<本文>
電力供給計画は、電気事業法第29条に基づき、毎年3月末までに一般電気事業者10社及び卸電気事業者2社から、経済産業大臣に届出が行われる。各社の2005年度供給計画とその中の電源構成計画について述べる。
(1)北海道電力
2004年度の販売電力量の実績は、夏季の高気温、オール電化住宅の普及拡大、商業施設の新規出店、鉄鋼の生産増などにより、302億kWh(対前年度比2.2%増)となった。2005年度は、商業施設を含む民生用が引き続き堅調に推移するものの、産業用は生産活動が本格回復までには至らないとみられることから、303億kWh(対前年度比0.7%増)を見込んでいる。中長期的には、民生用は堅調な伸びとなり、産業用については低めの伸びを想定している。2014年度の販売電力量は339億kWh、2003年度から2014年度までの気温補正後の年平均伸び率は1.2%と想定している。
電源計画は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性、環境適合性などに配慮し、バランスの取れた電源構成を目指すとともに、効率的な流通設備の形成により、電気を低廉かつ安定的に供給する。水力は、ピーク供給力として優れた純揚水の京極発電所1号機を2015年10月に運転開始する。一般水力の新忠別発電所は、北海道開発局が建設中の忠別ダムに発電部門として参加するもので、2006年10月の運転開始を目指す。原子力は、泊発電所3号機の2009年12月の運転開始を目指す。電源計画を
図1 に示す。
(2)東北電力
同社が今回策定した2005年度供給計画は、電力需要について、中長期的な経済情勢や省エネの進展などを勘案し、2003年度から2014年度までの年平均増加率(気温・うるう補正後)を1.0%と、前回計画と同様の低位な伸びになるものと想定した。このため、設備計画については、安定供給と供給信頼度の確保を前提に、競争進展に伴う需要変動や環境規制の強化など、事業環境の変化に対する柔軟性確保を基本としながら、「スリムで効率的な設備形成」を目指す。水力の新規開発地点としては、「森吉発電所」(1万600kW)を計上。2007年8月の
着工、2011年5月の運転開始を目指す。火力では、仙台火力の高効率ガスコンバインドサイクル(40万kW級)へのリプレースを計画している(2010年7月運転開始)。原子力については、東通1号(110万kW)が2005年10月に運転開始を迎える。電力需給計画(発電電力量)を
図2に示す。
(3)東京電力
2005年度の販売電力量は、対前年比0.9%減の2835憶kWhと2年ぶりにマイナスとなる見通しである。2003年度から2014年度までの平均伸び率は1.2%(気温うるう補正後)を見込んでいる。2005年度の最大電力は、暑さが平年並みの場合、前年並みの6150万kWを見込んでいる。長期的には、家庭、業務用を中心とした冷房需要の増加があるものの、省エネ可能な
蓄熱システムの普及促進などにより、2003〜2014年度は平均で0.9%(気温一過性要因補正後)の伸びを見込んでいる。電源開発は、安定供給と
エネルギーセキュリティの確保を基本に、経済性、運用性および環境適合性などに配慮し、原子力を中核とした電源の
ベストミックスを着実に推進することにしており、今後10年間に983万kWの電源を開発する計画である。主な計画を電源別にみると次の通り。(年月は運転開始年月)
・ 原子力:福島第一7号(138万kW)2011年10月、8号(同)2012年10月、東通1号(138.5万kW)2013年度以降、2号(同)2015年度以降。
・ 石炭火力:常陸那珂2号(100万kW)2010年度以降、広野6号(60万kW)2010年度。
・ LNG火力:富津4号系列(152万kW)2008年7月、2009年7月、2010年7月、川崎1号系列(150万kW)2007年7月、2008年7月、2009年7月、川崎2号系列(150万kW)2014年度以降。
・揚水式水力:葛野川(160万kW)2015年度以降、神流川(282万kW)2015年度以降。(
図3 東京電力電源設備計画参照)
(4)中部電力
中部電力の2004年度の販売電力量は、対前年度比3.7%増の1267億kWhとなった。長期的には、2003年度の1222億kWhから2014年度には1377億kWhと、年平均で1.1%(気温閏補正後1.1%)の伸びを想定している。家庭用需要は、省エネ対策が進展するものの、住環境の充実志向を背景に安定した伸びが見込まれる。業務用需要は、高齢化社会に向けた医療・福祉施設の充実やライフスタイルの変化に対応した商業活動の拡大などから堅調に伸びる見通し。産業用需要は、今後の伸びは低いとみている。最大電力は、2014年度は2828万kWと、2003年度から2014年度までの平均伸び率は1.0%(同)とみている。
