<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 燃料加工
<小項目> 発電所用燃料
<タイトル>
軽水型原子炉のための高燃焼度燃料 (04-06-03-05)

<概要>
 原子力発電の経済性向上の観点から、PWRもBWRも核燃料ウラン濃縮度を高めて燃料取り出し時における燃焼度を高くする、いわゆる高燃焼度化が進められている。
 高燃焼度化された核燃料は炉内滞在期間が長くなるため、ジルカロイ被覆管の腐食量の増加、核分裂生成ガス(FPガス)放出による燃料棒内圧の増加等の現象が注目される。
<更新年月>
2006年11月   

<本文>
1.高燃焼度化の背景
 原子力発電が定着した近年、原子力発電の経済性の向上に努力が傾注されるようになりつつある。軽水炉による原子力発電のコストは、約5.3円/kWh(2004年)である。原子力発電に要する費用は、発電所の建設に費やす資本費、運転に費やす運転保守費および核燃料費の三部分に大きく分けることができる。このうち資本費は、全コストの50〜60%程度の高い比率を占めている。一方、核燃料費は約1.5円/kWhと、全コストの28%程度を占めるにすぎず、また、その内訳には核燃料を取得する費用の他に使用済燃料の再処理費および廃棄物処理・処分費も含まれており、この使用済燃料にかかる費用が核燃料費の半分以上を占めている。このような資本費割合の高いコスト構造から、発電炉の設備利用率を高めることが原子力発電の経済性向上に重要である。発電炉には定期検査が義務づけられてられているため、定期検査期間を短縮し、次の定期検査までの原子炉運転期間(運転サイクル)を長期化することが設備利用率向上に必要である。
 核燃料の濃縮度を増加して高燃焼度化することにより、原子炉の運転サイクルの長期化が可能になる。さらに高燃焼度化によって燃料集合体1体あたり発生するエネルギー量が増加すれば、発生する使用済燃料数を減らせるため、核燃料費の再処理コスト等を低減化することが可能になる。
 このような背景のもと、核燃料の高燃焼度化が進められている。
2.高燃焼度化が軽水炉燃料に及ぼす影響
 軽水炉燃料の高燃焼度化に伴って想定される影響を図1にまとめた。ここでは、これらの影響因子のうちで重要と考えられる、被覆管外表面の腐食量の増加およびFPガス放出量の増加について概説する。
(1)ジルカロイ被覆管外表面の腐食量の増加
 ジルカロイ被覆管の表面は高温の原子炉冷却材との化学反応により微量ながら腐食して酸化膜が生成する。高燃焼度化に伴い原子炉内滞在が長期化するため、被覆管の腐食量が増加して酸化膜が厚くなる可能性がある。
 PWRは原子炉冷却材温度が比較的高く、被覆管の腐食が厳しくなる可能性が考えられるとして広範な研究が進められており、従来のジルカロイ−4の規格にとらわれずに添加元素量を最適化した新合金としてニオブを添加したZIRLO、MDA、NDAが開発され実用化されている。
(2)FPガス放出量の増加
 核分裂生成物のうち、キセノンやクリプトン等のFPガスの一部はリコイルノックアウト、拡散などの機構によってペレット中を移動して、燃料棒内に放出される。燃焼度の増加に伴ってFPガスの発生量は増大し、燃料棒のプレナムに蓄積されるFPガスの量も増大してくる。このため、燃料棒内圧が増加し外圧を超える可能性がある。このような内圧が勝る状態が長期間継続すると、被覆管は外向きのクリープ変形を起こして管径が増加し、ペレットと被覆管のギャップが広がる可能性がある。これを被覆管のリフト・オフと呼ぶが、ギャップが開くことによってギャップ熱伝達が低下しペレット温度が上昇すると、さらにFPガスが放出されて内圧が上昇し、その結果さらにギャップが広がるといったサーマルフィードバックを起こす可能性が指摘されている。
 ペレットは、微細な二酸化ウランの結晶が多数集合して形成されている。図2に示すように、この結晶の大きさ(結晶粒径)が大きくなるとFPガスの放出を抑制できることが近年の研究で明らかになっている。
3.高燃焼度燃料の実用化
(1)PWR用燃料集合体
 従来のPWR燃料は、ウラン濃縮度約4.1%で集合体最高燃焼度48GWd/tであるが、濃縮度を約4.8%に若干増加して集合体最高燃焼度を55GWd/tとする高燃焼度化が2004年から実用化されている。高燃焼度化により燃料の設計条件が厳しくなることに対して同等の設計余裕を確保するために、この燃料にはいくつかの改良が施されている。
 燃料被覆管には、これまでの研究結果が反映され、従来のジルカロイ−4から合金成分のスズの量を減じたり、新たにニオブを合金元素として添加した複数の新合金(MDA、NDA、ZIRLO)が使用されている。
 また、FPガスの放出を抑制するよう結晶粒径を大粒径化したペレットが開発されている。
 この55GWd/t対応のstep2高燃焼度燃料は、2004年より伊方発電所で実用化が開始されている。
(2)BWR用燃料集合体
 現用のBWR燃料は、ウラン濃縮度約3.4%で集合体最高燃焼度50GWd/tであるが、濃縮度を若干増加して約3.8%とし、集合体最高燃焼度を55GWd/tとする高燃焼度化が1999年から実用化されている。BWR燃料では、高燃焼度化による設計条件の変化を詳細に検討した結果、被覆管やペレットの材質的には新たな変更や改良は必要ないとされている。しかし、沸騰状態の原子炉冷却材中で使用するため、濃縮度が若干高くなると原子炉冷却材中の泡の量による反応度の変化のしかた(ボイド反応度係数)が変わるため、ウォータロッドの寸法増、形状変更、本数増加等で燃料集合体中の非沸騰水量を増やす必要がある。このため、構造の大幅な見直しが行われ、燃料棒を従来より細径にして9行9列に配列した9×9型燃料となった。燃料棒やウォータロッドの構造・寸法の差異により2種類があるが、1999年より取り替え燃料として実用化されている。9×9型燃料の構造を図3に示す。
(前回更新:1996年3月)
<図/表>
図1 高燃焼度化の燃料特性に及ぼす影響
図2 種々の結晶粒径ペレットのFPガス放出特性
図3 高燃焼度9×9型BWR燃料における安定性上の特徴

