<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護上の評価
<タイトル>
内部被ばくの評価 (09-04-04-04)

<概要>
 体内に入った放射性物質からの放射線による被ばく内部被ばくという。放射性物質が体内に進入する経路には、吸入摂取、経口摂取および創傷などによる皮膚からの吸収がある。内部被ばくの程度は体内の器官の預託等価線量によって表される。預託等価線量を計算するのに用いる器官の質量、代謝のパラメータなどは、人によって異なるので、それらの平均的な値を持つ人体モデルである標準人が定められている。
<更新年月>
2003年02月   

<本文>
 放射線による被ばくには、体外に存在する放射線源によるものと体内に入った放射性物質によるものの2とおりがある。前者を外部被ばく(または体外照射)、後者を内部被ばく(または体内照射)という。空気汚染及び、床・身体・衣服などの表面汚染は直接に、あるいは間接(再浮遊した物質の吸入や表面汚染からの二次的な摂取)に体内に入る可能性を持っている。
1)放射性物質の体内への侵入経路
 放射性物質が体内に侵入する経路には次の3つがある。
 (1)吸入摂取
 (2)経口摂取
 (3)皮膚からの侵入(経皮侵入)、特に傷口を通しての吸収を含む
 吸入によって、呼吸気道を通じて摂取された放射性物質は、肺に入り、肺胞壁その他の気道表面から体液に吸収される。鼻腔とか口腔に近い上部呼吸気道に入った後、呼気とともに体外に排出されるものもある。吸気とともに一旦吸い込まれた放射性物質の量を摂取量という。被ばく線量推定を目的として、肺胞領域からの放射性物質の生物学的な除去の速さに応じて、物質を吸入のクラスD、W及びYに分ける。すなわち、10日未満の半減期を持つ物質はD(日)、10日から100日の半減期のものはW(週)に、100日を越える半減期のものはY(年)に分類される。
 放射線作業が行われている現場で実際に発生する内部被ばくの事例の大部分は吸入によるものである。
 経口摂取の場合は、口から入り、飲むことによって食道を通じて、胃、小腸、大腸に送り込まれ、体液に吸収される。消化管に入ったもののうち、どのくらいの割合(通称、f1)が体液に吸収されるかが、内部被ばく線量を推定するに際して重要な量とされている。また、より正確な推定を行うために、ICRP(国際放射線防護委員会)では、f1の代わりに、消化管内の通過時間と吸収速度をモデル化することが検討されている。
 皮膚からの侵入について、正常な皮膚は障壁として働くので、放射性物質の侵入が実際に問題となることは少ない。しかし、水蒸気の形のトリチウムは皮膚呼吸により侵入することのほか、放射性物質によっては、正常の皮膚であっても侵入することがあるので注意する必要がある。
 皮膚に傷があると、放射性物質が侵入しやすくなる。放射性物質が傷に付着した場合は、できるだけ早く除染操作を開始する必要がある。
2)身体内に入った放射性物質の挙動
 (1)身体内に入った放射性物質が血液などの体液に吸収されると全身に分布する。これを組織系汚染(あるいは、系統汚染)という。
 (2)放射性核種の体内での分布の特異性:組織系汚染を起こした放射性核種には全身に均等に分布するものはあまり多くなく、人体内で特に好んで集まる組織があることが多い。その場合、人体全体では少ない量でも、ある特定の組織に大きな損傷を与えるおそれがある。例えば、ヨウ素同位体甲状腺に集まりやすく、ストロンチウムの同位体は骨に集まりやすい。
 (3)放射性核種の半減期と体内からの除去の速さ:放射性核種の壊変は指数関数で表される。一方、体内にとり込まれた(吸収された)物質(安定元素)が体内組織から代謝あるいは排泄によって除去されるときも、その物質の量はほぼ指数関数的に減少して行くことが知られている。このような生物学的過程によって物質がはじめの1/2になるまでの時間を生物学的半減期という。体内の放射性核種は、核種自身の壊変とこの生物学的過程によって減衰するので、その半減期を実効半減期という。
  図1 は放射性核種の摂取と体内における移行、排泄の経路を模式的に示したものである。一方、傷口を通じての吸収についても、傷口から血流中への移行の程度を考慮した動態モデルの検討が進められている。
3)内部被ばくの線量
 内部被ばくの線量は、体内の組織中での放射性核種の壊変の数、1壊変当り放出されるエネルギー及び、線量を計算しようとする組織に吸収されるエネルギーの割合に比例する。体内で放出されたアルファ(α)線は、放射性核種をとり込んだ細胞と周辺の細胞に与えられるエネルギーが大きいため、組織は影響を受けやすくなる。そこで、20という線質係数を与えて、ガンマ(γ)線やベータ(β)線にくらべ影響が大きいことを考慮に入れている。
 壊変の数は摂取後50年間という将来の期間にわたって計算されて、その期間に受けることになる線量をまとめて摂取時に受けるように扱うので、預託等価線量と呼ばれる。放射性核種が滞留し、そのため放射線を出す器官を線源器官といい、放射線のエネルギーを与えられる器官を標的器官という。線源器官は、ふつう複数存在するため、標的器官の線量は、おのおのの線源器官から受ける線量の和になる。 図2 はこれを表したものである。預託等価線量を計算するのに用いる器官の質量、代謝のパラメータなどは、人によって異なるので、ICRPはそれらの平均的な値を持つ年齢別の人体モデルを標準人として定めて統一している。
 放射線管理の上で重要な数量である年摂取限度とは、ある放射性核種が摂取された場合、標準人をICRPが定めた年線量限度まで被ばくすることになる放射能をいう。年摂取限度は、放射性核種の摂取が吸入か経口摂取か、また、化学形が何か、によって異なった値になる。摂取量を年摂取限度と比較して被ばくする線量を求めることができる。
<図/表>
図1 放射性核種の体内への摂取と体内における移行、排泄の経路
図2 線源器官と標的器官の例(131I)

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<関連タイトル>
作業環境管理と個人管理 (09-04-01-10)
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甲状腺・肺モニタ (09-04-03-12)
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<参考文献>
(1) ICRP Publication 30 Part 1,1979: 作業者による放射性核種の摂取の限度、Part 1、日本アイソトープ協会(和訳)、1980
(2) 内部被ばくにおける線量当量の測定・評価マニュアル、(財)原子力安全技術センター、1988
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