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<概要>
 1月17日、阪神大震災が発生したが、原子力発電所への影響は見られなかった。政府の科学技術に重点をおいた5月の補正予算により、原研(現日本原子力研究開発機構)が建設している高温工学試験研究炉の完成が1年繰り上がり、1997年度に臨界達成となった。大型放射光施設等の建設も加速された。電気事業連合会は7月、科技庁(現文科省)など五者に新型転換実証炉の建設について抜本的な見直しを申し入れた。ATR 実証炉に経済性が見込めないとの判断から、代わって混合酸化物燃料を装荷するABWRを電源開発が建設することを求めたものであり、原子力委員会は総合的な検討を行い、実証炉に代わりABWRを建設することが妥当であると決定した。12月、本格運転に入る前の各種試験を実施していた「もんじゅ」で、2次ナトリウム(Na)冷却系でNa漏洩事故が発生した。放射能汚染はなく、環境へのNa漏洩の影響もなかったが、その後の日本の原子力開発全体を巻き込む、重大な出来事となった。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1995年
(平成7年)
1/12 動燃(現日本原子力研究開発機構)、リサイクル機器試験施設(RETF)着工  
1/15   中国、大亜湾第二原子力発電所で仏フラマトム社と契約覚書調印
1/17 阪神・淡路大震災が発生、近隣原子力発電所に影響なし  
1/25 日本原燃、返還高レベル廃棄物貯蔵管理施設で近隣市町村と安全協定 南ア、ウラン濃縮施設の早期閉鎖決
1/31   米インディアン部族、使用済み燃料中間貯蔵施設(MRS)の誘致を否決
2/6 科技庁(現文科省)、核燃料リサイクルに関する国際円卓会議開催(京都) 米大統領予算教書で1996年度の新型炉開発費がゼロに
2/8   韓国原子力研の多目的研究炉「ハナロ」が臨界
2/14   英国、初のPWR送電開始
2/23 返還高レベル廃棄物輸送船「パシフィック・ピンテール号」、仏のシェルブール港を出港。4/26むつ小川原港に入港。青森県知事の入港拒否で1日延期 仏独、欧州型PWR(EPR)の基本設計で契約
原研(現日本原子力研究開発機構)NUCEFの定常臨界実験装置(STACY)が臨界  
3/9 日米韓、北朝鮮への軽水炉転換支援で「朝鮮半島エネルギー開発機構」(KEDO)を設立 米インディアン部族、使用済み燃料中間貯蔵施設(MRS)の誘致に賛成
3/10 三菱重工、ベルギーのチアンジュ原子力発電所向けの蒸気発生器を完成  
3/17 六ヶ所村議会、ITERの誘致陳情を採択  
3/31   韓国電力霊光3号機、営業運転
3/31   加オンタリオハイドロ社、米核兵器解体プルトニウムのCANDU炉燃焼を検討へ
4/3   韓国電力、霊光5、6号機建設で国内三社と契約
4/6 原産調べ、1994年度の原子力発電所設備利用率は76.5%  
4/13   ウクライナの大統領、チェルノブイリ発電所の2000年までに閉鎖を表明
5/5   中国、遼寧省にロシアからの借款でPWR2基の建設を認可
5/8 原子力安全委、関西電力大飯4号機への高燃焼度燃科(最高燃焼度5万5000MWd/t)の装荷で安全審査に着手  
5/9   英政府、原子力産業の民営化計画を発表
5/12 政府、原子力安全条約を批准 核不拡散条約の再検討・延長会議、条約の無期限延長を決定
5/15 1995年度補正予算は科学技術分野に重点、原研HTTRの完成1年繰上げ 中国、地下核実験
5/22 日本原燃、六ヶ所再処理施設の設備本体部分で初めての設工認を申請 OECD/NEA、加盟国の原子力シェアは2000年には24%に低下と予測
5/23 原研、電子ビーム排煙処理で従来法に比べ建設費25%低減可能と発表  
5/26 動燃、ガラス固化技術開発施設のトラブル原因をガラス温度の低下などと発表  
5/27   ABB社ら、チェルノブイリ原発閉鎖の代替電源にガス火力を提案
6/1 総合エネ調・国際エネルギー部会、アジア協カの方策で報告。融資条件緩和など支援円滑化の方向性示す  
6/12 総合エネ調・原子力部会、アジア協力で報告.「安全のワンセット供給」を輸出の基本方針に  
6/13 米・南カロライナ州、バーンウェル低レベル廃棄物処分場の操業継続を承認  
6/19 原子力安全委、軽水炉利用のMOX燃料について「安全柱に問題なし」と判断  
6/22 原子力船「むつ」の原子炉室撤去作業終了  
6/25   スイスの低・中レベル廃棄物処分場立地候補について住民投票で建設を否決
6/30   中国、北京で初の高温ガス実験炉の建設開始
7/5   英サイズウェルB、全出力運転達成
7/7 日本原燃、六ヶ所再処理施設への使用済み燃料受入れを1997年に延期との変更申請 独シーメンス社、新MOX工場の操業を断念
7/10   米科学アカデミー、核兵器解体プルトニウム利用を提唱
7/11 電気事業連合会、大間新型転換実証炉の計画見直しを科技庁など関係者に要請  
7/12   西欧企業連合、チェルノブイリ新「石棺」建設で計画案発表
7/15 中部電力、浜岡3号機の定検停止期間で57日の最短記録を達成  
7/18   広東核電公司、嶺澳原子力発電所建設でフラマトム社と仮調印
7/28 東北電力女川2号機、営業運転  
7/31 経団連・国土政策委員会、ITERのむつ小川原への誘致支援決める  
8/14   中国、山東省に百万kW級原子炉4基建設を検討
8/21 動燃、深地層研究所を岐阜県の東濃地区に建設する計画を公表 ロシア、ブシェール原子力発電所の完成工事でイランと詳細交渉
8/22   米原子力学会、プルトニウムのMOX利用を勧告
8/25 原子力委、国策としての大間新型転換実証炉中止を決定  
8/29 動燃「もんじゅ」、初送電  
9/6   仏、ムルロワ環礁で核実験
  スイス、新規原子力発電所建設を含む電源開発案を策定
9/12 原子力委、原子力バックエンド対策専門部会及び高レベル放射性廃棄物処分懇談会を設置  
9/22   仏電力公社、コズロドイ1号機の運転再開延期を要求
9/25   加ディープリバーの住民投票で低レベル廃棄物処分場建設に7割が賛成
  加カメコ社、1999年からシガーレイク・ウラン鉱床操業へ
9/29 土田六ヶ所村長、ITER誘致を陳情。10/23木村青森知事、ITERの建設誘致を表明  
10/1 原研、関西研究所(大阪府寝屋川市)を発足  
10/2 科技庁原子力局の懇談会が光量子利用で報告書  
10/7   ブルガリア、西欧諸国の反対押し切りコズロドイ1号機の運転再開
10/10   米DOE、兵器用トリチウム生産に商業炉利用を検討
10/24 原子力委、原子力白書を発表  
10/25   中国、嶺澳及び泰山原子力発電所に仏加から原子炉購入。仏製PWR2基、加製CANDU2基
10/27   アルメニア原発6年ぶりに運転再開
10/31 電力各社、原子力発電所効率化計画まとめる。設備利用率80%をめざす インド、クダンクラムにVVER2基建設でロシアと協定調印
11/16 大間町長、資源エネルギー庁や科技庁に大間ABWR計画の推進要望  
11/23   WHOの国際会議、チェルノブイリ事故でがん増加が濃厚と示唆
11/27 電源開発、大間ABWRへのフルMOX計画を1997年3月の電源開発調査会に上程  
11/30   韓国、堀業島の低・中廃棄物処分場計画を中止
12/1   米ABB社、韓国原子力発電所の交換用タービン受注
12/7 エネルギー研、2015年までのエネルギー需給見通し、原子力発電所規模は6400万kWに 米NEI、改訂版「新規原子力発電所建設への戦略計画」を発表
12/8 FBR原型炉「もんじゅ」でナトリウム漏洩事故発生  
12/11 原子力安全委、「もんじゅ」事故で事故調査検討タスクフォースを設置 ブリティッシュ・エナジー社、新規PWR建設計画を中止
12/14 茨城県那珂町議会、ITER誘致を決議  
12/18 東京電力柏崎刈羽6号機臨界、ABWRで世界初めて  
12/20 原研NUCEFの過渡臨界実験装置(TRACY)が臨界 ウクライナとG7、チェルノブイリ原子力発電所の閉鎖で覚書調印