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<関連タイトル>
PWR用ウラン燃料 (04-06-03-02)
BWR用ウラン燃料 (04-06-03-01)

<参考文献>
(1)榎本聰明:わかりやすい原子力発電の基礎知識、オーム社(1996年3月)、p.173−181
(2)日本原子力学会核燃料部会:第11回「核燃料・夏期セミナー」講義テキスト、軽水炉燃料の機械設計・製造(平成8年7月17日?19日)、p.21
(3)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(改定新版)(平成2年7月)、p.120
(4)科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):改定8版原子力安全委員会安全審査指針集、大成出版(1994年10月)、p.773−782
(5)山手浩一:PWRにおける高燃焼度燃料の開発研究、火力原子力発電、Vol.47、No.9(1996)、p.964−969
(6)関西電力:大飯発電所原子炉設置変更許可申請書(1号、2号、3号及び4号原子炉施設の変更)(平成6年10月)
(7)姉川尚史:BWR核熱水力安定性に関する最近の話題、日本原子力学会誌、Vol.38、No.5(1996)、p.348−356
(8)東京電力:福島第二原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(1号及び2号原子炉施設の変更)(平成6年5月)
(9)安部勝洋ほか:軽水炉燃料の照射実績と研究開発状況、核燃料工学−現状と展望−日本原子力学会(1993年11月)、p.95−194
(10)(財)エネルギー総合工学研究所:?を!にするエネルギー講座、やさしいエネルギー解説集、エネルギーの基礎知識、発電方式別の発電コストの比較
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