<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 新しい潮流
<タイトル>
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(4)電力 (01-07-06-04)

<概要>
 IEAは米国ブッシュ政権が2001年に発表した「国家エネルギー政策」に基づいて米国のエネルギー政策のレビューを実施した。このうち電力に関するレビューの結果をまとめた。
 米国には、民間、政府系、または協同組合系の公益事業者で構成される5000を超える電気事業者があり、他に発電のみを行う独立系生産者も増加してきている。公益事業者は統合によって少数化、大型化の傾向にある。その発電容量は全体として減少し、逆に独立系生産者(非公益事業者)の発電容量が増加しつつある。1999年の全発電量を電源別に分けると石炭火力51%、原子力20%、天然ガス16%、再生可能エネルギー11%であった。水力を除く新たな再生可能エネルギーによる発電は、大部分が非公益事業者によるものであり、1999年に非公益事業者の発電設備容量の10%、発電量の15%を占めている。連邦エネルギー規制委員会(FERC)が卸電力の規制、州が小売り電力の規制に当たり、公正な競争を保証して電力市場の自由化を進めようとしてきたが、カリフォルニア電力危機が自由化への取り組みを中断または逆行させる大きな影響を与えた。IEAレビューチームは、FERCの電力産業再編構想は妥当であるが、連邦と州とが一体的、整合的に改革を進めるための適切な施策を立案するメカニズムが必要であると指摘している。
<更新年月>
2002年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
はじめに
 米国ブッシュ政権はエネルギー政策を最優先課題の一つに位置付けており、2001年5月に「国家エネルギー政策」(NEP:National Energy Policy)を発表した。このNEPを基に、IEA(国際エネルギー機関)は米国のエネルギー政策のレビューを2002年に実施した。ここでは、IEAのレビュー報告書<参考文献>(1)に基づき、電力に関するレビューの結果をまとめた。
1.電力産業の構造
 米国には民間公益事業者、政府(主に自治体、一部連邦政府)系あるいは協同組合系の公益事業者で構成される5000を超える電気事業者があり、他に発電のみを行う独立系生産者も増加しつつある。(注:以下、独立系生産者(Independent Power Producers)と非公益事業者(Non-Utilities)はほぼ同義である。)
 民間公益事業者のうち、約60%は発電から販売までのすべての事業に携わる伝統的な発電−送電−配電事業者であり、また約30%は送電施設を持たない事業者である。州及び自治体による公営電気事業者の3分の2は配電施設だけ所有し、5分の1は発電と配電の両施設を所有している。また、協同組合系の電気事業者の4分の3以上は配電施設だけを所有している。非公益事業者は発電のみを行っている( 表1 )。
 1998年に民間公益事業者の規模は、設備容量と発電量の約3分の2、小売販売の4分の3に当たる。独立系生産者は全発電容量の8分の1を持ち、発電容量の増加分の5分の4以上を引き受けているが、発電した電力の大部分は電気事業者の所有する送電・配電施設を通過するので、ほとんど小売をしていない。1999年までに非公益事業者の規模は発電量の15%、設備容量の21%に達した。卸電力市場では、購入の55%近くが民間公益事業者によるものである。民間公益事業者は、小売り用の電力の23%を非公益事業者(独立系生産者)から購入しているが、政府系、協同組合系の公益事業者は非公益事業者からほとんど購入していない( 表2 )。
2.電力取引
 1998年には、電力の正味輸入量は米国の全小売り電力量の1.2%相当であった。しかし、輸入依存度がもっと大きい地域もあり、最も大きな地域では小売り電力の6.5%相当である。
 総電力輸入量は過去数年間一定であり、1955年に429億kWh、1996年に435億kWh、1997年に430億kWh、1998年に395億kWhであった。しかし、総電力輸出量は増加し、1995年の36億kWh、1996年の33億kWhから、1997年に90億kWh、1998年には127億kWhに達している。輸出が増加した地域は主に西部電力系統、オハイオ渓谷であった。
 カナダからの輸入量は1998年の総輸入量の99%を占めている。カナダからの輸入量は、カナダにおける降雨量、すなわち水力発電量に依存するので、年ごとに変化する。
3.市場の動向
3.1 電気事業者の電源構成
 電気事業者が運転する発電設備の容量は急速に減少しつつあり、1999年には出資引き揚げや非公益事業者への発電プラント売却によって顕著に落ち込んだ。全発電容量は1995年から1999年の期間に9.5%減少し、1998年から1999年の一年間だけで6.9%減少した。
 電力のベースロードを賄う石炭火力と原子力発電は、設備容量のシェアに比べて発電量のシェアが大きいが、ピーク需要を賄う天然ガス火力と石油火力は設備容量のシェアに比べて発電量のシェアがはるかに小さい。発電量全体に占める原子力のシェアは、公益事業者の所有する設備容量の減少にもかかわらず増加してきた。これは、きわめて高い設備利用率によって、発電設備を有効に利用してきたためである。全体として、公益事業者による発電量は、1995年から1999年の期間に6%増加した。この期間に原子力による発電量は7.7%増加し、石炭火力の6.9%減及び天然ガス火力の3.6%減と相殺している。
