<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フィンランド
<タイトル>
フィンランドの原子力発電開発と原子力政策 (14-05-05-02)

<概要>
 国内エネルギー資源の乏しいフィンランドでは、1970年代後半から80年代前半にかけて、石油代替エネルギーとして原子力開発を進め、2015年1月時点で2つのサイトに4基、合計出力286万kWの原子力発電所が運転中である。2013年の原子力発電による発電電力量は227億kWhで、総発電量に占める原子力の割合は33.3%に達している。TVO社は、2004年1月8日、フィンランドで5基目となるオルキルオト原子力発電所3号機の建設許可を規制当局であるフィンランド放射線・原子力安全センター(STUK)に申請したと発表した。建設計画は、1993年2月に一度政府によって承認されたが、1986年のチェルノブイル事故の影響で1993年9月に議会で否決された過去がある。しかし近年の慢性的な電力輸入、将来の電力需要の増加予想、温室効果ガス削減目標の遵守などを背景として、再度新規原発建設計画が浮上した。TVO社は、2005年8月から、オルキルオト原子力発電所3号機(EPR、グロス出力170万kW)の建設を開始したほか、2020年以降の営業運転開始を目指す2基の新規建設計画を進めている。
 なお、フィンランドでは、2001年5月にオルキルオトを高レベル放射性廃棄物の最終処分予定地として決定している。ポシヴァ社(POSIVA)は2004年6月からは地下特性調査施設(ONKALO)の建設を開始、2020年には本格的な操業を開始する計画である。
<更新年月>
2015年01月   

<本文>
1.はじめに
 フィンランドには、エネルギー資源として水力、泥炭、森林資源等が存在するが、水力資源もスウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国ほど恵まれておらず、石油、天然ガス、石炭などの化石燃料資源にも乏しい。また、フィンランドは気候が寒冷なため暖房需要が高く、製紙・パルプ産業をはじめとしたエネルギー多消費型産業が盛んであることから、エネルギー自給率は30%程度にとどまる。電力及び化石燃料の輸入の大部分をロシアに頼っているため、ロシアへの過度な依存の解消が課題とされている。またフィンランド政府は、欧州委員会が掲げた2020年までの気候変動対策に取り組むため、エネルギー利用の効率化、再生可能エネルギーの拡充等に加え、原子力発電開発の推進も重視している。
2.原子力発電開発の動向
 フィンランドは1970年代の石油危機を契機に、石油代替エネルギーとして原子力開発を進めてきた。1970年代後半から1980年代初めにかけて原子力発電所が建設され、同国では2015年1月末時点で4基・286万kWが運転中、1基が建設中で、更に2基の建設が計画中である。2013年時点の原子力発電による電力量は227億kWh、総発電電力量に占める原子力の割合は33.3%、なお2012年の電力消費量は851億kWhでそのうち約20%が隣国のスウェーデン及びロシアからの輸入電力である(表1参照)。運転中の原子力発電所は、TVO(Teollisuuden Voima Oy)社のスウェーデン・アセアアトム社製沸騰水型軽水炉(BWR、オルキルオト1・2号機(Olkiluoto、OL)、出力各91万kW)と、Fortum(Fortum Power and Heat Oy、旧IVO社)の旧ソ連製加圧水型炉(VVER-440/V213、ロビーサ1・2号機(Loviisa)、各出力52万kW、計装制御システムは西側製)で、1977年から1982年までに営業運転を開始した。また、オルキルオト3号機(EPR、172万kW)を2005年8月から建設中である。フィンランドの原子力発電所の概要を図1に示す。
 なお、オルキルオト発電所(BWR×2基)の運転サイクル期間は12ヶ月、燃料交換用停止期間は1号機が8日間、2号機が18日間で、2013年のオルキルオト1号機の発電電力量は74.7億kWh、設備稼働率は97.1%、2号機の発電電力量は71.63億kWh、設備稼働率は93.1%であった。1、2号機は2010年及び2011年にタービン、発電機、隔離弁、電気開閉装置、海水ポンプなどの交換を行い、出力を20%増強している。一方、ロビーサ発電所(VVER-440×2基)の運転サイクル期間は12ヶ月、1号機と2号機の燃料交換用停止期間はそれぞれ18.9日間と16.5日間で、2013年のロビーサ1号機の発電電力量は40.0億kWh、設備稼働率は92.1%、2号機の発電電力量は40.4億kWh、設備稼働率は93.0%であった。図2図3にオルキルオト及びロビーサ原子力発電所の発電電力量の推移を示す。
