<大項目> バックエンド対策
<中項目> 放射性廃棄物の処理、処分
<小項目> 放射性廃棄物の処理方法
<タイトル>
高レベル廃液ガラス固化処理の研究開発 (05-01-02-04)

<概要>
 高レベル廃液ガラス固化の目的は、再処理工場の再処理工程廃液中に含まれる極めて高い放射能を有し、かつ長寿命の放射性核種などをガラス状の媒体の中に固定化することである。研究開発の結果、固化材としてのガラスはその特性や成形性に優れ、また、経済性及び実績の点からも最良の材料であると考えられており、諸外国において実用規模で順調に操業されている固化施設は、ホウケイ酸ガラス固化プロセスによるものである。
 日本原子力研究開発機構(原子力機構)東海再処理施設では、貯蔵されている高レベル廃液の固化処理について、これまでの技術開発の成果を踏まえ、廃液供給式直接通電型セラミックメルター(LFCM法)法によるガラス固化技術開発施設(TVF)を1988年に着工した。1993年に試験運転を開始、1995年12月に使用前検査に合格して2006年3月までに218本のガラス固化体を製造している。
 日本原燃(株)の六ヶ所再処理工場においては、原子力機構が開発したガラス固化技術を採用し、原子力機構から技術者の派遣、日本原燃(株)の技術者の教育訓練、技術情報の提供等の技術協力により実用規模のガラス固化施設が建設され試運転が実施されている。
<更新年月>
2011年12月   

<本文>
 再処理工場の再処理工程から排出される高レベル廃液は極めて高い放射能を有し、かつ長半減期の放射性物質を含むので、生活環境から隔離して安全に処分する必要がある。このため、高レベル廃液を物理的、化学的に安定であり、輸送、貯蔵、処分に適した形態、すなわちガラスなどの固化体にする必要がある。
 高レベル廃液のガラス固化に関する研究開発は、米国、ドイツなどにおいて1950年頃から開始され、当初ガラスの原料として、リン酸ガラスが検討されたものの、処理プロセス上の問題、固化体の熱的安定性の問題等の理由から、ほとんどの国で採用がとり止められ、現在では主としてホウケイ酸ガラスが選択されている。その理由は、酸性やアルカリ性に対する耐食性に優れていること、ガラス溶融温度を比較的低温にできるため、ガラス固化装置の構成材料(溶融炉材、電極材)に対する負担が軽減できること、廃棄物成分の許容含有量が比較的高く、熱や放射線に対する抵抗性が高いことなどが挙げられる(表1参照)。
1.廃棄物固化材料としてのガラスの特徴
 高レベル廃液の中には多種類の放射性物質が含まれる。したがって、特定の放射性物質のみでなく、すべての放射性物質を化学的に安定な物質に固体化する必要がある。ホウケイ酸ガラスは、主にケイ酸とホウ酸が網目構造を形成しており、結晶性の物質と違い、イオン半径が異なる多種類の放射性物質を網目の中に安定に、均一に保持することのできる非晶質構造である。すなわち、放射性物質はガラスと混ざるのではなく、色ガラスと同様、ガラス成分の一つとしてガラスを形成している(図1参照)。
 ガラスは、溶融温度がセラミック材料などに比べ低く、そのため固化処理の過程での取り扱いが容易である。また、ガラスは本来、水に対して非常に溶け難い安定な物質である。これは古代遺跡から出土されるガラス製品の多くが、製造当時の色彩や輝きがほとんど失われておらず、長期にわたり安定性が保持されていることからも伺われる。
2.諸外国での高レベル廃液固化法の開発状況(表2参照)
 米国では商業用発電炉の使用済燃料は再処理せずにそのまま地層処分されることとなっているが、軍事用再処理から生じた高レベル廃液が再処理工場のサイト内のタンクに多量に貯蔵されており、環境回復プロジェクトの一環としてガラス固化計画が進められてきた。1953年より流動床仮焼法、スプレー仮焼・ガラス化法をはじめ種々の方法が並行して研究されてきたが、総合的な評価の結果、流動床仮焼法及びLFCM(Liquid Fed Ceramic Melter:廃液直接供給セラミックメルターガラス固化)法が採用された。サバンナリバー及びウェストバレーの再処理工場では1996年からガラス固化体の製造が開始され、ウェストバレーでは2002年までにすべてのガラス固化体の製造(275本)が終了した。
 フランスでは1956年よりポットガラス化法(PIVER法)の研究開発と並行してAVM法(ロータリーキルン仮焼−誘導加熱ガラス溶融法)が開発され、1978年マルクール(Marcoule)工場において実規模のホット運転が実施され、現在稼働中である。同様の処理施設(AVH法と呼ばれる固化法を採用)がラアーグ・サイトにおいて稼働中である。
 英国においては1956年よりポットガラス化法(FINGAL法)の試験研究が開始され、規模を大きくしたHARVEST計画が進めてられてきたが、この計画は途中で中止された。これに代わり1983年フランスからAVM法が技術導入され、セラフィールドにガラス固化施設WVPを建設、1990年から運転が開始された。
