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<概要>
 原子力安全委員会は、原子力発電所等から排出する低レベル放射性固体廃棄物に対する措置の一環として、その「陸地処分の安全規制に関する基本的考え方」をまとめた(1985年10月24日決定)。この「基本的考え方」は、並行して検討が行われてきた規制関係の他の指針類等とともに、「放射性廃棄物埋設施設安全審査の基本的考え方」(原子力安全委員会決定、1988年3月17日)の基本となっている。その内容の特徴は、対象廃棄体の浅地層処分に当って段階的管理方式を採用するのが適当であること、極低レベル放射性固体廃棄物を特定できる放射能濃度上限値について検討するのが有意であること、放射性物質としての規制から除外できるいわゆる無拘束廃棄物について考えを示していること、などである。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。本データに記載されている「陸地処分の安全規制に関する基本的考え方」については、原子力規制委員会によって再検討が行われる可能性もある。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
 原子力安全委員会は1985年(昭和60年)10月24日、放射性廃棄物安全規制専門部会からの報告「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について」を妥当であると認め、委員会決定事項とした。その趣旨は、低レベル放射性固体廃棄物は原子力発電所の敷地外において集中的に最終貯蔵処分するのが現実的な対応であり、そのためには安全規制に関する基本的考え方(基本評価、安全評価、安全確認、安全確保責任、規制基準等)を提示する必要があるということにあった。なお、この「基本的な考え方」は、原子力安全委員会・放射性廃棄物安全規制専門部会の中間報告「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について」(1986年12月19日)およびそれを受けて制度化された「埋設事業の許可を受けなければならない放射性廃棄物の放射能濃度の上限値」(原子炉等規制法第51条の2施行令第13条の9項、1987年3月公布)と対をなしており、それらが総括されて、日本原燃(株)が青森県下北地区に建設を進める「六ケ所低レベル放射性廃棄物貯蔵センター」を念頭に入れた「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」(原子力安全委員会決定、1988年3月17日)の策定の基礎となったものである。
 この「陸地処分の安全規制に関する基本的考え方」の要点は次のようである。
1.陸地処分の安全確保の考え方
1.1 放射性廃棄物処分の基本的考え方
(1)生活環境からの隔離
 生活環境に対する放射能の影響を未然に防止する。そのため、放射能が安全上問題のないレベル以下に減衰するまでの期間、それを生活環境から安全に隔離することを基本とする。
(2)安全評価
 安全評価においては、放射性核種の食物連鎖等を通じての人体への影響など一般公衆が受ける被ばく線量を評価し、障害防止上問題のないことを確認する。
1.2 低レベル放射性固体廃棄物の管理
(1)代表的な処分法
 「浅地層(中)処分」法が代表的である。そのほかに、「地下空洞」を利用する方法も考えられる。
(2)浅地層処分と廃棄体
 廃棄体をコンクリート製ピット等に収納し、放射能レベルが安全上支障のないレベル以下に減衰するまでの間、廃棄体、「人工バリア」(ピット等の構築物)と「天然バリア」(周辺土壌等)の組合せによって、放射性廃棄物を生活環境から隔離する。
(3)段階的管理
 「段階的管理」は以下の4段階から構成されるものとする。ただし、「処分場(最終貯蔵場を含む)」や「廃棄体」の性能、特性に問題がなければ(安全評価の結果)、「第2段階」から直ちに開始する選択肢もありうる。[図1参照]
 (第1段階)
 人工バリアによって放射性核種の人工バリア外への漏出を防止し、所要の監視(巡視・点検、人工バリアの放射線モニタリング等)によって漏出のないことを確認している段階。
 (第2段階)
 人工バリア及び天然バリアによって放射性核種の生活環境への影響を防止し、所要の監視(環境放射線モニタリング等)によって安全であることを確認している段階。
 (第3段階)
 主に天然バリアによって放射性核種の生活環境への影響を防止するが、廃棄体等の放射能濃度が相当に低減しているため、主として廃棄体を掘り出すなど人間の特定行為を禁止あるいは制約する措置で対処する段階(表1-1の極低レベルの場合参照)。
 (第4段階)
