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<概要>
 1984年、電気事業連合会は、全国の原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物を一括して最終処分するための立地場所を青森県上北郡六ヶ所村に求めるとともに、その事業主体として日本原燃産業(株)(現 日本原燃(株)))を1985年3月に設立した。それ以来、同社により立地調査、設計等が進められ、廃棄物埋設事業の許可(1号廃棄物埋設施設分)を得て、1992年12月から操業を開始した。その後、1997年1月、2号廃棄物埋設施設の増設と1号廃棄物埋設施設の埋設計画変更に係る埋設事業の変更許可を得て、2000年10月から2号廃棄物埋設施設の操業を開始した。2011年1月末現在、1号廃棄物埋設施設には約14.4万本、2号廃棄物埋設施設には、8.2万本の廃棄体が埋設処分(浅地中ピット処分)されている。
 また、日本原燃(株)は、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルの比較的高い廃棄物を六ヶ所で安全に処分(余裕深度処分)することが可能かを確認する予備的調査、更に詳細なデータを取得するための本格調査を2006年3月までに実施し、施設の設置が可能との見通しを得ている。
<更新年月>
2011年02月   

<本文>
1.埋設事業の経緯と安全規制の枠組み
 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの埋設事業のあゆみを表1に示す。電気事業連合会は1984年4月、全国の原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物を一括して最終処分するための立地点を青森県上北郡六ヶ所村に求めるとともに、その事業主体として日本原燃産業株式会社(現 日本原燃(株))を1985年3月に設立した。それ以来、同社により立地調査、設計等が進められ、1988年4月には同施設の廃棄物埋設事業の許可申請(1号廃棄物埋設施設分)が提出された。1990年11月に許可を得た後、1号廃棄物埋設施設の工事を開始し、1992年12月から操業を開始した。1997年1月に、2号廃棄物埋設施設の増設と1号廃棄物埋設施設の埋設計画変更に係る埋設事業の変更許可申請を行い、1998年10月に許可を得た。その後、2号廃棄物埋設施設の工事を開始し、2000年10月から操業を開始した。
 本埋設センターは、現在1号及び2号埋設施設の容量は合わせて8万m3(200リットルドラム缶(廃棄体)40万本相当)であるが、最終的には60万m3(廃棄体300万本相当)を埋設(浅地中ピット処分)することとしている。
 また、日本原燃(株)は、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルの比較的高い廃棄物を六ヶ所に安全に処分(余裕深度処分)することが可能か、詳細なデータを取得するための本格調査を2002年11月に開始し、2006年3月に終了した。
 1985年、六ヶ所埋設事業の許可申請に先立ち、「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方」(図1参照)が、放射性廃棄物埋設施設安全審査指針として原子力安全委員会から示された(「ATOMICA 低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について <11-03-04-07>」を参照)。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
 浅地中処分(トレンチ処分、ピット処分)対象の放射性廃棄物は、最近の原子炉等規制法の改正により第二種廃棄物に区分された。浅地中処分及び余裕深度処分の濃度上限値を表2に示す。1号及び2号廃棄物埋設施設は、ピット処分の濃度上限値以下で規制される。
2.低レベル放射性廃棄物埋設センターの施設概要
2.1 立地の概要
 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターは、青森県の北東部に位置する下北半島南部の上北郡六ヶ所村大石平の標高30〜60mの丘陵地帯に位置している。敷地は面積約340万m2で東西に長く、北側は老部(おいっぺ)川、南側は二又川及び尾駮(おぶち)沼で境されている(図2参照)。
 1号及び2号廃棄物埋設設備群設置位置及びその付近の地質は、下位から新第三紀系中新世の砂岩、凝灰岩類からなる鷹架(たかほこ)層、第四紀系新世の段丘堆積層及び火山灰層、第四紀系完新世の沖積低地堆積層等である。