3.2 非公益事業者の電源構成
 非公益事業者の運転する発電設備の容量は、独立系生産者による新規発電所の建設と公益事業者の出資引き揚げ(採算性の悪い発電所の閉鎖または売却)の趨勢の下で、急速に増加してきた。1995年から1999年の期間に138%増加し、この増加の71%が1999年におけるものである。2001年半ばには、公益事業者の全発電設備容量の4分の1が出資引き揚げの対象(引き揚げ済み、またはその途上)となっている。
 水力発電を除く新再生可能エネルギーによる発電(新再生可能エネルギー発電)、すなわちバイオマス、廃棄物、地熱、風力発電の大部分は非公益事業者によるものである。1999年には、新再生可能エネルギー発電が非公益事業者の全設備容量の10%を占めている。同年には、非公益事業者が初めて原子力発電設備を取得した。
 石炭による発電は1995年から1999年の期間に115%増加し、1999年には84%増加した。天然ガスによる発電も大幅に増加し、上記期間に50%、1999年には24%増えている。
 水力、地熱、及び風力を用いた再生可能エネルギー発電は、いずれも1999年に50%程度増加したが、バイオマスと太陽発電は上記期間を通して一定である。新再生可能エネルギー発電は、現在では非公益事業者の発電量の15%に達している。
3.3 電力産業全体の電源構成
 公益事業者と非公益事業者を含む電力産業全体としては、全発電設備容量が1995年から1999年の間に年平均1%の割合で増加した( 表3 )。増加の大部分(全体3.9%のうち2.8%)は1998年から1999年の間に起こった。全設備容量に占める非公益事業者のシェアは1995年の7%から1999年には20.7%に増えている。
 全発電量は1995年から1999年の間に年平均2.6%の割合で増加した( 表4 )。1999年の増加率(3%)はやや大きかった。全発電量に占める非公益事業者のシェアは増加し、1995年に11.2%、1998年に11.6%、1999年に15.2%であった。1999年の発電量の内訳は、石炭51%、原子力20%、天然ガス16%、再生可能エネルギー11%、石油3%であった。
3.4 設備利用率
 電力産業の設備利用率は増加した。これは電力市場の競争の活発化によって誘発された効率向上を反映したものと思われるが、また、ピーク需要に対する発電設備容量の余裕(供給予備力)が減少したためでもある( 表5 )。
3.5 消費
 電力消費量は全ての部門で着実に増加している( 図1 )。電力消費量は過去にはGDPと連動していたが、最近ではこのリンクはあまり顕著でない。1998年と1999年には電力消費の伸びはそれぞれ2.8%及び1.7%であり、GDPの伸びは3.1%と3.6%であった。
3.6 価格
 米国の産業及び家庭部門の電力価格は、それぞれ 図2 及び 図3 に示すように、他のIEA諸国と比べて相対的に低い。これらの図で、米国の価格には税金を含んでいないが、税金を含めても変動は小さい。図中の価格が年ごとに変動している原因の一つは、為替レートの変動である。
4.規制
4.1 連邦エネルギー規制委員会(FERC)
 FERC(The Federal Energy Regulatory Commission)は卸電力価格、サービス基準、州間取引での送電を監督する。主な役割は、公益事業者が要求する卸と送電の価格が公正か、不当な差別、優遇はないか監視すること、及び電気事業者の共同出資や共同契約を検査することである。
4.2 規制における最近の動向
 連邦電力法と1992年エネルギー政策法の下で、FERCは送電価格とアクセス権の差別解消を推進した。FERCは卸電気市場の再構築に向けて、1996年に規則888及び889を発行した。規則888は、送電線への自由なアクセスを再構築するルールであり、FERC管轄下の送電事業者に、自らが送電施設を使う時と同等の条件で第三者にサービスを提供するよう、非差別的な料金表を提出すること、公益事業者に送電事業を電力市場事業から機能的に切り離すことなどを要求するものである。
 規則889の下で、自由アクセス同時情報システム(OASIS)が設立された。公益事業者は送電ネットワークに関するリアルタイムの情報をここに掲示しなければならない。公益事業者が託送依頼を受けた際に取るべき手続きを定め、またOASISに掲示する情報の基準についても提案している。
 これらの二つの規則によって前進したが、市場競争を妨げる障害として、依然として独立生産者に対する差別、送電網拡張の責任所在が不明確、などが残されている。
 FERCは1999年12月に規則2000を発行し、地域送電機関(RTO:Regional Transmission Organization)の自発的形成を奨励した。これは送電システムの管理を、縦割りに統合された公益事業者から少数のRTOに移転しようというものである。これによって差別しようという経済的動機は解消される。さらに、地域的事業体はシステム全体の混雑のコストを送電価格に組み入れ、料金表のパンケーキ現象を解消し、効率的に送電網拡張を企画することができる。
 規則2000は、RTOが市場参加者から独立し、管理下の全ての送電施設に対する運営責任を持つこと、管理下の送電網の短期的信頼性を維持するための責任を持つことを要求している。また、RTOの管理地域が、一つの連続した地理的範囲であり、電力系統の中で相互接続の多い部分、既存の地域的送電事業体、既存の管理エリアを包含することを要求している。
