<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 再処理ウラン濃縮及び低レベル放射性廃棄物最終貯蔵の3施設について、4月、関係者の間で立地協力に関する協定が結ばれ、国内核燃料サイクル形成への事業化がスタートした。原子力委員会が、核融合の研究開発をナショナルプロジェクトに指定し、この計画に基づき、原研(現日本原子力研究開発機構)が建設を進めてきた臨界プラズマ試験装置JT-60は4月に完成、7月プラズマの発生に成功した。プラズマ実験装置は、JT-60のほか、TFTR(米)、JET(EC)、T-15(ソ連)があるが、TFTRは1982.12月に、JETは1983.6月に実験を開始している。7月には、日中原子力協定が調印された。このほか、FBRもんじゅ」(10月)、人形峠のウラン濃縮原型プラント(11月)がそれぞれ着工、原発5基が新たに営業運転に入った。海外では、仏のFBR実証炉スーパーフェニックスが9月臨界に達した。米、仏ともに、次世代のウラン濃縮技術としてレーザー法を選択した。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1985年
(昭和60年)
1/17 関西電力高浜3号、営業運転開始(PWR、87万kW) 米環境保護庁、放射性核種の大気放出基準公表
1/23   西独、使用済み燃料再処理の推進をきめる
1/30   米オコニー2号原発、軽水炉の連続運転世界記録を更新
1/31 電源開発調整審議会、関西電力大飯3号・4号の建設着手をきめる  
1月 日本碍子、廃棄物処理で西独NUKEM社と技術導入契約結ぶ  
2/4   西独DWK、再処理工場をバイエルン州に建設することをきめる
2/6 原子力工学試験センター、PWR炉内構造物の加振公開試験実施  
2/15   米NRC、原子力法修正案を提出
2/18 動燃(現日本原子力研究開発機構)東海再処理工場新溶解槽の試運転開始。4/5再処理工場運転再開  
2/21 原子力安全委、原電敦賀1号での混合酸化物燃料2本の照射を承認  
3/1 日本原燃産業(株)発足  
3/7 科学技術庁(現文部科学省)、緊急時環境線量情報予測システム(SPEEDI)の原発所在11県への配置きめる  
3/18 九州電力川内原発2号臨界(PWR、89万kW)  
3/28 東京都、Co−60による小笠原諸島のミカンコバエ根絶成功を記念する  
3/31 原研(現日本原子力研究開発機構)、原子力船事業団を統合  
4/8 原研JT−60プラズマ実験装置、初のプラズマ発生に成功  
4/10   TMI2号炉の炉心分析結果発表される。炉心重量の10〜20%溶融
4/18 核燃料サイクル3施設の立地協力で5者協定成立  
4/20 原研、高転換軽水炉開発のための研究委員会設置  
4/22   IAEA 専門家会議、放射線規制免除の方針きめる。個人10マイクロ・シーベルト、集団1マン・シーベルト
5/13 原研高温ガス炉臨界実験装置(VHTRC)臨界  
5/15 電気事業連合会9電力社長会、ATR(新型転換炉)実証炉の建設計画を承認  
5/19   第5回環太平洋原子力会議、韓国で開く(ソウル)
5/29   米NRC、TMI1号の運転再開許可
  仏COGEMA、次期ウラン濃縮法として原子レーザー法を内定
5/30   仏EDF、プルサーマル採用決定
6/3   ロンドン条約締結国会議開く。国際専門家会議が低レベル放射性廃棄物の海洋投棄の安全性を報告
6/4   米議会下院、南ア連邦との原子力協力禁止法案可決
  西独州行政裁、使用済燃料中問貯蔵施設の建設に対し一時中止を命令
6/5 関西電力高浜4号(PWR、87万kW)、営業運転開始 米DOE、次期ウラン濃縮法として原子レーザー法に決定
6/13 三菱金属、原子力開発センタ一開所。燃料サイクル技術開発を充実  
6/20 東電福島第二原発3号(BWR、110万kW)営業運転開始  
6/25 水戸地裁、原電東海第2原発設置許可の差し止めを求める地元住民の行政訴訟を棄却  
7/1   OECD−NEA、核燃料サイクル・コストを試算。再処理などのバックエンドコストは大きくないと発表
7/5 日中原子力協定、仮調印。7/31正式調印  
7/8   西独ライン州、高速増殖炉原型カルカルSNR−300への燃料装荷申請を却下
7/10   米DOE、高レベル廃棄物の最終処分計画「非軍事用放射性廃棄物管理計画(DOE/RW−005)を議会に提出
7/11   米議会下院、南ア連邦からのウラン及び石炭の輸入禁止を議決
7/15 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)原子力部会、商業用原子炉廃止措置方針で報告  
7/18 原研臨界プラズマ試験装置JT−60、電流160万アンペア、平均密度4.8×10E13毎立方センチメートル、中心温度2000万度のプラズマを達成  
7/29 動燃、原燃産業ウラン濃縮技術で協力協定  
8/2 理研、分子レーザー濃縮法により微濃縮ウラン6mgを回収  
8/12   米EPA、高レベル放射性廃棄物の処理処分についての最終基準発表
8/15   ウレンコの西独濃縮工場稼働
8/29 通産省(現経産省)総合エネルギー調査会原子力部会プルトニウムリサイクル小委、新プルトニウム利用の検討はじめる  
8月   スウェーデン、便用済核燃料の岩盤内貯蔵はじめる
9/3 原研、豪原子力委とシンロック固化法など高レベル廃棄物の共同研究(5年間)で調印  
9/6   西独高温ガス炉THTR−300が試運転開始。11/16送電開始(29万600kW)
9/7   仏高速増殖炉実証炉スーパーフェニックス臨界(124万kW)
9/9   米、南アのアパルトヘイト政策制裁のため原子力通商禁止
9/13 横路北海道知事、動燃の高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センターの立地環境調査を拒否  
9/18 東京電力柏崎刈羽1号業運転開始  
9/23   ロンドン条約締結国会議、中・低レベル放射性廃棄物の海洋投棄一時禁止措置の続行を決議
9/26   米DOE長官、米国内ウラン産業存続不能と判断し、救済策を指示
9/27 山口県上関町議会、原発誘致を決議  
10/3   西独ライン州政府、高速増殖炉SNR−300に対し最終建設許可発給
10/4 四国電力伊方原発3号炉について第2次公開ヒアリング開く 仏ANDRA、中低レベル放射性廃棄物処分地の選定を行なう
10/8 原子力委、放射性廃棄物処理処分の方策に関する報告書まとめる  
通産省、ジルコニウムライナ高性能燃料を福島第一原発に使用することを認める  
10/9   米TMI1号、営業運転再開。6年半ぶり
10/11 原子力安全委放射性廃棄物安全規制専門部会、低レベル放射性廃棄物の陸地処分の安全規制について報告書を提出  
10/15   カナダ原子力管理委、1986年以降すべての原子炉運転者及びウラン採鉱製錬業者に廃止措置計画の提出を要求
10/16 電気事業連合会9電社長会、米DOEのレーザー・ウラン濃縮計画への資金協力のための日米作業部会への参加をきめる  
10/22 農水省、奄美群島喜界島のウリミバエをCo−60照射により根絶と発表  
10/28 原子力委、再処理推進懇にMOX燃料検討小委設置  
動燃、FBR原型炉「もんじゅ」着工(福井県敦賀市白木地区)  
10月   スイス政府、放射能廃棄物管理共同組合に貯蔵候補地の試掘許可
  西独ヘッセン州社民党・緑の党連立政権、新規原発不承認の方針打出す
11/1   米シッピングポート原発、廃炉計画にもとづき加圧器の撤去実施
11/11 総合エネルギー調査会原子力部会、今後50年の長期原子力ビジョン及び21世紀エネルギービジョンの検討はじめる  
11/13 動燃、人形峠ウラン濃縮原型プラント着工(生産量年200トンSWU)  
11/28 九州電力川内原発2号(PWR、89万kW)営業運転開始  
11月   中国、ウランのレーザー濃縮実験に成功
12/11   米サンディア研、慣性閉じ込め核融合装置(PBFA‐2)運転開始
12/17   原子力委、ウラン濃縮懇談会の設置をきめる