 1号及び2号廃棄物埋設設備群設置位置及びその付近の水理は、当地が後背丘陵地と沢地形で区分されているため、地下水は専ら降水によって涵養されるのみで、この地下水は主として第四紀層内を流下し、埋設設備建設地内の沢を経て尾駮沼に流入している。
2.2 1号廃棄物埋設施設
 1号埋設施設(図3参照)は、コンクリートピットなどを設け廃棄物を埋設(浅地中ピット処分)する埋設地と、放射性廃棄物の受け入れ施設、放射線管理施設等より構成される附属施設からなる。
 廃棄物埋設地は、透水性の小さな新第三紀の鷹架層を堀り下げて設置される埋設設備及び排水・監視設備と、これらを覆う透水性の小さなベントナイトと土砂の混合層及び通常の土砂層から成る覆土より構成される。
 埋設設備は、1基当り約1,000m3(廃棄体約5,000本相当)の廃棄物を収納できる鉄筋コンクリート造りのピットで、これを40基設置し、合計で約20万本の廃棄体を収納する。埋設設備の外形寸法は、平面が約24m×約24m、高さ約6mで、内部はコンクリート壁で16区画に区画されている。埋設設備の外周壁の厚さは、底版約60cm、側壁約50cm、覆い約50cmで、その内側には約10cmのポーラスコンクリート層が設けられている。さらに、その内側に約40cmのモルタル層が設けられている。廃棄体はその埋設設備に8行5列8段に整然と定置され、その後、空隙をセメント系の充てん材で埋める。
 以上のように、埋設設備は、廃棄体、充てん材、ポーラスコンクリート、コンクリート外壁、ベントナイト混合土、岩盤、天然土壌の多重のバリア構造になっている。また、埋設設備内に水が侵入した場合にも、これを集め、排出できるようになっており、そのための点検路も設けている。
2.3 2号廃棄物埋設施設
 2号埋設施設(図4参照)は、1号埋設施設と同様、コンクリートピットなどを設け廃棄物を埋設(浅地中ピット処分)する埋設地と、放射性廃棄物の受け入れ施設、放射線管理施設等より構成される附属施設からなる。
 廃棄物埋設地は、透水性の小さな新第三紀の鷹架層を堀り下げて設置される埋設設備及び排水・監視設備と、これらを覆う透水性の小さなベントナイトと土砂の混合層及び通常の土砂層から成る覆土より構成される。
 埋設設備は1基当り約2,600m3(廃棄体約13,000本相当)の廃棄物を収納できる鉄筋コンクリート造りのピットで、これを16基設置し、合計で約20万本の廃棄体を収納する。埋設設備の外形寸法は、平面が約36m×約37m、高さ約7mで、内部はコンクリート壁で36区画に区画されている。埋設設備の外周壁の厚さは、底版約80cm、側壁約60cm、覆い約50cmで、その内側には約10cmのポーラスコンクリート層が設けられている。さらに、その内側に約40cmのモルタル層が設けられている。廃棄体はその埋設設備に8行5列9段に整然と定置され、その後、空隙をセメント系の充てん材で埋める。
 以上のように、埋設設備の基本的な構成は1号埋設設備と同様である。
2.4 埋設対象廃棄物と埋設実績
 1号埋設施設で埋設の対象となる廃棄物は、原子力発電所から発生した濃縮廃液、使用済樹脂などの放射性廃棄物を、セメント、アスファルト又は不飽和ポリエステル樹脂で均質・均一に固型化したものである(図5参照)。また、2号埋設施設で埋設の対象となる廃棄物は、原子力発電所から発生した金属類、プラスチック類、フィルターなどの放射性廃棄物をあらかじめ廃棄物の分別・処理を行い、セメント系充てん材を用いて容器に固型化したものである(図6参照)。
 2011年1月末現在、1号廃棄物埋設施設には約14.4万本、2号廃棄物埋設施設には、8.2万本の廃棄体が埋設処分されている(図7参照)
2.5 廃棄体の埋設手順
 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにおける廃棄体受け入れ後の廃棄体検査から埋設終了までの手順の概要を図8(廃棄体検査から埋設地への運搬まで)及び図9(廃棄物定置、モルタル充填、コンクリート打設及び覆土)に示す。
3.次期埋設計画
 日本原燃(株)は、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルの比較的高い廃棄物を六ヶ所で安全に処分(余裕深度処分) することが可能かを確認するため、2001年7月から2002年6月にかけて地質、地下水に関する予備的な調査を行い、施設の設置に関し問題となる部分がないことを確認した。更に詳細なデータを取得するための本格調査を2002年11月から2006年3月にかけて実施し、次期埋設施設の設置深度が50m〜100mと深いことから、調査用のトンネルを掘削し、そこで地質・地盤・地下水の調査・試験を行った。なお、調査孔等における一部の計測は継続して実施している。
(前回更新:2002年10月)
<図/表>
