<大項目> 原子力発電
<中項目> 技術の改良・高度化
<小項目> 軽水炉の改良標準化
<タイトル>
フルMOX-ABWRの炉心設計 (02-08-02-07)

<概要>
 フルMOX−ABWRは、現行のABWRの基本仕様を変えることなく全炉心までMOX燃料を利用することを目指した原子炉である。
 MOX燃料棒の設計基準並びに炉停止余裕最大線出力密度、最小限界出力比等の炉心設計の制限値の考え方は、ウラン燃料およびウラン燃料のみを装荷した炉心(以下「ウラン炉心」という)と同じとし、これらを満足するように、MOX燃料集合体の基本構造、核分裂性プルトニウム富化度、プルトニウム含有率等の燃料仕様を決めている。また、MOX燃料集合体の装荷体数によって炉心特性パラメータの値が変化し、プラント過渡時の決定事象が変わるという安全評価上の特徴がある。
<更新年月>
2000年02月   

<本文>
1.炉心設計の基本的考え方
 フルMOX−ABWRの燃料・炉心設計に当たっては、基本的考え方として、現行のABWRの熱出力(3,926MW)、燃料集合体体数(872体)、制御棒本数(205本)等の基本仕様を変えることなく、MOX燃料を装荷した炉心の特性を従来のウラン炉心のそれと大幅に変えないこととしている。
 MOX燃料は、以下の範囲内で設計している。
(1)MOX燃料の基本構造は、これまで十分な使用実績のある高燃焼度8×8ウラン燃料(高燃焼度ステップ2燃料)と同一。
(2)核分裂性プルトニウム(Puf)富化度は、最も高いペレットで8%まで。
(3)プルトニウム含有率は、最も高いペレットで13%まで。
(4)MOX燃料の集合体最高燃焼度は、40,000MWd/t(ペレット最高燃焼度は約58,000MWd/t)まで。
(5)使用するプルトニウムについては、原子炉級プルトニウムで、軽水炉の使用済ウラン燃料から得られるもの相当。
 MOX燃料集合体装荷割合については、初装荷炉心は0〜264体のMOX燃料集合体を装荷することから始め、段階的にMOX燃料割合を増やして、全炉心(全体で872燃料集合体数)にMOX燃料を装荷(以下「全MOX炉心」という)することを目指している( 図1 参照)。
2.燃料・炉心基本仕様
 ABWRの炉心および燃料の基本仕様を 表1 に示す。また、MOX燃料集合体の燃料棒配置を 図2 に示す。
 MOX燃料集合体は、ペレット材としてUO2−PuO2を使用するMOX燃料棒と、UO2−Gd2O3を使用するガドリニア入りのウラン燃料棒で構成される。MOX燃料棒については、劣化ウラン母材のMOXペレットとし、成型加工性を考慮して軸方向富化度分布は一様としている。ウラン燃料棒については、軸方向にガドリニア濃度分布をつけ、これによりMOX燃料集合体の軸方向出力分布を平坦化している。また、集合体内側と外側の燃料棒出力を均等化するため、熱中性子束が大きい水ギャップ部に近い外側燃料棒でPuf富化度を低くし、熱中性子束が小さい内側燃料棒で高くしている。このため、図2に示す設計では、4種類のPuf富化度の燃料棒を使用している。
 取替燃料集合体平均のPuf富化度およびU−235濃縮度は、それぞれ約2.9wt%および約1.2wt%であり、集合体平均の取出燃焼度は約33,000MWd/tである。
 また、炉内に混在させるウラン燃料集合体は、9×9ウラン燃料(ステップ3燃料)であり、軸方向出力分布平坦化のため燃料棒軸方向に濃縮度分布等を設け、取替燃料集合体の平均濃縮度は約3.8wt%、濃縮度種類は7種類程度(A型燃料の場合)である。
3.燃料・炉心設計解析
3.1 MOX燃料棒の熱・機械設計
 MOX燃料棒の熱・機械設計の条件は以下である。
  最大線出力密度   :44.0kW/m(通常運転時)
  燃料集合体最高燃焼度:40,000MWd/t
  炉内滞在期間    :7年
