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<概要>
 ドイツでは、高レベル廃液ガラス固化した固化体及び使用済燃料地層処分する計画であり、候補サイトのゴアレーベン(岩塩層)でサイト特性調査が行われてきたが、1998年に成立した連立政権の政策に基づいて2000年にその活動が暫時凍結された。2009年9月の総選挙で政権が交代し、新政権は2009年10月にサイト調査凍結の方針を解除し、調査の再開に向けて手続きが進められている。また、長寿命核種を含む「非発熱性」の放射性廃棄物はコンラッドに地層処分することが許可された。スウェーデンでは、使用済燃料の地層処分場の標準設計を開発し、最終処分候補サイトについての評価が実施された。2002年からエストハンマルとオスカーシャムの2自治体でサイト調査が実施され、2009年6月に地質条件の優位性からエストハンマル市のフォルスマルクが選定された。フィンランドでは、処分実施主体であるポシヴァ社による地下特性調査施設などの原則決定手続きを経て、2001年にオルキルオト原子力発電所近郊のユーラヨキ地域が使用済燃料の地層処分場のサイトに正式に決定された。地層処分場は2013年建設着工、2020年操業開始の予定である。
<更新年月>
2011年02月   

<本文>
1.ドイツ
(1)概説
 1991年の東西ドイツの統一後、原子力に関する政策及び行政体制は、旧西ドイツ側の施策がドイツ全土に拡大され施行されるようになった。1998年9月に成立した社会民主党と緑の党の連立政権によって、段階的な原子力発電所の廃止など脱原子力政策が進められた。2002年4月に「原子力の平和利用及びその危険の防護に関する法律(原子力法)」の改定が行われた。放射性廃棄物の処分に関しては、すべての廃棄物を地層処分する基本的原則は変更しないものの、1970年代から進められてきたゴアレーベンの岩塩ドームにおける調査プロジェクトは凍結され、処分場のサイト選定手続きや要件等について見直すことになった。2009年秋に発足した中道左派の連立政権は脱原子力政策を維持するものの、代替エネルギーが確立するまでの過渡的エネルギーとして既設原子力発電所の運転期間延長を承認した。廃棄物処分に関しては、ゴアレーベン調査プロジェクトの凍結は撤廃されることとなった。
(2)放射性廃棄物政策
 国内での再処理プロジェクトは1989年6月にすでに中止されており、1994年の原子力法改正で、使用済燃料の直接処分が認められることとなった。
 1991年12月に所管の連邦経済省(BMW)が発表した新しいエネルギー政策では、核燃料サイクルのバックエンドに関して、1996年までに、非発熱性の低・中レベル廃棄物をコンラッド処分場に処分し、発熱性廃棄物の処分場は2020年までにゴアレーベンサイトに開設出来るよう準備を進めるとしていた。処分事業に関しては、連邦放射線防護庁(BfS)が処分場管理の責任を負い、実際の作業はBfSの委託を受けたドイツ放射性廃棄物処分場建設操業会社(DBE)が実施している(図1)。
 ドイツにおける放射性廃棄物管理の基本方針は、
1)すべての種類の放射性廃棄物は地層処分場に処分し、浅地中処分は行わない。
2)発熱性の廃棄物はゴアレーベンの岩塩層で処分する(図2)。
3)発熱を伴わない廃棄物はコンラッドまたはモルスレーベンの処分場に処分し、コンラッドのものは取扱いにあたり特に遮蔽は行わない。
4)米国、フランス、英国、日本のようにアルファ廃棄物を特に区分することはしない。
 さらに、外国に再処理を委託したドイツの軽水炉燃料からの廃棄物の扱いについては、
1)フランス・ラアーグ及び英国・セラフィールドの再処理工場で再処理されて発生したすべての放射性廃棄物は、処分のためドイツに返還される。
2)発熱性の廃棄物(ガラス固化体、固化されたハル(被覆管)等)は、最終処分が可能になるまでの期間は、貯蔵キャクスに入れ、ゴアレーベン貯蔵施設(容量3800トン)及びアーハウス貯蔵施設(容量3960トン)に中間貯蔵される。
3)固化された低レベル廃棄物は、モルスレーベンの岩塩層処分場で処分される。
 なお、国外に再処理委託されたもの以外の軽水炉使用済燃料は、各原子炉サイトのプールに貯蔵されている。
 高温ガス炉からの使用済燃料は、キャスクに入れて貯蔵することとされており、THTR燃料用にキャストール型キャスク14基がアーハウスに設置済である。また、AVR燃料についてはユーリッヒ研究所内に貯蔵されている。
 放射性廃棄物の処分場サイトの候補としてコンラッド(鉄鉱山)とゴアレーベン(岩塩層)がある。ゴアレーベンでは1本の立坑を掘削し、処分場としての適性を判断するためのサイト特性調査を実施してきた。1998年9月に発足した脱原子力連立新政権(社会民主党及び緑の党)は、1998年10月に発表された政策の中で、処分場を1箇所に限定すること、処分の開始目標を2030年にすること、ゴアレーベンは適性に疑問があり調査を中断すること及びモルスレーベンでの処分を中止するとしていた。
