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<概要>
 電源開発において原子力発電は重要な位置を占めており、2007年12月現在、10サイトで31基の原子力発電所が稼働している。使用済燃料再処理することを基本方針としており、チェリヤビンスク、クラスノヤスク及びトムスクの3箇所で軍事用(兵器用のプルトニウム回収)又は商業用の再処理施設が操業され、大量の高レベル廃液等が各施設内に保管されている。また、トムスク等のサイトでは、これまでに再処理放射性廃液の深地層処分が行われたが、現在はガラス固化体に処理した後に地層処分することとし、そのための技術開発を進めている。現在、高レベル放射性廃棄物及び黒鉛減速沸騰軽水冷却型炉(RBMK)の使用済燃料の地層処分場についてサイトを調査している段階である。
<更新年月>
2011年02月   

<本文>
(1)概説
 2007年12月現在、10サイトで31基の原子炉が稼働中であり、その内訳はロシア型PWRが15基、軽水冷却黒鉛減速炉が15基、高速炉が1基である。原子力発電は重要な位置を占めており、2005年時点での原子力発電量は1,494億kWhであり国全体の発電電力量の15.7%に相当している。ロシア政府は1994年に、原子力省(MINATOM)を放射性廃棄物管理の調整機関として設立し、連邦政府は1995年に、「放射性廃棄物及び使用済燃料の管理:それらの利用と処分(1995〜2005年)」と題した放射性廃棄物管理プログラムを策定した。ロシアにおける放射性廃棄物の分類は、放射能の強さに基づいて、低レベル放射性廃棄物、中レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物の3種類に区分されている。表1は、液体廃棄物及び固体廃棄物のそれぞれについて、低レベル廃棄物、中レベル廃棄物及び高レベル廃棄物の3分類の基準を示したものである。
 ロシアでは使用済燃料は再処理することを基本方針としており、再処理施設は、チェリヤビンスク-40(Cheryabinsk-40 : 現マヤークMayak)、クラスノヤスク-26(Krasnoyask-26)及びトムスク-7(Tomsk-7:秘密都市名セベルスク)の3箇所にある。これらの施設の運転に伴い、放射性廃棄物が発生する。表2には、高レベル放射性廃棄物の発生量を、その発生源、形態、貯蔵場所等を含めて示す。これまでに発生した高レベル廃液は、タンクに貯蔵されているものが2,400m3(5.7×108 Ci)、ガラス固化されたものが9,500m3(2.0×108Ci) である。また、低中レベル廃液は、4.0×1083(5.7×108Ci)がタンク、リザーバ、プールに貯蔵されている。低中レベル固体廃棄物は、1.0×1083(1.2×107Ci)が地上施設に保管されているが、これまでにかなりの量の廃液が深地層に注入処分されている。
(2)各施設における放射性廃棄物管理の状況
 1)チェリヤビンスク-40
 プルトニウム生産用原子炉から発生した使用済燃料は、1948年から1986年まで、チェリヤビンスク-40軍事用再処理施設で再処理し、プルトニウムを回収している。1987年以降の軍事用使用済燃料の再処理は、トムスク-7において実施された。この施設は、商業用原子炉の使用済燃料を再処理できるように、1977年RT-1施設に改造された。商業用原子炉の使用済燃料の再処理は、1977年から開始され、2000年現在も運転中である。チェリヤビンスク施設において再処理された累積量は、1948年から1993年までに2,380トンである。1979年から1989年の間の運転平均実績は年間約200トンである。
 このチェリヤビンスクでは、高レベル、中レベル、低レベルという3種類の放射性廃棄物が使用済燃料の再処理工程によって発生する。このうち、液体状の高レベル放射性廃棄物は直接、ガラス固化されるか、または固化前の工程においてスラッジの形で前処理されタンク内に保管される。
 RT-1施設では、使用済燃料1トン当たり45m3の高レベル廃液、150m3の中レベル廃液及び2,000m3の低レベル廃液が発生する。この施設のガラス固化装置において、1986年から1997年までに1,300m3の廃液の固化処理が行われ、約2,200トンのガラス固化体が製造された。この装置は、設計寿命の2倍の期間稼動しその後停止された。現在のところ新しいガラス固化装置は、財政上及び環境上の理由でその操業が棚揚げされている。
 2)クラスノヤスク-26
 このサイトには、軍事用原子炉3基と再処理施設がある。軍事用再処理施設では、1964年から1996年までに使用済燃料9,700トンが再処理された。また、商業用再処理施設(RT-2)を建設中であったが、完成度40%の段階で経済的な理由で建設が停止された。この施設の貯蔵プールは、1985年に完成し、VVER型原子炉の使用済燃料4,000体(2,300トン)を保管している。なお、ロシアの使用済燃料の発生量は、1995年1月現在、9,335トンと評価されている。
 3)トムスク-7
 このサイトには軍事用原子炉等5基があり、うち2基は2000年時点で運転中である。軍事用再処理施設では、これまで184,000トンから197,000トン使用済燃料が再処理されている。
 以上の3か所の再処理施設からは、大量の低・中・高レベル放射性廃液が発生するがこれらの廃棄物はいまだ処理されないものが多く、そのままサイト内のタンク中に保管されている。将来計画では、これらの放射性廃液の固化処理プラントを建設予定である。なお固体廃棄物は処理されない。
(3)高レベル放射性廃棄物の処分の状況
 チェリヤビンスク-40サイトでは、1949年4月から1951年11月までの間、軍事用再処理施設から高レベル廃液をテチェ河に放出処分した。このため、この地域において環境汚染が引き起こされ、41村、124,000人の住民が被ばくした。その後も1950年代まで低中レベルの廃液の放出が続いた。1951年以降、高レベル廃液はタンク貯蔵されるようになったが、1957年にタンク破損事故が発生したため、その対策として深い井戸への注入処分が提案され、トムスク、クラスノヤスク及びディミトロヴグラドのサイトに深地層処分された。その全廃液量は、46Mm3(2000MCi)であり、2001年時点での評価では800MCiである。処分サイトの面積はサイト当たり24km2である。廃液は、地表水や浅部帯水層から隔てられた深部地層に大深度の井戸を掘削しその中に注入された。
 また、クラスノヤスクのセーベルヌイ地下処分場では、低レベル廃液が地下深さ160mから230mに、中低レベル廃液が地下深さ400mから500mに注入処分され、その総廃液量は、30年間で600万m3に達している。注入処分の可能な地層を選定する際の基準は公衆の安全基準に基づいている。すなわち、1)地質学的な層準(狭義の地層の意で化石層や帯水層を指す)は、公衆の利用に供することはできないような地層水を含まなければならないこと、及び2)地層には経済的利益をもたらすような鉱物を含まないことという2つの要件で構成されている。その後、低レベル放射性廃液以外については、すべて深地層注入処分は禁止され、その代わり将来の処分に備えて廃液を安定な形態に固型化するプログラムを実施することとしている。
 高レベル放射性廃棄物及びRBMKの使用済燃料の処分サイトの選定については、以下のサイトを含めて複数の潜在的サイトについて調査を実施している。
 ・北極海のノヴァヤゼムリャ島地下の永久凍土
 ・コラ半島地下の花崗岩層
 ・ウラル地方南部のMCC(鉱業化学コンビナート放射化学プラント)付近のひん岩
 ・シベリアのMCC付近の花崗岩
 現在、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の具体的な地層処分サイト候補地としてクラスノヤスク地方の花崗岩質岩体が提案されている。
<図/表>
表1 ロシアにおける放射性廃棄物の分類
表1  ロシアにおける放射性廃棄物の分類
表2 ロシアにおける放射性廃棄物の在庫量(1995年)
表2  ロシアにおける放射性廃棄物の在庫量(1995年)

