<概要>
仏からの
プルトニウムの海上輸送が内外の大きな反響を呼んだが、燃料資源の有効利用の観点から、
軽水炉から高速増殖炉への路線をとる長期計画に基づくものであり、わが国の高速炉開発は世界の注視の的になった。北陸電力の志賀1号、東京電力の柏崎刈羽3号、中部電力の浜岡4号の3基が新たに営業運転を開始した。
核燃料サイクルに関しては、4月に
再処理工場の建設がスタートし、高レベル廃棄物処分の実施主体設立のための高レベル事業推進準備会が5月に発足した。原研(現日本原子力研究開発機構)は3月に、臨界プラズマ試験装置による重水素実験で世界最高記録を達成した。米国では、クリントン大統領の新施策により原子力研究開発の予算が前年度の1/4に削減され、IFR(金属燃料高速炉)とモジュラー型高温ガス炉の開発が中止されることになった。一方1月、新規発注に備えて工学設計作業を行うための炉型に、GE社のABWRとWH社の
AP600が選ばれた。
<更新年月>
1998年03月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
年 |
月日 |
国内 |
国外 |
1993年 (平成5年) |
1/5 |
プルトニウム輸送船の「あかつき丸」、東海港入港 |
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1/12 |
原子力委、原子力国際問題等懇談会を再開 |
フランスの原子力シェア73%と発表 |
1/13 |
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米、詳細工学設計で発展的炉ではABWRとSystem80+、受動的炉ではAP600を選定 |
1/21 |
関西電力、美浜1・3、高浜1、大飯2号機の蒸気発生器交換 |
米上院、オリアリー米DOE長官を承認 |
1/28 |
社会党の若手集団が原発容認で提言 |
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2/2 |
関西電力大飯4号機が営業運転 |
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2/8 |
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仏 FBR フェニックスに運転再開認可 |
2/16 |
原子力安全委、新委員長に都甲泰正氏 |
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2/17 |
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米クリントン政権、新型炉開発予算を削減 |
3/1 |
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独、超党派でのエネ政策協議を合意 |
3/4 |
原子力委、長期計画懇談会を始動 |
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3/5 |
敦賀商工会議所、敦賀3、4号機の増設を要望 |
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3/8 |
東京電力、福島第一原発に燃料貯蔵施設の増設で地元説明 |
中国、三門市への原発建設決める |
3/10 |
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チェコ政府、2原発の建設継続を決定 |
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米TVA、規制委員会に原発建設再開を通知 |
3/12 |
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北朝鮮がNPT脱退を表明 |
3/17 |
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仏政府、2原発の解体を承認 |
3/23 |
原研(現日本原子力研究開発機構)JT−60、核融合積(プラズマ温度×密度×閉じ込め時間)で世界最高性能を達成 |
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3/24 |
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南ア、核爆弾製造廃棄を表明 |
3/30 |
宮崎県串間商工会議所、原発誘致を決議 |
仏スーパーフェニックスの公聴会始まる |
4/1 |
1992年度の原発の設備利用率は74%、10年連続で7割台 |
IAEA 理事会、北朝鮮の査察拒否で安保理付託を決議 |
4/2 |
旧ソ連、過去から日本海への核物質海洋投棄が明らかに |
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4/5 |
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米DOE予算案公表、新型炉の開発中止へ |
4/18 |
WANO(世界原子力発電事業者協会)の東京総会開催 |
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4/28 |
日本原燃、六ヶ所再処理工場着工 |
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5/5 |
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インドのトリウム炉が営業運転開始 |
5/6 |
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ロシアの「トムスク7」で爆発事故 |
5/11 |
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独MOX工場に試運転許可 |
5/13 |
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仏スーパーフェニックスの公聴会延期へ |
5/14 |
政府、旧ソ連に核物質廃棄のため1億ドル拠出 |
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5/17 |
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英MOX施設が操業開始 |
5/26 |
日本原燃、ウラン濃縮施設の第二期増設で補正申請 |
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5/28 |
高レベル事業推進準備会(会長・林政義原子力委員)発足 |
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九州電力玄海3号機臨界 |
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6/11 |
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ベルギー政府、再処理に前向き声明 |
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北朝鮮、米朝会談でNPTからの脱退を一時保留に |
6/18 |
原子力委放射線利用専門部会、報告書公表 |
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6/22 |
宮崎県串間漁協、原発立地推進を決議 |
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6/23 |
鹿島町議会、中国電力島根原発の増設促進を決議 |
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6/24 |
新潟県巻町議会、巻1号の建設促進を決議 |
米下院、SSCと液体金属炉(LMR)の開発中止を可決 |
6/28 |
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英政府、THORP操業決定を先送り |
6/29 |
政府、ロシアの日本海への海洋投棄で「安全宣言」 |
米シーメンス・パワー社、原子力事業統合へ |
7/1 |
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米国濃縮公社(USEC)が発足 |
7/2 |
通産省(現経産省)資源エネルギー庁、初のエネルギー白書を発表 |
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7/6 |
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米シーメンス・パワー社、台湾への核燃料供給で契約 |
7/7 |
東京サミット、核不拡散体制の強化を政治宣言に盛り込む(〜9日、東京) |
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7/12 |
日本原燃ウラン濃縮施設の第二期増設に事業許可 |
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7/14 |
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米朝会談で、米が北朝鮮の軽水炉化支援声明 |
7/15 |
原子力安全委、動燃(現日本原子力研究開発機構)のリサイクル機器試験施設に安全答申 |
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7/20 |
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英原電、老朽ガス炉の閉鎖を発表 |
7/23 |
原研、JT−60でプラズマ電流1.8倍に、連続運転に一歩 |
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7/28 |
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中国大亜湾1号機が臨界達成 |
7/29 |
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旧ソ連・東欧支援で欧州企業連合設立 |
7/30 |
北陸電力志賀1号機、営業運転 |
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8/1 |