 RTOの自発的形成が遅すぎるとの判断で、FERCは2000年7月に一連の指令を出し、北東部、南東部、中西部、及び西部を管理する四つのRTOを設立する意向を示した。2001年秋にFERC委員長は市場設計の標準化を奨励し、RTOへの支援を強化するために、FERC管轄下のすべての公益事業者はRTOに参加するか、市場ベースの料金設定を行う許可を失うかの選択すること、運営中のRTOに所属していない事業体を含むような合併を許可しないこと、事業者がRTOへの不参加を選択する場合には送電料金表の再検査を行うことなどを提案した。さらに、FERCは2001年11月に追加的ガイドラインを発表し、発電会社の規模がその供給区域内の市場の電気料金を支配できるほど大きな場合には、その発電会社に対して価格管理を行うことを表明した。
 このレビューでは取り上げられていないが、政策では、送電システムの信頼性とそれに起因するピーク時の電気料金の高騰が問題視されている。ピーク時に余裕を持たせる追加の設備容量の確保を考えている州もある。このため、州間送電システムの信頼性を改善する適切な組織、技術開発、国の電力網の可能性等について検討するよう勧告している。
5.論評
5.1 市場の動向
 競争は、米国の電力供給産業の構造に幾つかの重要な効果をもたらした。非公益事業者へのシフトは、電気事業者以外の企業による発電プラントの建設、公益事業者の出資引き揚げによるものである。2000年半ばには、85GWの新しい独立系発電施設が計画中、または建設中とされる。大型公益事業者の出資引き揚げも奨励されてきており、2010年までに全発電容量の半分が出資引き揚げの対象となろう。これは、かなりの容量が非公益事業の発電会社によって建設されるとともに、電力部門の効率的競争の広い土俵ができることを意味する。
 一方、残りの民間公益事業者は統合し、その発電設備容量のシェアは増加しつつある。出資引き揚げは競争を促進する効果があったが、同時にこれに逆行する効果、すなわち民間事業者の急速な統合と大型化も進めた。民間事業者の数は減少し、代表的事業者の規模は拡大した。
5.2 電力市場再編の進展
 FERCが卸電力を規制し、各州が小売り電力を規制する中で、電力価格の高い州を中心に約半数の州が小売り市場の自由化に取り組んできた。しかし、カリフォルニア電力危機の問題は、各州の市場再編への取り組みを中断、または逆行させるような影響も与えている。RTOは地域電力市場を育成する適切な手段であり、今後の市場再編の基盤になるものと思われるが、こうしたFERCの構想が成功するためには州の規制者と利害関係者が共同歩調を取る必要がある。FERCは2000年7月規則が唐突だったために州の規制者との間に溝が生じたことを認めている。市場再編の施策について諮問し、適切な施策を立案するメカニズムがあれば、再編への取り組みを成功させることに役立つだろう。
<図/表>
表1 米国の電力産業の構造
表2 米国の卸売市場での他の公益事業者及び非公益事業者からの電力購入
表3 米国の1995年及び1999年の発電設備容量
表4 米国の1995年及び1999年の発電量
表5 米国の発電設備の設備利用率(%)
図1 米国の部門別電力消費
図2 IEA諸国の産業部門電力価格(US$/kWh)
図3 IEA諸国の家庭部門電力価格(US$/kWh)

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<関連タイトル>
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(1)政策の概観 (01-07-06-01)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(2)エネルギーと環境 (01-07-06-02)
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IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(5)再生可能燃料および非在来型燃料 (01-07-06-05)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(6)原子力 (01-07-06-06)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(7)石油、ガスおよび石炭 (01-07-06-07)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(8)エネルギー研究開発 (01-07-06-08)

<参考文献>
(1) Energy Policy of IEA Countries−The United States− 2002 Review,OECD/IEA,2002
(2) National Energy Policy-Reliable, Affordable, and Environmentally Sound Energy for America’s Future (May 2001):
(3) Annual Energy Outlook 2002,DOE/EIA 0383(2002),Dec 2001:http://www.eia.doe.gov/oiaf/aeo/pdf/0383(2002).pdf
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