 このほか、フィンランド技術研究センター(Technical Research Centre of Finland:VTT)がエスポー市オタニエミ(Otaniemi)地区に出力250kWの研究炉FiR 1を所有している。この研究炉は1962年以来、50年以上にわたり研究、教育、放射線治療、アイソトープの生産等のために運転されてきたが、VTTは2014年10月に廃炉に関する環境影響評価報告書(EIA報告書)を雇用経済省(MEE)に提出し、廃炉手続きを進めている。
3.新規原子力発電所の建設
 TVO社は、2004年1月8日、フィンランドで5基目となるオルキルオト原子力発電所3号機(OL3)の建設許可を規制当局であるフィンランド放射線・原子力安全センター(STUK)に申請したと発表した。同3号機は欧州加圧水型炉(EPR、グロス出力160万kW)で、熱効率37%、設備利用率90%以上、低発電コスト、過酷事故(炉心溶融)の発生確率が100万年に1回、発電所外への大量の放射性物質の放出確率が1000万年に1回と、安全性にも優れている。2005年8月に正式に建設を開始し、フランスのフラマトムANP社が原子炉系統を、ドイツのシーメンス社がタービン系統を供給して、2010年の運転開始を目指している(詳細はATOMICAデータ「フィンランドの原子力発電所建設計画(14-05-05-03)」参照)。2014年末現在、このEPRの建設はフランスAREVAグループの原子炉メーカーAREVA NPがフルターンキー契約で受注し、所有者TVO(フィンランド産業電力)は運転開始後、株主の投資に応じた発電電力を提供する「マンカラ方式」で建設資金の調達を行っている。なお、建設工事は安全性重視で進められており、TVOは2013年2月、営業運転開始を2016年に変更し、建設コストは契約当初の32億ユーロ(約4,200億円、1ユーロ=130円)から63億ユーロ(約8,200億円)に膨らむ見込みである。
 また、フィンランドでは2020年以降の営業運転開始を目指して、2基の新規建設計画が進められている。TVOが進めるオルキルオト4号機(OL4)建設計画は、2008年2月、雇用経済省(MEE)に環境影響評価を提出、フィンランド政府はOL4の建設の許可をTVOに付与することを2010年7月に議会で承認した。OL4は出力100〜180万kWで、2013年1月には国際入札が行われ、AREVA(EPR)、GE日立(ESBWR)、韓国水力原子力(APR1400)、三菱重工業(EU-APWR)及び東芝(ABWR)の5社が応札し、交渉中である。
 一方、ピュハヨキではフェンノボイマ(Fennovoima Oy)社がハンヒキビ1号機の建設を計画している。フェンノボイマ社の株式はロスアトム社傘下のルスアトム・オーバーシーズ社が34%、フィンランドの電力産業企業協会ボイマオサケイティエSF(Voimaosakeyhtio SF)が66%保有する。ハンヒキビ1号機は出力120万kWのロシア型PWR(VVER)であるAES-2006が採用され、2024年頃の営業運転開始を目指している。
 フィンランドでは、エネルギー安全保障への関心の高まりと2020年までの温室効果ガス削減EU加盟国目標の達成(温室効果ガス排出量:1990年比20%削減、再生可能エネルギー比率:38%)から、原子力への支持率が上昇している。世論調査はタンペレ大学により1983年から行われ、チェルノブイル事故直後の1986年の調査では原子力反対派が優位を示したが、年々減少してきた。2011年の福島第一発電所事故発生の直後には反対意見が再び増加したが、現状維持と推進の合計は相変わらず半数を超えている(図4参照)。
4.フィンランドの核燃料サイクル