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1995年
(平成7年)
1/17 阪神大震災、兵庫県淡路島近くを震源とするM7.2の激震。死者6308人  
3/20 地下鉄サリン事件、東京の地下鉄に毒ガスサリンがまかれ、11人が死亡、約5000人が重軽傷。オウム真理教が起こした。5/16麻原彰晃代表らを逮捕  
4/19 円相場、一時1ドル79円に  
6/6 大蔵省、金融機関全体が抱える不良債権総額は約40兆円に上ると発表  
6/30 「むつ」、大型海洋観測研究船への改造に向け、海洋科学技術センターに引き渡し  
9/4 沖縄県で米兵による女子小学生の暴行事件発生。日米地位協定の見直し問題が浮上  
9/5   仏、南太平洋の仏領ポリネシア・ムルロア環礁で核実験を強行。実験は計5回に及び、国際的非難が高まる
9/22 自民党、橋本新総裁を選出。翌年1/11橋本内閣発足  
11/15 科学技術基本法施行  

<関連タイトル>
平成7年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-05)
ABWR燃料 (04-06-03-03)
高レベル廃液ガラス固化処理の研究開発 (05-01-02-04)
ナトリウムの特性 (03-01-02-08)
ナトリウムの安全性(蒸気発生器および2次系ナトリウム) (03-01-03-05)
ナトリウム取扱い技術 (03-01-02-10)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)
ナトリウム燃焼挙動に関する研究 (06-01-02-06)
高温工学試験研究炉(HTTR) (03-04-02-07)

<参考文献>
1.(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成8年版(平成8年10月22日)
2.原子力委員会編:原子力白書 平成7年版、大蔵省印刷局(平成8年1月30日)
3.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
4.読売新聞社(編集発行):読売年鑑 1996年版(1996年3月1日)
5.(財)科学技術広報財団(編集発行):科学技術ジャーナル 平成8年3月号(通巻48号)(平成8年3月1日)
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