<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)

<概要>
 米国では2016年1月末現在、31州62箇所で99基・合計出力9,920.9万kWの原子炉が運転中で、これは世界第1位の規模である。これらは1964年〜1977年に着工されたもので、1979年3月28日のスリーマイル島原子力発電所事故の影響で30年近く原子力発電所の新規発注が途絶える状況になった。この間、原子力発電所の検査制度の改革、プラント保守・保全方法の改善による燃料取替停止期間の短縮、運転サイクルの長期化などを通じて設備利用率が大幅に改善し、最近では90%を超える水準となっている。これにより、発電設備容量は横ばいながらも、発電電力量は増加してきており、発電全体に占める原子力のシェアは約20%を維持している。
 一方、連邦政府は近年原子力発電所の新規建設に向けた支援措置を次々に打ち出し、民間の電気事業者も電力市場自由化に適応しつつ経営基盤を強化させた。2007年以降、新規発電所の設置に向けて建設・運転一括認可(COL)の申請が多数提出されているが、低い電力価格と低調な需要の影響から、建設中の5基・601.8万kWを除き、申請中の原子炉の建設は2020年以降になると予想されている。
<更新年月>
2016年01月   

<本文>
1. 原子力発電の位置づけ
 米国では第二次世界大戦以降、電力の消費量が長期にわたって増加し続け、1950年から2000年の半世紀間に約12.3倍に増大した。このように急増する電力需要を賄ってきたのは専ら石炭火力であったが、補完的な電源として水力発電、また天然ガス火力の利用が増えた(図1参照)。原子力発電は1970年頃から本格的に利用が開始され、急速に導入が進んで1990年頃には発電の20%を占める規模となったが、1979年のTMI事故以降に新規発注が途絶えた。原子力への安全規制が強化され、経済性を失った原子力発電所が閉鎖される中、プラント保守・保全方法の改善により設備利用率は大幅に改善し、発電設備容量は横ばいながらも原子力による発電量は増加してきており、発電全体占める原子力シェアは約20%を維持している。
 一方、世界的に気候変動問題への強力な対策が求められているが、米国では輸送部門における石油の消費と、発電部門での石炭の消費が大きな二酸化炭素排出源となっており、これらの分野での排出削減が重要課題となっている。発電部門では風力、太陽エネルギー利用も進められているが、コスト、利用可能規模の両面でともに不十分と考えられており、原子力を重要なエネルギー源と位置づけている。
2. 原子力発電の経過と現状
 米国では原子力発電の開発は民間主導で進められたが、連邦政府も軽水炉開発に対して財政的な支援を行い、1960年代から1980年代にかけて相次いで新規の原子力発電所が建設された。しかし、もともと米国では小規模で財政基盤の弱い電力会社が多く、TMI事故以降の安全規制への対応などから原子力発電の経済的優位性が乏しくなり、永らく新規発注が途絶える状況となった。既存の発電所の出力増強が行われて発電設備容量は概ね1億kW(ネット電気出力)の水準に維持されてきたが、老朽化した原子炉や採算の悪化した発電所の閉鎖も相次ぎ、図2に示すように、発電炉の基数は1990年の112基をピークに減少している。
 米国では2016年1月末現在、31州62箇所で99基・合計出力9,920.9万kWの原子炉が運転中で、これは世界第1位の規模である。その内PWRが65基、BWRが34基である。2013年にキウォーニ、クリスタルリバー、サンオノフレ原子力発電所(2基)が、2014年にバーモントヤンキーが廃炉となったため、2012年より5基減っているが、その一方で5基の原子炉が建設中である。2016年1月時点の米国における原子力発電所の一覧を表1−1表1−2表1−3表1−4および表2に、原子力発電所のサイトを図3に示す。
 平均設備稼動率(Capacity Factor)は2013年には89.9%、2014年は91.7%、2015年は84.8%(11月まで)であったが、これに対して石炭火力は43.6%、天然ガス火力は51.1%、水力は33.4%、風力は31.9%である(図4参照)。稼働率の年間の変化は、故障による停止、気温による需要増減、ハリケーン等気象条件の変化によって影響を受ける。気象による影響としては、2012年度夏季の異常熱波の際のミルストン2号機の停止、10月末のハリケーンサンディー襲来の際のセーレム1号機、ナインマイルポイント1号機、インディアンポイント3号機の緊急停止が挙げられる。しかしながら、近年12月〜1月にかけて北東部を襲う極循環(ポーラーボルテックス)による大寒波の際には、石炭火力や家庭用天然ガス火力発電所が停止する中、ほとんどの原子力発電所は全出力での運転が可能であった。