 オルキルオト原子力発電所向けのウランはオーストラリア、カナダなどから供給されている。オルキルト1号機の燃料はドイツのLingen工場で成型加工されたフランスAREVA社製で、2号機の燃料はスウェーデンのVasteras工場で加工され米国WE社製である。ロビーサ原子力発電所の核燃料はロシアAtomenergoexport社から輸入されている。当初、ロシアとの間で結ばれた契約に従い、使用済燃料はロシアへ返還、再処理されてきた。しかし、1994年のフィンランド原子力法の改正により、1996年以降はロビーサ及びオルキルオト発電所の使用済燃料も含め、フィンランド国内で発生した放射性廃棄物は国内で処分されることになった。図5に放射性廃棄物処分の概念図を示す。
 なお、原子力施設に関する安全規制は、原子力法令、政府決定(一般安全規則)、詳細安全規則の3段階で構成され、使用済燃料の処分に関する一般安全規則は、1999年3月に政府決定された。また、長期安全性と操業安全性に関する安全規制は放射線・原子力安全センター(STUK)により定められている。具体的な実施計画は、実施主体により、放射性廃棄物管理についての概略計画(5年間)と詳細計画(1年間)を作成して雇用経済省(旧、貿易産業省)に提出される。
4.1 放射性廃棄物の発生量
 フィンランドでは、放射性廃棄物の大部分は原子力発電所で発生する。オルキルオト発電所の使用済燃料は年平均45tU、中・低レベル廃棄物は250m3で、ロビーサ発電所の使用済燃料は年平均25tU、中・低レベル廃棄物が50m3である(表2参照)。また、病院、研究機関、産業界等で発生した中・低レベル廃棄物は年間1〜2m3である。現在こうした放射性廃棄物は各集中貯蔵施設で貯蔵されている。
4.2 中・低レベル放射性廃棄物の処理処分
 中・低レベル放射性廃棄物には、イオン交換樹脂、制御棒や炉心機器などの原子力発電所の運転に伴って発生した廃棄物が含まれる。オルキルオト発電所では、イオン交換樹脂はアスファルト固化され、スチール製ドラム缶に収納される。ロビーサ発電所では、イオン交換樹脂や蒸発濃縮物は液体のまま貯蔵施設内のタンクに貯蔵される。使用済炉内構造物は、最終処分されるまでの間、デコミッショニング廃棄物とともに燃料プールかドライ・ピットに保管される。発電所内で発生した低レベル放射性廃棄物は、水圧プレスされ、スチール製ドラム缶に収納され、貯蔵される。金属スクラップなど圧縮できない低レベル放射性廃棄物は、スチール製またはコンクリート製のキャニスタやドラム缶に収納される。図6にロビーサ発電所における放射性廃棄物の処理処分の流れを示す。
4.3 最終処分場建設
 フィンランドでは運転中の原子炉施設4基と建設中・計画中各1基、合計6基で最大9,000トン(原子炉寿命:50〜60年)の使用済燃料が発生すると推定され、使用済燃料は再処理せずに、高レベル放射性廃棄物として、ユーラヨキ自治体(Eurajoki)のオルキルオト、地下約400〜500mの結晶質岩中に処分する直接処分方式をとる。使用済燃料は外筒が銅製、内筒が鋳鉄製の頑丈な二重キャニスタ(円筒形の容器で1キャニスタ当り12体の使用済燃料を収納可能)に封入し、処分される。また処分場の地上部には使用済燃料をキャニスタに封入し、一時貯蔵するための設備が建設される計画である。処分概念は、スウェーデンで考えられている概念(KBS-3概念)を基本として、20年以上の研究開発が行われてきた。なお、最終処分場計画当初、原子炉4基分の使用済燃料の発生量を4,000トンとし、処分坑道の延長距離約40km、処分エリア面積約1.5km2を想定していた。
 建設計画は原子力法に基づき、政府は2000年12月に原則決定、2001年5月に議会承認の結果、オルキルオトが最終処分予定地として決定した。ポシヴァ社(POSIVA)はTVO社とフォルトム社の共同出資で、最終処分に関する研究開発、処分場の建設、操業を行う実施主体として1995年に設立された。2012年に処分場の建設許可申請を行い、2020年には本格的な操業を開始する計画である。また、2004年6月からは詳細なサイト特性調査を行う地下特性調査施設(ONKALO)の建設をオルキルオトで開始している。使用済燃料処分のスケジュールを図7に、オルキルオト原子力発電所サイト配置図を図8に示す。
 フィンランドの原子力法では、原子力施設の許可取得者が放射性廃棄物の処分や貯蔵等を含めた管理全般の費用を負担する責任を有することを規定しており、放射性廃棄物管理費用は、雇用経済省が所管する国家放射性廃棄物管理基金に積み立てられている。2010年時点処分費用の総額は、処分量5,500トンで、約33.2億ユーロ(約4,420億円)であった(1ユーロ=133円で換算、以下同じ)。内訳は、地下特性調査施設(ONKALO)を含めた建設費などの投資費用が約7億ユーロ(約930億円)、操業費が約24.2億ユーロ(約3,210億円)、処分場の閉鎖・廃止措置費用が約2億ユーロ(約270億円)と見積もられている。