中部電力は、安定供給と球環境保全の両立を図るため、電源開発を着実に推進する。設備の形成にあたっては、新技術・新工法の積極的な活用、仕様の標準化など、あらゆる側面からコストダウンを進める。
火力発電は、クリーンエネルギーであるLNGを燃料とした高効率コンバインドサイクル発電方式の発電所を開発する。新名古屋火力8号系列(145.8万kW)は08年4月、上越火力1号系列(118万kW)は2012年7月、同2号系列(118万kW)は2017年にそれぞれ運開する予定である。石油火力は、武豊火力5号(100万kW)は2015年度以降に運開する予定。
水力発電は、揚水発電が負荷変動への追従性がよいことから、ピーク供給力とする。このため川浦(かおれ)水力(130万kW)を2021年度以降に運開する。原子力については敦賀原子力3・4号機の発生電力及び大間原子力発電の発生電力を他社と共同受電する。(
図4 中部電力電源設備および発電電力量構成参照)
(5)北陸電力
供給計画によると、2004年度の販売電力量は対前年度比4.9%増の268億kWh、2005年度は前年よりも4億kWh減、(1.5%減)の264億kWhを予定している。長期的には、2010年度275億kWh、2014年度286億kWhを想定。2003年度から2014年度までの年平均増加率は1.0%(気温閏補正後1.0%)を見込んでいる。最大電力は、2004年度は512万kW、2005年度は前年度比2.34%増の524万kWを予定している。長期的には2010年度549万kW、2014年度571万kWを想定している。2003年度から2014年度までの年平均増加率は1.4%(同1.0%)。電源開発・系統整備計画では、志賀
原子力発電所2号機の建設を着実に推進するとともに、系統規模の拡大に対応して基幹系統を強化する。同2号機の出力は135.8万kWで、営業運転開始は2006年3月を予定している。
同社の電力量構成は、志賀原子力発電所2号機の稼動を機に、発電時にCO
2を排出しない「カーボンフリー電源」(原子力、水力、
新エネルギー)は、2004年度43%から、2010年に69%、2014年度には73%を占めることになる。地球にやさしい電力会社として、地球温暖化防止に大きく貢献するだけではなく、化石燃料価格の影響を受けにくい電源構成となる。
図5 北陸電力発電電力量構成比参照。
(6)関西電力
関西電力の2005年度の販売電力量は、対前年度比3.0%減の1406億kWhを想定。今後の需要想定は、2003年度の1402億kWhに対して2014年度は1521億kWh、年平均伸び率はO.7%(気温閏補正後0.8%)と想定している。省エネルギーのさらなる進展、電力多消費型から寡消費型への産業構造の転換やエネルギー・電力市場における競争の激化などマイナス要因は少なくないが、アメニティ志向の高まりや情報化の進展、さらには販売活動の強化などプラス要因も多く、電力需要は民生分野を中心に緩やかに増加していくものとみている。新規電源の開発については、燃料の多様化を図る観点から、舞鶴発電所(石炭)の開発を進めている。御坊第二発電所は計画の中止に伴い、開発計画から削除している。
関西電力では2005年度の供給計画において、次の3項目の重点目標を設定した。
イ.安全・安定供給の確保
ロ.エネルギーセキュリティの確保
ハ.環境保全活動の展開
図6 関西電力電源構成比率参照。
(7)中国電力
中国電力の2004年度販売電力量は、2003年度実績581億kWhに比べて579億kWhを想定している。一般住宅需要は、省エネルギー機器の普及が進むと見られるものの、情報化や高齢化の進展、快適性志向の高まり、電化住宅の普及拡大などにより、今後も着実に増加する見込み。一方、産業用需要は、素材型産業の生産の伸び悩みなどから、ほぼ横ばいで推移するものとみており、中長期の見通しでは、2003年度から2014年度までの年平均伸び率を1.0%(気温など補正後1.0%)と想定している。2014年度の最大需要電力は1265万kW、2003年度から2014年度までの年平均伸び率は1.6%(同補正後1.0%)と想定している。なお、