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1985年
(昭和60年)
1/2 日米首脳会談(ロスアンゼルス)で中曽根首相、米のSDI研究に理解示す  
1/18 三菱重工、4本足歩行のロボット開発  
2/1 日立、科学博に2本足歩行のロボットを展示  
3/10   チェルネンコ・ソ連共産党書記長死去。後任ゴルバチョフ政治局員
4/1 公社民営化により、日本電信電話会社(NTT)、日本たばこ産業会社として発足  
5/2   主要先進国首脳会議(ボン・サミット)開催、米ソ軍縮交渉での米提案を評価
5/17 三菱・南大夕張鉱でガス爆発、死者62人  
5/21 科学技術庁金材研、レーザーによる超電導化合物の合成に成功  
6/8 本州四国架橋「大鳴門橋」開通  
7/24 有毒ワイン事件、ジエチレングリコール入りワインの輸入販売が判明  
8/1 大協、丸善石油合併発表(1986/4からコスモ石油として発足)  
8/12 日航ボーイング727、後部圧力隔壁の金属疲労で墜落事故、520人死亡  
9/15   中国上海の宝山製鉄所操業開始、新日鉄技術協力
10/2 関越自動車道全面開通  
11/25   1ドル、200円をきる

<関連タイトル>
レーザー法によるウラン濃縮 (04-05-01-06)
六ヶ所ウラン濃縮工場 (04-05-02-03)
六ヶ所核燃料サイクル施設の立地の経緯 (04-07-03-14)
六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの概要 (05-01-03-04)
核融合研究開発の経過 (07-05-01-03)
核融合反応装置の形式と作動原理 (07-05-01-05)
放射線利用と照射施設 (08-01-03-14)
わが国における放射線不妊虫放飼法(SIT)の普及 (08-03-01-02)
日中原子力協定 (13-04-02-06)

<参考文献>
(1) 森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2) 原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3) 森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(4) 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