表1 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター のあゆみ
表1  六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター のあゆみ
表2 浅地中処分及び余裕深度処分の濃度上限値
表2  浅地中処分及び余裕深度処分の濃度上限値
図1 低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制
図1  低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制
図2 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの位置
図2  六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの位置
図3 1号廃棄物埋設施設
図3  1号廃棄物埋設施設
図4 2号廃棄物埋設施設
図4  2号廃棄物埋設施設
図5 1号廃棄物埋設施設で対象とする廃棄体
図5  1号廃棄物埋設施設で対象とする廃棄体
図6 2号廃棄物埋設施設で対象とする廃棄体
図6  2号廃棄物埋設施設で対象とする廃棄体
図7 低レベル放射性廃棄物放射性廃棄物埋設センターにおける廃棄体の受入れと埋設の実績
図7  低レベル放射性廃棄物放射性廃棄物埋設センターにおける廃棄体の受入れと埋設の実績
図8 廃棄体検査から埋設地への運搬までの手順
図8  廃棄体検査から埋設地への運搬までの手順
図9 廃棄体定置、モルタル充填、コンクリート打設及び覆土の手順
図9  廃棄体定置、モルタル充填、コンクリート打設及び覆土の手順

<関連タイトル>
放射性廃棄物の処分の基本的考え方 (05-01-03-01)
わが国の低レベル放射性廃棄物の処分に係る経緯 (05-01-03-03)
六ケ所低レベル放射性廃棄物埋設センタ−の敷地境界での被ばく線量評価 (05-01-03-05)
六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの現状 (05-01-03-21)
低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について (11-03-04-07)

<参考文献>
(1)内閣府原子力安全委員会事務局(監修):原子力安全委員会 指針集(改訂12版)、大成出版社(2008年)
(2)原子力規制関係法令研究会:原子力規制関係法令集(2010)、大成出版社(2010年9月)
(3)原子力環境整備センター:放射性廃棄物データブック(1998)
(4)日本原燃(株):六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター その概要と安全性について(1997年6月)
(5)日本原燃(株):「廃棄物埋設事業変更許可申請書」、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター(1997年1月)
(6)日本原燃(株):「廃棄物埋設事業変更許可申請書」一部補正、六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター(1997年9月)
(7)日本原燃(株)パンフレット:六ヶ所ウラン濃縮工場、p.3(1996年3月)
(8)日本原燃(株):低レベル放射性廃棄物放射性廃棄物埋設センター
(9)日本原燃(株):低レベル放射性廃棄物放射性廃棄物埋設センターの状況について、文部科学省 研究計画・評価分科会 原子力分野の研究開発に関する委員会 研究施設等廃棄物作業部会(第2回)、配布資料3、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/028/shiryo/08072410/002.pdf
(10)日本原燃(株):低レベル放射性廃棄物の輸送計画及び実績
(11)日本原燃(株):低レベル放射性廃棄物の次期埋設施設の検討状況、原子力安全委員会埋設分科会資料第1-2号
(12)日本原燃(株):次の計画のための調査・検討
(13)原子力安全委員会:低レベル放射性固体廃棄物の埋設処分に係る放射能濃度上限値について(平成19年5月21日)
(14)原子力安全委員会:低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について(1885年10月)、http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19851024001/t19851024001.html
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