 ドイツでは1970年代に入りスプレー仮焼・セラミックメルターガラス化(VERA)法の開発、引き続いてPAMELA法(ビトロメットのできるLFCM法)をベルギーと共同で開発し、実廃液を用いた実証試験がPAMELAパイロットプラントで行われてきた。なお、同様の技術が商用再処理工場WAWに適用される計画であったが、この計画は途中で中止された。1991年に操業を停止したカールスルーエ再処理工場(WAK)のデコミッショニングの一環として、WAKに貯蔵されている高放射性廃液についてはLFCM法によるガラス固化が行われる予定である。
3.わが国における高レベル廃液固化技術の開発状況
 わが国の高レベル廃液固化技術については、1970年代初期に動燃及び原研(現日本原子力研究開発機構:原子力機構)において、模擬高レベル廃液を用いて仮焼の研究が開始された。その後、動燃の高レベル放射性物質研究施設(CPF)及び原研の廃棄物安全試験施設(WASTEF)が完成し1980年代初めから実際の高レベル廃液を取り扱う研究が開始された。
 一方、わが国の高レベル廃液処理処分の具体的方策について、1980年10月原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会による、「放射性廃棄物処理処分方策について」がとりまとめられた。以下に同報告書の主旨を示す。
 「高レベル廃液の固化処理技術開発は、ホウケイ酸ガラスによる固化に重点を置く。この技術開発の成果は、海外委託再処理に伴う返還廃棄物対策(1990年以降)及び民間再処理事業者の行う固化処理への活用を図る。使用済燃料として原子炉から取り出された後、再処理を経てガラス固化された固化体はそれに含まれる放射性核種の崩壊熱が深地層の岩盤に与える影響を緩和するため、深地層中に搬入されるまでの間、30〜50年間程度、冷却のため貯蔵される。」
 CPFでは模擬廃液を用いた実規模のガラス固化装置(LFCM法)による実績を約10年積んだ後、1982年から実廃液を用いたホット試験を実施した。この成果をふまえてLFCM方式によるガラス固化技術開発施設(TVF)を設計して1988年に着工、1993年試験運転開始、1994年ホット試験運転終了、1995年12月に使用前検査合格証を受領してガラス固化体の製造を開始した。その後、2002年から2004年にかけて、ガラス固化の処理能力低下の防止や溶融炉の長寿命化を図るため、高レベル廃液中に含まれる白金族元素の抜き出し性を向上させた改良型溶融炉への更新を行った。2006年3月までに1号炉からのものと合わせ218本のガラス固化体を製造している。図2にガラス固化工程の概要、図3キャニスター入りガラス固化体及びガラス組成の例を示す。このプラントの大きな特徴は、主要機器がラックに組み込まれジャンパー管と呼ばれる遠隔継手を用いて配管を接続し、ラック毎の交換が可能な遠隔保守方式を採用していることである。
 WASTEFでは実際の高レベル廃液から製造したガラス固化体を用いて、その貯蔵時及び処分後の安全性を検証する立場からの研究及びシンロック等のセラミック固化体の開発研究(シンロック固化技術の開発研究等)が進められた。
 1993年から建設が開始された日本原燃(株)の商用再処理工場(六ヶ所再処理工場)には原子力機構が開発した高レベル廃液ガラス固化技術が採用されており、TVFの建設、運転の経験等をもとに、原子力機構技術者の派遣、日本原燃(株)の技術者の教育訓練、技術情報の提供等の技術協力が進行中である。
4.原子力機構のLFCM法の概要
 LFCM法はホウケイ酸ガラスを耐熱、耐食性に富んだセラミックス製の炉の中でジュール加熱により溶融する方法である(図4参照)。この方法は以前からガラス製造工業で用いられ、実績は豊富である。まず、ガラス溶融炉に設置している間接加熱ヒータ(炭化ケイ素製)により溶融点まで昇温後、電極間直接通電によるジュール加熱により加熱する。その後、高レベル廃液をガラスファイバーカートリッジに吸収させた状態で溶融炉へ供給し、溶融物はキャニスターに注入され、冷えて固化体となる。ガラス固化体はガラス重量約300kg、体積約110リットルであり、キャニスター1本分がほぼ使用済燃料1トンの高レベル放射性廃液に対応している。電極材は耐食性に優れたインコネル合金などが用いられている。炉の温度は1,100〜1,250℃に制御される。溶融ガラスは、ノズル(フリーズバルブ方式)を通し容器(キャニスター)内に流下させる。この方式はLFCMと呼称される。炉の寿命は約5年と見積もられているが、LFCMの特徴は連続運転及び規模の大型化が可能であり、また、炉に廃液が直接供給されるため内部表面が低温に維持されるので、オフガス中へのルテニウム、セシウムなどの揮発性核種の逸散が少ないという利点がある。
[略語表]
・RLFCM(Radioactive Liquid Fed Ceramic Melter)ホット試験用大型セラミックメルター(米)
・DWPF(Defense Waste Processing Facility)軍事用廃棄物処理施設(米)
・WVDP(West Valley Demonstration Project)ウェストバレーガラス固化プラント(米)
・HWVP(Hanford Waste Vitrification Plant)ハンフォードガラス固化プラント(米)