<関連タイトル>
ロシア連邦の再処理施設 (04-07-03-18)
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ロシア連邦による隣接海への放射性廃棄物の海洋投棄 (14-06-01-16)
ロシア連邦による隣接海への放射性廃棄物の海洋投棄 (14-06-01-16)

<参考文献>
(1)Kuznetsov, Yu.V., and V.G. Khlopin, “Management of Low-And Intermediate Level Radioactive Wastes in Russia: Present Status and Outlooks”, In Proceedings of the Fifth International Conference on Radioactive Waste Management and Environmental Remediation, American Society of Mechanical Engineers, 41-44, 1995.
(2)Institute for Energy and Environmental Research (IEER), ”Radioactive Waste Management in Russia and France/ Reflections on the NATO Bombing”, Energy and Security, no. 10. .1999.
(3)Gubanov, V. A., “Problem of Safe Management of Radioactive Wastes in Russia”, In Nuclear Materials Safety Management, 33-48. Boston: Kluwer Academic Publishers.1998.
(4)Sobolev I.A., S.A. Dmitriev, A.S. Barinov, O.G. Pol’skii, E.A. Turlak, and M.I. Ojovan, “Handling of Radioactive Wastes Formed Outside the Nuclear Fuel Cycle”, Atomic Energy 79, no. 12: 840-43, 1996.
(5)Polyakov, A.S., L.A. Mameav, O.L. Masanov, and K.P. Zakharova, “Strategy of Active Waste Management in the Russian Federation”, Nuclear Engineering and Design, 173, 269-75, 1997.
(6)Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of Radioactive Waste: National Report of Russia for the Second Review Meeting, 2006
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