<本文>
わが国の多くの原子力発電所は濃縮
ウランを燃料として、軽水を
減速材および
冷却材に使用する
沸騰水型原子炉(
BWR)および
加圧水型原子炉(
PWR)が主流であるが、日本における最初の商業用原子力発電所は茨城県東海村にあるコールダーホール型のガス冷却炉型
原子炉(東海炉−日本原子力発電(株))である。この原子炉は天然ウラン燃料を燃料として、
黒鉛を減速材に、炭酸ガスを冷却材に使用している原子炉であり、1966年9月1日から営業運転を開始している。
この炭酸ガス冷却型原子炉から発生した使用済燃料はイギリスのセラフィールドにある核燃料会社(
BNFL社)の再処理工場に、使用済燃料輸送のために造られた専用の輸送船舶を使用して海上輸送されている。
この再処理工場において、これらの原子炉からの使用済燃料を再処理して、使用済燃料から核分裂生成物(
FP)およびプルトニウムを分離している。このうち、新燃料の原料として使用できるプルトニウムを再び原子力発電所等の核燃料物質として使用するため、1970年度後半から1980年代初めにかけて4回にわたってイギリスからわが国(東京港)に海上輸送が行われた。
このプルトニウムの海上輸送においては、イギリスからわが国まで輸送船により南回りで無給油・無寄港でで行われた。それぞれの輸送においては、数十キログラム〜約二百数十キログラムの二酸化プルトニウムが運ばれた。また、使用された輸送船舶としては英国籍の貨物船が利用され、輸送船舶に武装護衛人同乗のもとに海上輸送が実施された。また、プルトニウム輸送に使用された
輸送容器はイギリスでも使用実績のあるPUB型と呼ばれた輸送容器であり、この輸送容器の設計認可・製作については国際基準としての国際原子力機関(
IAEA)の輸送規則に従うとともに、イギリス政府当局および日本政府当局よりB型の輸送容器として認可されたものである。
東京港に到着したプルトニウムは、厳重な警備の下で輸送船舶からトレーラー型の貨物車両に積み替えられ、東京港で検査したあと、東京港から動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)東海事業所まで陸上輸送された。
このプルトニウムの陸上輸送に当たっては、複数の輸送車両の前後に警備車等による伴走車両が配置され、隊列輸送の体制で、警察による警護の下に交通量が少ない夜間に輸送が実施された。
輸送されたプルトニウムは新型転換炉原型炉「ふげん」のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)新燃料の原料として、また、高速実験炉「常陽」のMOX新燃料の原料としてそれぞれ使用するため、動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)東海事業所プルトニウム燃料製造施設において
MOX燃料 集合体に加工された。そののち、「ふげん」および「常陽」のそれぞれの
燃料集合体として装荷され、わが国の新型原子炉の研究開発に利用された。
<関連タイトル>
わが国の核燃料物質輸送に係る安全規制 (11-02-06-01)
六フッ化ウランおよび二酸化ウランの輸送 (11-02-06-03)
研究炉用燃料およびMOX燃料の輸送 (11-02-06-05)
フランスからのプルトニウム輸送 (11-02-06-08)
国際海事機関(IMO)の活動 (13-01-01-16)
<参考文献>
(1)International Atomic Energy Agency: Safety Series No.6, Regulations for the Safe Transport of Radioactive Material(1985 Edition), International Atomic Energy Agency(1985)
(2)科学技術庁原子力安全局核燃料規制課ほか(監修):放射性物質等の輸送法令集1997年版、日本原子力産業会議(1997年1月)
(3)日本原子力産業会議編:原子力ポケットブック1997年版、日本原子力産業会議(1997年5月)、p.149,188,190-191,196-197
(4)動力炉・核燃料開発事業団(パンフレット):ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料の輸送(1995年7月)
(5)松岡 理:核燃料輸送の安全性評価、日刊工業新聞社(1996年11月)
(6)久保 稔:特集プルトニウムの利用技術の現状と課題−プルトニウムの輸送、原子力工業、40(1)、49-54(1994)
(7)原子力委員会(編):原子力白書 平成8年版、大蔵省印刷局(1997年3月)、p166-169