環境保全を目標としたエネルギーシステムの構築に向けて動き出した。2005年包括的エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)は、エネルギーの節約と効率化、米国産の石炭、原子力、天然ガスおよび石油の利用、代替エネルギー、再生型エネルギー源および水素燃料の利用等の条項を含んでいる。ここでは、同法の中でも主要な柱のひとつである原子力条項を概観する。また、これらの動きと呼応する原子力発電2010の新設原子発電所誘致を目標とする各地域の動きについて、述べる。
<更新年月>
2005年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
I.包括的エネルギー政策法
 2005年8月8日、ニューメキシコ州(上院、エネルギー・天然資源委員会、ピート・ドメニチ委員長の地盤)Sandia研究所で、ブッシュ大統領は、2005年包括的エネルギー政策法に署名した。2001年1月20日第43代大統領に就任して以来、エネルギー問題を重視し、閣僚レベルのエネルギータスクフォースを設置して、2001年5月17日発表の「国家エネルギー政策」を策定させ、新しいエネルギー政策法策定を優先課題として取り組んできた。しかし、同時多発テロ発生のため、その後、優先事項は国家安全保障となっていた。2期目に入って、漸くエネルギー問題が懸念材料となってきた。2005年2月2日の大統領教書以来、大統領は、エネルギー政策法成立の必要性を訴えてきた。法案は2005年4月18日、下院に提出され、4月21日修正可決、4月28日から上院で審議開始、6月28日修正可決、7月14日両院協議会で調整が開始され、7月26日協議会で妥協案が了承された。署名式典における大統領の発言の要旨は以下のとおりである。
 第一に、連邦のビルと住宅のエネルギー効率改善、自動車の燃費改善等によって、エネルギーの節約と効率化を達成し、エネルギー節約のための技術改善で世界をリードする。第二に、石炭、原子力、天然ガスおよび石油をクリーンにもっと効率的に利用し、エネルギー資源の海外依存を減少させる。このためクリーンコール技術開発に投資し、原子力発電所新設の際のリスク軽減策を用意している。また、石油・天然ガス生産プロセスの改善と増産を図る。第三に代替エネルギーおよび再生型エネルギー源の開発を推進し、エネルギー源の多様化を図る。このため、税制を改革し、エタノールとバイオジーゼルを利用し、水素自動車等の水素燃料技術を開発する。第四に、21世紀の送電網を構築する。このエネルギー政策はまた、太平洋地域のためでもある。
II.2005年エネルギー政策法における原子力条項
 エネルギー政策法は、原子力が米国のエネルギーの重要なオプションであり続けるよう、現在の原子力発電所への支援と、新原子力発電所の建設に必要な様々な誘因を含んでいる。すなわち、新原子力発電所の建設を助長するため、発電税控除、貸付保証およびリスク防護等の誘因を用意している。2004年夏に、エネルギー省長官スペンサー・アブラハムは、長官顧問会(SEAB)に小委員会を組織し、連邦政府と産業界が21世紀の電力需要に応えるために、新原子力発電所建設の資金調達と、建設・運転を行う場合、解決すべき問題とその重要度を判断するよう要請した。これに基づき、原子力タスクフォース(Nuclear Energy Task Force:NETF)が組織され、原子力発電が必要な背景、NETFが何故報告書を書く必要があるか、法制、体制、規制、金融その他の問題を審議した。その勧告が2005年1月10日に提出された。
 エネルギー政策法はまた、Price−Anderson法の延長、原子力研究開発の資金とアイダホ研究所の先進的な水素生産原子炉の建設資金の提供を認可している。さらに、エネルギー省に原子力問題のための次官を置く事を定めている。
 原子力条項の概要を以下に示す。他の条項については参考文献(6)を参照されたい。
・Price−Anderson法の延長
 Price−Anderson法(2003年12月31日に失効)を2025年12月31日まで、20年間延長する。この法律は、原子炉の事故時に公衆のため即時の、無過失保険準備金のための枠組みを用意するものである。Price−Anderson法では、原子力発電所運転者が彼らが利用できる私的保険の全てを購入することが要求される。
・新原子力発電所に対する貸付保証
 エネルギー省長官は空気中の汚染物質または温室効果ガスについて人類起源の放出を減少させ、隔離する革新的なエネルギー技術の開発を支援する貸付保証を許可することができる。この技術には、原子力施設再生可能エネルギー、石炭ガス化と水素燃料電池技術が含まれる。貸付保証は、プロジェクト・コストの最高80パーセントまでである。長官は率を定める。完全な支払いは30年以内またはプロジェクトの期間の90パーセント以内になされなければならない。
・新発電所のための発電税控除
 新原子力発電所の運転初期の8年間、容量6,000MWまで1kWh当り1.8セントの発電税控除を提供する。資格のある改良型原子力施設は上記の容量の割当を受けた原子力施設で、2021年1月1日以前にサービスを開始しなくてはならない。控除に適格な容量は、財務省長官とエネルギー省長官の協議によって定められる。