 高レベル廃棄物の処分に関しては、処分の基本的な原則は変わらないものの、ゴアレーベンで進められてきたプロジェクトは2000年に暫時凍結されたが、2009年の総選挙で発足したキリスト教民主・社会同盟を核とする新連立政権により凍結を解除する方針が示された。
 2009年7月に連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は、高レベル放射性廃棄物を含む発熱性放射性廃棄物の地層処分に係る新たな安全要件である「発熱性放射性廃棄物の処分に関する安全要件」を策定した。この中では人が生涯に重大な健康影響を受ける生涯リスク基準が規定され、めやす評価期間とされる100万年の間はこの基準を満たさなければならないとしている。BMUは2010年3月に、以下に示すゴアレーベン調査プロジェクトの計画を策定した。
・2010年10月1日までに、「発熱性放射性廃棄物の処分に関する安全要件」について、各州の合意を得て、地下探査活動を再開する。
・2012年末までに、ゴアレーベンサイトについて予備的安全評価を実施し、それに基づいて処分概念を策定する。その後、2013年前半までに、処分概念について国際ピアレビューを受け、処分サイトとしての適性が確認された場合に原子力法に従って計画の確定手続きを開始する。
・連邦議会の次期の立法会期が終了するまでに原子力法に基づく計画確定手続きと探査活動を終了する。
2.スウェーデン
(1)概説
 10基の原子力発電炉が稼働しており、国内電力の50%を賄っている。1980年の国民投票の結果、2010年には原子力発電を全廃することを決定したが、その後1997年に段階的廃止法案が可決されている。電力会社4社(バッテンフォール社、バーセベック社、OKG社、フォルスマルク社)は、1972年に主に核燃料の調達を行う民間の株式会社SKBF社(Swedish Nuclear Fuel Supply Co.:スウェーデン核燃料供給会社)を共同出資で設立した。
 その後、SKBF社は核燃料供給と放射性廃棄物の輸送、貯蔵、処分前処理及び処分を業務とすることになり、SKB(Swedish Nuclear Fuel and Wastes Management Company:スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社)に改組された。原則として発生者が必要な措置、費用負担の義務を負い、電力側の実施機関としてSKBが責任を有することになっている。
 2009年までに発生した使用済燃料は12,000トンである。使用済燃料は再処理せずに地層処分し、国外委託再処理に出した燃料からの返還高レベル廃棄物は受け取らないこととしている。放射性廃棄物処分に係る規制については、環境省とその下部機関であるSSM(スウェーデン放射線安全機関)が監督責任を有している(図3参照)。
(2)放射性廃棄物政策
 1976年に誕生した反原子力政権は、リングハルス3、4号機とフォルスマルク1、2号機の新規の原子炉への燃料装荷の許可条件として、電力会社が使用済燃料あるいは高レベル廃棄物を安全に処分できることを示すことを要求する「条件法」を1977年に成立させた。このため電力会社は処分の方法に関する調査研究(KBSプロジェクト)を行い、高レベルガラス固化体の処分報告書(KBS-1)と使用済燃料の処分報告書(KBS-2)を各々1977年、1978年に作成した。政府はKBS-1及びCOGEMA社(現AREVA NC社)との再処理契約に基づき、4基の原子炉における燃料装荷を許可した。1984年、フォルスマルク3号機、オスカーシャム3号機の燃料装荷許可に際して、使用済燃料は再処理しないで処分する申請となっていたこと、及びKBS-2が発行されてから4〜5年が経過していたことから、新しい知見を踏まえた新報告書(KBS-3)が作成された。これにより2基の原子炉への燃料装荷が許可された。
 放射性廃棄物の管理に関しては、低中レベル放射性廃棄物処分用のSFR(Slutforvar for Reactoravfall)施設が1988年から、また使用済燃料中間貯蔵のCLAB(Centralt Larger for Anvant Braensle)施設(使用済燃料中間貯蔵施設)が1985年から稼働している。高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発では、国際協力によるOECD/NEAの主催するストリーパ(Stripa)研究プロジェクト(廃止鉱山利用による処分研究)を1980年代に実施した。1990年からエスポ島硬岩地下研究施設(HRL:Hard Rock Laboratory)で処分技術の実証研究が行われた。使用済燃料の地層処分の実施まで、一般的なフィージビリティ研究、サイト調査、詳細調査と建設、実証的処分と評価、フル操業という段階的措置が取られている。当初の6自治体でのフィージビリティ研究の結果、SKBは、2000年11月にオスカーシャム(Oskarshamn)、エスタマ(Osthamma)、ティエルプ (Tierp)の3自治体に絞ってサイト調査を開始した。その後、世論調査機関TEMO社による世論調査の結果、オスカーシャムとエストハンマル自治体住民が処分場受け入れを支持していることが明らかになり、2つの候補地においてボーリングなどによる詳細な地質調査を実施し、2009年6月、エストハンマル市のフォルスマルクを地層処分施設サイトに選定した。SKB社は、2011年に処分場立地・建設の許可申請を行う予定である。図4にフォルスマルクの地層処サイトのイメージ図を示す。