(前回更新:2007年8月)
<図/表>
表1 フィンランドの電力需給
表2 原子力発電所で発生する放射性廃棄物
図1 フィンランドの原子力発電所の一覧および配置図
図2 オルキルオト発電所の発電電力量の推移
図3 ロビーサ発電所の発電電力量の推移
図4 フィンランドの原子力発電の割合に関する世論調査
図5 フィンランドにおける放射性廃棄物処分概念図
図6 ロビーサ原子力発電所における放射性廃棄物処理処分の流れ
図7 フィンランドの使用済燃料処分のタイムチャート
図8 オルキルオト原子力発電所サイト配置図

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<関連タイトル>
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(4)−独、スウェーデン、フィンランド編− (05-01-03-17)
フィンランドのエネルギー動向および電気事業概要 (14-05-05-01)
フィンランドの原子力発電所建設計画 (14-05-05-03)

<参考文献>
(1)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2014年版、2014年4月、p.118
(2)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2014年版、2013年10月、フィンランド
(3)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2010年版、2010年3月、フィンランド
(4)フィンランド・エネルギー産業連盟(Finnish Energy Industries):Electricity production, imports and exportsなど、フィンランド・エネルギー産業連盟(Finnish Energy Industries):Finnish energy attitudes 2012、2012年12月
(6)TVO:TVO och den stora utbyggnadens tidevarv 2010 -2020、2011年1月
(7)POSIVA社:Nuclear Waste Management at Olkiluoto and Loviisa Power Plants Review of Current Status and Future Plans for 2010 ?2012 TKS-2009、2010年2月、http://www.posiva.fi/files/1078/TKS2009_Eng_web_rev1_low.pdf
(8)TVO:IAEA・廃棄物処分計画ワークショップ (2011.10.31−2011.11.2)、Management of Spent Fuel and Other Nuclear Waste in Finland - Progress of the Programme since the 1970s
(9)(社)日本電気工業会:フィンランドにおける放射性廃棄物処分の最新事情−RANDEC 欧州原子力調査団に参加して(その3)−、機関誌「電機」(2003年3月号)、p.21-25
(10)公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター:諸外国における放射性廃棄物関連サイトについて、フィンランド(2014年3月)、
http://www2.rwmc.or.jp/pub/RWMHG-2014.pdf
(11)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター:フィンランドの地層処分の状況−諸外国での高レベル放射性廃棄物処分(2013年12月)、
http://www2.rwmc.or.jp/pub/hlwkj201102ed-4.1fi.pdf
(12)IAEA・発電炉情報システム(PRIS):Finland、

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