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<概要>
 原子力安全委員会は、日本の風土に何とかヒアリングを定着させたいとの立場から、反対派を参加させるよう努力し、5月には、従来とは異なる方式で島根原発2号機の2次公開ヒアリングをセットしたが、冷静な討論の場にはならなかった。12月の泊原発1、2号機の公開ヒアリングでは、交渉がまとまらず、結局反対派不参加となった。前年4月運転開始した福島第二1号機は、5月に384日の連続運転の記録を達成した。総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)は11月、エネルギー総需給の見通しを大幅に下方修正し、原子力の開発目標も1990年3400万kwへ引下げられた。しかし、原子力への依存度は増大した。米国では、高速増殖原型炉CRBR計画が10月、遂に中止となった。レーガン政権の登場に際して国内外に、原子力利用の進展を期待する向きもあったが、需要の減退、建設費の高騰、建設期間の長期化のなかで、原子力発電所の新規発注はなく、事情は変わらなかった。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1983年
(昭和58年)
1/1   仏 EDF、原発データバンクを開設
1/3   仏EDF、1983年に全電力の48%を原子力で供給と発表
1/6 原子力安全委、原研(現日本原子力研究開発機構) JPDR解体計画を了承  
1/12   仏カスタン委員会、廃棄物再処理政策で原子力安全高等審議会に報告書
1/18 動燃(現日本原子力研究開発機構)東海再処理工場で溶解槽及び酸回収蒸発缶などに故障発見  
1/23 東京電力・柏崎刈羽原発2、5号増設第2次ヒアリング開く。初の「地元意見を聞く会」を開催(第2次ヒアリングに文書併用方式を初採用)  
1/24   ソ連原子炉衛星大気圏再突入
1/27 高知県窪川町議会選挙で原発賛成派、からくも過半数維持  
1月   仏EDF、運転中の全90万kW級PWRについて、制御棒案内管の固定ピンの取替作業始める
2/7   米DOE、高レベル廃棄物最終処分場の立地選定指針を発表
2/14 原研の臨界プラズマ試験装置JT−60の本体工事はじまる 海洋投棄規制条約(ロンドン条約)締結国会議開催。2/17放射性廃棄物の海洋投棄は2年間の安全性検討終了まで投棄中止を決議。日本も太平洋上での投棄を中止
2/23 電源開発、ATR実証炉の開発で動燃と相互協カ基本協定結ぶ  
2/25 島根県労働組合評議会、島根原発2号第2次公開ヒアリングに参加決定  
3/3 宮城、鹿児島県も核燃料税創設ヘ  
3/7   米DOE、宇宙船用原子力発電研究計画(SP−100計画)概要発表
3/11 動燃、マイクロ波加熱脱硝法による混合転換施設(世界初の大規模施設)が完成  
3/12 高速実験炉「常陽」、熱出力10万kW達成  
3/14 原研と米DOE、中性子散乱に関する共同研究協力で取決め結ぶ  
3/17 島根県評、島根原発2号第2次公開ヒアリングに初参加を正式決定  
4/14 原子力工学試験センター多度津工学試験所でPWR 格納容器の耐震性を確認  
4/18   OECD−NEA、核燃料サイクル諸量の需要・供給予測を発表
4/26 東京電力福島第二原発2号臨界(BWR改良標準化初号機、110万kW)  
4/28 東京電力福島第二原発1号機、384日間の連続運転の記録達成  
4月   オランダ、中・低レベル放射性廃棄物の海洋投機中止
5/2 日揮、ベルゴニュークレール社と廃棄物の高温焼却について技術導入契約結ぶ  
5/5   米、核融合実験装置TFTR完成
5/13 中国電力・島根原発2号第2次公開ヒアリング開く。設置反対派が初参加 米NRC、放射性廃棄物確証規則作成案を発表
5/16   IAEA、放射性廃棄物管理国際会議開く(シアトル)
5/27   米ワシントン公共電力、3号炉の建設中止を決定
5/28 阪大、世界最大のレーザー核融合実験装置「激光−7号」が完成  
6/1 全国原発所在市町村協議会総会、「地域振興法」など要望  
6/15 電気事業連合会、陸地処分の推進へ向け、「原子力環境整備推進会議」の設置決定  
6/25   ECの核融合実験装置JET、初のプラズマ発生に成功
6/29 動燃、「常陽」燃料の再処理に初めて成功。FBR燃料サイクル完結へ  
6月   カナダ・オンタリオ・ハイドロ社、照射線源用Co-60の生産拡大を計画
7/5 科学技術庁(現文部科学省)低レベル放射性廃棄物対策検討会、「敷地外における施設への貯蔵の推進について」の報告を発表、「分別管理」方式を打出す  
7/13 石川島播磨重工、原子カプラント用3次元6自由度の新鋭振動台を完成  
7/25   韓国古里2号機が営業運転開始
8/7 青森県むつ市関根浜漁協、原子力船「むつ」の新定係港受け入れ決定  
8/19 自民党有志議員による「原子力船を考える会」が初会合  
8/25 九州電力川内1号機が臨界(PWR改良標準化'初号機、89万kW)  
8/30   TMI2号機建屋の除染完了