2.1 原子炉運転認可の延長
 米国原子力規制委員会(NRC)は1954年原子力エネルギー修正法(Atomic Energy Act of 1954,as amended)に基づき、原子炉運転認可を行っている。NRCが認可できる運転期間は、最長で40年間であったが、1995年に規則が改定され、NRCの安全性の基準(10CFR54)と環境基準(10CFR51)を満たすことを確認した上で、原子炉の運転を継続しても安全であると判断された場合、NRCは20年の運転期間延長ができる。2000年3月にカルバートクリフス1・2号機が運転認可(申請:1998年4月)の20年延長を認められて以来、オコニー1〜3号機など次々と延長が認可され、現在稼働中の原子炉99基の内72基が延長認可を受けている。
2.2 原子炉の出力増強
 NRCは1977年のカルバートクリフス1号機の熱出力5.5%増強の140MWを承認して以来、2014年8月までに156件の増強計画を承認し、増加量は21978.8MWt(電気出力73.26万kW)に及ぶ。2013年には3件・345MWt、2014年には7件・1163.6MWtが認可され、2016年1月時点、4基が審査中で、2017年までに1540MWt(5.13万kW)増強する計画である。
 熱出力の増強には(1)出力測定精度の向上(MU型:測定誤差の修正により2%まで増強可能)、(2)計装設定値の変更(ストレッチ型:変更により7%まで増強可能)、(3)高圧タービン、熱交換器、復水ポンプ、発電機、変圧器など周辺機器の大規模改修(拡張型:20%まで増強可能)の3タイプがある。
2.3 原子炉の検査レベルの導入
 NRCは原子炉安全、放射線安全、保障措置の観点から活動拠点を4つに分け、各原子炉の安全を確保している。また、各原子炉の安全目標を達成するため、パフォーマンス指標(PI:Performance Indicator)とリスク情報を活用して7項目の基本事項(NRCではコーナーストーンと呼ぶ)を設定し、検査レベル「規制対応マトリックス・コラム」1〜5を導入した。コラム1(被認可者対応:Licensee Response Column)は基本検査のみとなり、コラム2(規制者対応:Regulatory Response Column)、コラム3(コーナーストーン低下:Degraded Cornerstone Column)、コラム4(複数/反復コーナーストーン低下:Multiple/Repetitive Degraded Cornerstone Column)は基本検査に加えてそれぞれ詳細度の異なる検査が追加される。コラム5(許容不可:Unacceptable Performance Column)になると「運転不可」となる。
 2016年1月時点、コラム5に該当する炉はなく、コラム4にアーカンソー・ニュークリア1・2号機が、コラム3にモンティセロ、ペリー、ピルグリム、ポイントビーチが、コラム2には20基が該当する(表1−1表1−2表1−3表1−4参照)。なお、フォートカルホーンは、2011年6月にミズーリ河の氾濫を機に不具合が指摘され、「重大なパフォーマンス低下・運転事象の問題を伴う停止中の原子炉の監視」下にある。
2.4 原子炉の閉鎖
 米国では「1992年エネルギー政策法」の成立を契機に卸電力市場の自由化が本格的にスタートし、規制緩和措置により電気事業の再編が加速され、電気事業者の合併・吸収による大規模化、大規模事業者による原子力発電所の買収(図5)を通じて、原子力発電所の集中所有が進むなど原子力発電を巡る事業環境にも大きな変化を与えた。1991年には過半数未満出資者も含めて101の企業が原子力発電所の運営に参加していたが、電力料金の規制緩和や化石燃料に対する原子力の優位性上昇から再編が進み、1999年末には87社に減少した。また、発電所運営者数は1995年の45社から、現在では23社に減少し、トップ10社が原子力発電の70%以上を担っている。米国における主な原子力発電事業者を表3に示す。
 この間、設備利用率が大幅に改善される一方、経済性を失った老朽化した原子炉は運転認可期間を待たず早期閉鎖されている(図2参照)。その後暫く閉鎖される原子炉はなかったが、2012年から2013年にかけて合わせて5基の閉鎖や運転継続断念が相次いだ(表2参照)。
