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<概要>
 5月下旬、モックアップテスト中の軽水炉ECCSの欠陥を伝える米原子力委員会AEC)の報告は、センセーショナルを巻き起こした。シーボーグAEC委員長は、小規模の予備実験の結果であり、実際の原子力発電所にはあてはまらないと認め、「運転中の原子炉は止めなくてよい」と決断した。万一の事故の際の最後の歯止めとなるECCSが機能しないというニュースは、わが国原子力発電所の地元住民に大きなショックを与えた。原子力委員会は、調査団を米国に派遣するとともに、7月1日委員長談話を発表した。調査結果を各地元に報告し、一応騒ぎはおさまった。この問題を契機に、原子力安全問題について誤解を招かないように、正確な内容を原発をかかえる地域住民に通知する体制が、次第に確立されるようになった。関電及び原電は、110万kw級の軽水炉の建設を各々1月、8月に申請した。地元茨城県は6月に、動燃(現日本原子力研究開発機構)の再処理施設建設を許可した。


<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1971年
(昭和46年)
1/13 原子力船「むつ」、原子炉圧力容器の据付を完了  
1/14 関西電力、大飯1号、2号の建設計画を発表(初の4ループ110万kW級PWR)1/28設置許可申請  
1/27   CERN(欧州共同原子核研究所)陽子同士の衝突で500GeVの超高エネルギービームの発生に成功
2/2 中部電力浜岡原発建設に関し地元5漁業組合、6億1100万円の漁業補償に調印  
2/5 米ワーチヤン社、日本のジルカロイ被覆管関連分野進出のため、政府に株式取得を申請  
2/6 東京電力福島第ー原発3号着工  
2/18   豪、ウラン輸出制限の解除を発表
2/23   米コロンビア巡回裁判所、AECの環境保護法(NEPA)履行方針批判
2/26   仏政府閣僚会議、1975年までに軽水型8基800万kWの建設に着手、欧州濃縮ウラン工場建設の提唱を表明
3/9   米、ウラン濃縮料金を分離作業単位(SWU)当たり28.7から32ドルに引上げ。9/6実施
3/11 原子力委、原子力開発利用長期計画の改訂を決める 仏CEA、民間濃縮ウラン工場建設のため、ピエールラット気体拡散工場の詳細設計と資金計画作成を佛、米2社に委託
3/16 九州電力、玄海原発1号着工  
3/19 中部電力、浜岡原発建設で地元側と安全協定結ぶ 韓国初の原発「古里発電所」(PWR、59万5000kW)着工
3/26 東京電力福島第一原発1号、営業運転開始  
3/29   仏の重水減速炭酸ガス冷却炉EL‐4臨界(電気出力7万7000kW)
3/30 横須賀市が日本ニュクリア・フュエル、古河電工、第一グループ、立教大学と安全協定結ぶ  
3/30 四国電力、伊方原発建設に関し地元一部漁協と漁業補償で調印  
4/1   AEA、ブリティッシュ・ニュクリア・フュエル(BNFL)社及びラジオ・ケミカル・センター社を設立し、核燃料及びRI事業を移管
4/10 東大の高速中性子束炉「弥生」臨界  
4/15 東芝と日立、「BWR運転訓練センター」を設立  
4/20 中部電力、浜岡原発建設で2漁業協同組合と漁業補償協定を結ぶ  
4/24   IAEA、核拡散防止条約下の保障措置モデル協定で合意
5/14 日本ニュクリア・フュエル社、原電敦賀発電所用第1回取替燃料第一陣14体を出荷  
5/25   米AEC、モックアップのテスト中の軽水炉非常用炉心冷却装置(PWR・ECCS)の欠陥を確認、問題となる
5/31 全国原子力発電所所在市町村協議会、ECCS問題で原子力発電所の運転中止を要請。6/7電気事業連合会、「原発の安全性は十分確保されており、運転停止の必要はない」と回答  
6/5 動燃の核燃料再処理施設、建設認可。6/7地元茨城県も許可  
6/7   米AEC、軽水炉の放射能放出基準を年間5ミリレム(従来の100分の1)とする新指針をうちだす
6/9   米AEC、原子力発電所からの放射性廃棄物を恒久的に処分する廃棄所をカンサス州の岩塩鉱に建設する計画を発表
6/15 原子力局放射性固体廃棄物処理処分検討会、「陸上処分と海上処分の有効な組合わせで」とする検討結果を発表  
6/19   米AEC、軽水炉非常用炉心冷却装置(ECCS)暫定基準を設定
7/1 原子力委、ECCS問題に関連し、炉の停止や出力制限は必要ないが、安全研究に万全を期すなどを内容とする委員長談話を発表  
7/1 神戸製鋼、カナダからステンレス鋼管、西独からジルカイロ被覆管を受注  
7/2 理研、ガス拡散ウラン濃縮用9段式実験装置を完成  
7/12   米AEC、許可手続合理化のため、原子炉許可規則を修正、実施に入る
7/15 原子力委、東海・大洗原子力施設地帯整備に総額約50億円の投入方針を決める  
7/16   米政府、日本政府に対し同国の気体拡散法による濃縮技術を開示する可能性ありと口上書で通告
7/23   米高裁、環境問題でAECと電力会社にカルパート・クリフス原発建設計画の変更を命令、米の環境論争高まる
7/26 名大プラズマ研、レーザー光線による核融合反応に初成功  
7/29   仏、1975年までの第6次エネルギー計画を発表、800万kWの原子力発電開発
7月   仏、ニジェールでウラン精練工場、運転開始
8/1 日本放射性同位元素協会、日本アイソトープ協会と名称を変更  
8/3 関西電力・原電・動燃が福井県・敦賀市・美浜町と原子力発電所運転に伴う安全確認等で覚書を交換  
8/12 原電、3番目の発電炉(BWR、110万kW)の東海村建設を発表  
8/30   米フィラデルフィア電力とガルフ・ゼネラル・アトミックス社、115万kWの高温ガス冷却炉発電所2基の建設計画を発表
8/30   英、西独、オランダ3国ウラン濃縮共同計画に基づく新会社URENCOをロンドンに設立
9/6   第4回原子力平和利用国際会議(ジュネーブ会議)開催。日本24篇の論文を発表(〜9/16)
9/7   英AEA総裁、ジュネーブ会議で「英は1980年までに商業用高速発電炉3基を発注の計画」と発表
9/10   ソ連原子力平和利用国家委員長、ジュネーブ会議で「日本などの諸国にウラン濃縮サービスを提供する用意あり」と言明
9/20 三井造船千葉造船所で下請の中国エックス線会社の従業員ら6名がIr−192による被曝事故  
9/26   ニクソン米大統領、高速増殖炉2基の建設を許可すると言明
9/27 原研(現日本原子力研究開発機構)でTm−170による内部被曝事故が発生  
9月 定期検査中の東京電力福島1号炉で燃料体被覆にピンホール見つかる  
10/13   米AECジョンソン委員、AEC所有の備蓄ウランを1974年以降内外に放出すると言明
10/22 電力業界、水産資源保護協会が進めている原子力発電所からの温排水利用による養魚計画に協力を決める  
10/29 中部電力、第3の原子力発電所の候補地として三重県熊野市井内浦を選定、三重県と熊野市に協力を申入れ  
10/30 伊藤忠と日立造船、使用済燃料輸送で業務提携、事業化に乗り出す  
11/1   米の呼びかけによるウラン濃縮共同事業の予備会談、ワシントンで開催。日、豪、加など出席
11/11 原子力委、原子力事業従業員災害補償専門部会の設置を決める  
12/1 三菱原子燃料(株)(三菱金属鉱業、三菱重工業、米WH社の合弁、山県四郎社長)発足  
12/7 茨城県東海地区環境放射能監視委発 米AEC、機構を改革(環境・安全部門の新設など大幅な改組)
12/10 原子力委、濃縮ウラン確保策として、対米協力、国際濃縮計画への参加及び国産化の推進の三本柱で進む方針を決定  
12/28 日本社会党政策審議会、「原子力平和利用における安全性の確保」をまとめ、科技庁(現文科省)と原子力委に申入れ  
12/30   西独、仏、英が協同で高温ガス炉に関する技術経済情報交換グループ「ユーロHKG」を設立