・新規原子炉遅延に対する救急支援
 最初の6基の新設原子炉に対して、建設中に、または発電所起動の初期に起こるかもしれない、遅延による財政的な影響を国が相殺することによって、新プラントへの投資保護を行う。最初の新プラント2基に対しては、遅延コストの100パーセント、それぞれ最高5億ドルまで、次の3基目から6基目までは遅れのコストの50パーセント、それぞれ最高2億5000万ドルまでを提供する。救急支援は、検査、試験、分析、受け入れ基準のスケジュールをNRCが履行できなかった場合、および訴訟に起因する遅延に伴うコストが支払われる。
・原子力研究開発、水素プロジェクト
 原子力研究開発と水素プロジェクトに、29億5000万ドルを認可する。エネルギー部門の原子力発電2010のプログラム、第4世代原子炉計画、燃料リサイクル核変換技術を評価する先進的燃料サイクル計画、および、大学における科学と工学を支援する一般的な原子力研究開発のための16億ドルが含まれる。原子力発電2010プログラムを支援する原子力研究開発には、建設・運転統合認可プロセスのような、新原子力発電所に関連した政府/産業界費用分担の計画を取り入れている。アイダホ国立研究所に建設予定の新研究炉の調査、開発および建設プロジェクトが認可される。
III.米国の新設プラント支援の決議
(1)サウスカロライナ州
・サウスカロライナ州のマーク・サンフォード知事は、2005年8月22日、NuStart Energy Development LLCへ書簡を送付、Savannah Riverの新設原子炉の建設支持を表明:
 サンフォード知事は、サウスカロライナ州AikenのSavannah Riverサイトに建設される新しい原子炉に対する支持を表明した。NuStartコンソーシアムは新しい発電所の建設場所としてサバンナ川を考えている。サンフォード知事は、新しい商用炉は、従来の石炭火力のように大気中への排出をしないエネルギー生産設備であり、商用原子力エネルギーは全てのベースロード発電技術の中で最もコストの安いものであるから、提案されている原子炉は、市民用および産業用の電力コストの軽減に役立つと述べた。(図1参照)
(2)ルイジアナ州
・Entergy NuclearのBend River発電所に改良型原子力発電所を設置する計画を支援する州議会決議(2005年6月):
 改良型原子力発電所の設置場所として6か所の候補の一つとして選ばれることは、雇用創成と産業誘致をしようとする州の努力を州議会が認める画期的機会である。また、Entergy NuclearのBend River発電所は、西Feliciana市民および州全体から強い支持を得ている。さらに、既存のプラントは、多数の雇用を生み、安全運転の記録を持つので、改良型原子力発電所の場所としてBend River発電所を選ぶことが正当である。
・グレーター・バトンルージュ会議所、Bend River第2原子力発電所支持の決議(2005年7月27日):
 グレーター・バトンルージュ会議所は、Entergy NuclearのBend Riverサイトを改良型原子力発電所の将来的建設場所とすることに支持を表明した。会議所の理事会は、同サイトが将来建設地となることが新しい雇用と産業を引きつける重要な機会であると認めた。決議は、Entergy NuclearのBend River発電所がバトンルージュ地域の経済界および州全体から特に支持されている点に注意している。現在の原子力発電所は、多数の雇用と、顕著な安全運転記録を達成している。これらはBend River発電所が改良型原子力発電所の場所として選ばれることを保証するものである。
・ルイジアナ州公共サービス委員会、建設・運転統合認可のためのコンソーシアムNuStart Energy Development L.L.C.が検討中のSt.FrancisvilleでのBend River原子力発電所の支持を決議(2005年7月28日):
 天然ガスと石油の高価格は、ルイジアナ地方の納税者に、ルイジアナ州および全国でエネルギー源を多様化する必要があり、原子力は、アメリカとルイジアナ州のための重要な電源オプションであると気付かせた。したがって、委員会は代替の発電として、原子力の調査と研究を支持し、原子力発電開発の場所として、NuStartがルイジアナ州を考えることを支持した。原子力発電所の潜在的な利益の中で、低コストの電源で、他の電源と比較して、環境への影響が少ない、ルイジアナ納税者の電源多様化に資する上、経済発展にも役立つと委員会は言っている。(図2参照)
(3)メリーランド州
・Calvert郡の郡委員会、NuStart Energy Development L.L.C.(新原子炉のコンソーシアム)のLusby(メリーランド州)でのCalvert Cliffs原子力発電所計画の支持を決議(2005年7月26日):
 Calvert郡の郡委員会は新しい原子炉のサイトとして、NuStart Energy Development LLCによってCalvert Cliffs原子力発電所が選ばれることを支持する決議を承認した。LusbyにあるCalvert Cliffsは既に2基の原子炉がある。決議は、プラントの顕著な記録が新原子炉のホストをつとめる強い理由として挙げ、所有者とオペレーターであるConstellation Energyを、地域の多くの利益に貢献する優れたコミュニティ・パートナーと言う。(図3参照)