 2012年10月に閉鎖されたドミニオン社のキウォーニ(PWR、59.0万kW、運転認可2033年)は中西部地域のガス火力・風力の電力卸価格競争から運転継続を断念し、放射性物質の減衰を待って解体撤去される(SAFSTOR)。また、バーモントヤンキー(BWR、65.2万kW、運転認可2032年)はシェールガスによるガス火力の持続的な低電力価格によって収益を上げられないことなどが原因で、エンタジー社は運転継続断念を決定し、2014年12月に停止した。クリスタルリバー3号機は蒸気発生器(SG)交換による出力増強工事の失敗から、サンオノフレ2・3号機はSGの摩耗からそれぞれ閉鎖し、現在はSAFSTORが進行中である。
3. 新規原子力発電所建設に向けた動き
 米国政府は、2010年までに新たな原子力発電所の建設開始を目指す「原子力2010計画」を2002年に発表するとともに、さらに「2005年包括エネルギー政策法」を定めて、原子力発電所の新規建設を促すための支援プログラムを確立した。また、原発建設に係る許認可プロセスの合理化に向けての措置として、原子力規制委員会(NRC)も発電炉の型式認定(Design Certification;DS)、サイトの事前承認(Early Site Permit;ESP)、建設・運転一括認可(Combined Construction Permits and Operating Licenses;COL)の制度を設けた。
 こうした連邦政府の積極的な支援の下で、電気事業者の中にも原子力発電を今後の成長戦略の柱と位置づける事業者が増加し、建設、計画の動きが活発化した。2007年5月には1985年から長期休止していたテネシー峡谷開発会社(TVA)のブラウンズフェリー1号機の運転が再開され、また、1988年に中断したTVAのワッツバー2号機(WH PWR、121.8万kW)の建設が同年10月に再開された。2013年にはサザン・ニュークリア社のボーグル3・4号機(WH・AP1000、各120万kW)と南カロライナ電力/ガス社のV.C.サマー2・3号(WH・AP1000、各120万kW))が新規に発電所の建設を開始している。
 米国では34年ぶりの新規建設であるが、電力需要が低成長であること、天然ガス価格の下落等から、原子力業界では今後10年間に建設される原子炉は5基に限られるとしている。米国電力の20%を供給する原子力発電所は高齢化していくものの、電力市場規制緩和に伴う卸売り電力料金下落、一方福島第一事故後の安全性強化による諸経費の加算などから、初期投資の高額な原子力発電所の建設は難しい。目下COL申請中の原子炉の建設は2020年以降になると予想されている。
(1)原子炉設計認証(DC)の状況
 DCはサイトと切り離して、新原子炉の各種安全面を中心に審査する。認証日から15年間有効であり、更に10〜15年間の更新が可能である。現時点で認証が得られている原子炉設計はABWR(GE社、1997年5月)、AP1000(WH社、2011年12月)、システム80+(CE社、1997年6月)、AP600(WH社、1999年12月)、ESBWR(GE・日立、2014年9月)で、さらにNRCはUS−EPR(AREVA)、US−APWR(三菱重工)、ABWR(東芝)、ABWR(GE・日立)、APR1400(韓国電力公社(KEPCO)と韓国水力原子力株式会社(KHNP)、2014年12月受理)の審査を行っている。
(2)事前サイト認可(ESP)の状況
 ESPはサイトの安全と環境保護問題、緊急時対策などを審査する。認可日から10〜20年間有効で、10〜20年間の更新が可能である。クリントン(エクセロン社、2007年3月)、グランドガルフ(エンタジー社、2007年3月)、ノースアナ(ドミニオン・エナジー社、2007年11月)、ボーグル(サザン・ニュークリア社、2009年8月)のサイトがESPを取得しており、PSEGサイト(PSEG社、申請日2010年5月)がサイト審査中である。
(3)建設・運転一括認可(COL)申請状況
 COLは10CFR Part 50に基づく「建設許可」と「条件付の運転認可」を一括して発給するものである。2007年7月に申請されたカルバートクリフス3号機を先頭に、2007年は4件(原子炉7基)、2008年12件(12基)、2009年1件(2基)、2010年1件(2基)の合計18件(28基)のCOL申請がNRCに提出され、そのうち2件(ボーグル3・4号機、V.C.サマー2・3号機)が発給された(表4参照)。しかし、低い電力価格と低調な需要の影響から、ベルフォンテなど他6件については一時停止中であり、ナインマイルポイント3号機とビクトリア・カウンティ1・2号機はCOLが取り下げられている。
