<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 燃料加工
<小項目> 発電所用燃料
<タイトル>
PWR用ウラン燃料 (04-06-03-02)

<概要>
 関西電力(株)をはじめとした電力会社で用いられているPWR用ウラン燃料の構成、設計および製造について述べる。
<更新年月>
2006年11月   

<本文>
1.PWR燃料集合体の構成
 PWR燃料の仕様を表1−1表1−2に示す。PWR燃料は、圧力158気圧、温度約300℃の条件下で使用される。PWRは一次冷却水に水素を添加して酸素濃度を抑制しているので、水素吸収の小さいジルカロイ−4製の燃料被覆管を用いていたが、55GWd/tUの高燃焼度対応でニオブを含む新合金が用いられるようになった。
 燃料集合体の構成図を図1に、横断面図を図2に示す。PWR燃料集合体は、主として17×17の正方配列を形成する燃料棒264本、制御棒案内シンブル24本、炉内計装用案内シンブル1本および支持構造物として支持格子9個、上部ノズル1個、下部ノズル1個より構成されている。BWR燃料で用いられているチャンネルボックスは使用しない。
 燃料棒の両端とノズルの間にはすき間を設け、燃料棒の熱膨張や成長を許容しうる構造になっている。燃料棒の構成図を図3に示す。燃料棒は、ペレットを1列にしてヘリウムガスで充填した燃料被覆管に入れ、管の両端をジルカロイ−4端栓で溶接して密封した構造となっている。燃料棒には、ペレットより放出された核分裂生成ガスをためるための空所(プレナム)が設けられている。プレナムの体積は、放出される核分裂生成ガスや他のガスによって過大な内圧とならぬよう充分な大きさを持っている。プレナム部には、輸送時または取り扱い時のペレットの移動を防ぐためのコイルばね(プレナムスプリング)が入っている。支持格子は燃料棒の間隔を保持する機能を持っており、その材質は耐食性と強度の点からニッケル・クロム・鉄合金(インコネル718)が用いられている。
 制御棒案内シンブルは、燃料集合体の構造強度を受け持ち、ジルカロイ−4管でつくられている。
 上部および下部ノズルの主要な機能は、集合体の骨格の構成体であると同時に炉心における集合体の位置決め、および冷却水の流路確保である。
2.PWR燃料の構造設計基準
 構造設計における基準は次の通りである。
 (a)燃料最高温度は二酸化ウランの溶融点未満であること。
 (b)燃料棒の内圧は、通常運転時において被覆管の外向きのクリープ変形によりペレットと被覆管のギャップが増加する圧力を超えないこと。
 (c)被覆にかかる応力はジルカロイ−4の耐力以下であること。
 (d)被覆に生ずる円周方向引張歪の変化量は過渡変化に際して1%を超えないこと。 (e)被覆管の累積疲労サイクル数は設計疲労寿命を超えないこと。
 PWR燃料が二酸化ウランの溶融を基準の1つとして採用しているのは次の理由によるものである。
 (a)ペレットおよび被覆管の過大な膨張を防ぐ。
 (b)核分裂生成物の過度の放出あるいは移動を防ぐ。
 (c)ペレットと被覆管の有害な化学反応を防ぐ。
3.PWR燃料の製造
 上記のような構造をもったPWR燃料は、燃料集合体組立工程図(図4)に示す手順で製造される。六フッ化ウラン(UF6)はUO2粉末に転換された後、円柱状のペレットに加工される。加工はプレス機による加圧成型で行われるが、あらかじめ成型しやすいようにUO2粉末に有機物の潤滑剤等を添加・混合し、必要に応じて粉末の性状を改良するため造粒が行われる。従来からBWR燃料では燃料集合体の一部にGd2O3入り燃料棒が使用されてきたが、近年PWR燃料でも一部にGd2O3入り燃料棒を組み込んだ燃料集合体も使用されることがある。
 この集合体用のペレットを加工する場合は、UO2粉末にGd2O3粉末を所定量だけ添加・混合する。加圧成型したペレットは、水素ガスを含む雰囲気の電気炉中で1700℃以上の高温で加熱処理を行うことにより、収縮して緻密なセラミックスとなる。この工程を焼結といい、ペレット中の微小な気孔は5%程度になる。ペレットは燃料棒とするために燃料被覆管中に挿入するが、ペレットと被覆管の間に所定の隙間(ギャップ)を設けるためペレットの外周部を研削してペレット直径を精密に管理する。
 被覆管に下部端栓を溶接した後、ペレットとプレナムスプリングを挿入し、次いで上部端栓を溶接して燃料棒になる。溶接には、不活性ガス雰囲気中でタングステン電極と被覆管溶接部間のアークにより行う、いわゆるTIG溶接が一般的に用いられる。端栓溶接後、上部端栓の貫通孔を通してヘリウムガスを加圧(約30気圧)し、TIG法で燃料棒中に溶封する。溶接不良は核分裂生成物の漏れの原因となるため、溶接部はX線透過検査等でその健全性を確認する。また、ペレットの表面には空気中の湿分が吸着される可能性があり、燃料棒中に密封する前に乾燥しておくことが必要である。
 支持格子に燃料棒および各種案内シンブルを挿入した後、制御棒案内シンブルの上下端に上部および下部ノズルを取り付けて燃料集合体とする。完成した燃料集合体は、燃料輸送容器中に厳重に梱包して原子力発電所へ輸送される。
 わが国では、PWR燃料は関西電力(株)、四国電力(株)、九州電力(株)、北海道電力(株)、日本原子力発電(株)の5電力会社で使用されている。
(前回更新:1998年3月)
<図/表>
表1−1 PWR燃料の仕様(1/2)
表1−2 PWR燃料の仕様(2/2)
図1 PWR燃料集合体の構成図
図2 PWR燃料集合体の横断面図
図3 PWR燃料棒の構成図
図4 PWR燃料集合体の組立工程図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
原子力発電技術の開発経緯(PWR) (02-04-01-01)
世界の核燃料製造会社とその生産規模 (04-06-01-06)
ペレット製造工程 (04-06-02-03)
燃料棒加工工程 (04-06-02-04)
集合体組立工程 (04-06-02-05)
燃料加工における検査工程及び品質保証 (04-06-02-06)
BWR用ウラン燃料 (04-06-03-01)

<参考文献>
(1)関西電力:大飯発電所原子炉設置変更許可申請書(1号、2号、3号及び4号原子炉施設の変更)(平成元年4月)
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(改定新版)、原子力安全研究協会(平成2年7月)、p.74−79
(3)科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室(監修):原子力安全委員会安全審査指針集 改訂8版、大成出版社(1994年10月)、p.773−782、p.953−969
(4)高杉政博:PWR燃料の高性能・高燃焼度化、核燃料工学−現状と展望−日本原子力学会(1993年11月)、p.136−156
(5)萩・山本・松浦:核燃料工学の基礎 第8回 軽水炉燃料の加工、軽水炉燃料の核・熱水力設計、日本原子力学会誌、Vol. 47、No.1(2005年)、p.35−44
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