年負荷率は、産業用需要の好調な生産を反映し高水準を見込んでいるが、長期的には生活関連需要の増加や産業用需要の伸び悩みなどから2014年度には59.6%程度に低下するとみている。水力では新帝釈川を2006年6月に、川平第二を同年9月に営業運転開始。火力では水島3号(石油)を2006年4月に、水島1号(石炭)を2009年4月にLNG転換。原子力では島根原子力3号を2011年12月に、上関原子力1号を2014年度に営業運転開始する。また、2012年3月に電源開発(株)大間(原子力:9.3万kW/138.3万kW)から受電を開始する。
図7 中国電力電源構成比率(他社受電分を含む)参照。
(8)四国電力
四国地域のエネルギー供給を担う企業として、持続的発展が可能な社会システムの構築に向けて、地球温暖化防止、地域環境保全、循環型社会形成への取り組みを推進し、あらゆる事業分野において
環境負荷の継続的低減をはかる。地球環境にやさしいLNGを導入するとともに、2005年7月から西条発電所における木質バイオマス混焼を本格的に開始するほか、引き続き風力発電や太陽光発電などの新エネルギーの普及拡大に努める。さらに発電・輸送効率の向上、未利用エネルギーの活用、電力有効利用に向けたコンサルティング活動など、環境負荷の低減につながる諸施策を積極的に推進する。また、補完的措置として、
世界銀行炭素基金や日本温暖化ガス削減基金への出資、海外での植林事業の実施などの取り組みについても着実に進める方針である。
原子力発電所の
設備利用率向上は、コストダウンだけでなく、CO
2排出量の削減にも寄与することから、引き続き伊方発電所の安全・安定運転を図り、年間設備利用率の向上に努める。これまでの設備利用率は2002年度87.9%、2003年度84.9%、2004年度は77.7%である。
図8 四国電力電源設備計画参照。
(9)九州電力
九州電力の2004年度の販売電力量は、夏季の気温が前年より高めに推移したことで冷房需要が増加したことに加え、オール電化住宅の普及拡大、大型店舗の出店増などのほか、産業用ではIC関連企業の生産増などから、対前年度比3.8%増(気温など補正後2.8%増)の802億kWhとなった。2005年度は、個人消費の緩やかな回復に加え、産業用ではIC関連企業などの高水準の生産が予想されるが、前年猛暑の反動が見込まれることなどから、801億kWh、対前年比0.1%減を見込んでいる。長期的には、人口の減少や省エネの進展などがあるものの、安定的な経済成長やアメニティ指向の高まり、オール電化住宅の普及拡大などにより、民生用需要を中心に緩やかながらも着実な増加が予想されることから、2003年度から2014年度までの年平均伸び率は0.9%(同1.0%)を見込んでいる。2004年度の最大電力は、1609万kW、対前年伸び率3.4%(同0.3%)だった。2005年度については、1613万kW、対前年伸び率0.2%(同0.8%)を見込んでいる。長期的には販売電力量の安定した増加などから、2003年度から2014年度までの年平均伸び率は1.2%(同1.0%)を見込んでいる。
経営効率化の一環として、設備投資の効率化に取り組んでおり、2005〜2009年度の設備投資額は、年平均1900億円にする計画。2004年度は、設計・施工面のコストダウンなどの効率化に取り組んだが、台風災害に伴う復旧対策の実施等により、昨年計画の2.4%増、2040億円となる見込み。原子力の設備利用率の高水準維持や火力発電所の総合熱効率の維持・向上など設備運用の効率化にも努める。原子力発電所では安全安定運転の継続、定格
熱出力一定運転の実施、予防保全対策の徹底などにより、設備利用率の高水準維持に努める。2004年度の推定設備利用率は85.6%、2005年度は84.4%を見込んでいる。火力は、大分発電所など高効率発電所の高稼動維持などにより、2004年度の発電端総合熱効率は推定で40.8%、2005年度は41.1%を目指す。
図9 九州電力電源多様化計画(他社受電分を含む)参照。
<図/表>
<関連タイトル>
平成17年度電力供給計画 (01-09-05-22)
<参考文献>
(1) 北海道電力:2005年度経営計画の概要
(2) 東北電力:平成17年度経営計画
(3) 東京電力:経営計画の概要/ 平成17年度
(4)中部電力:会社案内、事業計画
(5)北陸電力:経営効率化計画、経営計画の概要
(6)関西電力:経営方針、平成17年度供給計画
(7)中国電力:株主・投資家の皆さま、経営方針・経営計画
(8)四国電力:平成17年度供給計画の概要
(9)九州電力:平成17年度経営計画の概要、
http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/ir/policy/h17managerial-planning.pdf