<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護用の測定
<タイトル>
甲状腺・肺モニタ (09-04-03-12)

<概要>
 体内に摂取されたヨウ素甲状腺に多く沈着する。甲状腺中のヨウ素を測定する装置を甲状腺モニタという。また、プルトニウム化合物のエアロゾル吸入によって、肺に沈着したプルトニウムを、この核種から放出される平均17keVのLX線を身体外部から検出することにより定量する装置を肺モニタという。現在、ホスウィッチ型検出器が一般に広く用いられている。校正には精密な人体ファントムが必要である。
<更新年月>
2003年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 全身に分布した放射能を身体外部から測定する装置は全身カウンタと呼ばれるが、甲状腺・肺など特定の器官に沈着した放射能を測定する装置を器官カウンタと呼ぶ。器官カウンタでは、対象となる器官の大きさと、その器官に集中的に沈着する放射性核種のエネルギー、光子放出率等を考慮して検出器が設計される。代表的な器官カウンタとして以下に述べる甲状腺モニタと肺モニタがある。
(1)甲状腺モニタ
 医療行為で投与された放射性ヨウ素、または原子炉事故等で環境に放出され、経口あるいは経気道摂取により体内に取り込まれたヨウ素は甲状腺に多く沈着する。甲状腺は幅の狭いチョウの羽根を広げたような形状で、高さ4cm程度で、鎖骨の上あたりの気管の前にある。甲状腺に沈着したヨウ素の量は甲状腺モニタで測定される。検出器には、直径1〜3cm程度の比例計数管、NaI(Tl)検出器、半導体検出器のいずれか1個または2個が使われるが、厳密にはその使用目的(原子炉事故時用、医療目的用)、使用頻度などに応じて、測定対象となるヨウ素同位体に適した検出器を選択すべきであろう。一般的には、安価で安定度・感度(cps・Bq−1)の高いNaI(Tl)検出器が広く用いられている。しかし、装置は高価になるが、エネルギー分解能の優れた半導体検出器が、いずれの目的にも望ましい特性を示す。
 被検者の測定は、バックグラウンドを下げるため鉄室内のベット上に仰臥位で、あるいは、鉛で簡易遮蔽した椅子に腰掛けた体位で、甲状腺を見込む指定した位置に検出器を設置して行う。簡易遮蔽椅子式では、検出器も鉛で充分遮蔽しなければならない。検出器の校正は、同位体組成の明確なヨウ素線源を含む甲状腺をもつファントムを用いて行う。甲状腺中の放射能量の推定には、短半減期同位体の場合は、摂取時からの減衰補正を必要に応じて行い、また、他核種の汚染がある場合は、同時に、全身カウンタによる測定も行いその影響を調べ補正する必要もある。
(2)肺モニタ
 肺モニタという用語は、通常α放射性核種であるプルトニウム(または他のアクチニド元素)の化合物(特に不溶性酸化物)のエアロゾルを吸入することにより、肺に沈着したプルトニウム量を測定する装置を意味する。参考(1)、(2)。肺に沈着した239Pu(プルトニウム同位体中最も多量に含む重要核種)は、娘核種235Uからα崩壊の約4.6%放出される平均17KeVという低いエネルギーLX線を、身体外部から検出して定量する。そのため肺モニタは特別な配慮を払って注意深く設計されている。プルトニウムの年摂取限度(ALI)が極めて低いため、検出器は、低バックグラウンド・高感度のものが必要であるが、現在では12cm直径のベリリウム窓のホスウィッチ(NaI(Tl)/CsI(Tl))型検出器を左右両肺に各1個、または複数個配列した半導体検出器が用いられるが、計数効率の高いホスウィッチ型検出器が広く使われている。また、検出器は、特に低エネルギー散乱線の遮蔽を厳重にした鉄室内のベットの上に取り付けられ、仰臥位の被検者の胸部を測定する。プルトニウムで汚染されるときは、娘核種(特に241Am)の定量も行い、また、241Amおよび他に混合している核種による散乱線の影響を強く受けることが多いので、全身カウンタによる測定も同時に行い、必要に応じて肺モニタ計数値を補正することが大切である。
(3)肺モニタの校正
 検出器の校正は最も重要でかつ困難であるため、細心の注意を払って厳密に行う必要がある。校正は、肺に線源を均等に分布させた人体胸部ファントムを用い、ファントム上の指定した位置に検出器を設置し測定して行う。使用するファントムは、低エネルギー領域で減弱係数の正確な人体組織等価材で作られた、解剖学的に精密な構造のものでなければならない(Griffith-Phantom(3) または JAERI-Phantom(4))。また、得られた校正定数を各被検者に適用する際には、1)各人の体格・体型がファントムと異なることから、胸部軟組織壁厚および(脂肪/筋肉)比の相違から生じるLX線減衰の違いを補正しなければならず、さらに、2)肺は大きな臓器で個人差もあるから、肺内の放射能分布が必ずしも常に均等になるとは限らず、エアロゾルの吸入条件・粒子径・化学形、および、個人の代謝機能などによって分布は大きく異なり、幾何学的効率を変化させるため、適正な補正または誤差範囲の推定が要求される。1)は超音波装置によって可能(5)、(6)であるが、2)はまだ決定的な方法がないが、1例として文献(7)がある。
  以上の他に、バックグラウンドの個人差、他核種混合汚染のある場合、皮膚汚染を伴う場合の補正なども重要である。これらの補正が重要であるのは、プルトニウムの ALI、LX線の放出率、エネルギーなどがいずれもきわめて低いため、計数効率が著しく低くなることに原因している(例えば、99.1w/oの239Puを含む線源を肺に分布させた JAERI-Phantom(胸部軟組織厚=2.3cm)を、12cm直径のホスウィッチ検出器2個で測定した場合の計数効率(13-24 keV 範囲)は、2.613×10−5 cps Bq−1(0.058 cpm nCi−1)と低い)。また、検出器のバックグラウンドが相対的に高く(統計的信頼性を高めるために測定時間が 40-60分と長くなる)、各補正因子の決定精度が十分高くないことなどから、最終的に決定される肺内放射能沈着量の信頼度は高いとは言えず、今後の研究課題も多い。
<関連タイトル>
ヨウ素モニタ (09-04-03-10)
全身カウンタ (09-04-03-11)
内部被ばくの評価 (09-04-04-04)

<参考文献>
(1) 城谷 孝:JAERI-M 5798 (1974)
(2) 城谷 孝、赤石 準、藤田 稔:原子力誌、18、p.572、1976
(3) R.G.Griffith,P.N.Dean et.al.,: ”Advanced in Radiation Protection Monitoring”,p.493,IAEA,Vienna,1980
(4) T.Shirotani: J.of Nucl.Technol.,25,p.875,1979
(5) F.A.Fry and T.Sumerling: Health Phys. 39,p.89,1979
(6) T.Shirotani and Y. Ohi: Health Phys. 50,p.860,1986
(7) T.Shirotani: J.of Nucl.Technol.,15,p.438,1978
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