 MOX燃料棒では、従来のウラン燃料棒に比べて熱伝導率の低下、FPガス放出の増加等によりペレットの温度が高くなる傾向にあるが、 図3 に示すようにペレット中心温度は燃焼を通じて融点に比し十分低い値となっている。また、MOX燃料棒は従来のウラン燃料棒よりFPガス放出、He放出が多く、燃料棒内圧が高くなる傾向にあるが、MOX燃料棒の燃料有効長を従来のウラン燃料棒より短くしてプレナム体積を大きくした設計としているため、 図4 に示すように燃料棒内圧は燃焼末期においてウラン燃料棒と同等となっている。
3.2 核熱水力設計
 MOX燃料を装荷するとその装荷割合に応じてボイド係数実効遅発中性子割合等の炉心特性パラメータがウラン炉心から変化する( 図5 )。全MOX炉心では、ウラン炉心に比べてボイド係数が2割程度負側に移行(絶対値(相対値)は増大)する。ボイド係数の負の値が増大することは、ボイド係数に着目した場合、ボイド量の増加が出力の上昇をより抑制するため、原子炉の自己制御性固有の安全性)が高まることになる。また、実効遅発中性子割合は2割程度小さくなる。ドップラ係数は、9×9ウラン燃料を装荷したウラン炉心に比べて絶対値が若干小さめとなるがほとんど変わらない。
 ABWRでは従来のBWRと比べて、炉内の燃料集合体の間隔を拡大して非沸騰水領域の面積を増加することにより、ボイド係数の絶対値を低減したり、炉停止余裕の向上を図っている。すなわち、MOX燃料の装荷に伴うボイド係数の負の絶対値の増加や、制御棒およびホウ酸水の反応度価値の低下の程度が緩和されるという特徴がある。
 また、MOX燃料集合体の燃焼に伴う中性子増倍率の変化は、 図6 に示すようにウラン燃料集合体より小さいため、燃料集合体相互の影響は、MOX燃料集合体同士の方がウラン燃料集合体同士より小さい。これは、MOX燃料はウラン燃料に比べてどの燃焼度でも均等に出力を発生しやすいことを示しており、このため全MOX炉心の径方向出力分布は、ウラン炉心と比べて、あるいはウラン燃料とMOX燃料の混在炉心と比べて平坦化しているという特徴がある。
 平衡炉心における炉停止余裕、最大線出力密度および最小限界出力比は、全MOX炉心、1/3MOX炉心(MOX燃料集合体装荷体数は360体)およびウラン炉心について、以下のとおりとなっている。
(1)炉停止余裕
 炉停止余裕は、 図7 (a)に示すように、全MOX炉心および1/3MOX炉心ともにウラン炉心同様、1%Δk以上確保されている。
 MOX炉心ではウラン炉心に比べ制御棒価値が低下する傾向にある。しかしながら、BWRの制御棒は、燃料集合体の外側の水領域に挿入されるので、制御棒の中性子吸収能力は燃料の組成の違いによる影響を受けにくい。ABWRでは、この水領域をより広くしており、全MOX炉心においても、全制御棒価値はウラン炉心に比べてわずかに低下する程度である( 図8 参照)。さらに、炉停止余裕という観点からは、最大反応度価値を有する制御棒が完全に引き抜かれた状態を想定しているため、全MOX炉心のように径方向出力分布が平坦化されている炉心ではその最大制御棒価値が小さく、最大価値の制御棒を除くその他の制御棒価値が大きくなっている(図8参照)ので、図7(a)に示したように、全MOX炉心の炉停止余裕はウラン炉心より若干大きいか、ほとんど変わらない値となっている。なお、フルMOX−ABWRでは一部の制御棒については濃縮ホウ素を使用することとしているが、ここではすべての制御棒が従来の天然ホウ素制御棒であるとして炉停止余裕の評価がなされている。
 ホウ酸水注入系の停止能力という観点からは、全制御棒価値が全MOX炉心でわずかに低下したように、注入されたホウ酸水の反応度価値が全MOX炉心ではウラン炉心に比べて若干低下するので、これを補償するためにホウ酸水貯蔵タンク容量を増加して所要停止能力を確保することとしている。
(2)最大線出力密度