 処分された廃棄体は、もはや放射性物質として拘束することを考慮しない。したがって、バリアによる放射性核種の閉じ込めは前提とせず、かつ、特定行為の禁止等の措置を必要としない無拘束段階(表1-2の無拘束廃棄物の場合参照)。
(4)同一場所における継続管理
 この段階的管理は、継続して同一の場所で行われ、途中の段階での搬出を意図していないので、その安全確保の考え方においては当初から全段階の管理を一連のものとして把えておくことが必要である。したがって、搬出することを前提とした、いわゆる「貯蔵」とはその目的・内容が異なるものであり、この点に留意して安全規制を考える必要がある。
2.陸地処分の安全規制
2.1 基本的考え方
(1)安全規制
 予め各段階の管理の内容等に関し諸条件を勘案した安全評価を行うとともに、各段階に移行する前に、管理の内容について保安のために必要な措置が適用されているかどうかを確認することが安全規制の基本となる。
(2)全体像の評価
 最初に廃棄体が処分される区画範囲について第1段階(直接第2段階から開始される場合にはこの段階)の安全規制が適用される前に、計画された処分の「全体像に関する技術的妥当性」を基本的に評価しておくことが重要である。
2.2 基本評価
(1)基本評価の目標
 基本評価では、計画された処分の全体を対象として、処分を予定している放射性廃棄物の種類、総量、処分計画、処分場の位置、環境等が全期間(第1〜4段階)を通じて、安全上問題ないかどうかについて確認する。つまり、第1〜4段階を通じて現在の技術、知見等から、現実的な処分のシナリオにより、第4段階に支障なく移行できることが示されていることが重要である。
2.3 各段階における安全評価の考え方
(1)第1段階
 人工バリアの健全性評価。もし損傷が生じても適切な期間内に修復できることを条件とする。
(2)第2段階
 人工バリアと天然バリアの組合せによる機能評価。一般公衆は処分場に入らないことを前提とする。
(3)第3段階
 主として天然バリアの機能維持に依存。特定行為の禁止又は規制を前提とする。
(4)第4段階
 放射性物質としての規制から除外(無拘束)。
2.4 安全確認の手順と内容
(1)廃棄体の確認
 廃棄体については保安のために必要な措置がとられていること。埋設可能な「放射能濃度上限値」以下の廃棄体であること。
(2)各段階ごとの確認
(第1段階)(a)構築物の設置、(b)放射線モニタリング、(c)巡視点検、(d)修復措置、(e)立入制限措置、(f)特定行為の禁止(規制)、(g)従事者の被曝管理−等、保安に必要な措置について確認する。また、従事者の被ばく管理、放射線モニタリング結果等については適宜報告する。
(第2段階)第1階で示したもののうち、(b)、(c)、(e)、(f)及び(g)について確認する。
(第3段階)第1段階で示したもののうち、(c)、(f)について確認する。
(第4段階)制度的管理の規制から除外。
<図/表>
表1-1 「極低レベル放射性固体廃棄物」と「無拘束固体廃棄物」の取扱いと安全規制についての基本的考え方(その1)
表1-1  「極低レベル放射性固体廃棄物」と「無拘束固体廃棄物」の取扱いと安全規制についての基本的考え方(その1)
表1-2 「極低レベル放射性固体廃棄物」と「無拘束固体廃棄物」の取扱いと安全規制についての基本的考え方(その2)
表1-2  「極低レベル放射性固体廃棄物」と「無拘束固体廃棄物」の取扱いと安全規制についての基本的考え方(その2)
図1 低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制(段階的管理)
図1  低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制(段階的管理)

<関連タイトル>
わが国における低レベル放射性廃棄物の処分についての概要(制度化の観点から) (11-02-05-02)
低レベル放射性固体廃棄物の処分に対する安全規制(許認可要件) (11-03-04-02)
放射性廃棄物としての規制免除についての考え方 (11-03-04-04)
放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方 (11-03-04-06)
低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について (11-03-04-08)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1989):原子力安全白書(平成元年版)
(2)原子力委員会編(1989):原子力白書(平成元年版)
(3)原子力安全局監修(1989):原子力安全委員会安全審査指針集(改訂5版)
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