(4)ニューヨーク州
・ニューヨーク州オスウィーゴ(Oswego)、オスウィーゴ地域での新原子力発電所建設を支持する決議(2005年3月28日):
 オスウィーゴ市の行政府と公共理事会は、新原子力発電所建設は建設時の数千の雇用と何百もの長期雇用を創り、オスウィーゴ地域を経済的に活性化させるという理由で、新原子力発電所をオスウィーゴ地域に置く事を完全に支持し、鋭意努力するとの決議を通過させた。すぐ近くのScriba(N.Y.)は、Constellation Energyの2基のNine Mile Point原子炉とEntergyのJames A. Fitzpatrick原子炉のサイトである。(図3参照)
(5)ミシシッピ州
・Mississippi州Claiborne郡はSystems Energy Resources,Inc.(Entergy Corporation)がGrand Gulf原子力発電所に第2の原子炉建設のために早期サイト許可を求めることを支持する決議(2004年12月6日):
 理事会は原子力発電所が支払う800万ドルの固定資産税によって、全てのClaiborne郡居住者がミシシッピ州で最も低い自動車税と家屋資産税の恩恵を受けることができるようになると認め、そして原子力は安全で低コストのエネルギー源であり、環境にまたはClaiborne郡の居住者に有害とは見られないと信じている。
・Mississippi州ポートギブソン(Port Gibson)、Systems Energy Resources,Inc.(Entergy Corporation)がGrand Gulf原子力発電所に第2の原子炉建設のための早期サイト許可を求めることを支持する決議(2004年12月20日):
 ポートギブソン市長およびAlderman理事会は原子力発電による電力が、公衆によって使われる安全、低価格、温室効果ガスの排出のないエネルギー源であり、それゆえにClaiborne郡の全ての市民のため、また、クリーンな大気環境を維持するのに役立つものと信じる。ポートギブソン市長およびAlderman理事会はSystems Energy Resources,Inc.のMississippi州Claiborne郡Grand Gulf原子力発電所で第二の原子炉を建設しようとするSystems Energy Resources Inc.とEntergyの努力を支持する。ポートギブソン市長およびAlderman理事会は原子力発電を増加することによって、原子力発電所の設計・建設および新規施設の運転が必要になり、それは地域に新しい何千もの雇用をつくるという事実を認めている。(図1参照)
<図/表>
図1 北米南東部の原子力発電所立地点
図2 米国中部南地域の原子力発電所立地点
図3 米国北東部の原子力発電所立地点

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<関連タイトル>
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(1)政策の概観 (01-07-06-01)
原子力発電拡大を目指す米国の動き (14-04-01-36)
原子力発電の推進(DOE長官顧問会原子力タスクフォース最終報告) (14-04-01-42)

<参考文献>
(1)President Signs Energy Policy Act,Sandia National Laboratory,Albuquerque,New Mexico:
(2)Bill Text,109th Congress(2005−2006):>H.R.6
(3)NEI Home:>President Bush Signs Into Law Bipartisan Comprehensive Energy Bill With Nuclear Provisions
(4)ENERGY POLICY ACT OF 2005,SENATE COMMITTEE ON ENERGY AND NATURAL RESOURCES PRESS OFFICE(202)224−6977:
(5)NEI Home:>City,County and State Governments Pass Resolutions Supporting Local New Nuclear Plant Construction
(6)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ホームページ:米国の2005年包括エネルギー政策法(米国)
(7)National Energy Policy−Reliable,Affordable,and Environmentally Sound Energy for America’s Future(May.2001):
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