3.フィンランド
 フィンランドでは、オルキルオト原子力発電所(ユーラヨキ自治体オルキルオト島に所在)にアセア・アトム社製 BWR、87万kW×1基、ロビーサ原子力発電所(ロビーサ自治体ヘストホルメン島に所在)に旧ソ連製PWR(VVER-440(V-213))、51万kW×2基が1970年代後半から稼働中であり、総発電力量の約30%を占めている。前者は民間の電力会社であるテオリスーデン・ボイマ社(TVO)が、後者は国営電力会社であるフォーラム社(1999年にIVO社がNeste社と合併して改称)が所有している。
 1957年に創設された原子力エネルギー法は1978年に改正され、原子力発電所から発生するすべての放射性廃棄物(使用済燃料を含む)の処分は所有者である電力会社の責任とされた。各社は1970年代後半から原子力発電所の中低レベル放射性廃棄物の処分研究を開始し、1980年代に各発電所サイトで地質環境の特性調査が行われた。1990年代には地下数十mに地下空洞方式の処分場が建設され操業が開始されている。
 一方、使用済燃料の最終処分については、1983年に放射性廃棄物管理政策に関する政府決定が行われ、これが現在の処分計画の基礎となっている。当初、 ロビーサ原子力発電所の使用済燃料は旧ソ連に返還され、オルキルオト原子力発電所の使用済燃料のみが国内で直接処分される計画であった。しかしながら、1994年に原子力エネルギー法が改定され、1996年からは放射性廃棄物の輸出/輸入が禁止されることになったことから、ロビーサ原子力発電所の使用済燃料も国内で処分されることになった。1995年、TVO社とIVO社は共同で地層処分の研究開発、建設、操業等を行うポシヴァ社を設立した。ポシヴァ社は、地層処分に関わる業務を主に行っているが、その他に、各電力会社が各々建設、操業している中低レベル放射性廃棄物の処分に関わるコンサルタント業務や国内外の他機関のコンサルタント業務も実施している。
 使用済燃料の処分に関する規制はKTM(貿易産業省)が担当し、放射線安全に関する監督は社会保健省の下にあるSTUK(フィンランド放射線・原子力安全センター)が行っている(図5参照)。また、処分費用の積み立てはKTMが規制・監督する国家放射性廃棄物管理基金に各電力会社が拠出する方法で行っている。1999年に使用済燃料の処分に関する一般安全規則に関する政府決定が行われた。この規則の具体的な内容についてはSTUKが策定する指針の中で示される予定である。
 原子力エネルギー法では、原子力発電所や使用済燃料の処分場のような重要な原子力施設の建設にあたっては、初期の段階で国に計画申請することが義務付けられており、国はその計画を進めることが社会にとって意義があることかどうかを政策判断する原則決定(Decision in Principle)を行う。原則決定が承認されると、建設認可、次いで操業認可手続きを行い操業開始となる。使用済燃料の処分サイトの選定に関しては以下のように進められている。
(1)サイト確定調査(1983年〜1985年)
 1985年後半に、スクリーニング結果が国に提出され更に調査を継続することが妥当と判断された地域は102地域であった。また、スウェーデンのKBS-3にもとづく地層処分施設概念と安全評価書が国に提出された。サイト選定の過程において、環境省により17地域が排除され、12地域が未検討の保護計画のため再検討された。
(2)サイト特性概要調査(1986年〜1992年)
 1987年春、5地域(ヒュリュンサルミ自治体のヴェイチバラ、コンギンカンガス自治体(現エネコスキ)のキヴェティ、クフモ自治体のロムヴァラ、シエヴィ自治体のシリ及びユーラヨキ自治体のオルキルオト)が選定された。1992年に予備調査結果が報告され、このうち3地域(キヴェティ、オルキルオト、ロムヴァラ)が候補地域とされた。
(3)サイト特性詳細調査(1993年〜2000年)
 キヴェティ、オルキルオト及びロムヴァラの3地域で調査が継続された。1997年にヘストホルメンがその基盤岩が処分場として適性であるとの調査結果にもとづいて候補地に追加された。ヘストホルメンはオルキルオトと同様、フォーラム社の原子力発電所所在地という特別な位置づけにある。詳細調査として、地質図作成、地球物理学的調査、1km以深のボーリング調査等が行われた。1998年末までには各候補地で8〜13本のボーリングが掘削され、フィンランドや外国の多数の専門機関が参加し、地質調査やその結果の評価が実施された。
 1999年5月、ポシヴァ社が環境影響評価報告書(EIAレポート)をまとめ、国及び貿易産業省にオルキルオトを処分サイトとして申請した。 EIAレポートは2000年1月に、オルキルオトのあるユーラヨキ自治体により承認され、2001年に国会により承認された。図6にオルキオト地層処分場のイメージ図を示す。