(前回更新:2010年4月)
<図/表>
表1−1 米国の原子力発電所一覧(運転中)(1/4)
表1−2 米国の原子力発電所一覧(運転中)(2/4)
表1−3 米国の原子力発電所一覧(運転中)(3/4)
表1−4 米国の原子力発電所一覧(運転中・建設中)(4/4)
表2 米国の原子力発電所一覧(閉鎖)
表3 米国における主な原子力発電事業者
表4 米国における新規原子力発電所の建設計画
図1 米国における電源別発電電力量の推移
図2 米国における発電炉の運転開始・閉鎖基数の推移
図3 米国における運転中原子力発電所のサイト
図4 米国の電源別発電所の設備利用率の推移
図5 米国における原子力発電所所有会社の再編成

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向・北米(2011年) (01-07-05-17)
米国エネルギー省(DOE) (13-01-02-08)
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの原子力開発体制 (14-04-01-03)
アメリカの原子力安全規制体制 (14-04-01-04)
アメリカの電気事業および原子力産業 (14-04-01-06)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2015年版、2015年4月
(2)米国エネルギー省情報局(EIA):Table 8.1 Nuclear Energy Overview、http://www.eia.gov/totalenergy/data/monthly/pdf/sec8_3.pdf
(3)世界原子力協会(WNA):Nuclear Power in the USA、2015年12月、http://www.world-nuclear.org/info/Country-Profiles/Countries-T-Z/USA--Nuclear-Power/
(4)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑2016年版、2015年10月、米国
(5)米国原子力規制委員会(NRC):New Reactors、http://www.nrc.gov/reactors/new-reactors.htmlおよびOperating Reactors、http://www.nrc.gov/reactors/operating.html
(6)米国原子力規制委員会(NRC):Map of Power Reactor Sites、http://www.nrc.gov/reactors/operating/map-power-reactors.html
(7)資源エネルギー庁編:エネルギー白書2006
(8)原子力委員会(編):原子力白書(平成21年版)、資料編、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2009/siryo.pdf
(9)三菱総合研究所:平成25年度発電用原子炉等利用環境調査(海外における原子力政策等実態調査)報告書、2014年3月、http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2014fy/000858.pdf
(10)米国エネルギー省情報局(EIA):Figure 7.2 Electricity Net Generation、2016年1月、http://www.eia.gov/totalenergy/data/monthly/pdf/sec7_4.pdf
(11)米国エネルギー情報局:Table9.1 Nuclear Generating Units、http://www.eia.doe.gov/emeu/aer/txt/stb0901.xls
(12)米国エネルギー情報局(EIA):Monthly generator capacity factor、http://www.eia.gov/electricity/monthly/epm_table_grapher.cfm?t=epmt_6_07_ahttp://www.eia.gov/electricity/monthly/epm_table_grapher.cfm?t=epmt_6_07_b
(13)資源エネルギー庁編:エネルギー白書2006
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