・PAMELA(Pilotanlage Mol zur Erzeugung Lagerfabiger Abfalle)モルガラス固化パイロットプラント−パメラ(ドイツ)
・WA-W(WA-Wackersdorf)バッカースドルフ再処理プラント(ドイツ)
・WA-K(WA-Karlsruhe)カールスルーエ再処理プラント(ドイツ)
・AVM(Atelier de Vitrification Marcoule)マルクールガラス固化プラント(仏)
・WVP(Windscale Vitrification Plant)ウィンズケールガラス固化プラント(英)
・TVF(Tokai Vitrification Facility)東海ガラス固化技術開発施設
・CPF(Chemical Processing Facility)高レベル放射性物質研究施設
・WASTEF(Waste Safety Test Facility)廃棄物安全試験施設
(前回更新: 2006年11月)
<図/表>
表1 ガラス固化体の性状
表2 世界の主要ガラス固化プラント
図1 分子構造レベルでみたガラス網目構造中の廃棄物元素の存在状態
図2 TVFガラス固化工程の概要
図3 ガラス固化体の例(動燃・ガラス固化技術開発施設)
図4 廃液供給式直接通電型セラミックメタル鳥瞰図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
世界の再処理工場 (04-07-01-07)
高レベル廃液の処理 (04-07-02-07)
東海再処理工場 (04-07-03-06)
六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)
高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の貯蔵時の安全性 (05-01-01-08)
高レベル廃液の代替固化処理 (05-01-02-05)
ガラス固化技術開発施設(TVF) (06-01-05-09)
高レベル放射性廃棄物の処理対策の概要 (11-02-04-03)

<参考文献>
(1)天沼、阪田(監修):「高レベル放射性廃棄物の処理および処分」、放射性廃棄物処理処分に関する研究開発、p.285、産業出版・テクノプロジェクト(1983)
(2)”Chemical durability and related properties of solidified high-level wasteforms”IAEA Technical Series,No.257.8(1985).
(3)動燃事業団:「放射性廃棄物の処理 2.高レベル廃棄物対策」、動燃技報、No.59 p.81(1986)
(4)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理ガイドブック 1988年版、pp 54(1988)
(5)Proceedings of the 1989 joint international waste management conference,Vol.2. High level radioactive waste and spent fuel management”, KYOTO, JAPAN, October 22-28, 1989
(6)科学技術庁:「高レベル放射性廃棄物」(パンフレット)(1993)
(7)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理ガイドブック 1994年版、日本原子力産業会議(1994年7月)、p.60-73
(8)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理−日本の技術開発と計画、日本原子力産業会議(1997年7月)、p.155-189
(9) 大内 仁 ほか:放射性廃棄物の処理技術開発、動燃技報 No.100、p.219-220(1997)
(10)”A New Era of Waste Vitrification at SRS”:ANS Radwaste Solutions, Vol 12, No4, July/August(2005), p31
(11)West Valley Nuclear Service Company:An Introduction to the West Valley Demonstration Project
(12)Forschungszentrum Karlsruhe:The Karlsruhe Reprocessing Plant Decommissioning Project at a Glance
(13)サイクル機構:「ガラス固化技術開発施設(TVF)における溶融炉技術開発」、サイクル技報、No.28 p.35-39(2005)
(14)日本原子力研究開発機構:核燃料サイクル工学研究所ホームページ、http://www.jaea.go.jp/04/ztokai/top.html
(15)日本原燃(株):日本原燃ホームページ、http://www.jnfl.co.jp/jnfl/index.html
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