 2004年から、地下特性調査施設(ONKALO)の建設が開始され、今後2012年まで詳細調査の実施を経て、2020年の操業開始が予定されている。
(前回更新:2001年3月)
<図/表>
図1 ドイツの処分事業の実施体制図
図1  ドイツの処分事業の実施体制図
図2 ゴアレーベンにおける処分概念イメージ
図2  ゴアレーベンにおける処分概念イメージ
図3 スウェーデンの処分事業の実施体制図
図3  スウェーデンの処分事業の実施体制図
図4 高レベル放射性廃棄物処分場イメージ(フォルスマルク)
図4  高レベル放射性廃棄物処分場イメージ(フォルスマルク)
図5 フィンランドの処分事業の実施体制図
図5  フィンランドの処分事業の実施体制図
図6 高レベル放射性廃棄物処分場イメージ(オルキルオト)
図6  高レベル放射性廃棄物処分場イメージ(オルキルオト)

<関連タイトル>
海外諸国の使用済燃料貯蔵の現状 (04-07-03-17)
TRU(超ウラン元素)含有廃棄物の発生源と安全対策 (05-01-01-09)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分の概要(1)−仏、英編− (05-01-03-07)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(2)−ベルギー、スイス、カナダ編− (05-01-03-08)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(5)−アジア・オセアニア編− (05-01-03-18)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分の概要(6)−ロシア編− (05-01-03-19)
再処理プロセスにおける放射性廃棄物の発生源 (11-02-04-02)
ドイツの核燃料サイクル (14-05-03-06)
スウェーデンの核燃料サイクル (14-05-04-05)
フィンランドの原子力発電開発と原子力政策 (14-05-05-02)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:放射性廃棄物管理ガイドブック1994年版(1994年7月)
(2)(社)日本原子力産業会議:OECD/NEA加盟国の放射性廃棄物管理計画(1998年1月)
(3) 原子力委員会(編):原子力白書 平成10年版、大蔵省印刷局(1998年8月)
(4)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 1998年(1998年5月)
(5) IAEA:”Bulletin Update on Waste Management Policies and Programmes”, No.13(1998年12月)
(6)Posiva Oyホームページ
(7)Ingvar Rhen, et. al., ”ASPO HRL − Geoscientific evaluation 1997/5 Models based on site characterization 1986-1995”:SKB Technical Report 97-06, (1997)
(8)ドイツ政策合意:”The Coalition Agreement between the SPD and Alliance 90/The Greenssigned in Bonn on 20 October 1998”
(9)ドイツ協定文書:”Agreement between the Federal Government of Germany and the utility companies, dated 14 June 2000”
(10)Posiva Oy:”Posiva Oy Annual Report”, (1999)
(11)Posiva Oy:”Nuclear Waste Management of the Olkiluoto and Loviisa Power Plants Annual Review”, (1999)
(12)Posiva Oy:”Environmental Impact Assessment Report”, (1999)
(13)Posiva Oy:An Overall Description of the Final Disposal of Spent Nuclear Fuel”, (1999)
(14)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2010(2010年8月)
(15)経済産業省資源エネルギー庁:諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について(2010年2月)
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