<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護用の測定
<タイトル>
バイオアッセイ(排泄物等分析による体内放射能評価) (09-04-03-13)

<概要>
 個人モニタリングのため、排泄物など人体からの試料を分析することにより、体内に摂取された放射能放射性核種)を評価する方法がバイオアッセイである。
 試料の種類や測定の対象となる核種に適した前処理と化学分離が行われた後、測定用試料が作製され、その放射能が測定される。放射性核種の摂取量を評価するためには、その元素の体内における代謝を把握しておくことが必要である。
<更新年月>
2007年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 放射性物質の摂取による内部被ばく線量を評価するためにはその体内量を知る必要がある。放射性物質の体内量を知るためには、食品中濃度などから計算して求める方法もあるが、確実なのは測定(モニタリング)により求める方法である。測定による方法のうち、排泄物などの生物学的試料を分析する方法をバイオアッセイ法と呼ぶ。放射性核種がγ線を放出する場合には人体を直接測定する体外計測法(全身カウンタ)により測定が可能であるが、α線やβ線を放出する核種ではそれらの飛程が短いため体外からの計測は困難であり、バイオアッセイ法によってのみ測定が可能である。
 なお、ここで説明する以外でも、生物学的な方法により測定を行うことをバイオアッセイ(生物検定)という。
1.バイオアッセイの手順
 一般的に行われるバイオアッセイの手順は、試料採取、前処理、分析(化学分離)と測定(放射能測定)である。以下にそれぞれの概略を記す。
(1)試料採取
 試料の種類と採取量は、測定の対象となる核種とその化学形、摂取の経路、採取の容易さ、試料中の放射能等を考慮して決定される。
 試料としては主に排泄物(尿、糞)が用いられるが、他に必要に応じて血液、呼気、鼻汁、毛髪等が用いられる。体内汚染量と排泄量との関係は、尿についてもっともよく研究されており、また分析法も十分確立しているため、バイオアッセイ試料としては尿がもっとも多く用いられる。
 事故時のように吸入摂取が疑われる場合には、鼻スミア試料をとることがきわめて重要である。
 試料採取に際しては、身体あるいは周囲に汚染が考えられる場合、混入汚染を起こさないよう注意することが必要である。
(2)前処理
 尿、糞などバイオアッセイ試料は、そのままでは取り扱いが難しいので、有機物の除去や減容、あるいは分析法に適した化学形にさせるために分析の前に前処理が行われる。前処理の方法には蒸発濃縮、灰化、共沈等があるが、前処理の容易さ、試料中の放射性核種の種類と形状、後に続く分析法も考慮した上で決定される。試料の前処理方法を表1に示す。
(3)分析と測定
 一般にバイオアッセイで測定対象としている放射能は非常に低いので、試料中の放射能を効率よく測定することが必要とされる。このため、放射性核種の化学的性質、放出される放射線の種類とそのエネルギーを考慮して最適な分析法と測定法が採用される。
 試料は前処理された後に目的とする核種を分離するため分析(化学分離)される。化学分離には共沈法、イオン交換法、溶媒抽出法、蒸留法などがあり必要に応じて併用される。
 化学分離の後に蒸発乾固、焼付および電着などによって作製された試料の放射能が測定される。バイオアッセイ試料の放射能測定に用いられる測定器は計数効率が高くてバックグラウンドが低いもので、かつ長時間の測定ができるものが必要である。測定器には、NaI(Tl)シンチレーション検出器、Ge(Li)半導体検出器、ガスフローカウンタ、液体シンチレーションカウンタ、α線スペクトロメータなどが用いられる。また、近年はICP質量分析計も利用されている。主な核種についての測定法と検出限界を表2に示す。
 簡便のため、特定の放射性核種に注目するのでなく、単に、α放射能分析あるいはβ放射能分析(全α放射能分析、全β放射能分析とも言われる)が行われることがある。この一例として、尿中の全β放射能分析の場合を図1示す。もしこの分析で異常な結果が得られたならば必要に応じて核種に注目した放射化学分析が行われる。
 以上が一般的な分析と測定であるが、核種によってはより簡単な測定で済む場合がある。それらの例を次に示す。
(1)γ線を放出する放射性核種は、NaI(Tl)シンチレーション検出器またはGe(Li)半導体検出器を用いて、採取試料をそのまま直接あるいは前処理を行っただけで測定することもできる。
(2)トリチウムのような一部の核種は、尿をそのまま液体シンチレーション計測することができる。
(3)天然ウラン比放射能が低いので、放射能を測定するより蛍光分析の方が感度が高いため蛍光光度計による測定も使用できる。
(4)プルトニウムの分析にはICP質量分析計が有力な分析手段となる。
 また、吸入摂取の有無を確認するために行われた鼻スミアのろ紙は直接測定される。
2.バイオアッセイによる結果の解釈
 放射性核種の体内量は、測定された試料中の放射能を、摂取した核種の人体における代謝データに当てはめることにより求められる。排泄物の分析結果の解釈には排泄率関数が必要であり、国際放射線防護委員会(ICRP)の示した排泄率関数(ICRP Publication 56、67、68、69、71、72)等を用いることができる。また、排泄率関数が示されていない元素については残留関数を微分して排泄率関数を得ることができる。算出された体内量あるいは摂取量より、内部被ばく線量が計算される。
 このような個人モニタリングによる測定値の解釈のための報告書(ICRP Publication 78)がICRPから刊行されている。さらには、バイオアッセイあるいは体外計測による測定値および摂取後の試料採取までの時間を入力することにより、摂取量ならびに実効線量と等価線量が計算され、表示されるCD-ROMが放射線医学総合研究所から公開されている。
<図/表>
表1 バイオアッセイ試料の前処理方法
表2 主な放射性核種の測定法と検出限界(ICRP Publication 78より)
図1 尿中の全β放射能測定の例

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
放射性核種の体内移行と代謝 (09-01-04-01)
年摂取限度(ALI) (09-04-02-14)
全身カウンタ (09-04-03-11)
蛍光分析法によるウラン測定 (09-04-03-22)
トリチウムの液体シンチレーション法による測定 (09-04-03-25)
ストロンチウムの放射化学分析と測定 (09-04-03-26)
内部被ばくの評価 (09-04-04-04)
内部被ばくモニタリング (09-04-07-05)

<参考文献>
(1)(財)原子力安全技術センター:被ばく線量当量の測定・評価マニュアル(2000)
(2)(財)原子力安全技術センター放射線障害防止法に基づく安全管理ガイドブック(2002)
(3)ICRP Publication 56(1989)
(4)ICRP Publication 67(1993)
(5)ICRP Publication 68(1994)
(6)ICRP Publication 69(1995)
(7)ICRP Publication 71(1995)
(8)ICRP Publication 72(1996)
(9)ICRP Publication 78(1997)
(10)MONDAL 3,Support System for Internal Dosimetry,CD-ROM issued by National Institute of Radiological Sciences(2005)
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