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パキスタン、第二原発の建設に着工 |
8/4 |
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中国、原子力事故応急管理条例を公布 |
8/9 |
細川内閣が発足。原子力基本政策は継続 |
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8/10 |
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南太平洋フォーラム開催 |
8/11 |
東京電力柏崎刈羽3号機、営業運転 |
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8/26 |
江田科技庁(現文科省)長官、幌延町の高レベル研究施設の反対陳情にこたえ「研究は必要」と見解 |
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8/30 |
関西電力、美浜2号機、高浜2号機の蒸気発生器の解体コンクリート廃棄物を直接埋設 |
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8/31 |
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中国の大亜湾1号機が送電開始 |
9/3 |
中部電力浜岡4号機、営業運転 |
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9/9 |
科技庁、「もんじゅ」のナトリウム漏洩対策は「適切」と原子力安全委に評価報告 |
ベラルーシ、2005年までに原発稼働の計画を発表 |
9/21 |
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旧ソ連・東欧支援国会議総会を開催 |
9/24 |
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フィンランド議会、第五原発建設を否決 |
9/25 |
原産と原子力資料情報室共催で、シンポジウム「今なぜプルトニウムか」を開催(大阪) |
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9/27 |
江田科技庁長官、IAEA総会でプルトニウム国際管理構想を提唱 |
米、核不拡散政策を発表 |
9/28 |
細川首相、国連演説でNPT無期限延長を支持 |
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9/30 |
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米上院、SSC続行と新型液体金属炉開発を可決 |
10/1 |
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仏スーパーフェニックスの運転再開で公聴会報告公表 |
10/5 |
宮崎県串問市議会、原発立地で住民投票条例を可決 |
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10/13 |
動燃、「もんじゅ」の燃料装荷開始 |
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10/21 |
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ウクライナ議会、チェルノブイリ1・3号機の閉鎖撤回 |
10/26 |
来日中のロシア原子力相が海洋投棄中止を表明、ウラン購入の再要請も |
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10/27 |
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独社民党、次世代炉開発の反対表明 |
10/28 |
農水省、国内のウリミバエ根絶を宣言 |
米、SSCの中止と新型炉(ALWR)の開発継続を決定 |
11/1 |
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中国、60万kW炉を国産化の柱にするとの意向表明 |
11/2 |
原子力委、低レベル放射性廃棄物海洋投棄の禁止へ方針決める |
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11/9 |
原子力委、原子力白書を発表。核燃料サイクルや情報公開など重点 |
中国、低・中レベル廃棄物処分場建設に着手 |
11/12 |
海洋投棄規制条約締結(ロンドン)。低レベル放射性廃棄物の海洋投棄全面禁止 |
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11/19 |
安部浩平電気事業連絡会長、会見でFBR実証炉の着工は2000年早々にずれこむ可能性を示唆 |
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11/27 |
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中国大亜湾1号機、全出力運転を達成 |
11/30 |
原子力安全委、原子力安全白書を発表。プルトニウム利用の安全など強調 |
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12/1 |
総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)基本政策小委が中間報告。包括的なエネルギー供給体制の見直し |
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12/2 |
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仏カダラッシュ研で炉心溶融実験 |
12/8 |
高木孝一敦賀市長、原子力発電の敦賀3、4号機増設に同意、原電は初のAPWR建設を構想 |
米ノースカロライナ州、低レベル廃棄物貯蔵所を選定 |
12/15 |
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英政府、THORPの操業を許可 |
12/17 |
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ブルガリア、コズロドイ原発1号機の運転再開許可 |
12/21 |
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アルジェリアで研究用重水炉が完成 |
12/24 |
福井県議会、敦賀3、4号機の増設請願を採択 |
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関西電力高浜2号機の操業差止め訴訟は却下 |
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2.社会一般の出来事
年 |
月日 |
国内 |
国外 |
1993年 (平成5年) |
1/20 |
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ビル・クリントン、米大統領に就任。12年ぶりの民主党政権 |
5/15 |
日本プロ・サッカーリーグ(Jリーグ)開幕 |
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6/9 |
皇太子殿下と小和田雅子さまの結婚の儀 |
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6/23 |
自民党を離党した羽田孜・小沢一郎グループが新生党を結成 |
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7/12 |
北海道南西沖地震、奥尻島津波、死者・行方不明231人 |
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7/18 |
衆院選挙で日本新党など3新党が躍進.自民党が過半数を割り、38年間続いた自・社両党主導の「55年体制」が崩壊 |
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8/5 |
初の女性衆院議長に土井たか子・元社会党委員長 |
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8/9 |
細川護熙・日本新党代表を首相とする連立内閣が発足 |
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11/1 |
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EC加盟12か国が単一通貨による経済通貨統合を目指すマーストリヒト条約が発効 |
11/18 |
衆院、小選挙区比例代表並立制導入を軸とした政治改革法案を可決 |
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<関連タイトル>
平成5年度原子力開発利用基本計画 (10-02-01-03)
改良型加圧水型原子炉(APWR) (02-08-02-04)
SBWR (02-08-03-03)
AP600及びAP1000 (02-08-03-04)
六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)
イギリス返還プルトニウム輸送 (11-02-06-06)
イタリアの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-10)
<参考文献>
1.(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成6年版(平成6年11月30日)
2.原子力委員会編:原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(平成4年12月27日)
3.原子力委員会編:原子力白書 平成6年版、大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
5.読売新聞社(編集発行):読売年鑑 1994年版(1993年3月1日)
6.(財)科学技術広報財団(編集発行):科学技術ジャーナル 平成8年3月号(通巻48号)(平成8年3月1日)