 運転時の最大線出力密度は、図7(b)に示すように、全MOX炉心および1/3MOX炉心ともにウラン炉心同様、運転制限値を十分満足する小さな値となっている。全MOX炉心では、プルトニウムを多く含有することから中性子増倍率の燃焼変化が緩やかとなり、最大燃料集合体出力が小さいので、最大線出力密度は小さくなる傾向である。なお、ウラン炉心での最大線出力密度が概して最も小さくなっているが、これは、ウラン燃料集合体が9×9ウラン燃料であって燃料棒本数がMOX燃料集合体よりも多いためである。
(3)最小限界出力比
 最小限界出力比(MCPR:minimum critical power ratio)については、図7(c)に示すように、運転時のMCPRは大きな値を示しており、全MOX炉心および1/3MOX炉心ともにウラン炉心同様、運転制限値を十分満足している。全MOX炉心で運転時MCPRが大きくなり、制限値に対する余裕が大きいのは、プルトニウムを多く含有することから中性子増倍率の燃焼変化が緩やかとなり、最大燃料集合体出力が小さくなることによる。なお、全MOX炉心でのMCPR運転制限値は、プラント過渡時のΔMCPRが全MOX炉心サイクル末期において大きくなる関係上、サイクル燃焼度約9,000MWd/t以降ではウラン炉心等に比べて大きな値としている。
4.安全評価上の特徴
 安全解析は、表1に示した条件をベースに実施している。
 MOX燃料を装荷した炉心では、MOX燃料装荷体数が増えるに従ってボイド係数がより負側になるという特性がある。このため、プラント過渡時においてボイド量が減少してMCPRが厳しくなる事象は、ウラン炉心および1/3MOX炉心では「給水加熱喪失」であるのに対し、ボイド係数がより負側である全MOX炉心のサイクル末期においてはΔMCPRの大きい「負荷の喪失」となり、プラント過渡時の決定事象が変わってくる( 図9 参照)。このため、MOX燃料装荷割合が1/3を超えるMOX炉心においては、サイクル末期のMCPR運転制限値を若干高くする(図7(c)参照)ことにより安全性を確保している。
 また、実効遅発中性子割合についても、MOX炉心においてはMOX燃料装荷体数が増えるに従って小さくなるという特性がある。しかしながら、反応度が異常に投入される「制御棒落下」時においても、燃料エンタルピー変化の最大値は、ドップラ効果が効いて、MOX炉心でもウラン炉心でもあまり変わらない結果となっている( 図10 参照)。
<図/表>
表1 炉心及び燃料の基本仕様
図1 段階的なMOX燃料の装荷
図2 MOX燃料集合体の燃料棒配置
図3 ペレット中心温度の燃焼度依存性
図4 燃料棒内圧力の燃焼度依存性
図5 MOX燃料集合体装荷割合に対する炉心特性パラメータの変化
図6 中性子増倍率の燃焼変化
図7 取替炉心の設計例
図8 各炉心の制御棒価値
図9 MOX燃料集合体装荷割合に対するΔMCPRの変化
図10 制御棒落下時の燃料エンタルピーの変化(平衡炉心・低温状態)

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<関連タイトル>
ABWR燃料 (04-06-03-03)

<参考文献>
(1)濱 輝雄:大間フルMOX−ABWRの炉心設計、原子力eye、Vol.45, No.9, p.64−67,(1999)
(2)木下 豊ほか:ABWRにおけるフルMOX炉心の設計、火力原子力発電、Vol.50, No.2, p.62−69(Feb.1999)
(3)原子力安全委員会 原子炉安全基準専門部会:改良型沸騰水型原子炉における混合酸化物燃料の全炉心装荷について(平成11年6月)
(4)電源開発:大間原子力発電所原子炉設置許可申請書(平成11年9月)
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