8/31   欧州5か国 FBR共同研究グループを設立(84/1/10長期協力協定締結)
8月 8月の原子力発電所設備利用率、初めて80%を記録  
9/2   IAEA、開発途上国向けの中小型炉の検討開始で合意
9/5 原船団と開根浜漁協、漁業補償など総額23億円で協定締結  
9/12   第4回環太平洋原子力会議開催(バンクーバー)
9/13 原研、米NRCと炉心損傷時の燃料挙動と核分裂生成物ソースタームの研究で協力協定結ぶ(4年間) 西独の高温ガス炉THTR−300(30万8000kW)が初臨界
9/14   西独クリュンメル原発臨界(世界最大級のBWR、KWU製130万kW級第1号)
9/22 通産省(現経産省)、中国電力島根原子力発電所2号機に設置認可  
10/6 通産省、1983年度運転開始べース電源別発電原価を試算。原子力は12.5円、LNG 火力17円、石炭火力14円、石油火力17円、一般水力20円  
10/11   中国、国際原子力機関に加盟
10/14 原子力委、原子力船懇談会設置。10/18初会合(座長有澤廣巳)  
10/18 東北電力女川原発1号機(BWR、52万4000kW)が臨界  
10/24   英原子カ産業放射性廃棄物管理公社(NlREX)第1回報告書、中低レベル廃棄物陸地処分サイト2カ所を選定
10/26   米上院、クンチリバー高速増殖炉(CRBR)予算を否決、建設計画は中止に
10/31 原産、原子力船開発で「むつ」の最大限活用を提言  
11/2   ソ連4隻目の原子力砕氷船ロシア号進水
11/4 自民党「原子力船を考える会」、「むつ」実験再開を提言  
11/6 通産省総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)原子力部会、長期エネルギー需給見通しを下方修正。1990年度原子力3400万kW、FBR実証炉の着工を1990年代前半とする  
11/8 原研と米DOEが核融合研究で実施取決めを締結。HFlR炉及びORR炉による材料試 米DOE、世界最大規模の軍事高レベル放射性廃棄物処理施設の建設を開始
11/9   中国、広東原発建設で香港と合弁会社設立合意
11/18   アルゼンチン、ガス拡散法によるウラン濃縮に成功
11/30 福島県が原子カ防災訓練を実施  
12/5   英、安全性が確認されるまで海洋投棄は中止と発表
12/13   米DOE、オークリッジ濃縮工場など政府所有原子カ施設の運営委託先をマーチン・マリエッタ社に決定
12/14 電気事業連合会社長会、米DOEのTMI2号機の研究開発に参加決定  
12/21   ソ連チェルノブイリ原発4号炉臨界(100万kW、RBMK−1000黒鉛減速軽水冷却型)
12/22 北海道電力・泊原子力発電所1、2号機第2次公開ヒアリング開く  
12/23 原子力委、原子力船研究開発事業団の原研への統合きめる  
12月 大成建設、原発等の耐震設計向け3軸振動台完成  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1983年
(昭和58年)
1/17 中曽根首相訪米。1/18レーガン大統領と会談.首相「日米は太平洋をはさむ運命共同体」との認識を表明  
2/4 日本初の実用通信衛星「さくら2号a」打上げ、通信・放送衛星機構が準ミリ波帯を使い運用  
3/23   米大統領レーガン、科学者に対し宇宙兵器を含む防御システム(SDI)の研究・開発推進を要請
5/16 高度技術工業集積地域開発促進法公布(テクノポリスの育成)7/15施行  
6/19   パリ(仏)で50万人反核集会
7/26 科学技術会議(議長中曽根首相)「ガン研究推進の基本方策」を決定  
8/23 通産省、長期エネルギ−需給見通しとエネルギー政策の総点検で報告  
9/5 石油公団・出光石油開発(株)、中国と中国南部沿岸大陸棚油田開発契約に調印  
10/15   西独で「反核行動週間」始まる。西独・英・伊で200万人が集会
11/16 総合エネルギー調査会需給部会。長期エネルギー需給見通し改定を答申(1995年の石油依存度48%と想定)11/18閣議決定  
11/22 産業構造審議会情報産業部会、産業政策上コンピュータソフト保護のプログラム権立法答申案をまとめる  

<関連タイトル>
転換工程 (04-07-02-04)
海洋投棄規制と実績 (05-01-03-10)
わが国の海洋投棄中止にいたる経緯 (05-01-03-11)
アメリカの高速増殖炉研究開発 (03-01-05-04)
公開ヒアリング (11-01-01-03)
原子力防災のための訓練 (10-06-01-08)
原子力防災対策のための国および地方公共団体の活動 (10-06-01-04)
ミラー型核融合装置の研究開発 (07-05-01-09)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)

<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)

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