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1971年
(昭和46年)
2/14   ペルシャ湾岸産油国と国際石油資本、原油を1バレル35セント値上げで合意(テヘラン協定)
2/24   アルジェリア、サハラの天然ガス・パイプラインを国有化すると宣言
3/25 第一銀行、日本勧業銀行、合併契約調印。10/1第一勧業銀行として発足(預金高全国第1位)  
4/1 高エネルギー物理学研究所設置(筑波学園都市)  
4/2 産油国と国際石油資本,地中海原油値上で交渉成立(トリポリ協定)  
5/31 環境庁(現環境省)設置(長官山中貞則)7/1発足  
6/17   沖縄返還協定調印。1972/5/15発効
6/30 富山地裁、神通川流域のイタイイタイ病第1次訴訟判決。カドミウムが主因と認定  
7/9   米大統領補佐官キッシンジャー、秘密裏に中国を訪問
7月   ローマクラブ、「成長の限界」レポート発表
8/16   米国のドル防衛措置発表で、東証ダウ株価暴落(ドル・ショック)
9/28 東大宇宙航空研究所、日本で最初の科学衛星「しんせい」を打上げ  
10/10 NHK総合テレビ、全カラー化(テレビ普及率82%,カラー40%)  
10/26   中国の国連参加可決、国府追放
11/24 衆院本会議、沖縄返還協定承認案を可決。12/22参院本会議、可決。1972/3/1公布  



<関連タイトル>
東京大炉(弥生) (03-04-03-06)
冷却材喪失事故(LOCA)に関する研究−熱水力挙動− (06-01-01-04)
冷却材喪失事故(LOCA)に関する研究−燃料挙動− (06-01-01-05)
再処理の概要 (04-07-01-01)
東海再処理工場 (04-07-03-06)


<参考文献>
(1)森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2)原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3)森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(4)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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